( ゚∀゚)は一度ふられているようです

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:18:01.00 ID:Uwk/Ynzg0
( ゚∀゚)「あー、疲れた…」


バイトが終わって午後9時、今夜は新月で辺りは真っ暗だった。
俺は愛車のRGV250Γにキックで火を入れ、軽くスロットルを捻った。


バババババババァァ――――――――

( ゚∀゚)「…よし、調子良さそうだな」


まだ初夏だというのに、夜になっても異様に暑い。
バイトの最中は、その暑さにずっとイラついていたが、
始動性の悪い2stのオートバイのエンジンをかける時には、その暑さに感謝した。
ともかく、暖気の必要は無さそうだ。


( ゚∀゚)「ふぅ…早く帰ろ」


ババババァァ――――――


教習所で習ったことだが、昼間と比べると夜道はスピードを出してしまうものらしい。
いつも気をつけているのだが、バイトの疲労、早く帰りたいという思い、
真っ直ぐの道路のせいでどう考えてもオーバースピードで狭い道を走っていた。

その時だった



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:20:42.95 ID:Uwk/Ynzg0
( ゚∀゚)「!!」


急にヘッドライトの光が人影を照らし出した。
俺はとっさにブレーキレバーを引き絞る。
車体は大きく前のめりになり、乗っている俺を振り落とそうとする。
それを俺はニーグリップで抑え込んだ。

レーサーレプリカの制動力が幸いし、なんとか人影より随分手前で止まることが出来た。
しかし、クラッチを切るタイミングを失ったため、エンストを起こしてしまった。

ギアをNに入れ、再度キックを蹴ってエンジンをかける。
光を取り戻したヘッドライトが、再び危うく轢きそうになった人物を照らし出す。


( ゚∀゚)「!? ツ、ツン?」

ξ;゚听)ξ「…ジョルジュ?」


( ゚∀゚)は一度ふられているようです



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:23:55.64 ID:Uwk/Ynzg0
俺はバイクを降りてツンの側に走り寄った。


( ゚∀゚)「お前こんな時間にこんな所で何してんだ?」

ξ;゚听)ξ「ジョルジュ…ちょっと薬局に行こうかと…」

( ゚∀゚)「薬局?」


よく見ると、ツンは酷くふらついていた。


( ゚∀゚)「調子悪いのか?」

ξ;゚听)ξ「うん…ちょっと風邪ひいたみたい…だから風邪薬買って来ようと思って」


ツンはふらふらしながら答えた。恐らく相当酷いのだろう。
俺は、このまま行かせるわけには行かないなと思った。


( ゚∀゚)「…俺が薬買って来るから、お前はすぐ家に帰れ」

ξ;゚听)ξ「え、でも…」

( ゚∀゚)「いいから帰れ」

ξ;゚听)ξ「…わかったわ」



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:26:42.71 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

あそこでジョルジュに会ったのは本当に良かったと思った。
自分でも、かなり危ないのが解っていた。


ξ;゚听)ξ「はぁ…やっと着いたわ…」


私は家の鍵を開る。
リビングに入るとすぐに、ソファーに倒れこんだ。


ξ;゚听)ξ「ふぅ…」


まだ両親は家に帰ってきていない。2人とも帰ってくるのは11時頃だろうか。

頭が痛い…熱もあるわね……



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:30:03.73 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

俺とツンは幼馴染だ。
ツンの両親は仕事が忙しいので、昔はしょっちゅう俺の家に両親が帰ってくるまで居た。
夕飯を一緒に食べたことも多い。
俺の親もツンのことは我が子のように可愛がっていた。

それに、俺とツンは高校まで同じ所に行った。


( ゚∀゚)「うーん、しかし本人じゃないと何とも……」


棚にずらっと並ぶ多数の風邪薬。
詳しい病状を聞いていなかった俺は、その中から1つを決めることが出来ないでいた。

仕方が無いので携帯の電話帳からツンの携帯の番号を探す。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:32:43.09 ID:Uwk/Ynzg0
プルルルル プルルルル ガチッ

ξ;゚听)ξ《もしもし?》

( ゚∀゚)「おうツン、薬どれがいいか解らないから病状をkwsk」

ξ;゚听)ξ《うーん…頭痛が酷いのと、あと熱があるわ》

( ゚∀゚)「解った。あと、飯はもう食ったのか?」

ξ;゚听)ξ《まだだわ》

( ゚∀゚)「じゃあ後で作ってやるから大人しくしてろな」

ξ;゚听)ξ「え、そんn」

( ゚∀゚)「じゃあ後で」

カチッ パタン


俺は風邪薬の中から一つを取って、レジに向かった。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:35:50.62 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

ジョルジュは強引だ。だけど優しい。
私はそんなジョルジュが昔から好きだ。
ジョルジュも私が好きだった。

あれは中2の秋だった。


( ゚∀゚)『ツン、俺お前のことが好きだ、付き合ってくれッ!!』


学校からの帰り道、ジョルジュが唐突に私に告白してきた。
私は嬉しかった。
「本当なの?」と聞き返そうとした。


ξ;゚听)ξ『え……じょ、冗談ならやめてよねッ!』

( ゚∀゚)『マジだ、大マジだ』



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:38:42.68 ID:Uwk/Ynzg0
私は「うれしい、私もよ」と、言おうとした。


ξ;゚听)ξ『じょ、冗談じゃないわよッ! 誰がアンタなんかと…』

(;゚∀゚)『そ、そうか……ゴメン、忘れてくれ』

ξ;゚听)ξ『あ、待っ……て……』

(  ∀ )『……』


ジョルジュは走って行ってしまった。
次の日、ジョルジュとどう接しようか悩んでいたが、彼はいつも通り接してくれた。
そして、私は告白の答えを訂正する機会を失ってしまった。


ξ;゚听)ξ「はぁ……」

ピーンポーン



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:41:43.23 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

ピーンポーン

( ゚∀゚)「入るぞー」


ツンを動かせるのは良くないと思い、玄関の前でそう叫ぶと勝手に入っていった。


( ゚∀゚)「ほらよ、風邪薬」


ソファーでぐったりしているツンに風邪薬を手渡す。


ξ;゚听)ξ「あ、お礼なんて言わないんだからねッ!」

(;゚∀゚)「礼ぐらい言えよ……あと、ポカリとひえピタも買ってきたからな」

ξ;゚听)ξ「……ありがとう」

( ゚∀゚)「じゃあちょっとお粥でも作るから、台所借りるぜ?」

ξ;゚听)ξ「うん」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:44:43.23 ID:Uwk/Ynzg0
〜〜

( ゚∀゚)「ジョルジュの3分クッキング〜」

( ゚∀゚)「漢の料理に必要なのは気合と気合、あとは気合だ!」

( ゚∀゚)「まず、適当に材料を準備だ! 勘を働かせろ!」

( ゚∀゚)「したら、適当に鍋にぶっ込め! 勢いが大切だ!」

( ゚∀゚)「グツグツ〜グツグツ〜 火力は『適当』だ!」

( ゚∀゚)「で、適当に味付けして完成だ! 簡単だね!」

〜〜



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:48:42.81 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

ジョルジュが何やらお粥を作っているみたいだが、何とも不安だった。
アイツが料理してるところなんて見たことが無い…

しかしジョルジュはその心配をよそに、湯気の出ている小さなお鍋を持ちながら、
意気揚々とリビングに戻ってきた。


( ゚∀゚)「出来たぞ〜」


ジョルジュはテーブルの上に鍋敷きを敷き、そのお鍋を上に置いた。


( ゚∀゚)「さて、食え」

ξ;゚听)ξ「う、うん」


私は起き上がってスプーンを取り、恐る恐る一口食べた。


ξ;゚听)ξ「…おいしい……」

( ゚∀゚)「だろ? これが男の料理ってやつだよ」


見た目は若干アレだったけれど、味はとても美味しかった。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:51:43.09 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

( ゚∀゚)「ふぃ〜、じゃあ俺帰るな」


食器を洗い終え、俺はソファーに横になっているツンに言った。


ξ;゚听)ξ「あ、うん……ありがとうね」

( ゚∀゚)「良いってことよ。じゃあ何かあったら電話してくれな。じゃ」


外は星が綺麗だった。


( ゚∀゚)「さて、遅くなっちまったな。とっとと帰ろ」


愛車のキックを蹴りエンジンをかける。
少しエンジンが冷えていたが、構うことなくクラッチを繋ぎ、家まで夜道を急いだ。

ババババァァ――――――



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:54:43.50 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

現国の授業で教わったことだが、現代の『優しさ』と戦前までの『優しさ』というものは違うらしい。
現代では『他者にあまり立ち入らないこと』が優しいらしい。
それに対し、戦前までは『自己犠牲』が優しさとされていた。
誰かのために何かをしてあげようという優しさ。

まあ、ジョルジュが帰ったしまった後の家は何だか寂しかった。


ξ;゚听)ξ「はぁ……」


弱っているときにそのジョルジュの古風な優しさに触れてしまった。
その優しさは私の心を惹きつけて、そして過去の失敗を思い出させた。

今でも私はジョルジュが好きだ。


ξ;゚听)ξ「……どうにかしたいわ」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:57:43.52 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

キーンコーンカーンコーン

川 ゚ -゚)「あれ、今日はツンが居ないぞ。どうしたんだ?」


授業が始まったというのに、ツンの姿が無い。
どうしたのだろう。風邪でも引いたのだろうか。


川 ゚ -゚)「ふ〜む、ジョルジュ君にでも聞いてみるか」


私はツンの幼馴染みであるジョルジュ君なら理由を知っているかもしれないと思い、
授業が終わったら聞きに行くことにした。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:00:42.87 ID:Uwk/Ynzg0
キーンコーンカーンコーン

川 ゚ -゚)「やあジョルジュ君、今日ツンが休んだ理由を知らないか?」

( ゚∀゚)「あ、クーさん。ツンなら風邪で休んでますよ」

川 ゚ -゚)「そうか、解った。ありがとう」


風邪か。後で見舞いにでも行くとしよう。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:03:52.34 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

('A`)「ようジョルジュ、お前とクーさんが話してるなんて珍しいな」

( ゚∀゚)「ドクオ。ん〜、そうだな」

('A`)「で、今日おまえ放課後暇か? 暇なら峠行こうぜ」

( ゚∀゚)「いや、心配だからツンのところ行ってくるわ」

('A`)「そうか…じゃあまたにするさ」

( ゚∀゚)「あぁ、すまねぇな」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:06:43.08 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

ξう听)ξ「ぅ〜ん……」


朝10時、目が覚めたら自分の部屋のベットにいた。
昨日、ソファーで横になったときから記憶が無い。
きっと寝てしまって、両親が部屋まで運んでくれたのだろう。

とりあえず起き上がって着替える。
体調は、一晩ゆっくり寝たら完全に回復していた。


ξ゚听)ξ「……はぁ」


体調は回復したが、どうにも気持ちが沈んでいる。
何でだかは解っている。原因はジョルジュのことだ。

しばらくボーっとしていたら、11時半になっていたので昼食の用意をすることにした。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:09:43.62 ID:Uwk/Ynzg0
ジュー

体調は戻っていたので、冷蔵庫にあった適当な材料で簡単な野菜炒めを作ることにした。
どうにも料理は苦手で、本当に簡単なものしか作れない。
ジョルジュは何であんなに料理が出来たんだろう…


ξ゚听)ξ「はぁ……」


ジョルジュのことを考えたらまた溜息が出た。
これだけ溜息をついてしまったんだから、
私にはもう幸せが残ってないかもしれないわね…


ピンポーン ピンポーン

ξ゚听)ξ「? 宅急便かな?」

ガチャ

川 ゚ -゚)「やあツン、調子はどうだい?」



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:12:42.60 ID:Uwk/Ynzg0
ξ;゚听)ξ「ク、クー!? アンタ学校はどうしたの!?」

川 ゚ -゚)「つまらないからフけてきた」

ξ;゚听)ξ「フけて来たって……」

川 ゚ -゚)「お、いい匂いがするな。これから昼食かい?」

ξ゚听)ξ「うん」

川 ゚ -゚)「丁度良かった。実は昼飯も食べないで来たのでな。ご馳走させてもらうぞ」

ξ゚听)ξ「わかったわ」


私に続いてクーが家に上がる。


ξ゚听)ξ「あと少しで出来るから、ちょっと待っててね」

川 ゚ -゚)「あぁ、すまないな」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:15:48.21 ID:Uwk/Ynzg0
野菜炒めをお皿に盛り付け、2人分の食器を取り出す。


ξ゚听)ξ「あ、クー、運ぶの手伝って」

川 ゚ -゚)「把握した」


リビングのテーブルに料理と食器を置き、ご飯をお茶碗に盛る。


川 ゚ -゚)「お、うまそうじゃないか」

ξ゚听)ξ「そう? じゃあいただきます」

川 ゚ -゚)「いただきます」

ξ゚听)ξ「……どう?」

川 ゚ -゚)「うん、美味しいぞ」

ξ゚听)ξ「本当に? 良かった」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:19:32.87 ID:Uwk/Ynzg0
クーは食事中に喋ることを嫌うので、その後は黙々と食べていた。


川 ゚ -゚)「ふぅ〜、ご馳走様」

ξ゚听)ξ「お粗末様。じゃあ食器片して来るね?」

川 ゚ -゚)「いや、いい。私がやるよ」

ξ゚听)ξ「いいよいいよ、すぐ終わるから。ちょっと待っててね」

川 ゚ -゚)「そうか、すまないな」


私は食器を持って、キッチンに行った。


川 ゚ -゚)「ときにツン」


洗い物をし始めた私の背中にクーが話しかける。


川 ゚ -゚)「妙に元気が無いのは風邪のせいなのかい?」

ξ゚听)ξ「……クーには敵わないわね……あのね――――



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:21:44.49 ID:Uwk/Ynzg0
――――

川 ゚ -゚)「なるほどね。そんなことがあったのか」

ξ゚听)ξ「私は今でもジョルジュのことが好きなのよ…でも、一度断っちゃってるのよね」


洗い物を終え、私はリビングに戻りソファーのクーの横に座る。


ξ゚听)ξ「ジョルジュは今でも私のことが好きかどうかはわからないし……」

川 ゚ -゚)「なら、直接ジョルジュに聞いてみればいいじゃないか」

ξ゚听)ξ「そ、そんなこと出来ないよ」

川 ゚ -゚)「そうか? というか私ならそんなことする前にすぐ告白するがな」

ξ゚听)ξ「無理だよ……恥ずかしくなって、また変なこと言っちゃうよ」

川 ゚ -゚)「そうか……まあ、その素直になれないところがツンの可愛いところなんだよな」



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:24:43.30 ID:Uwk/Ynzg0
そう言うと、急にクーが真剣な顔をして私の顔を見つめた。


川 ゚ -゚)「しかしツン、それじゃあ何時まで経っても解決しないぞ?」

ξ゚听)ξ「うん……」

川 ゚ -゚)「好きなら、その気持ちをぶつける以外道は無いと私は思う」

ξ゚听)ξ「……わかったよ、クー。私がんばってみるわ!」

川 ゚ -゚)「それは良かった。応援しているよ」



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:26:42.93 ID:Uwk/Ynzg0
川 ゚ -゚)「じゃあ、そろそろ私は帰るよ。明日は学校に来れるかい?」

ξ゚听)ξ「うん、もう体調は万全だもの」

川 ゚ -゚)「そうか、じゃあまた明日な」


そう言って、クーが玄関のドアノブに手を掛けた、その時だった。


ピーンポーン

ξ゚听)ξ「? 誰だろう?」

川 ゚ -゚)「開けるぞ?」

ガチャ

( ゚∀゚)「ようツン…あれ、クーさん? 何でこんな時間にクーさんが?」



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:28:42.51 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

俺は、授業が終わってすぐにツンの家に来た。
だから、ここでクーさんに会ったのは驚いた。


川 ゚ -゚)「ジョルジュ君……私は信じているぞ」


クーさんは俺の質問を完全に無視し、俺の肩を叩いてそう言った。


川 ゚ -゚)「じゃあツン、頑張れよ!」


それだけ言って、クーさんは長い黒髪をなびかせながらスタスタと行ってしまった。


(;゚∀゚)「なんだったんだ?」



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:31:13.92 ID:Uwk/Ynzg0
靴を脱いで家にあがり、リビングに向かう。
ツンはどうやら元気そうなので良かった。


( ゚∀゚)「クーさんがこんな時間になんで此処にいたんだ?」

ξ゚听)ξ「午後の授業サボってお見舞いに来てたのよ」

( ゚∀゚)「あの真面目そうなクーさんが?」

ξ゚听)ξ「クーが真面目か……そう見えるけど、クーって実はかなり自由人なのよ」

( ゚∀゚)「へぇ〜、人は見かけによらねぇモンだな。で、お前体調は大丈夫なのか?」

ξ゚听)ξ「うん……」

( ゚∀゚)「?」


ツンの顔がどんどん赤くなっていく。
どうしたんだろう? まだ体調が良くないのか?



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:34:08.18 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

私は腹を決めた。今ここでジョルジュに告白しよう。


ξ////)ξ「あ、あのね……私……」


「ジョルジュのことが好きなの」って言うだけだ。
たったの13文字だ。


ξ////)ξ「アアア、アンタのことが……」

( ゚∀゚)「??」


好きなの好きなのスキなのすきなの…



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:36:43.48 ID:Uwk/Ynzg0
ξ////)ξ「アンタのことが……す…」

( ゚∀゚)「? 俺のことが?」

ξ////)ξ「アンタのことが……すすす…」

ξ#゚听)ξ「すき焼き食べたいっていってんのよッ!!」

(;゚∀゚)「エッ!?」


あああぁぁぁぁぁぁ……またやっちゃった…………
もう嫌だ……いっそのこと死んでしまいたい……

なんだか、また体調が悪くなってきた……



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:38:42.71 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

キーンコーンカーンコーン

川 ゚ -゚)「む、ツンの奴今日も来ていないじゃないか」


今日は来ると言っていたのに、どうしたのだろうか。
まさか、昨日告白してふられたのか?
で、そのショックで今日は休んでいるとか?


川 ゚ -゚)「こんなところで授業を受けている場合ではないな」

川 ゚ -゚)「先生」


私は教壇に立っている教師に向かって真っ直ぐ手を挙げた。


( ´∀`)「おや、クーさん。どうしたモナか?」

川 ゚ -゚)「ちょっと体調が悪いんで保健室行って来てもいいですか?」

( ´∀`)「わかったモナ。気をつけるモナよ」

川 ゚ -゚)「ありがとうございます」



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:40:44.08 ID:Uwk/Ynzg0
プルルルルルル

適当な人の居なさそうなところを見つけ、ツンに電話をかける。


ξ )ξ《もしもし……》


ツンの声が枯れている。まるでずっと泣いていたかのように。


川 ゚ -゚)「もしもしツン、どうしたんだ今日は?」

ξ )ξ《あのね……カクカクシカジカで……》

川 ゚ -゚)「そうか……でも良かった」

ξ )ξ《よかった?》

川 ゚ -゚)「だって、まだ告白すらしていないんだろう?
     私はてっきり、ふられたショックで休んでいるのかと思っていたよ」

ξ )ξ「……」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:42:43.48 ID:Uwk/Ynzg0
川 ゚ -゚)「ならまた告白すればいいじゃないか。悩むことじゃないだろう?」

ξ )ξ「無理、だよ……」

川 ゚ -゚)「昨日に+αの勇気があれば大丈夫だよ」

ξ )ξ「無理よ……昨日で精一杯よ……」

川 ゚ -゚)「そうか……まあ、後でまたツンの家に行くよ」

ξ )ξ「うん……楽しみにしてるよ」

川 ゚ -゚)「じゃあ」


そう言うと、電話を切った。


川 ゚ -゚)「ふぅ、都合よくジョルジュ君の方から告白してくれれば良いのに」



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:45:42.35 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

('A`)「『アンタのことがすき焼き食べたいのよ』?」

( ゚∀゚)「どういうことなんだ? 単にすき焼き食いたかったのか?
     しかも今日も学校来てないし」

('A`)「ていうか、何で全くモテない俺に聞くんだよ! いくらでも他に適任が居るだろ!」


でもあれだよな、つまりそういうことなのか?
いや、モテない俺の考えがあっているかどうか解らないけど。
でも、そういうことだよな…


('A`)「うーん…それはアレだよ、つまり…」

( ゚∀゚)「お、なんだ? わかったか?」

('A`)「つまり、ツンさんはお前のことが好きだってことじゃないか?」

( ゚∀゚)「ハァ? お前頭おかしいんじゃないか?」

('A`)「いや、俺には告白する勇気が足りなくて、誤魔化したようにしか思えん」

( ゚∀゚)「はぁ……やっぱお前に聞くべきじゃなかったな」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:47:46.83 ID:Uwk/Ynzg0
ジョルジュが呆れたような顔をしている。
お前が俺に聞いてきたんだろう、ボケが。


( ゚∀゚)「それだけは無ェって言えるんだよ」

('A`)「何でだよ」

( ゚∀゚)「俺は昔、ツンに1回告白してふられてるんだよ」

('A`)「そうだったのか…いつの話よ?」

( ゚∀゚)「ん〜、確か中2だった気が…」

('A`)「へぇ〜…で、お前は今でもツンさんのこと好きなのか?」

( ゚∀゚)「ん? 好きだよ。ていうか何でお前に言わなきゃならねェんだよ」

川 ゚ー゚)「ハハハ、これはいいことを聞いた」

(;゚∀゚)('A`;)「「!?」」



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:50:09.50 ID:Uwk/Ynzg0
俺とジョルジュが振り返るとそこには、口の端をほんの少しニッっとさせるだけという、
何とも無表情な笑顔をしてるクーさんが立っていた。


川 ゚ -゚)「ちょっと面白そうな会話が聞こえてきたのでな。
     私も混ぜてくれないかい?」


そう言うやいなや、クーさんは近くの椅子を引き寄せ、座った。


川 ゚ -゚)「まず、ドクオ君。名推理だ」

('A`)「え? じゃあやっぱり…」

川 ゚ -゚)「ああ、ツンは昨日ジョルジュ君に告白しようとしたのだよ」

(;゚∀゚)「!? mjsk!?」

川 ゚ -゚)「ああ、マジだ。彼女の性格は君もよく知っているだろう?」

(;゚∀゚)「まぁ……でも俺は1回ふられてるんだぜ?」



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:52:12.82 ID:Uwk/Ynzg0
(;゚∀゚)「まぁ……でも俺は1回ふられてるんだぜ?」

川 ゚ -゚)「つまり、その時も今回と同じだったということだ。
     ツンはジョルジュ君のことが好きだったが、
     恥ずかしくてうっかり心にも無いことを言ってしまった、というわけだ」


クーさんは腕組みしながらジョルジュを見つめている。
ていうか、クーさんてこんな性格だったの?


川 ゚ -゚)「で、ジョルジュ君。君はツンが好きなんだな?」

(;゚∀゚)「あ、あぁ…」

川 ゚ -゚)「なら君に頼みがある。すぐにもう一度ツンに告白してくれ」

(;゚∀゚)「はぁ」

川 ゚ -゚)9m「ツンは二度も失敗したことのショックで今日も学校に来れなかったんだ。
      君しか今のツンを救える者はいない」



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:55:07.96 ID:Uwk/Ynzg0
クーさんはジョルジュを指差し、いっそう語気を強めて言う。
いや、『語気を強めて』といってもそれは雰囲気的なもので、
実際にはほんの少し声が大きくなっただけだが。


(;゚∀゚)「ツンは……本当に俺のことが好きなのか?」

川 ゚ -゚)「む、何度も言っているだろう。ツンはお前のことが大好きだ」


ジョルジュが何か決心したような顔をした。


( ゚∀゚)「なら、告白するのに躊躇する必要は無ェな。
     それがツンの迷惑にならねェなら、望むところだ!」

川 ゚ー゚)「お、やってくれるか。そういう度胸のある男、私は好きだぞ」


クーさんがまたあの笑顔になった。



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:57:52.80 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

ξ )ξ「……」


私が学校に行くよりも早く、両親が仕事に行ってしまうのをいいことに、
今日も学校を休んでしまった。


ξ )ξ「もうヤダ……」

ピリリリリリリ

ξ )ξ「電話……」

カチッ

川 ゚ -゚)《もしもし、ツン。いい知らせだぞ》

ξ )ξ「クー……いい知らせ?」



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:59:45.14 ID:Uwk/Ynzg0
     *     *     *

川 ゚ -゚)「ジョルジュ君が今日君に告白すると言っている」

ξ;゚听)ξ《えッ!?》

川 ゚ -゚)「彼の方から告白してくるなら大丈夫だろう?」

ξ゚听)ξ《でも、怖いよ……前それでも断っちゃったんだもの……》

川 ゚ -゚)「そこはもう何とかするしかない。後は君次第なんだぞ」

ξ゚听)ξ《うん……》

川 ゚ -゚)「ええい、気合を入れろツン。私は応援しているぞ」

ξ゚听)ξ《……わかったわ、クー。私頑張るわ》

川 ゚ -゚)「そうか! 頑張れよ! じゃあ」


カチッとボタンを押し、通話を切った。

向こうから告白してくるのに、されるほうが『頑張る』なんて、
なかなか面白いな。
普通なら『頑張る』立場はジョルジュ君だろうに。


川 ゚ー゚)「フッ」



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:01:42.76 ID:Kklv5mwp0
     *     *     *

キーンコーンカーンコーン

( ゚∀゚)「じゃあ、俺行くぜ!」

('A`)「おう、頑張りぃな」

( ゚∀゚)「おうよ、じゃあな」

('A`)「あぁ、また明日」


ドクオにそれだけ言うと、鞄を引っ掴んで俺はツンの家まで急ぐ。

まだクーさんの言っていたこと全ては信じられない。
それでも、もう一度勇気を出そうじゃないか。
俺はツンが好きだ。そこには一つだって嘘は無ェ。

ツンの家に着いた。チャイムに指をのばす。


ピンポーン



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:04:54.53 ID:Kklv5mwp0
ガチャ

( ゚∀゚)「よ、ようツン!」

ξ゚听)ξ「ジョ、ジョルジュ……は、入って」

( ゚∀゚)「お、おう」


何故だかツンの顔が赤い。
促されるままに家にあがり、いつも通りリビングに入った。


( ゚∀゚)「体調はもう大丈夫なのか?」

ξ゚听)ξ「う、うん。ちょっとコーヒーでも淹れてくるねッ!」


ツンが妙に落ち着き無くそわそわしている。
畜生、おかげで緊張してきたじゃねェか。
そういえば、前告白したときは心臓が溶けて無くなるかと思ったな。



90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:07:12.72 ID:Kklv5mwp0
一生分の勇気を使って告白した中2の秋。
だけど無残にもふられてしまい、それでも今までの関係を維持しようと、
翌朝また勇気を使う羽目になった。
そのときの勇気のおかげで今のこの関係がある。

正直メッチャ怖ェ。
また駄目だったら、そのときの勇気を無駄にしてしまうだろう。

でも、やっぱり幼馴染じゃ嫌なんだ。
もう勇気が残ってないなら、来世の分の勇気も使おうじゃねェか。


( ゚∀゚)「なあ、ツン」

ξ;゚听)ξ「な、何?」


コーヒーを淹れて持ってきたツンに向かって、俺は切り出した。


( ゚∀゚)「唐突ですまねェが……」



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:09:43.45 ID:Kklv5mwp0
     *     *     *

( ゚∀゚)「俺は……お前のことが好きだ。付き合ってくれッ!」

ξ;゚听)ξ「ジョ、ジョルジュ……」


自分の顔が真っ赤になっていくのがわかる。
泣きそうなぐらい嬉しい。


ξ////)ξ「わ、私も……」


アンタのことが好きなの……
あぁ、駄目、また変なこと言いそう……

でも、今度こそ勇気を出さなきゃ


ξ////)ξ「私も…アンタのことが……


        好きなの――――



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:11:43.41 ID:Kklv5mwp0
     *     *     *

――――キーンコーンカーンコーン

ξ゚听)ξ「でね、ジョルジュったらね…」

川 ゚ -゚)「それはヨカッタヨカッタ」

ξ゚听)ξ「……でね……で……がね……なの」


ジョルジュ君の告白、いやツンの受け入れか?は成功したようだ。
実によかった。
で、私は惚気話を聞かされているというわけだ。


川 ゚ -゚)「いやーヨカッタヨカッタ」

ξ゚听)ξ「それで……で……なの」


はぁ…参った。
それにしてもツンは嬉しそうだ。



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:13:42.91 ID:Kklv5mwp0
川 ゚ -゚)「……私も彼氏でも作ろうかね」

ξ゚听)ξ「えッ!?」


私がボソッと言った一言をツンに聞かれていた。


川 ゚ -゚)「いや、君の惚気話を聞いていたらね」

ξ////)ξ「の、惚気話なんかじゃ…」


そのとき、教室の戸がガラッと開いた。


( ゚∀゚)「ツーン、帰ろうぜー」

ξ////)ξ「あ、う、うんッ! じゃあクー、また明日」

川 ゚ -゚)ノシ「あぁ、また明日」



101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:15:43.04 ID:Kklv5mwp0
また明日も惚気話を聞く羽目になるのかね、と思いながら彼女に手を振った。
彼氏か……と思いながら天井を見上げていたら、
何か可笑しな笑い声が廊下から聞こえてきた。


('A`)「フヒヒヒヒwwwwwwwwww」


廊下に目をやると、ドクオ君が笑いながら廊下を歩いていた。
そういえば、今回のことには彼の貢献もあったのだったな。


川 ゚ー゚)「でも……彼は無いな。キモすぎる」

从 ゚∀从「おう、ドクオ! 帰ろうぜー」

('A`)「おう! 今日何処行く?」


突如現れた美女がドクオと共に行ってしまった。
私は呆気に取られながらそれを見ていた。


川; ゚ -゚)「不思議なこともあるもんだ……」


       ――( ゚∀゚)は一度ふられているようです・完――



107: ◆AP.EK6HqUs :2007/06/03(日) 00:18:00.98 ID:Kklv5mwp0
以上で終わりです。
読んで下さった方、支援して下さった方、本当にありがとうございました。

書くスピードを意識して、書き出しだけ決めて後は思いつきで書いていったら、
読みきりの少女マンガみたくなりました。

もし質問があったら答えます。

111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:19:50.06 ID:j6ywM5pCO
Q.これの続編を書く予定はありますか?

114: ◆AP.EK6HqUs :2007/06/03(日) 00:21:00.10 ID:Kklv5mwp0
>>111
この続きを書くなら最低の続きを書きたい。ただネタが無いから書けないが。

118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:22:46.54 ID:A3iEosfg0
>>114
最低の作者か…!



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