三丁目の('A`)ドクオ達のようです
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:09:50.41 ID:Hm4U1otSO
- ( ・∀・)「よう。ちょっと良いか?」
(´・ω・`)「はい、何でしょう」
モララーの性格を一言で言うなら、「情緒不安定」だった。
何かスケールの大きな事を言い放ち勝手に落ち込んでいたかと思えば、
次の日には自信満々といった表情でモナーと今後の縄張りについて議論を繰り広げていたりと、
コロコロ変わる一人称に象徴されるように、やたらと感情の浮き沈みが激しい猫だった。
( ・∀・)「聞きたい事があってな。何、そんな大層なモンじゃない」
( ・∀・)「君は今、こういう運命を辿っていて幸せか?」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「何ですか、ソレ」
突飛な発言も繰り返し、その度にギコからは鬱陶しそうな態度をとられていた。
だが、それでも彼は常に真剣そのものだった。
僕らには何の事か理解できないような言葉も、彼にとっては深い意味があったのだろう。
( ・∀・)「すまん、今の発言は回りくどかったな。要するにだ」
恐らくは、彼はどこまでも真摯だったのだ。
真摯だったからこそ苦悩し、絶望し、そして死んでいった。
( ・∀・)「君は、猫に生まれて幸せか?」
第十五話 六月十七日・その四
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:13:07.80 ID:Hm4U1otSO
- (´・ω・`)「……いきなりですね。しかし何でまた僕なんかに」
彼はよく、物事は一つのサイコロだと言っていた。
見る側によって一にも見えるし、六にも見える。
自分はそれら全てを把握したいと、そんなような事を言っていた。
( ・∀・)「ただの気紛れだ。と、答えることも出来るが、それでは嘘になる。
この質問は君に聞いてみたかったんだよ」
( ・∀・)「他の面子が返す答えは大体見当がつくからな。ついでに真面目に答える気も無いだろ」
(´・ω・`)「そうですね」
( ・∀・)「君は体格も並以下で、別に知恵がある訳でもない。カリスマも無いし、ついでにモテない」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
( ・∀・)「しかし、だ」
( ・∀・)「君の目は悪くない。猫の本性を見抜く洞察力、それは本物だと私は思っている」
(´・ω・`)「……」
( ・∀・)「言わずもがなだが、我々は人間無しには生きられない。忌々しい話だがね。
依存はただの停滞だと昔どこかの人間が言ったそうだけども、人間にしては良い格言だと思うよ」
(´・ω・`)「おま…消されるぞ…というかそれ本来の意味と違う気がするんですけど」
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:14:56.45 ID:Hm4U1otSO
- ( ・∀・)「変わらないさ。猫が犬と同様太古から人間に愛玩動物として改造されてきたという話はしたと思うが、
猫が人間に依存せねばならない生物になった時、事実我々は停滞した。
農業も衰退したこの地では名称の通り、僕らはオモチャにされる事しか能が無くなったんだよ」
思うに彼の物事に対する姿勢というのは、猫という存在にしておくには荷が重すぎたのだ。
彼は次第に疲弊し、自暴自棄になっていった。
(´・ω・`)「はあ」
( ・∀・)「そういう面では、飼われ猫も野良猫も大差ない。皆仲良く等しくオモチャだ」
(´・ω・`)「……」
( ・∀・)「話が逸れたな。君は、色んな猫を見てきただろう? 私を含めてな。それを踏まえて答えてくれ」
( ・∀・)「改めて聞こう。君は猫に生まれて、幸せか?」
(´・ω・`)「……」
僕はこの時の返事を、今でも後悔している。
(´・ω・`)「分かりません……まだ」
何か言うべきだった。
思った事、感じていた事、何でも良いから口にするべきだったのだ。
( ・∀・)「……そう、か。分かった。すまんな、時間を取らせた」
そう言った彼の顔は、どこか寂しそうだった。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:16:46.29 ID:Hm4U1otSO
- ※ ※ ※
空気を斬り裂く甲高い音が聴こえる。
触れた物を容赦なく貫く、数センチ程の大きさもない豆粒のような塊。
それが男の手元から絶え間なく吐き出され続けている。
狙いは僕。
口元にはちんぽっぽ、背後にはツン。
一秒にも満たないほんの一瞬、僕は選択を迫られた。
(´・ω・`)「──ッ!!」
(*‘ω‘ *)「ぽーっ!?」
ξ;゚听)ξ「きゃあッ!!」
目前の床が弾ける直前、塀の上にいるビーグル目掛けてちんぽっぽをぶん投げる。
▼;・ェ・▼「のわァ!? ッあ、アブねーな!!」
見事背中でキャッチするビーグルを視界の端に収めつつ、
背後に飛び退き、ツンの首にかじりつく。
後を追うように地面を砕きながら肉薄する弾丸の雨を、ツンを抱えたまま横っ飛びに回避する。
飛び散る破片を浴び、僕はツンごと強引に塀をよじ登った。
人間からしてみれば、瞬き四回分程度の時間だったかもしれない。
( ⊆⊇)『ちッ、やるなァ』
舌打ちしながらもどこか楽しげに、男は手元の銃を弄っている。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:18:56.00 ID:Hm4U1otSO
- ξ;゚听)ξ「うっ……うぇ、っぷ」
(´・ω・`)「ビーグル」
▼・ェ・▼「何だ」
(´・ω・`)「奴は僕が引きつける、君はこの区画を回り込んでくれ。
表に出て小さな橋を渡れば目的地はすぐだ」
▼・ェ・▼「一匹でアレの相手なんかやれんのか」
(´・ω・`)「やるさ」
男は油断している。
今まで散々猫たちを撃ち殺してきたからか、男の挙動には漫然としたそれが混じっている。
意識的にかどうかは知らないが、楽しみを継続させようと手加減しているのだろう。
ならば出し抜く機会はある。
幸い女の方は見当たらない、時間稼ぎ程度なら出来るはずだ。
▼・ェ・▼「分かった。おいツン、背中に乗れ。ガキは俺がくわえる」
(*‘ω‘ *)「ぽ?」
ξ゚听)ξ「え、あ、うん」
▼・ェ・▼「早くしろアホ」
「何やねん……今の音何やねん怖いやん」
( ⊆⊇)『うぃ、そんじゃま』
(´・ω・`)「来るぞ!!」
( ⊆⊇)『YAAAAAAAAAAHAAAAAAAAAAAてかーー!?』
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:20:53.45 ID:Hm4U1otSO
- 凄まじい破裂音と共に、再び弾丸の嵐が僕らに向けて放たれる。
僕は路地裏側に飛び降り、ビーグル達は民家側に飛び降りる。
それとほぼ同時に僕らがいた辺りの塀が砕け散り、蜂の巣と化す。
僕は男目掛け、一直線に駆けだす。小細工無しの真っ向勝負だ。
( ⊆⊇)『上等だ! さァ来い!! すぐ来い!! 撃たれに来い!!!』
男は向かってくる僕の方へ、まともに照準も定めないまま銃を向けた。
銃口が跳ねる度に視界が瞬く。腕を、背筋を、弾丸が掠めていく。
それに対して僕が出来る事といえば、耳を伏せて尻尾を丸め、ひたすら弾が当たらない事を祈るだけだった。
──そして、どうやら僕の祈りは誰かに通じたらしい。
(´・ω・`)「はあああああああああ!!」
一気に男の眼前まで潜り込むと側壁を斜めに駆け上がり、ちょうど男の肩辺りの高さまで飛び上がる。
(;⊆⊇)『うおァ!?』
流石の男も本能的に身を引き、銃を持つ手が一瞬停止する。
その一瞬で、十分だった。
(#´・ω・`)「喰らえッ!!」
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:23:11.86 ID:Hm4U1otSO
- ありったけの力を込めて剥き出しの爪を振り下ろす。
爪は男の額を捉え、ゴーグルを巻き込みながら縦一直線に紅く鋭い軌跡を残していく。
眼を狙っていたのだが、惜しくも瞼は爪が掠る程度に留まった。
もっとも目尻に引っ掛けたので猛烈に痛かっただろうが。
( メ)『うァッ!!!! ぐ、ああぁ、ああああ、糞がああああああああああああああ!!』
男は顔を押さえてうずくまりながら唸り声を吐き出す。
多少は気分が清々したけども、いつまでも付き合ってはいられない。
(´・ω・`)「今日はこんくらいで勘弁してやんよ!」
着地と同時に男の股下を駆け抜け、穴だらけの路地裏を疾駆する。
背後から後を追うように男の叫び声が轟く。
(#⊆⊇)『ッさせッかぁああああああ!!!!』
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:25:55.26 ID:Hm4U1otSO
- 振り向き様、放射状に弾をバラまくように銃口をこちらに向けてくる。
(´・ω・`)「っと──」
僕はすぐさま側壁に張り付き、何かのパイプの裏に身を隠す。
耳に痛い衝撃音が鳴り、弾は全て──
(´・ω・`)「あれ」
視界が反転する。
夜空と地面とがぐるんと一回半回転し、真横に倒れた状態で停止する。
(#⊆⊇)『──はぁ、はぁ……手間取らせやがるぜ……』
先ほどまでそこに居たはずのパイプの裏へと目を向ける。
頑丈に見えたそれのどてっ腹には、見事な風穴が空いていた。
(´・ω・`)(そうか……当たったのか、僕は)
じわじわと鈍い痛みが身体全体に広がってくる。
起き上がろうとした瞬間、左腕に激痛が走った。
何ヶ所撃たれたのか分からないが、そこは確実にやられているだろう。
(´・ω・`)(…………参ったな)
意識が朦朧としてきた。
視界が歪む。
息苦しい。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:28:40.88 ID:Hm4U1otSO
- 男の靴音が聞こえる。
慎重に眼球だけ動かし視界を上にずらすと、
いつの間にか男は目の前にまで接近していた。
( ⊆⊇)『死んでんのか?』
靴の爪先で数回蹴られ、僕の身体は死体のように左右に揺れる。
( ⊆⊇)『終わりか。ちょうど川も近いし流しとくかね……っ痛つつ、目ぇいてぇな畜生』
男は片膝をつき銃を傍らに置くと、僕の首筋に手を伸ばす。
腰の麻袋が不気味に揺れている。
(´ ω `)「…………」
無念だった。
ミルナ達も、こんな感情を抱えたまま、死んでいったのだろうか。
このまま目を閉じてしまいたい衝動に駆られながら、為す術もなく近付いてくる掌を睨みつける。
せめて、ツン達の無事を確保するまでは──
──かこん、からからから……
( ⊆⊇)『んァ?』
唐突に。
男の背後で、間抜けな音が鳴り響いた。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:33:05.49 ID:Hm4U1otSO
- 空き缶の音……か?
( ⊆⊇)『なんd、ぅおわ?!』
男が振り返ったと同時、顔面に件の空き缶が投げつけられる。
男が怯んだ瞬間──彼らが駆け出していた。
(#'A`)「もらったァ!!」
ドクオが傍らに置いていた銃をかっぱらい、
(-_-)「ショボン!!」
男の股下を潜り抜けたヒッキーが、僕の身体を強引に持ち上げる。
(#⊆⊇)『あっテメ、また……!!』
(#'A`)「バーカバーカなめんじゃねーぞ糞野郎がヒャッホーイ!!」
(-_-)「う、重っ、もう少、体鍛えときゃ、良かっ……」
銃をくわえたドクオと僕をくわえたヒッキーは、一目散に路地裏を後にする。
(#⊆⊇)『だーからさせっかァ!!』
男はベルトから予備の拳銃を取り出し、こちらに照準を合わせる。
('A`)「跳ぶぞヒッキー!!」
(-_-)「了、解!」
二匹は同時に塀を駆け上がり、銃弾が塀を砕くより早く、民家の奥へと紛れ込んでいった。
(#⊆⊇)『ッチ、ドッたま来たぜこの野郎……』
(#⊆⊇)】『おいコラ! もう良いから道路に逃げたらやっちまえ!!』
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:35:11.96 ID:Hm4U1otSO
- 民家と民家の隙間を走り抜けながら、ドクオが不意に口を開いた。
('A`)「すまん、遅くなっちまった」
(-_-)「ギリギリだったね……」
(´・ω・`)「……ごめん、皆」
ヒッキーにおぶさる体勢のまま、力無くうなだれる。
('A`)「馬鹿言うな、お前に死なれたら困る」
(-_-)「同じく」
(´・ω・`)「……はは、有難う」
('A`)「被弾箇所は腕と背中の二ヶ所だ。人間の施設でちゃんと治療を受けりゃ何とかなる。
大丈夫だ、諦めんな」
(´・ω・`)「うん……。分かってる、まだ死ぬ気は無いよ。ハインと喧嘩したまんまだし」
(´・ω・`)「つーか、君こそやっと帰ってきたのかコラ遅いんだよ」
('A`)「あーすまんすまん。持病の下痢がまた悪化してよ。俺もまだ、大丈夫だ」
(-_-)「……」
('A`)「ひとまずさっさと逃げなきゃな。ビロードともどっかで合流しないと」
(´・ω・`)「あ、ちょい待ち」
('A`)(-_-)「?」
(´・ω・`)「彼女……ツン達を追っかけなきゃ」
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:37:53.81 ID:Hm4U1otSO
- ※ ※ ※
遠くで銃声が何度も鳴り響いている。
ビーグルの背中に張り付きながら、私はぼそりと呟いた。
ξ゚听)ξ「だ、大丈夫よね」
▼・ェ・▼「さァな」
(*‘ω‘ *)「ぽ」
ビーグルが口にちんぽっぽをくわえたまま、素っ気なく返事する。
彼は私とちんぽっぽの体重を支えてなお、猛烈なスピードで路地裏を駆け抜けていく。
恐怖心からそのまま黙り込む事も出来ず、私は半分独り言のように呟き続けた。
ξ゚听)ξ「……」
ξ )ξ「……どうして……? 何でなんだろう。分かんないよ、こんなの……」
背中から這い上がってくる怖気に吐き気すら感じながら、身体を震わせる。
▼・ェ・▼「そうだな」
ビーグルはやはり淡々とした口調のまま、路地裏を慣れた足取りで進む。
やがて表通りへと通じる道に入り、ビーグルは躊躇う事なく外へと飛び出した。
時間帯もあり、人通りは全くない。大型の車だけが時折公道を行き来している。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:40:05.47 ID:Hm4U1otSO
- ▼・ェ・▼「あっちか」
進路に見当をつけ、目の前の角を曲がる。
通りの向こうにショボンが言っていた橋らしきものが見えた。
橋と言っても、車なら一台通れる程度の小さな物だ。
▼・ェ・▼「行くぞ、もう少し気張れ。…………あ?」
ξ゚听)ξ「?」
ビーグルが間の抜けた声を漏らす。
それにつられ、彼の視線の先に顔を向ける。
橋の向こう側から、誰かがこちらに歩いてきていた。
髪の長い女性だ。
前髪に隠れて顔はよく見えない。
▼・ェ・▼「おい、他にも仲間がいるのか?」
ξ゚听)ξ「いや……私はさっきのしか見たこと無いんだけど……」
女性は耳元に何かを当て(恐らく携帯電話だろう、ナベちゃんも持っていた)、
大きなバッグを肩に掛けていた。
しばらくして携帯電話をしまい、バッグから細長い何かを取り出し──ゴーグルを掛けた。
川⊆⊇)『…………』
▼・ェ・▼ξ゚听)ξ「!!」
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:44:19.30 ID:Hm4U1otSO
- ▼;・ェ・▼「ビンゴかよ! くそっ──」
ビーグルが逃げようと踵を返す。
しかしそれよりも早く、女が細長い銃を構えていた。
同時に鳴り渡る、拍子抜けするほどに軽い銃声。
▼・ェ・▼「ッ!!」
ξ;゚听)ξ「ビーグル!?」
(*‘ω‘ *)「ぽー!?」
たった一発の銃弾がビーグルを貫いた。斜めに傾いだ彼の身体は、
しかし倒れる直前、地に踏ん張って踏みとどまる。
▼#・ェ・▼「んがぐぐぐ……」
▼#・ェ・▼「な、め、ん、なああああああああああああああ!!」
ビーグルはちんぽっぽをくわえ直し、傾いだ身体を引きずるように歩道を疾走する。
背後の銃声と同時に付近の地面が数回弾け飛んだが、彼の勢いは止まらなかった。
そのまま半ば突っ込むように死角の塀へと駆け込み、どうと倒れる。
投げ出された私とちんぽっぽは、ころころアスファルトの上を転がった。
ξ;゚听)ξ「撃たれ……傷、大丈夫!?」
▼#・ェ・▼「いって馬鹿さわんな痛えに決まってんだろダボ!」
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:46:54.62 ID:Hm4U1otSO
- ビーグルは右後足の付け根を撃ち抜かれていた。
毛皮の奥から滲むように血が噴き出ている。
ξ゚听)ξ「ご、ごめん……、こんn」
▼・ェ・▼「うるせえ黙れ。お前、もう走れるよな」
ξ゚听)ξ「え、あ……うん、多分」
(*‘ω‘ *)「ぽー……」
ビーグルは塀の向こう側を慎重にうかがいつつ、早口でまくし立てた。
▼・ェ・▼「俺があいつ引き付けて逆方向に走っから、その隙にガキと橋渡って逃げろ。一直線にな」
ξ゚听)ξ「ちょ、ちょっと待ってよ。そんな怪我でどうやって逃げ切るつもり!?」
▼・ェ・▼「いいんだよ、んなこた気にすんな。チャンスは一回きりだ、絶対に逃すなよ」
ビーグルはいつものように淡々と、素っ気ない口調で喋り続ける。
その横顔を見て、背筋が粟立つのを感じた。
ξ゚听)ξ「あんた、まさか」
▼・ェ・▼「……よし、奴は橋のトコから動いてねえっぽいな。行くなら今か」
ξ゚听)ξ「ちょっと! 聞いてよ!!」
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:50:39.65 ID:Hm4U1otSO
- ▼#・ェ・▼「お前が選んだのはな!!」
ξ;゚听)ξ「ッ!?」
突然、ビーグルが吠えた。
その気勢に気圧され、びくりと身体を震わせる。
▼・ェ・▼「……つまり、こういう事なんだよ。そこのガキの親も、
こうやって仲間を切り捨て、自分すら犠牲にして、ガキを生かそうとしたんだろ。
そういうモンなんだ」
ξ゚听)ξ「……」
▼・ェ・▼「だから今更オタオタすんな。親になるんだろーが、お前も」
言い返せなかった。
しかし、このまま黙っている訳にはいかない。
このままでは、彼は本当に──死にに行ってしまう。
ξ゚听)ξ「でも……でも、あんたは……関係ないじゃない……」
我ながらあまりに頼りない、反論の言葉だった。
その間抜けなセリフを聞いて彼は、
初めて、笑った。
▼・ェ・▼「はは。まァ、そう言うなよ」
▼・ェ・▼「良い機会なんだ。好きなようにさせてくれ」
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:54:12.09 ID:Hm4U1otSO
- 苦笑にも似た、渇いた笑み。
何故か、いつぞやのブーンの悲しげな笑顔を連想させた。
その理由も分からず、良い機会という言葉の真意も聞けず、
ただ私は黙りこくる事しか出来なかった。
▼・ェ・▼「さあて……そろそろ行くかな」
ビーグルは撃たれた脚を引きながら、ぎこちなく腰を上げる。
▼・ェ・▼「腹ァ決まったか?」
こちらを見据える目の色は、いつの間にか無頓着ないつものそれに変わっていた。
今更彼の気持ちは揺るがないだろう。
それなら私が出来るのは、確かに……
(*‘ω‘ *)「ぽ……?」
この子と、お腹の子を生き残らせる事だけなのかもしれない。
ξ゚听)ξ「……言っとくけど、最後まで頑張りなさいよね」
▼・ェ・▼「最後までうぜェ雌だなお前は」
ξ゚听)ξ「お互い様よ」
▼・ェ・▼「そうかい」
ξ゚听)ξ「そうよ」
▼・ェ・▼「……。じゃあ、行ってくるわ」
ξ゚听)ξ「……うん」
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:56:58.97 ID:Hm4U1otSO
- 呟きと共に走り出し、ビーグルは塀から飛び出した。
▼#・ェ・▼「うらああああああああああああああ!!」
人間にして見れば遠吠えに聞こえるであろう叫び声をあげながら、
通りの向こう側へと走り去って行く。
川⊆⊇)『…………』
女は橋の入り口辺りから数歩前に進み、銃をビーグルの方に構える。
かなり至近距離を通過しなければならなかったが──今以外にチャンスは無い。
ξ゚听)ξ「ちーちゃん!」
(*‘ω‘ *)「!」
おもむろにちんぽっぽの首筋をくわえ、極力気配を感づかれぬよう慎重に駆け出す。
身体は予想していたよりずっと重く動きにくかったが、それに構ってはいられない。
川⊆⊇)『……』
女の構えた銃が跳ね、銃声が響く。
同時に、犬の遠吠えが途絶えた。
頭の中で渦巻く何かを必死に追い出しながら、橋の入り口に近づいていく。
と、
不意に女が銃の構えを解く。
同時に、こちらに視線を向ける。
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 21:58:46.84 ID:Hm4U1otSO
- ξ;゚听)ξ(見つかった!!)
同じくして、私は女の足下を全力で駆け抜けていた。
出来るだけ早く、出来るだけ遠くに。
肩越しに一瞬背後を振り返る。
──女は、銃をこちらに向けていた。
川⊆⊇)『……終わりだ』
銃口がぴったりと私に合っているのを見て、瞬間的に悟る。
避けられない。
橋を最速で通り抜ける前に、確実に仕留められる。
ならば、どうするか。
ξ゚听)ξ「なら……一か八かよ!」
私は体を急停止、向きを反転させた。
要するに女と真正面から向き合う形だ。
川⊆⊇)『…………』
ゴーグル越しに視線が絡み合う。
口元のちんぽっぽを手で庇い、足と目に全ての意識を集中させる。
思い出せ、ドクオの最後のアドバイスを。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 22:00:25.40 ID:Hm4U1otSO
- 「もしもの話だが、万一お前が銃持った奴と真正面からぶち当たったとしよう」
「そーゆー時はな、銃口は見んな。そんなとこ見たってしょうがねえ」
「指が良いかな。引き金んとこ。銃弾は見えんが、それをひねり出す為の人間の動きは、
俺たちには余裕で見える」
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 22:02:40.54 ID:Hm4U1otSO
- 川⊆⊇)『……』
動いた。
ξ゚听)ξ「!!」
目の前が瞬くより早く、ちーちゃんを銃口から庇うように首を捻り、真横に身体を投げ出す。
鋭い風が、私の傍らを突き抜けていく。
そのまま地面を転がり体勢を立て直し、背後へと全力で走る。
いや、走ろうとした。
ξ゚听)ξ「──!」
痺れるような衝撃が背筋を貫く。
尻尾かどこかに、弾丸を掠めたらしい。
足を動かすのがワンテンポ遅れてしまった。
川⊆⊇)『……』
女は銃口を既に向けている。
二発目を撃つまで、もう一秒も猶予は無いだろう。
逃げるにも、避けるにも、体勢を整える暇が無い。
ξ゚听)ξ(間に……合わな……)
ξ゚听)ξ(──!!)
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 22:05:12.76 ID:Hm4U1otSO
- ※ ※ ※
(´・ω・`)「……ヒッキー」
(-_-)「あまり喋っちゃ駄目だ、ショボン」
(´・ω・`)「……」
(-_-)「大丈夫だよ、君を安全な場所に避難させたら、僕も応援に向かうからさ」
(-_-)「きっと何とかなる。だから、心配しないで」
(´・ω・`)「…………」
(´・ω・`)「ヒッキー……一つだけ、頼みがあるんだ」
(-_-)「……頼み?」
第十五話 終
戻る/六月十七日・その五