( ^ω^)は綺麗な街に住んでいるようです
- 4: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 22:55:05.00 ID:9aKE9RM10
- 第23話
(´・ω・`) 「!!」
ずっと車を走らせていて、とうとう僕は気付いた。
ここが、どこかということに。見覚えのある場所だった。
(´・ω・`) 「ドクオ! おい!」
('A`)「あ……?」
(´・ω・`) 「ここ、ここは―――」
そこは紛れもない、目的地の一つだった。
不穏な空気がどこかしら流れている。
「資料室」の扉がだらしなく開かれており、
正面のカーテンがガラスを散りばめながら揺れていたから、だろうか。
(´・ω・`) 「ドクオ、バルコニー・エリアだ!」
('A`)「……! マジで……?」
気だるそうなドクオの表情に、喜びが表れていった。
・・・ ・・・・
- 7: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 22:57:34.60 ID:9aKE9RM10
- ・・ ・・・
(#^ω^)「………」
感覚が異常なほど研ぎ澄まされている、下の兵の小さな咳音すら聞き取れる上に
風の流れまでもが感知出来るほどだ。
だが、身体は動かない。
といっても硬直した風ではない。
気だるさは微塵も感じられないのだ。
ミメ,,メД゚彡「………!?」
( `Д´)「どうかしましたかフーさん?」
ミメ,,メД゚彡「いや……」
フーの様子が、どこか可笑しかった。
しかし、周りの兵はそれに気にすることなく騒ぎ立てて、
今にテントを取り外そうとしていた。
――やられるもんか。……だけど、どうすれば。
そのときだった。 左の扉の方から、先程と似たような地響きが聞こえたのだった。
- 10: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:00:57.05 ID:9aKE9RM10
- 左の扉とは、兵の入ってきた右の扉の向かい側にある、
シンメトリーになるよう作られたような場所だった。
装飾もほとんど同じ銅飾りで、違いと挙げるとすれば模様の違い程度だ。
地響きの元はその扉の奥にあるのは間違いなかった。
最初はその地響きに、気にしないどころか気付きもしなかった兵隊も
やがてはその段々大きくなるその音に、感心を寄せずには居られず、
僕の立っているテントから視線は外れて、左の扉に向かうのだった。
(;`Д´)「お、おい……」
( `Д´)「なんだ……?」
「バン」と音がした、
突然、両開きのその扉は全開になった。
雪崩のように謎の男達がホール・ロビーに乱入してきたのだった。
(;^ω^)「……?」
( `Д´)「ど、奴隷共かよ!!??」
その言葉を機に兵達はざわめきついた。
よく見れば、確かに流れ込んできた男達はほとんどみすぼらしい格好をしていた。
しばらく眺めていると、僕はとある人間の存在に気づいた。
- 11: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:03:46.31 ID:9aKE9RM10
- (;^ω^)「渡辺さんっ!」
男達の乱入に終わりが見えてきた頃に、渡辺さんがひょっこりと
ホール・ロビーに姿を現した。手には鍵の束があった。
後方からフーの舌打ちが聞こえた。おそらくフーが落下した際に
落ちた、奴の所有物なのだろう。それを目ざとく見つけた
渡辺さんは、その鍵を使い労働者達を解放させて、援軍を作ったようだった。
从;'ー'从「えへへ」
渡辺さんはそっと脇の方に寄ると、少し怯えた風にこちらへ
トボトボと歩みを始めた。対して労働者達は
怒涛の咆哮を上げながら、怒りの対象の兵達へ向かっていった。
その咆哮は獣としか思えないほど、耳を塞ぎたくなるような強いものだった。
中には兵士への罵倒が多量混じっている。
怒りはよほど強いものらしく、先頭の人間の青筋を立てた形相がよく見えた。
( 労#`ハ´)「殺すアルくそがァァアア!!!!」
( #`Д´)「……あぁ!?」
不意に現れた労働者達の襲撃に、戸惑っていた兵士達だったが、
やがては激昂し、向かってくる労働者の軍団を
迎撃しようと士気を高まらせていった。
- 12: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:06:22.94 ID:9aKE9RM10
- (;^ω^)「……!!」
咆哮を上げる2つの団がついに衝突した。
人間の出した声とは思えない、つんざくような轟音が
辺り一面に広がり、爆発し拡散する。
テントの上から見るその衝突の光景には身震いしてしまうほど、
迫力と恐怖のあるものだった。塊となっていた2つは激突した瞬間
グニャリと形を変形させ蠢きながら合わさっていく。
咆哮が段々悲鳴へと変貌していく。
僅かな赤い点々が場面イッパイに広がっていった。
血だ。クリスタルの壁や地面にコビリついていく。
労働者は武器らしい武器を持っていないが
兵士もフーに制限されたらしく、警棒程度しか持っていなかった。
しかし労働者は鍛えられた体躯を駆使して戦闘していく。
統一感は無いものの、格調の高かったはずのこのホール・ロビーは
怒涛の歩みと血飛沫でどんどん汚れていった。
乱れあって戦っている地点の近くにある流線型のクリスタルの壁は
見る見る内に黒ずんでいった。
小さな堀も、暴れまわる兵と労働者のせいで
縁石が徐々に徐々に擦られていき、流れている水も飛び散り、
血と合わさって奇妙なピンク色に変色していった。
- 13: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:09:58.63 ID:9aKE9RM10
(兵;゚Д´)「ぁああああああッ!!」
近くに居た兵の代表者らしき人間が、頭にハンマーの一撃を食らい
喉を搾らせた悲鳴をあげた。
代表者を殴った労働者は、蹴り倒した後に走り去り
混戦の中に入り込んでいった。
残された代表者は、芋虫のように身体を丸ませて頭を抱えて
ヒクヒクと痙攣した後、 力尽きた。
(;^ω^)「ぅう……っ!」
目を瞑りその光景をそれ以上見ないようにする。
見ているだけで、死にたくなるような光景だ。
すると、突然テントが揺れだした。上下へと強くうねった。
- 14: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:12:20.24 ID:9aKE9RM10
- (;^ω^)「!?」
揺れの発信源と思われる方向に振り返った。
ミメ,,メД゚彡「中々いい眺めだろう」
ニタリと頬を上げて、クックとフーは笑う。
その身体でこのテントの上に来れたのか。
考えると、どうしても疑問が固形化して離れなくなってしまう。
しかし、それを無理矢理振り切る。対応すべきはこれからだと。
僕はバットの持ち手を変えながら、キッとフーを見据えた。
( ^ω^)「……!」
ミメ,,メД゚彡「威勢がいいな」
小さく笑いフーは右手に忍ばせていた
バタフライナイフの刃を剥き出しにすると、僕の方へ
ユックリと歩き出した。
- 15: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:15:34.88 ID:9aKE9RM10
- (;^ω^)「くぅ……!」
思わず後ずさりを取る。
フーは確実な動きでこちらに向かっていく。
テントの布の上は、非常に歩き辛かった。
フラつきながらも、尚後ろに動く中
僕は横目で渡辺さんの現状を探った。
渡辺さんは、このホール・ロビー内を
てっきり抜け出しているかと思ったが、違っていた。
隅にいた。
兵士と労働者の戦いは段々拡散し、場所は拡大化している。
もう少しで、戦いに巻き込まれる状態だった。
(;^ω^)「わたn――」
言い終わらない内に、突然テント上が揺れた。
慌ててフーの方を見た。
ナイフの切っ先が目の前に飛んできた。
- 18: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:17:57.40 ID:9aKE9RM10
- ・・・ ・・・・
・・ ・・・
(;´・ω・`)「なッ!? これは……」
車を降りて、バルコニーに立ちホール・ロビーを一望した僕は愕然とした。
謎の一塊が蠢き、破片を撒き散らしていた。その一塊とは、人間だった。
その人間達は、人間を殴り、蹴り、時には庇い、
そして倒れ、痙攣し、踏み潰されていく。
白い小さなフィールドがあった。テントなのだろうか。
そこには2人の男が対峙していた。
1人はナイフを片手に持った……ボロボロの男。
もう1人は、見慣れたバットを手にした
見慣れた、男だった。
(;´・ω・`)「ブーンッ!!」
しかし、その叫びは決して届くことは無かった。
早くホール・ロビーに行かねば……!
- 19: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:21:04.49 ID:9aKE9RM10
- 阿鼻叫喚と化していたホール・ロビーの現在に
混乱してしまい、状況も把握出来ないまま
僕はドクオを乗せたままの車に急いで戻っていった。
僕がドアを開けた瞬間、ドクオは顔を上げてすかさず質問した。
('A`)「なんか、あったか? すげぇ騒音だぞ……」
(;´・ω・`)「よく分からない、兵士と何者かが乱戦を繰り広げていた。
そして、ブーンも……ナイフを持った男と……」
(;'A`)「なんだって!?」
ドクオが驚きを隠さずに叫んだ。
(;'A`)「どういうこった!? kwsk!!1」
(;´・ω・`)「だから分からないっ!」
つい大声をあげてしまった。
一瞬ドクオの目に怯えが浮かんだようだった、
言い様のない罪悪感を感じてしまう。
(;´・ω・`)「……ごめん」
- 22: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:23:46.39 ID:9aKE9RM10
- (;'A`)「いや、……俺も」
沈黙が流れた。
今の、ブーンの今に、
今のブーンを助ける者にあってはならない沈黙だった。
(;´・ω・`)「急がないと――」
ここから第八通路に向かい、
階段を駆け下りていく……。どれほどの時間がかかるだろうか。
こうしている間にも時は、戦況は、ブーンの状況は刻々と変化していっているだろう。
怪我をしたドクオは、これ以上ついていけないだろう。
もう、僕しか。
猟銃を手に取り、
車のドアを閉めようとした、そのときだった。
(;'A`)「待ってくれ!!」
(´・ω・`)「……ドクオ?」
(;'A`)「……俺も、連れてってよ!」
- 24: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:26:53.88 ID:9aKE9RM10
- (´・ω・`)「何をいtt……」
(;'A`)「役立たずは、もう……」
役立たずになりたくない……?
だったら、だったら! そこに居てくれよ……。
歩くのも辛い君は、君の言葉で言うのなら……
もう、役立た……
(;'A`)「ならないようにッ……努力を、するん……だ」
努力? どうやってだ……。……現実を、見てくれ。
(;'A`)「だからさ、………」
(´・ω・`)「え……!?」
ドクオが小声だが素早く僕に作戦を伝えた。
それは、確かにドクオは役立たずにはならないであろう作戦だった。
しかし……
(´・ω・`)「危険だ! 僕はともかく、君は……」
(;'A`)「いいんだ、構わない……俺だって、頑張りたいんだ。 ……早く、ブーンを、さ……」
- 27: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:29:23.52 ID:9aKE9RM10
- (´・ω・`)「……」
わかった。……と僕は心の中で頷くと、
またも車に乗り込み、その準備を始めた。
チラリと横目でドクオの顔を見た。
てっきり不安げな表情をしているかと思っていたのだが、
違っていた。
満たされた顔だった。
(´・ω・`)「(……ごめんよ)」
小さく声に出さず呟き、僕は自分を恥じた。
ハンドルを握る。自然と力が込められていき、心も落ち着いていった。
・・・ ・・・・
・・ ・・・
・・・
・
- 28: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:32:02.68 ID:9aKE9RM10
- (;^ω^)「………ッ!」
間一髪だった、しかしそれでも左頬に一文字の傷跡が作られてしまった。
カァと熱くなるその傷跡から溢れる血が顎の方へ向かい、そこから一粒一粒垂れていく。
僕は再度、襲撃者に集中を向けた。
片膝ついたままだったので、姿勢を多少持ち直しながら。
ミメ,,メД゚彡「……」
多少身を屈めていたフーは背筋を伸ばすとナイフの刃を自らの背広に押し付けて
血を落とそうとしていた。両刃とも充分に汚れを落としたらしく、再び構える。
僕は垂れ下がっていた腕を持ち上げてバットの存在感を見せ付けた。
だがフーは怯む様子を見せずこちらへにじり寄っていく。
とてもテントの上とは思えない動きだった。静かで単調だが、決して遅くもなくフラつきもない。
慣れた動きだ。対してこちらは動く度に重心を不安定にさせてしまっていた。
フーの突きつけてくるナイフの切っ先が、鋭い縦の単線となっていた。
奴の気迫がそれのおぞましさを増長させている。思わず後ずさりしてしまいそうだ。
だが、決して後ろには引かない。そう、僕は決めたのだから。
ゆっくりながらも、一歩一歩近づいていった。
距離にして、2m近くとなった。
- 30: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:34:06.89 ID:9aKE9RM10
- ゴクリ、と唾を飲み込む。
バットはいつでも振り回すことが出来る。アドレナリンは充分に体内を駆け巡っていた。
どう動けばいいのか……それを確かめる術は無かったのだ。
(;^ω^)「…………」
ひたすらフーの動きに集中し、全神経を注ぐ。相変わらずジリジリと確実に近づくだけで、
異変など捉えようもない……と思っていたそのときだった。
(;^ω^)「おっ……?」
フーが一瞬だけ目線を下に逸らした、一体何かあるのか……?
今の所、フーの変わった動きといえばその目線の動きだけであった。
何があるのか、何の意図なのか。
フーの動きに気をつけながらも、頭の中で必死にその理由の合理的な説明を検索しようとした。
焦眉の急への的確な判断を求めていた。
そうしているうちに、フーは飛び出した。
その寸前の筋肉の緊張を観察した僕は咄嗟にバットを気持ち高めに構えたのだった。
フーの足はテントの布から完璧に離れた、加速を充分つけている。
どうすればいいのか、とグっと身体を強張らせるうちにもフーは僕に向かって
突進していく。
もう、やるしかない。
あの手で、行くしかない! 時間はない!!
ミメ,,メД゚彡「ぬん!」
(;^ω^)「うあぁぁぁあッ!!」
- 33: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:36:46.18 ID:9aKE9RM10
- ガムシャラにバットを持ち上げて、自分の足元近くに
特に確認もせずに打ち下ろしたのだった。
確認出来なかった、こっちの方が表現は正しいのかもしれない。
そんな悠長な暇は無かった、イチかバチかの勝負であった。
……どうやらその勝負には、見事、勝利することが出来た。
ミメ,,メД゚彡「グっ……ぁ、ぅうっ……ッ!」
(;^ω^)「はぁ……はぁ……はぁ……」
フーの背中には渾身のバットの振り下ろしが入りきっていた。
屈みながら突進していたフーの背中に。その動きを止めることにも成功した。
ナイフの先端は僕のズボンの布を、今にも切り裂いてもおかしくない程に接近していた。
すぐにフーは動いて先に突き進んでいくかもしれない、と僕はバットに体重を乗せて
加圧をした後にサっとバックステップを取り、フーから離れた。
力を更に加えられたフーはとうとうウツ伏せに倒れ、ナイフがテントの布の上で滑稽に舞った。
(;^ω^)「助かった……」
狙いが当たり、成功した。
いつかの本で見たあの情報が頼りとなった。
ナイフを持った喧嘩の際、狙う場所は心臓でも首でもなく脚の付け根だという情報。
フーの一瞬外れた目線を手掛かりに、記憶の貯蔵庫からすんでの所で引いたのだった。
- 35: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:41:58.12 ID:9aKE9RM10
- (;^ω^)「!!」
しかしフーはヨロリと、ナイフを拾いつつ起き上がった。
相変わらず、その動きにおぼつきは無かった。
ミメ,,メД゚彡「……!」
怒りに満ちた形相でこちらを見ている、ナイフの刃を横に向け、
それを握った腕を反対側の腕の付け根の方にゆっくりと回す、ナイフを横一直線に払うつもりだろう。
その姿を見ているうちに、やがて無性に胸がざわついてしまい、何事かとフト手に持っているバットを見て
心を落ち着かせようとした。
( ^ω^)「……」
ジョルジュ、彼の持ち物であるこのバットを僕は今、握っているのだ。
そして目の前にいる野蛮な悪魔こそが、彼の仇であるのだ。
僕はやらねばならない!
ミメ,,メД゚彡「ぬぅァぁあァァッ!!」
脚に力を込めて、フーはジャンプの要領でこちらに向かっていった。
バットの軌道を僕は放った。
フーのナイフを持った腕がしなる、僕の首を刈るような勢いで刃は一瞬で近づいていく。
バットの動きとナイフの動きはお互い、反対の回転だった。
僕の首の左側にナイフは迫っていった、僕のバットは右側へ、フーの顔左部分へと進んでいく。
- 37: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:45:56.08 ID:9aKE9RM10
(;^ω^)「……!」
感触が走った。
(;^ω^)「……ッ」
ミメ,,メД彡「ォ……ォ……ォオ……ァ」
それは、バットによる殴りつけた感触だ。
フーの左側の顔にメリ込んでいた。バットの長い胴が、フーの上腕部分とほぼ密接していた。
ナイフは僕の首に飛んでいくことは不可能となっていた。ナイフがフーの手からこぼれ落ちる。
フーの目は飛び出しており、焦点が定まっていなかった。
身体の動きが完全に止まっていた。
- 38: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:47:42.75 ID:9aKE9RM10
- (;^ω^)「ふぅ……」
僕は息を吐いてから、それから、
ジョルジュの念を想起して、それから、
ミメ,,メД彡「ぁガ……!」
フーの顔がめり込んだままのバットを完全に、
悲しさも、憎しみも何もかも振り払うように、なぎ払った。
フーは倒れこそしなかったものの、今にも突っ伏しそうなほどフラついていく。
ミメ,,メД彡「こ……ノぉ …ガ……キィ……ぃ」
(;^ω^)「……!」
怨念のような言葉を吐いて、フーはテント上をよろめいて、
何かに操られるようにして端の方まで向かっていき、
そして、
狂乱の戦場へと、落ちていった。
- 40: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:49:22.15 ID:9aKE9RM10
- フーの落下した地点を見ようと端まで走り、下を覗いた。
(;^ω^)「……これは」
フーの姿はすぐ近くで戦闘している人間達の影に隠れていてよく見えなかった。
テント付近は特に激戦区の模様で、人の海の蠢きやざわめきには激しいものがある。
やがて「何かが落下した」という事実に、気づいた人の波がようやく静まった頃に
ボロボロの状態で発見することが出来た。
(;^ω^)「……フー」
生きているとはとても思えない姿だった、面影がまるで無い。
ジョルジュの仇を取ることが出来た、
そう思いたかったのに、
フーの無残な有様を見ていると、悔しいことに懺悔の気持ちが少しばかり滲んでしまう。
そう考えてしまうと、ジョルジュに申し訳ないという気持ちすら浮かんでしまうのだった。
ジョルジュの仇に同情しかけた自分が嫌になってしまった。
ほんの一瞬だが、自分がどうして此処にいるのか。それすらも見失ってしまいそうになった。
- 41: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:51:48.67 ID:9aKE9RM10
( ^ω^)「……違うお」
フーを倒したのは、勘違いしてはいけない。。。
カウントダウンを止めるためだ。
ジョルジュの仇でもあるが、それ以前でも敵であったのだ。
だから、割り切らないといけない。これでいい。
これは"そういうもん"だ、て。
ジョルジュへの弔いは、後でいいはずなんだ。
そう思いたかったのに、何故か割り切ることが出来なかった。
申し訳ないという気持ちが硬く心の中に鎮座している。
いや、割り切らなくていいかもしれない。
まだ、終わってはいないのだから、だから、最後の最後に、その割り切れない思いで、
泣くことにしよう、悔しがることに、 しよう。
- 43: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:55:19.84 ID:9aKE9RM10
( ^ω^)「……。 ……ん?」
やがて兵士はフーの姿をついに確認すると、一気に態度を変えて騒ぎ立てはじめた。
兵達はそんなフーを見て騒ぎ立て労働者のことを一時無視したかと思えば
次の瞬間には僕のいるテント上を憎悪の視線で見つめるのだった。
(;^ω^)「うっ……!」
その光景をみて思わず身震いしてしまった。
一斉にテントの倒壊に取り掛かろうという殺気だ。
労働者などどうでもいいといった風だったので、当の労働者達もポカンとしてしまっている。
行群がワラワラとテントの支柱に寄って来ようとする。
これは、僕はどうすればいいんだ、どう対処すればいいんだ?
ジャンプできるような場所など地面以外どこにも無かった。
と、苦悩しているうちに、フと何かの気配を上空から感じ取った。異様な気配だった。
(;^ω^)「な、なんだお……?」
- 46: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/20(土) 23:58:22.43 ID:9aKE9RM10
- その気配には下の兵達も、僕以上に反応してアタフタしはじめる。
そうして、やがては
テント近くから逃げようと人の波がまたうねり、うねり、波紋を作っていった。
僕もとうとう、
その気配の正体が気になってしまい視線をバルコニーの方へ向けようとと顎を上げた瞬間に、
巨大な何かが
突然、空から降ってきたのだった。
やがてそれは地面に激突し、心臓が張り裂けるかと
思うほどの騒音をホール・ロビー中に響かせるのだった。
その正体を確認する気が削がれてしまうほどのもので、
どうやら下の兵士・労働者も例外ではなく皆呆然としていた。
心の騒ぎの静まりを待ってから、その降ってきたものをよく観察してみる。
しかしそれを見た瞬間、
またもや胸騒ぎを引き起こしてしまった。鼓動が桁を外れたように狂乱する。
車だった、軽自動車だ。
誰が運転しているのか……それを知りたくて目を凝らしてみる。
僕の方に運転席があるので
最初はオボロゲながらもその姿は段々、確認することが出来た。
知っている人間だった。
(;^ω^)「ショボンッ!?」
ショボンはドアを勢いよく開けて周囲を見渡していた。
将棋倒れになった兵士と労働者にその視線は注がれていった。
- 50: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:01:19.25 ID:Yq4g879c0
- 大理石の上に、無作法にも車体が叩きつけられたためか白煙が少しばかり
その周辺に漂っていた。しかし、軽自動車は見たところ壊れている様子はなかった。
中にはドクオも乗っているのだろうか―――そうであって欲しい、と願望を
表面に出そうとした際に、ようやくショボンの奇妙な持ち物の存在に気づいたのだった。
(;^ω^)「……猟銃?」
(´・ω・`)「ッ!」
車の影に隠れ、弾をリロードしてからは姿を現して周りの人間の足元付近に
何度もショボンは、猟銃で連射していった。
しかしどうやら迎撃でも襲撃でもない、ただの威嚇のようだ。
驚きを更に畳み掛けているようだった。僕も唖然とさせられる。
すると突然、クル、とショボンは僕の方を向いた。
(;^ω^)「!?」
(´・ω・`)「ブーンッ!!! 早く、この車体の上に飛び乗るんだ!!」
その叫びに強く心を揺さ振られてしまった。
その言葉、意味――を噛み砕き理解するよりも先に、身体が
ショボンの叫びに、反応したのだった。
( ^ω^)「わかったお!!」
僕は、助走はつけずにそのままテントから、足を離した。
- 52: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:04:47.37 ID:Yq4g879c0
- 身体が加速をつけながら宙に飛び出した。
ショボンはいつの間にか運転席に戻りドアを閉めていた。
それどころかエンジンをふかしている。
まるで優しく操作されているかのように、僕の身体は軽自動車のボンネットへと向かっていく。
視界の焦点の外側からは、兵士達が平静を取り戻そうと身体を整えている姿が映る。
ふわり……と夢心地のような経過を終え、僕の身体は
(;^ω^)「よっ!!」
軽自動車のルーフに降り立った。鉄板の衝撃が足裏に走り、少し麻痺してしまう。
ベコンと音が鳴ったので、てっきりルーフが凹んだのかと焦ってしまったが
どうやらそれは杞憂らしく、ホっと肩を撫で下ろした。バットを落としそうになったが、何とか堪える。
(;^ω^)「…ッ……わわッ!!」
と同時に車が急発進する。急いで屈み立ち膝になり、振り下ろされないようにと
足腰に力を入れた。
ショボンは兵士達から逃げ切るつもりのようだった。
幸いなことに、エレベーターまでの間には障害となるものがほとんど無かった。
- 53: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:06:48.51 ID:Yq4g879c0
- 生暖かい風が前面から押し寄せていく。思わず顔を顰めてしまう。
このルーフの下、車内にはドクオは居るのだろうか。それが気がかりだった。
目を凝らして進む先の状況について知ろうとする。
黒いエレベーターの全貌が段々と見えていった。
黒塗りした樫の木を複雑に切り合せていた、脇には上へのボタンが備え付けられている。
(;^ω^)「……いよいよだお」
近づいていくホール状の壁に多少、圧迫感を感じつつも
士気は削がないように気持ちを高ぶらせ続ける。
ただ一つ気がかりなことと言えば、
その黒いエレベーターの番人のような、
僕達を見て戦闘態勢に入ろうとする兵の存在だけだった。
・・・ ・・・・
- 56: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:09:17.43 ID:Yq4g879c0
- ・・ ・・・
(´・ω・`)「ふぅ……」
ハンドルに神経を集中させつつ、僕は息を漏らした。
今のところは、成功だ。
この車とタイヤが落下の衝撃に耐えたのは幸いだった。
やはり地下で動くものである以上、この組織のものである以上、何か改造でもされていたのだろうか。
空を飛んだときの怖さ、あれは厳しいものがあった。
でも、僕は見てしまった……彼女を。だからこそ、恐れてばかりではいけない。
葛藤が生まれていく……。
そのためか、どうしても心中穏やかにはなれなかった。
正直、僕がこうしてブーンを送り出す手助けをしているのも、
半ばしっかりとした判断の元ではなかったのだ。
「……よかったぜ」
横からドクオの、力のこもった声が聞こえた。
僕はそのままの姿勢で返事を返す。
(´・ω・`)「うん、そうだね……助かった」
- 59: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:11:57.92 ID:Yq4g879c0
- 「助かっ……た……?」
キョトンとした口調だった。
(´・ω・`)「君が……提案してくれなきゃ、ダメだった。僕は焦ってて……」
「そ、そうか……? ……よかったぁ……役に立ったっ……ブーンを 手助けr」
突然声が途切れた。ドクオのことを気にしつつも僕はフロントガラス越しの
ホール・ロビーを見続けていた。だが、それっきりドクオは言葉を発しなくなったので
不審に思い、顔を助手席の方に向けた。
(´・ω・`)「ドクオ……?」
一瞬、眠ってしまったのかと勘違いした。目を瞑り、背凭れに全てを託している。
しかし、口をパクパク動かしていた。もしやと思い注意を向けてみるとやはり、
それは言葉の紡ぎだった。
(´・ω・`)「どうしたんだ、……ドクオ?」
(;'A`)「ぃ、ぃゃぁ……」
声が擦れながらも付随してきた。聞き取りにくかったが、そんなことはどうでもいい。
本当にドクオの身体に危機が迫っているかのようだ。
運転する余力がない、僕は気がつけば相当減速をしていた。
- 60: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:13:57.09 ID:Yq4g879c0
- (;'A`)「やっと……ここまで来れたんだから……」
(´・ω・`)「……え?」
(;'A`)「どうせなら……さいごまでなぁ……俺も……」
ドクオは最後とばかりに息を吐くと、首を力なく垂らした。
それっきり、
ドクオは動くことは無かった。
(´・ω・`)「……え、……ぇ…?」
僕は車を急停車した。ドクオの状態を確認するために。
ワケが分からなかった。意味が分からない。
ふざけるなよ、ドクオ?
・・ ・・・・
・・・ ・・・
- 63: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:16:14.34 ID:Yq4g879c0
- もう歩いても充分エレベーターに辿り着ける、
壁の模様も具に判断出来る、その距離でのことだった。
( ^ω^)「おろ?」
車が減速したかと思えば今度は急停止した、その反動のせいで
危うくルーフからズリ落ちそうになってしまった。
(;^ω^)「ぅわッ!!」
すんでの所で踏ん張り、耐え残ったという実感に少しだけ酔いしれている頃、
突然、下のドアがいきなり開き1人の人間がころがるようにして出てきた。
そのドアは運転席の側に設置されているものだ。
(;´・ω・`)「はぁ……はぁ……はぁ……」
( ^ω^)「ショ……ボ?」
車のドアを閉じていない。いつものショボンならそんなことはしない。この緊急事態のせいだろうか?
ショボンは呼吸を荒げながら、半泣きの表情で猟銃をリロードしていた。
一体、どうしたんだ……? 何があった?
- 68: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:19:10.58 ID:Yq4g879c0
- 何があったのか、あとでショボンに聞こう。
僕は車のルーフから飛び降りて床に足をつけた。
ジンワリ響く足裏の感覚に、降り立ったという実感を味わう。
ショボンが後ろを振り向く。
倒れた人間、血を流している人間、人間を殴りつけている人間、
そして僕達を追いかける人間達がそこには居た。
(;^ω^)「うう……」
(;´・ω・`)「ブーン!! 僕が、後ろを止めよう」
迫り来る人間達の1人、の足元に向かって、ショボンは猟銃から銃弾を放った。
「ドン」という発射音が、鼓膜をビリビリと振動させる。
牽制は成功したようで、
僕達へ向かっていく人間達の足の動きはピタリと止まった。
今の内に、エレベーターへ行けば間に合うかもしれない。
- 72: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:21:18.56 ID:Yq4g879c0
- (;^ω^)「わ、分かったお!」
(;´・ω・`)「それと!」
歯切れのよい大声で、僕のエレベーターへと進める足をショボンは静止させる。
運転席の近くに置いてあったバッグを取り出すと、僕の方へそれを
投げて寄越した。 ズッシリとした重みが伝わる。ジョルジュから貰ったこのバッグに、
一体ショボンは何を詰め込んだのだろうか。
僕は両手に、ジョルジュからのバッグとバットを持っている。
そう考えていると、不思議と心が安らいでいくようだ。
(;^ω^)「あ、ありがt……」
(;´・ω・`)「くそッ……! くそぅ……」
(;^ω^)「……ショボン……」
しかしショボンは焦っていた。敵に向かって駆け出したい、
という衝動を抑えきられないようだ。
それだけじゃない。
煮え切らない自分に腹を立てているのか。
直面する現実に怒りを覚えているのか。
ショボンを見ているとそう感じずには、いられなかった。
- 74: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:23:22.50 ID:Yq4g879c0
そして、とうとう
(;^ω^)「ショボン……?」
(´;ω;`)「……くそぉ……ッ」
(;^ω^)「……」
どうしてか、ショボンは泣いていた。
歯噛みしながら、悔しさを
震える吐息で表していた。
僕はショボンの視線を見つめていた。
その瞳をひたすら凝視していると、オボロゲながらに気づいたような気がした。
- 76: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:25:51.19 ID:Yq4g879c0
ショボンは注意深い人間だ、だから、
バルコニーに居たとき、もしくは
車で空中に飛び出した際に……発見したのだろう。
だから、ショボンの気持ちが、
痛いほどに伝わってきたのだった。
( ^ω^)「……。ショボン!」
(´;ω;`)「!?」
( ^ω^)「渡辺さんを……助けてあげてくれお!!」
(´;ω;`)「 ………ブーン……」
ショボンは枯れた声を喉から発すると、涙を腕で拭う。
そうして頷くと、顔を上げる。
その瞳には今まで以上の力を感じさせられた。
渡辺さんを助けるか、町長の元へ行くか。ずっと悩んでいたらしかった。
しかし、それだけでは無いようだった。
- 78: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:27:47.28 ID:Yq4g879c0
(´・ω・`)「……ありがとう……そして、ごめん」
( ^ω^)「ごめん?」
(´・ω・`)「カウントダウンを止めなきゃいけないのに……私情を」
( ^ω^)「渡辺さんは仲間だお。助けるべきだお」
(´・ω・`)「……。そうだね」
猟銃を掲げ、ショボンは後ろを向こうとする。
その姿を見ていると、まるでもう会えないんじゃないか、という気持ちに捕らわれてしまい
堪らず声を掛けたのだった。
( ^ω^)「ドクオは!?」
(´・ω・`)「……! ……ドク……オは……」
突然ショボンの声が、肩が震えている。目には再び涙が溜まっていく。
下唇を噛み締めながら、僕への言葉を言おうと気力を降るい立たせているようであった。
嫌な予感が、過ぎった。
- 82: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:30:08.18 ID:Yq4g879c0
- (;^ω^)「ちょ……ショボン……」
(´ω`)「ドクオは……その…………」
(;^ω^)「そ、そんな!」
ショボンは俯いてしまった。僕も、俯きそうになる。
既に敵は迫っていた。エレベーター近くの敵兵も、そろそろ自分から動き出したようである。
でも、それでも。
ドクオが死んでしまったのではないか、という絶望的な予感は消えることはなかった。
僕は吐く直前のような痙攣を抑えることは出来なかった。
あふれ出る涙も。
( ;ω;)「d……ドク……オ……!」
(´ω`)「……今、は……車のなk……」
車の中……? しかし、
言い終わらぬ内に、ショボンは突然、驚いた顔を見せて叫んだ。
(;´・ω・`)「ブーン!! 後ろに敵兵がッ!!!」
( ;ω;)「え……?」
- 85: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:31:55.77 ID:Yq4g879c0
咄嗟に振り向くと、車の影から敵兵が姿を現した。
その手には拳銃が握られている。今は銃口を空に向けているが
今に僕の心臓目掛けてもおかしくない。それを遂行するのに1秒と掛からないだろう。
( *_*)「食らえ!!」
銃口の標準が僕の胸へと向けられた。
引き金を引いてしまえば、僕の命は終わってしまう。
兵の指先に動作が加わっていく。
(;^ω^)「う、うわ!!」
しかし突然、
『ブ―――ンッ!!!』
乾ききった、喉をあらん限り酷使した、まるで最後のような叫び声が間際に聞こえてきた。
その声は、車の中から発せられたようだった。
そしてその声は、ドクオの声とそっくりだ。
- 89: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:35:00.51 ID:Yq4g879c0
(´・ω・`)「ドク……――」
(;^ω^)「ドクオ!?」
確認しようと、開いたままのドアから車内を覗こうとした直前
何かが視界を掠めた。
車は突如、 急発進したようだった。
(;^ω^)「なッ……」
( ;*_*)「うがぁッ?!」
拳銃を手に握っている兵士を巻き添えにして、車は暴走したように
壁に向かって高速で走っていった。兵士は半ば意識を失っていたが、震える手で車体に
何度も弾丸で傷をつけていた。それでも車は止まることは無かった。
強い意志で、壁へ向かっていった。
(;^ω^)「ド、クオ……!」
- 92: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:37:32.14 ID:Yq4g879c0
そうして、
(;´・ω・`)「あ ――」
(;^ω^)「そん……な……」
壁に勢いよく激突した、ドクオの乗っていた軽自動車は……重厚な破裂音を立てながら
爆発して、炎上したのだった……
ドクオを、乗せたまま。
(;^ω^)「ど、ドクオオォオッ!!!!」
(;´・ω・`)「……!」
- 96: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:39:55.53 ID:Yq4g879c0
(;´・ω・`)「ドk……」
(;^ω^)「ぁ……あぁ……」
崩れゆく車体を見続けても、ドクオの姿は確認出来なかった。
でも、さっきから、あの中にドクオは……生きていたのに。
今ではもう、………。
(;´・ω・`)「……! ブーン、さっさとエレベーターへ!!」
後方を向き、ショボンは再び猟銃から弾丸を放つ。
既に近くまで兵士達は来ていた。僕はすぐさまエレベーターの方向に視点を移す。
車の激突した箇所の近くが、エレベーターのボタンのあった位置のようで、
今、エレベーターの扉は開いていた。エレベーター内から光が漏れていた。
あそこだ。僕の目指す場所は。
もう、無我夢中で
そのままの姿勢で、僕は、バットとバッグを手にエレベーターへ駆けていった。
- 100: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:43:12.72 ID:Yq4g879c0
- 僕が駆けたと同時に走る足音がする。ショボンだ。
僕はエレベーターへ向かう途中、ショボンの方を振り返った。
同時に、ショボンも振り返った。
(´・ω・`)「―――!」
ショボンの表情は、悲しみに満ちていた。
けれども、固い信念も込めていた。
そうだ、ショボンは渡辺さんを助けるんだ。
ショボンは首を戻し、視線を敵に向けた。
そのショボンの単身で立ち向かう姿を見て、改めて考えた。
……僕も、単身で立ち向かわなくちゃいけない。
僕のために、僕のためなんかに、ドクオは……。
エレベーターの光が差す場所にまで到達した。
ドクオの乗っている車、炎上し煙まみれになっている車の方を今度は眺めた。
- 102: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:46:06.80 ID:Yq4g879c0
燃えていく車の中からは、決してドクオの姿を見出すことは出来ない。
重ね合わせることも出来やしない。
でも、確かに其処に居た。
僕の名を叫んで、身を挺して……最期まで……。
( ;ω;)「……ありがと」
もう僕は、二度と会えない親友に挨拶を送った。
そして、固い決意も。
僕の足はエレベーター内の領域に踏み込んだ。そのまま
身を空間内へ入れる。それと同時のタイミングで、自動ドアが閉まりだしていく。
その隙間から覗くホール・ロビーの惨状。
どうやら兵士達もとうとう拳銃を使用し始めたらしく、断続的に銃声が鳴り響く。
白煙も黒煙も空間を段々支配していく。芸術品の数々は破壊されていた。
その中、ショボンは走っていた。渡辺さんの居るであろう方へと。
- 103: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:47:15.31 ID:Yq4g879c0
ドアは完全に閉まり切り、隙間は消滅した。
もうホール・ロビー。 ……崩れゆく芸術を見ることは出来なくなった。
エレベーターは自動的に上方へと動きだした。
階数表示を見たのだが、そのまま「部屋 前」とだけ表示されてあった。
どうやらこのエレベーターはホール・ロビーとその"部屋 前"を繋ぐだけのものであるらしい。
でも、そんなのはもうどうでもよかった。
( ω )「みんな……僕は……ついに」
- 105: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:49:03.06 ID:Yq4g879c0
シャキンさんは、敵を引き付けて僕達が地下内へ行けるよう誘導してくれた。
シャキンさんが居なければ、僕達は地下へ行くことが出来なかっただろう。
ジョルジュは、己の身を犠牲に僕達がこの地下内を動き回れるよう尽くしてくれた。
ジョルジュが居なければ、バルコニー・エリアに着く前にやられていただろう。
渡辺さんは、ホール・ロビーへ行けるよう誘っただけでなく、絶体絶命の状況を回避させてくれた。
渡辺さんが居なければ、僕はバルコニー・エリアで死んでいただろう。
ショボンは、ロビーの混沌とした状況の中僕を助けてくれた。導いてくれた。
ショボンが居なければ、エレベーターに辿り着く前に殺されていただろう。
ドクオは、僕を襲撃する者を道連れに、僕を助けてくれた。
ドクオが居なければ、あの時僕は、死んでいただろう。
みんなが居なければ、僕はここには来れなかった。
ここに居られるのは……
( ω )「みんなのお陰だお」
- 107: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:50:40.98 ID:Yq4g879c0
だから僕は………絶対に、絶対に。
それに、応えたい。応えてみせる!
( ^ω^)「カウントダウンを止めてみせるおッ!!!」
僕以外、誰も居ないエレベーター内にて
あらん限りの声量で叫び、 宣言した。
密室内をその叫びはこだまする中、
僕は頬に残っている涙を拭い、息を整えた。
(第23話終)
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