( ^ω^)は綺麗な街に住んでいるようです

110: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 00:55:20.07 ID:Yq4g879c0
第24話

息を整え、平静を保とうと心がける。

しかし、この密室内のドアを含めた四方の壁に描かれている絵にどうしても目が行ってしまう。


( ^ω^)「……これも、女神像」


それはやはり、女神像公園のあの女神像と同一のものであるらしかった。
町長にとっては何か、思い入れがあるのだろうか。

この黒髪の美しい女性は。



( ^ω^)「………」


ウィ――……イイ……――という音が密室内を支配していた。
上方へ向かっている証拠のような存在だ。



今、確実に僕は向かっていっているという実感だ。



119: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:20:38.88 ID:Yq4g879c0



今一度、心の中で確認する。


僕は絶対にカウントダウンを止めてみせる、街を救ってみせる!


絶対に諦めない。
僕は、信念を背負い込んだのだから。



だから、どんなことをしてでも……


町長に、どんなことをしても……



( ω )「カウントダウンを止めさせてやるお」



121: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:22:19.10 ID:Yq4g879c0





ピンポーン。と軽やかな電子音が耳に入り込んできた。


( ^ω^)「!!」


表示も、キチンと示している。

「部屋 前」に辿り着いたようだ。



ドアに描かれてある女神の絵が潰れ、右へ右へスライドされていった。



自動ドアが開いた。

その先は暗闇だった。



124: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:24:25.20 ID:Yq4g879c0


( ^ω^)「………」

このエレベーターの光が無ければ、その先の空間の状況も把握出来なかったに違いない。


ゆっくり、足を動かして身体を暗闇の中に入れる。


エレベーターが閉じきらない内に周囲の状況を確認した。



ここはダンスホールか……? いや、違う。
それと見間違うほどの開いた空間だった。

目の前にある巨大な檜製のドア、それと床の"何か"を移動させたような跡。
ガランと寂しげな、何もない空間。


まるで引越した後のようだ。


エレベーターが閉まり、光は完全にこの空間内から消えた……と思ったのだが
横の壁にある窓から僅かながら光が差し込んでいることに気がついた。

外は既に夜中だった。



125: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:26:31.23 ID:Yq4g879c0
( ^ω^)「……もう時間はないお」

目を再び檜の扉へ向けた。

重厚なその扉に近づく。バッグとバットを足元にそっと置くと
2つの取っ手を両手を使い、扉を押し開けた。


ゆっくりと開かれていった。
低い音が断続的に聞こえる。


( ^ω^)「……?」

扉の先は、まるで大会社の社長室のような所だった。



128: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:28:28.62 ID:Yq4g879c0
バッグを、皮の取っ手を利用して背負い
バッドを両手で握り、その社長室らしき部屋に進んでいった。


まず目に飛び込んできたのは、真正面に広がる
巨大なガラス張りの窓だ。水族館かと勘違いしてしまうほどそれは大きかった。

その窓からは月光がぼんやりと注がれていた。
そのため、薄暗いながらも部屋内を確認することが出来る。

床には赤い絨毯が敷き詰められている。
意外なことに壁はただの白塗りの質素なものだった。


巨大な窓の前方に、扉と同じ檜の材質のデスクがポツンと置かれていた。

そして、そのデスクに腰を掛けて僕を見据える人間。

顔はよく見えなかったが、見ずとも判別できる。



( ^ω^)「……モララー・シティーポリスマン……町長だお?」


( ・∀・)「………」



131: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:30:16.66 ID:Yq4g879c0

その男は老人だった。顔に深く刻み込まれた皺の1つ1つが影を複雑にさせている。
体つきも、貧弱とはいえないが、ガタイがいいとも言えない。背丈も合わせて標準的なものだった。

しかし、その男には老人とは思えないほどの
ギラギラとした瞳の強さがあった。弱弱しさは微塵もない。
顔の皺が無ければ、間違いなく働き盛りの年齢と間違えてしまうだろう。
黒のスーツを着用したその男……モララー・シティーポリスマンは
ゆっくりと腰を上げて一歩、前進した。


( ・∀・)「君か。 ……モニタールームで見ていたよ。……会いたかったなぁ」

( ^ω^)「そうかお」

( ・∀・)「守衛はわざと帰らしたんだよ。君のハードルを少しでも下げてやろうとね」


この男と会話をするつもりは全く無い。急いで
カウントダウンを止めさせねば。

このバットを使い、無理矢理 服従させてでも。

僕は良識を失う覚悟だった。



133: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:31:57.48 ID:Yq4g879c0


( ・∀・)「でも、ホール・ロビーを破壊したのは頂けない。それは頂けないねえ」

低く押し殺した声で僕を圧迫させるかのように言う。

(;^ω^)「……」

必死で後ろへ下がりたい、という気持ちを抑えてバットを握る手に力を込めた。


(;^ω^)「だから、何なんだお!?」

バットを天へと掲げた。


(#^ω^)「僕は! お前かr―――」

( ・∀・)「知っているかなあ? 君のお友達のショボン君と渡辺さんが死んだことは」


(#^ω^)「―――え」

( ・∀・)「初耳かい? そりゃそうだよねぇ……」



136: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:34:37.26 ID:Yq4g879c0
そんな……嘘だ。嘘だ……!

そうだ、モニター室がどうとか言っていたけど

そんなものはエレベーターを降りて見つけたか……?

無いだろう!!


あるとしても、それは下の階だとか、とにかく近くには無いはずだ。



……こんな、こんな短時間で、ショボンと渡辺さんが死んだことなんて……
分かりっこない……分かるはずがない!!


(;^ω^)「……嘘だお」


( ・∀・)「かなぁ? そうかなぁ……? え? おい……」

軽い口調の割には、おどけている風には見えなかった。
ショボンが死んだ、渡辺さんが死んだ……

それが嘘か真か、分からなかった。



139: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:36:47.37 ID:Yq4g879c0


( ・∀・)「だがこれは信じなければならないよ?」


モララーが言った途端、月光の輝きが更に強く、妖しく増していったような気がした。
ゾっと身震いしてしまう。



( ・∀・)「カウントアップ12……いや、カウントダウン? ……はね、

      既 に 遂 行 済 み な ん だ よ ? 」


( ^ω^)「……は……?」


          



141: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:39:20.83 ID:Yq4g879c0
……なにを、何を。

フザケたことを……この男は。


(;^ω^)「う、嘘だお!!!!!」


( ・∀・)「アハハハッハハハハハ……ハハハハハハハァ!」


(;^ω^)「わ、笑うなぉ……うそだ、嘘だ、嘘だァァァァ!!!!」


気がつけば僕はバットを奴目掛けて振り、モララーの腹に
打撃を浴びせていた。しかし、モララーの顔に変化はなく、
それでも高笑いを止めることは無かった。


( ・∀・)「ハハハハハハ……!」


(;^ω^)「ぅそd………そだぉ……」


僕はイツノマニカ窓の外に広がる光景に見入っていた。

この町長の屋敷の、豪勢だが静かな庭が広がっている。
その先にはヒルズまでもが。



143: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:40:45.94 ID:Yq4g879c0
穏やかな光景だった。

とても、カウントダウン発動後には見えなかった。

だから、信じない!


(#^ω^)「ホラに決まってるお!!」

( ・∀・)「……例えばさぁ」


(#^ω^)「……?」


( ・∀・)「……あの街のゴミ箱。あれって、ただゴミを捨てるだけにあるのかなぁ?」

(#^ω^)「……」


何を言っているんだ、この男は。突然、ゴミ箱の話なんかして。
しかし、その話を聞かなければならないようだった。


                       



147: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:43:32.06 ID:Yq4g879c0

( ・∀・)「捨てるだけじゃない……随所に配置させた理由は、他にある」

(#^ω^)「……言えお」


( ・∀・)「例えばアレが毒ガスを吐くことが出来たら……
      
      ……カウントダウンはさっさと済むよねぇ!?」




……な……んだって……!?


(;^ω^)「……そ、そんな……」


ガクリと膝立ちになる。
力が入らない。
身体も震えていく。



149: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:45:26.79 ID:Yq4g879c0


手を床につき、頭を項垂れた。バットも手からこぼれ落ちる。
視界にうつるのは赤絨毯のみ。

そんな中、モララーの非情な言葉、話が展開されていく。


「なぁ……おい? どうなる……かなぁ? ここで」


「この、山々に囲まれたヴィップで、あのゴミ箱全てから、猛毒のガスなんかが噴出されたりすれば!」


(;゚ω゚)「あっ……ぁ……!」


「どうなる……? 考えてみなよ……このヴィップはどうなる!? おい!?」




 直視出来ない、虚しすぎる現実。


 視界が暗黒へ染まっていった。   (第24話終)



151: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/21(日) 01:47:10.40 ID:Yq4g879c0






         第3章「Tomorrow Never Knows」終




                          



戻る第25話