三丁目の('A`)ドクオ達のようです
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:36:09.41 ID:WTf1kWKzO
- 今日は朝から雨だ。
ここ数週間、まともに降っていなかったから、
野良連中にはまさに恵みの雨となるだろう。
午後から止みそうだし、外出はそん時気が向いたらでいいか。
川 ゚ -゚)『…………』
今日は仕事は休みで、クーは家にいる。
パソコンに向かい何かを熱心に読みふけっていた。
川 ゚ -゚)『……何か食べよう』
彼女は席を立ち、床に寝そべっている俺をまたいで台所の棚から何かを取り出す。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:37:43.69 ID:WTf1kWKzO
- ('A`)「お、この音……ポテチか。俺にもくれよ」
川 ゚ -゚)『目ざといな、開けてもいないのに』
足にすり寄る俺を見下ろし、驚いたような呆れたような視線を向けてくる。
('A`)「良いからくれよ、一枚。一枚でいーからー」
川 ゚ -゚)『分かった分かった』
席に戻り、袋を開けようとする。
川 ゚ -゚)『よっ、と……あ』
勢い余って、盛大に中身を吹き飛ばしてしまった。
散ったチップスの一枚が、俺の方に向かってくる。
('A`)「よっ」
川 ゚ -゚)「おおっ」
俺は口で見事に受け止めると、そのままバリボリ噛み砕いた。
うまい、コンソメか。
川 ゚ -゚)「凄いぞ、クロ助。犬みたいだ」
それ全然誉めてない。
第二話 五月二十六日
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:39:26.67 ID:WTf1kWKzO
- ('A`)「やー、今日は予報通りだったな」
天を見上げ、雲の切れ間から太陽が覗くのを確認する。
小便のついでに外に出てきてみたが、適度に涼しくて良い感じだ。
濡れた地面の感触だけはいただけないが、まぁ久しぶりなだけに新鮮ではある。
('A`)「んで、広場に来てみたは良いが。案の定誰もいねーな」
周囲を見回し、ぽつりと呟く。
広場には雨宿りできる場所は無い上に、水たまりや濡れた地面で座ることができないからだ。
いつものように各々どこかで寝ているのだろう。
('A`)「って、ん?ミルナか」
( ゚д゚ )「あ、どうもです」
広場野営組のうちの一匹、ミルナが塀の隙間から姿を見せる。
口元を拭いている辺り、どこかで餌でも食べてきたのか。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:40:51.50 ID:WTf1kWKzO
- ('A`)「うっす。ショボンとかブーンとか知らね?」
( ゚д゚ )「さあ……今の時期はみんなあちこち出回ってますからね。雄なんか特に」
('A`)「それもそうか」
ショボンも最近は雑談に参加せず、どこそこで精力的に嫁探しを行っている。
別にあいつだけじゃない、普通の雄なら誰だってそうだ。
('A`)「お前は行かねーの?」
( ゚д゚ )「はは、今から行くとこです。早く見つかって欲しいんですけどね。
それじゃあ」
('A`)「おう、またな。頑張れよ」
ミルナを見送り、またしても一匹になる。
広場の隅でぼーっとしてるのも手だが……
('A`)「あそこ行くか。暇だし。ブーンいるだろうし」
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:42:11.41 ID:WTf1kWKzO
- ('A`)「お邪魔しマンイーター……あれ、ブーンいねーの?」
屋敷の垣根をくぐり縁側へと向かった俺は、思わずそうこぼしてしまった。
縁側には、件のお嬢さまが一匹でちょこんと座り込んでいる。
ξ゚听)ξ「悪かったわね、私だけで」
('A`)「あー……いや、そんなことは無いのよ。うん、今のは言葉のあやで。
じゃ、そゆことで……」
ξ゚听)ξ「こら、待ちなさいよ」
('A`)「へ?」
ξ゚听)ξ「せっかく来たんだし、ゆっくりしてったら?」
('A`)「…………」
ξ゚听)ξ「あー、言っとくけど馬鹿な勘違いとか止めてよ、寒いから。
単純に暇なだけ」
ふむ。一見変わらないが、少し態度が軟化してるような気がする。
ちょっとは気を許してくれてるってことだろうか。いや……
('A`)「まあ、良いか。そんじゃ邪魔するわ」
俺は縁側に飛び乗ると、ツンとはある程度距離を置いた所に腰を下ろす。
床は相変わらずピカピカに磨かれていた。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:44:24.21 ID:WTf1kWKzO
- ξ゚听)ξ「何か食べる?」
('A`)「いんや、イラネ。後で庭の水飲んでいい?」
ξ゚听)ξ「別にいいけど」
('A`)「d」
ブーンが俺を誘い足繁くこの屋敷に通っているので、彼女とは既に結構話したが、
よく考えたらブーン抜きでこうして話をするのは初めてだ。
('A`)「で、ブーンはどこ行ったんだ?」
ξ゚听)ξ「雀を持ってくるって飛び出してった」
('A`)「……?」
あいつ、雀取りは下手くそなはずだったが。
彼女に良い所でも見せようというのだろうか。
ξ゚听)ξ「鳥が羨ましいって言ったら、捕ってくるって急に」
ブーン、お前なんかそれ違くね?
('A`)「……へえ。鳥が羨ましいのか?」
ξ゚听)ξ「ええ、そうよ」
ツンは見事な毛並をなびかせながら空を見上げ、
まぶしそうに目を細める。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:45:45.66 ID:WTf1kWKzO
- ξ゚听)ξ「鳥って空飛べるじゃない。あんなに小さいのに」
その瞳からは、はっきりと憧憬の念が感じ取れた。
いつもこの縁側から、電信柱を飛び交う雀たちなんかを眺めているのだろうか。
('A`)「…………。虫はさらに小さいけど飛んで」
(#)A`);.「モルスァ!!」
ξ#゚听)ξ「あんた、デリカシーが無いって言われたことは?」
馬鹿め、あるに決まってんだろうが。
(#)A`)「この距離を一瞬で詰めて右ストレートとは、なかなかやるな」
ξ゚听)ξ「説明乙。
私はね、もっと高い所を……大空を飛んでる鳥たちが羨ましいのよ。周りに一切何も無い、ただただ広くて青い空を」
('A`)「あいつらはあいつらで、結構辛いんだぜ?」
ξ゚听)ξ「分かってるわよ。でも、鳥達はここから見える先の空も知ってる。
この風景の向こうにも、本当にこの空がずっと続いてるのかどうか、私は……知らないもの」
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:47:44.23 ID:WTf1kWKzO
- ('A`)「……」
ξ゚听)ξ「あんた、最初に庭に入った時言ったわよね。『大したもんだ』って。
私には、この庭がどのくらい大したものかも分からない。これ以外の『庭』を、私は見たことが無いから」
('A`)「…記憶力いいな」
ξ゚听)ξ「うちの人は私を可愛がってくれるけど、外には絶対出してくれない。
私の外に対する憧れは、募っていくばかりだった。そんな時にいきなり忍び込んできたのが……」
('A`)「あいつか」
ツンはこくりと頷き、垣根の穴へと視線を移す。
ξ゚听)ξ「何だかフラフラで哀れだったから餌を恵んでやったら、それからしょっちゅう来るようになって」
('A`)「だろうな」
ξ゚听)ξ「これまで他の猫と話したことなんて無かったから、あいつの話は純粋に楽しかった。
野良で生きるのは辛いはずなのに、本当に楽しそうに笑うんだもの」
なるほど。
ブーンがツンに惹かれているように、ツンもブーンに惹かれている訳か。
('A`)(ちょっと、互いのベクトルは違うみたいだけどな)
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:49:27.44 ID:WTf1kWKzO
- ξ゚听)ξ「あんた、もともとは野良で今は飼い猫なのよね。私よりは自由みたいだけど」
('A`)「そうだな。放し飼い状態だ」
ツンは吊り上がった瞳を細めながら、俺の方をじっと見つめてくる。
純粋無垢で、まっすぐな眼。
正直、俺にとっては居心地が悪くなる類の視線だ。
ξ゚听)ξ「外の世界って、正直どうなの?あんたは腕を怪我したから、飼い猫になったの?」
ああ、そうか。
ツンは、きっとこういう話をしたくて、俺たちを呼んだんだな。
('A`)「……そうだな、まずは後者の質問に答えるか。
成り行きだよ。死にかけてた俺を酔狂な飼い主が拾って、そのまま今まで来た感じ。
居心地良いし飯だってもらえるから、わざわざ逃げようとは思わんが」
ξ゚听)ξ「そう……」
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:50:52.82 ID:WTf1kWKzO
- ('A`)「次に、前者。
どうもこうもないさ。天国でもなければ地獄ですらない、ただの掃き溜めだ。
自由なんて有って無いようなもんよ」
ξ゚听)ξ「……」
('A`)「がっかりしたか?だが、お言葉に甘えて正直に言わせてもらう。
俺は猫にとって一番の幸せは、人間に飼われることだと思ってる」
ツンの瞳からは失望、憤慨、反抗、そういった感情がありありと読みとれた。
だが、せめてこの程度のことは言っておかねばならないだろう。
俺は今、飼い猫としてこの場に居るのだから。
('A`)「野良はけして自由なんかじゃない。人間の生活圏の隙間で、細々と生きてるだけだ。
一ヶ月後、下手すりゃ来週まで生きてられるかどうかも分からない」
これは脅しでも何でもない、本当のことだ。
今俺がこうして生きてられるのは、ひとえに幸運だったからに他ならない。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:52:50.31 ID:WTf1kWKzO
- ξ#゚听)ξ「……そんなの、分かってるわよ。
『飼われて』ないんだから、自分で何とかしていかなきゃいけないのが野良なんでしょ」
('A`)「野良だけじゃない。外に出た時点で、俺たちは誰にどう殺されようと文句は言えんぞ。
駆除で死ぬか虐待で死ぬか、もしくはそれ以外で死ぬか……そういう世界だ」
ξ#゚听)ξ「っそ……」
('A`)「他人様に迷惑かけてんだから、殺されて当然だよな。
例えばお前の飼い主が、俺を見つけたとする──」
飼い主と言われて、ツンが明らかな動揺を見せた。
('A`)「そんな時、飼い主のとる行動は三パターンある。
追い出すか、殺すか、保健所に送るか、だ」
ξ#゚听)ξ「違う! うちの人はそんなことしない!!」
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:54:10.15 ID:WTf1kWKzO
- ツンは今にも食ってかかりそうな勢いで俺を睨みつけてくる。
だが、その程度で怯む俺じゃない。
('A`)「猫を飼ってるからって全ての猫を可愛がるとは限らない。
あんた、ちょっと認識甘いんじゃないのか?外を見たことも無いんだから当然っちゃ当ぜn」
ξ#゚听)ξ「黙れぇええええええっ!!!!」
ツンは怒りも露わに飛びかかり、俺に体当たりをかます。
俺はされるがままに吹っ飛ばされ、組み付かれた状態で滑りの良い縁側をゴロゴロ転がった。
ξ#゚听)ξ「分かったようなこと言わないでよ!! 見たことも無い癖に──」
('A`)「確かに、見たことも無い。でも、これくらいは分かるぜ」
('A`)「あんたの飼い主が、あんたを大事にしてる事……くらいは」
ξ#゚听)ξ「……!」
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:56:05.53 ID:WTf1kWKzO
- ツンの下から這い出し、全身の毛を逆立てている彼女を静かに見据える。
('A`)「言いたい放題言っちまったけど、俺は何も、来るなっつってんじゃないんだ。
それでもあんたが来たいって言うんなら、歓迎するよ。
縄張りなんてまだ確保できないだろうから、俺んとこの広場を貸してもいい」
('A`)「でもな」
('A`)「あんたの飼い主が、何であんたを外に出さないか、それも少しは考えてやって欲しい」
ξ )ξ「…………」
('A`)「俺の言いたいことは、それだけだ。……邪魔したな」
俺はツンから視線を外すと縁側を降り、垣根の穴へと向かう。
恐らく彼女は、まだこの穴をくぐったことは無いだろう。
外への恐怖を押しのけ、死の危険を冒し、飼い主の愛を捨てる。
それだけの価値が、この穴の先にあるのだろうか。
('A`)「あ、そうだ」
('A`)「良かったら、あいつと仲良くしてやってくんないかな。出るにしろ、出ないにしろ。
馬鹿だけど、良い奴だから」
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:58:03.94 ID:WTf1kWKzO
- 返事は返ってこない。
俺は気にせず垣根の穴をくぐり、屋敷の裏を回……
( ω )「…………」
ろうとした所で、足を止めた。
目の前には、雀をくわえた白いシャム猫。
('A`)(オッオゥ、シーット……)
俺としたことが、会話に夢中で気づかなかったようだ。やべ、さっきの良い奴発言とか凄い恥ずかしいんだけど。
('A`)「……ごめんな、お前の恋路を邪魔するつもりじゃあ無かったんだよ」
( ω )「ははっへふほ(分かってるお)」
ブーンはふがふが口を動かし、俺の横を素通りする。そのまま無言で、垣根に潜り込んでいった。
ああ、これはやっちまったかも分からんね。
('A`)「……」
垣根をしばらく見つめて、そこから立ち去った。
ブーンがくわえていた雀は、見たところ無傷で気絶しただけの状態だった。
('A`)(知らん間に、上手くなったんだな)
俺は妙な感慨に耽りながら、とぼとぼと路地裏に紛れていった。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 21:59:50.03 ID:WTf1kWKzO
- ( ><)「あんまり良い人が見つからないんです! 困ったんです!」
( ゚д゚ )「お前、結構高望みしてるんじゃないか?俺も他人のこと言えないんだけどな」
( ^Д^)「つーかよ、お前ら必死すぎwwwww
もっと俺みてーにどーんと構えとけば雌連中なんてマジチョロいっつのwwwwwwwwww」
(´・ω・`)「プギャーの言葉は良くないけど、同意すべき部分はあるね。
やっぱり余裕って大事だよ。何事にも」
(-_-)「…………」
日だまり広場は、先ほどとは打って変わって男臭い空間へと変貌を遂げていた。
夜に向けての一時休息、というところか。
('A`)「うぃー」
( ><)「ドクオさん、こんちゃーなんです!」
( ゚д゚ )「あ、さっき振りです」
( ^Д^)「おう、なんか久しぶりじゃねーか。ちゃんと食ってんのかお前?」
(-_-)「……やあ」
俺は広場や周辺の知り合いたちに軽く挨拶を交わし、ショボンの元へと歩み寄る。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 22:01:29.91 ID:WTf1kWKzO
- ('A`)「ショボン。ちょっと……」
(´・ω・`)「ん、何だい?ついにその気になったのかい?」
('A`)「いい加減それあしらうのもマンドいんだけど、駄目かね」
(´・ω・`)「個人的にはチャーミングだと思うんだけどなぁ」
('A`)「次からは是非、そっち系の奴だけをチャームしてくれ」
ショボンを引き連れて広場の隅っこに場所を移し、コンクリートブロックの上に腰を降ろす。
日光により、そこは既に乾ききっているからだ。
('A`)「──……っつう訳なんだが」
(´・ω・`)「いやぁ、それは軽く修羅場だったね」
俺は風にそよぐ草花を眺めながら、ショボンに先ほどの顛末を話した。
('A`)「おう。なーんか余計なこと言っちまったかなーって、ちょっぴり後悔してたりな。
年は取りたくねーわ、説教臭くなってかなわん」
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 22:03:41.98 ID:WTf1kWKzO
- (´・ω・`)「ま、ドクオの気持ちは分かるよ。言ってることも十分理解できる……」
('A`)「でも?」
(´・ω・`)「……なかなか受け入れてもらえる主張じゃないよねぇ。今の彼らには、特に」
('A`)「だわな……」
水たまりの中で流れていく雲を目で追いながら、深くため息をつく。
駄目だと分かってはいても言わずにはいられない、
これが老婆心というやつだろうか。
(´・ω・`)「君は知りすぎてるんだよ、事情を。
ともすれば君の意見は、人間側に傾いてるようにも聞こえる」
('A`)「うーむ……」
(´・ω・`)「圧倒的な人間的知識、それが君の武器なのはよく知ってる。
だけどそれは同時に、君をそんなツラに固定させるほどに君を悩ませている」
('A`)「ツラはほっとけお前が言うな」
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 22:05:52.66 ID:WTf1kWKzO
- ショボンは穏やかな笑みを浮かべながら、こちらに視線を向けた。
(´・ω・`)「気を楽にして、見守ることで良くなる事態もある。
それでもし彼らが困った時には、手を差し伸べてやればいいんだよ」
('A`)「あいつら、後悔とかしねーかな?」
(´・ω・`)「しないさ。したとしても、それは彼らの問題だ」
('A`)「むう……」
(´・ω・`)「ブーンは確かに若いけど……君が思ってるほど、ヤワではないよ」
どうやら、ブーンに関してはショボンの方がよく分かっているようだ。
('A`)「かもな。俺ちぃと最近色々考えすぎてるわ、も少しリラックスしなきゃな」
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 22:07:48.11 ID:WTf1kWKzO
- (´・ω・`)「そうそう、気まぐれに生きなきゃ。猫らしく、ね」
気まぐれに猫らしく……か。
何となく、妙な深みを感じた。こういう時のショボンの言葉には、何故かしら響くものがある。
(´・ω・`)「そんなことよりさ、君コンソメ臭いんだけど」
('A`)「え、マジ?」
(´・ω・`)「何高級菓子食ってんだよ、ぶち殺すぞ」
('A`)「参ったな……コンソメ臭垂れ流しながらツンに説教してたのか俺。
シリアスなふいんき(ry台無しじゃねーか」
(´・ω・`)「だから君はモテないんだよ、デリカシーも無いって言われるんだよ」
('A`)「もうモテる必要ないし別に良いけどな。そういうあんたは調子どうなのよ」
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 22:09:20.75 ID:WTf1kWKzO
- ショボンはさっきと似ても似つかない、下世話な笑みを浮かべながら髭を上下させる。
(´・ω・`)「そりゃあもう、ズコバコとっかえひっかえさ。君のチンコを借りたいくらいだね」
('A`)「ほほう、猫のチンコも借りたいってか」
「──ケッ、よーく言うぜ!!」
(;´・ω・`)「ぐえっ!?」
声と同時、視界の隅に何かが入り込む。
とっさのことに身構える暇も無く、何者かによってショボンが吹っ飛ばされた。
('A`)「誰だ!!」
从 ゚∀从「誰だだってえ!?てめェが誰だよ!!」
えええ、いきなりそんな返しかよコイツ。
('A`)「お、俺はドクオ!この広場のぬs」
从 ゚∀从「うっそぴょーん知ってるわボケ!」
(#'A`)「……」
(;´・ω・`)「ハイン! 何故ここに……」
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 22:10:53.87 ID:WTf1kWKzO
- ('A`)「あれ、ショボン知り合いなのか?」
(;´・ω・`)「え?あ、ああ、まぁ……」
ブロックから転げ落ちたショボンは、柄にも無くうろたえている。
こんな姿を見るのは、ひょっとしたら初めてかもしれない。
从 ゚∀从「俺の名はハインリッヒ!! そこのしょぼくれ眉毛の女房だ、以後よろしくな!」
('A`)「にょーぼー!?」
今気がついたが、ハインリッヒとやらは妊娠中のようだ。
それにしては、異常に身のこなしが軽いが。
('A`)「……なぁ、お前女房いたん?」
(´・ω・`)「ち、違うよ。あれは彼女が勝手に……」
从 ゚∀从「あァ!?てめェ、相手捕まんねーからヤらせてくれって泣きながら頼んできたのはそっちじゃねェか!!」
(;´・ω・`)「泣いてないよ! って、いやそこだけじゃなくて!」
('A`)「……」
( ゚д゚ )「ほほう」
( ^Д^)「それはkwsk」
( ><)「聞きたいんです!」
(-_-)「……うん」
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 22:12:04.38 ID:WTf1kWKzO
- いつの間にか、広場の連中がぞろぞろと集まってきた。
他の野営組も、こっそり遠巻きにこちらを見つめている。
(;´・ω・`)「皆来なくて良いから! これはね、長くなるけど深い事情がa」
(#)ω゚`);;.「ワンモアセッ!!」
从 ゚∀从「あーあー嫌だね、なっさけねー真似してんじゃねェよ。
これだから雄ってのは」
( ><)「正直がっかりなんです!」
( ゚д゚ )「……いや、分かりますよ。プライドって、大事ですから」
( ^Д^)「ざまぁねえなショボンwwww勝ち組俺だけwwwwwwww」
(-_-)「……僕、見栄張らなくて良かった」
从 ゚∀从「え!?そーかそーか、皆そんなに俺の話が聞きたいのかい?
しょーが無いなぁもお、ちょっとだけよ?」
('A`)「……」
広場の隅で気絶しているショボンと、
広場の中心でギャラリー相手に長広舌をぶっているハインリッヒ。
俺が人間で右手も健在だったら、手でも合わせてやるところだが。
とりあえず、南無。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 22:13:50.41 ID:WTf1kWKzO
- ※ ※ ※
( ^ω^)「……じゃあ、そろそろ帰るお」
ξ゚听)ξ「うん、ごめんね?雀逃がしちゃって」
( ^ω^)「気にしなくて良いお、また持ってくるお」
ξ゚听)ξ「う、うん」
( ^ω^)「じゃあまた明日…………あ、ツン」
ξ゚听)ξ「何?」
( ^ω^)「ドクオのこと、嫌いにならないで欲しいお。
心配性なんだお、昔色々あったみたいだし、怪我もしてるし……だから」
ξ゚听)ξ「分かってる。確かに、あの人の言うことも正しい所はあると思うから」
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 22:14:45.22 ID:WTf1kWKzO
- ξ゚听)ξ「もっと……色々、考えてみる。ありがとうって、彼に伝えておいて。ね?」
( ^ω^)「把握したお」
『ツンちゃ〜ん?まだ縁側にいるの〜?』
(;^ω^)「やべっ、ツン、まただお!」
ξ゚听)ξ「あっ」
从'ー'从『いたいた。ツンちゃん、もう夜だよ?中でご飯食べよ〜』
ξ゚听)ξ「……うん……」
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 22:16:00.46 ID:WTf1kWKzO
- ※ ※ ※
川 ゚ -゚)『お〜と〜こだったぁら〜、ふふふふんふふ〜ふ〜』
('A`)「微妙な選曲の上に出だしだけか」
ぼそりと呟く。その呟きすら、よく響く。
俺は今、自宅内でもっとも反響の凄まじい空間……浴室にいた。
川 ゚ -゚)『相変わらず痩せてるな。もっとちゃんと食べろ、痩せるぞ』
('A`)「あれ、またビール飲んでる?」
クーはシャワーを構えると、俺の全身にまとわりつく泡を洗い流す。
川 ゚ -゚)『さあ、湯につかろうか』
('A`)「嫌じゃボケ」
川 ゚ -゚)『またか……何時になったら慣れるんだ?』
('A`)「深いんだよ、怖いっつーの」
川 ゚ -゚)『まったく……私一人で入らせるとは、いけずな奴め』
('A`)「痒いから鼻いじんないで」
浴槽からは、檜のバブの香りが漂っていた。
また、一日が終わる。
俺たちの日々に、少しずつ変化を残して。
五月二十六日 終
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