川 ゚ -゚)クーは生き続けるようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:00:05.35 ID:uuGeaR/s0
- 第二話 『危見』
( ,,゚Д゚)「…………」
目の前にあるのは朝食。
白御飯、焼き魚、卵焼き、味噌汁といった生粋の和風だ。
姉が作ったもので、ギコ自身とても気に入っている食事の一種である。
ただ、今日に限ってその味が異常に薄かった。
味付けは変わっていないはず。
ギコ家の中では、ヒートが作る食事の味は比較的濃いことで有名だ。
しかし今朝のギコは、その濃薄すら感じ取ることが出来なかった。
ノハ#゚听)「どうしたのッ? 美味しくないッ?」
(;,,゚Д゚)「あ、いや……美味いよ、うん」
慌てて味噌汁を掻きこむも、特有の味さえ感じられなかった。
本当は美味しいはずなのに。
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:01:57.64 ID:uuGeaR/s0
- 理由はある。
おそらくは緊張によるものだ。
川 ゚ -゚)「……パクパク……モグモグ」
テーブルの向かい側で食事をしている女性。
名は『クー』というらしいが、本名かどうかは解らない。
食べ難そうなのは、きっと昨日まであったはずの右腕が無いからだろう。
左手だけで箸を巧みに操ってはいるが、やはり食べ難そうだった。
何故、無いのか。
そんなもの簡単に答えられる。
(;,,゚Д゚)「……だよなぁ」
ギコは自身の右腕を掲げた。
白く、血管さえも浮かんで見えそうなキメ細やかな肌を持っている腕。
朝の光に照らされているそれは、男である自分のモノではないかのように綺麗だった。
それもそのはず。
今のギコの右腕は、元々は彼女のモノだったのだから。
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:04:34.91 ID:uuGeaR/s0
- 昨夜、確かにギコの右腕は切り取られた。
あの中国系の女が投げた曲刀によって、あっさりと。
受けた感触は、思い出したくもないが今でも鮮明に残っている。
問題はここからだ。
その場に居合わせていた彼女は、何故か自分の右腕を代わりとして接着させたのだ。
( ,,゚Д゚)「……何で?」
川 ゚ -゚)「ん?」
(;,,゚Д゚)「これ、アンタの腕だろ?
何で……っていうか、どうやって? アンタは大丈夫なのか?」
もっともな疑問を放つ。
目の前の女性は箸を止め
川 ゚ -゚)「問題ありませんよ。 私は不死ですから」
(;,,゚Д゚)「は? フシ……って、あの不死?」
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:07:32.21 ID:uuGeaR/s0
- 不死。
いつまでも死なないことを示す言葉。
それを聞いたギコは、引きつった笑みを見せながら
(;,,゚Д゚)「ちょ、ちょっと待て……いくらなんでも不死はねぇだろ。
ここは現実だし、何より第一、死なないってのはありえねぇ……」
川 ゚ -゚)「見せましょうか」
( ,,゚Д゚)「え?」
クーが箸を一本逆手に持つ。
そしてそのまま真っ直ぐ、白い喉へと突き立てた。
(;,,゚Д゚)「なっ!?」
ノハ#;゚听)「ひゃぁぁぁ!?」
互いに抱き合いながら悲鳴を上げる姉弟。
その恐怖の視線の先で、クーが喉から真っ赤な血を噴き出している。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:10:04.96 ID:uuGeaR/s0
- ずぶり、と音を立てながら引き抜いた。
その間にも、尋常ではない量の血液が流れ出る。
川 - -)「…………」
目を閉じる。
すると鮮血を流していた穴が、見る見るうちに塞がっていった。
(;,,゚Д゚)「なっ……おっ……!?」
((ノハ#;゚听)))「あわわわわわわわわわわわわわ」
川 ゚ -゚)「……これで解って頂けたでしょうか。
私は傷を負っても、このように自動的に修復されてしまうのです」
ノハ#;゚听)「で、でも、血、血ィ……ッ!?」
川 ゚ -゚)「すみません、すぐに処理します」
懐から白布を取り出し、テーブルの上に散った血を丁寧に拭き取る。
何というか、手馴れている感があるのは気のせいだろうか。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:12:24.94 ID:uuGeaR/s0
- (;,,゚Д゚)「い、いや、そういう問題じゃなくて……痛くねぇのか……?」
川 ゚ -゚)「もちろん痛みはあります」
ノハ#;゚听)「じゃ、じゃあ何で……大丈夫なのッ?」
当たり前の問いかけに対して、彼女は少し目を伏せた。
川 ゚ -゚)「もう、慣れてますから」
(;,,゚Д゚)(な、慣れてるって……)
不死もありえないが、これもありえない。
腕を切り取られた時の痛みは、もはや激痛というレベルを凌駕していた。
多大な負担を掛けられた神経が焼き切れそうになり、意識が捻ね割れそうになった。
今、その痛みを思うだけでも吐き気がこみ上げてくるほどだ。
それに喉を刺したということは、気道や食道も貫通しているだろう。
不快感と痛みは想像を絶するはずだ。
(;,,゚Д゚)「こ、この腕もアンタのだって言うんなら、自分でやったってのか……?」
首を縦に振るクー。
ノハ#;゚听)「え、えぇッ!?」
(;,,゚Д゚)「何でヒー姉が驚くんだよ……俺の腕にアイツの腕がくっついたとこ見たんだろ?」
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:14:25.40 ID:uuGeaR/s0
- 朝の言動から察するに、姉は少しばかりの事情を知っていたようだが
その彼女の答えは
ノハ#;゚听)「えッ? 何かギコを隣の部屋に連れて行って、帰ってきたら右腕が生えてたからッ。
物凄い名医の人なのかなーなんて思っちゃったりッ」
(;,,゚Д゚)「うん、それはおかしいな。
行く時帰ってきた時と比べて、クーさん右腕が無いことに気付かないと」
え、とヒートはクーの右肩へ視線を向ける。
ノハ#;゚听)「う、うわぁぁぁぁッ!? 右腕がないぃぃぃッ!?」
(;,,゚Д゚)「馬鹿だ! ここに馬鹿がいる!!」
川 ゚ -゚)「あの」
(;,,゚Д゚)「え? 何?」
クーが、真っ直ぐな視線で左腕を出した。
その手の上には空になった茶碗。
川 ゚ -゚)「御代わり、御願いします」
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:16:31.17 ID:uuGeaR/s0
- 海の傍にある倉庫街。
その陰に、まるで陽の光を浴びるのを避けているかのように人がいた。
女性が声を荒げている。
(*#゚∀゚)「だーかーらー! いきなりガキが入ってきたんだヨ!」
中国風な女。
相変わらず藍色の女性用スーツを着込み、携帯電話を耳に当てている。
その腰には堂々と二本の曲刀が吊り下げられていた。
隠す気はまったくないようだ。
(*#゚∀゚)「ちゃんと『人払い』もしてたネ!
え? じゃあ何でって?
こっちが解るわけないヨ! だからそっちに連絡したネ!」
昨夜の一件に関しての電話らしい。
(*#゚∀゚)「あー! 逃がしたのはそっちでしょー!?
だったら仕事中に連絡入れるなヨ! 私困るヨ!」
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:18:28.41 ID:uuGeaR/s0
- 電話の相手は飄々と口論をかわしているようだ。
口では勝てないと踏んだのか、女性は口調を変える。
(*;゚∀゚)「あーあー、解ったヨ……また今夜にも仕掛けてみるネ。
だいじょぶだいじょぶ、イレギュラーなんてそんな何度も起こらないヨ」
溜息を吐きながら通話を切る。
(*゚∀゚)「まったく、ただでさえ捕縛が難しいってのに……」
そういえば、あの少年はどうなったのだろうか。
腕を切り落として、そのまま逃げてきてしまったので結果を知らない。
夜になる時間帯だったから最悪の場合は、あのまま――
(*;゚∀゚)「……ワタシ、しーらないネー」
乾いた笑いを残し、女性はその場から姿を消した。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:20:27.55 ID:uuGeaR/s0
- 午後七時。
陽が沈み、そろそろ夕食の時間となってきた時間帯。
ギコは自分の部屋で右腕を凝視していた。
(;,,゚Д゚)「……やっぱ妙だよなぁ」
やはり信じられない部分があるのだろうか、一日中この台詞を吐き続けている。
しかし現実に、彼の右腕は確かに女性のモノだった。
解らないことだらけである。
あの曲刀を持っていた女性は何者なのか。
対する不死の彼女は何者なのか。
何故、二人は戦っていたのか。
腕を接着するということは、つまりどういうことなのか。
事情や色々なことを聞こうとも思ったのだが、クーは客室に引き篭もったまま出てくる気配がない。
こちらを巻き込みたくないのだろうか。
それともただ、他人を拒絶する性格なのだろうか。
とりあえず、あまり元気がないようなので明日くらいまではここにいてくれ、というヒートの願いは叶えられそうだ。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:22:44.63 ID:uuGeaR/s0
- 最初は混乱していたヒートも、今ではだいぶ落ち着いている。
いくら豪快な性格でも、やはりあんな光景を見せられては平常でいられるわけがない。
箸で、喉を、躊躇なく、一突きで――
( ,,゚Д゚)「……ッ」
そこまで考え、蘇る記憶を無理矢理に消した。
あれを思い出すと、右腕の痛みまで思い出してしまいそうだったからだ。
確かにあの時、自分の右腕が切り取られた。
痛みや苦しみが幻覚だとは思えない。
神経や意識が消滅しそうなほどの激痛は、今思い出しても気分が悪くなる。
そして今、その無くした右腕の代わりとしてクーの腕がくっついている。
彼女の右腕が失われていることを見ても、こちらに移植されたのは明らかだ。
つまり、あの女性も自分と同じ苦しみを味わったことになる。
( ,,゚Д゚)「……ありえねぇ」
腕を切り取ったというのに、あの平然な表情。
麻酔でもしていたのだろうか。
しかしヒートの話では、五分かそこらで作業を終えたのだと言う。
その間に麻酔をかけて、効くのを待って、それから自らの手で切断して、ギコの腕としたとでも?
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:24:56.02 ID:uuGeaR/s0
- ( ,,゚Д゚)「…………」
第一、正気の沙汰ではない。
他人が腕を切られて、それを治すために自分の腕を差し出すなど。
もしギコが逆の立場だったら絶対にそんなことは出来ない。
と、そこまで考えて気付く。
逆の立場などと思ってみたが、そもそもその立場を知らねば意味がない。
もしかしたらそういうことをするのが普通などと――
( ,,゚Д゚)(それこそありえねぇか……)
そんな普通は普通ではない。
他人のために自分のモノを差し出すなんて……いや、それは可能だろう。
しかし自分の身体の一部となると異常だ。
戸惑いさえ無く出来るなんて、究極の自己犠牲精神の持ち主なのだろうか。
解らない。
そして、知りたい。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:27:26.42 ID:uuGeaR/s0
- ( ,,゚Д゚)「……よし」
今日の夕食時にでも聞いてみよう。
無視されるかもしれないが、聞かないよりはマシだ。
それに、このままクーの腕を自分のモノとするのも納得がいかない。
これは、彼女のモノだ。
だから返さなくてはならない。
自分の腕は、あの時確かに無くしたのだから。
それも含めて彼女には少し強引にでも話してもらおう。
「ギコォッ、御飯だよーッ!」
ヒートの呼ぶ声が聞こえた。
食事当番は交代制なのだが右腕のこともあってか、しばらくはヒートが受け持つことになったのである。
『どうせ春休みだしねッ』などと笑顔で言ってくれたことを思い出し、良い人だなと心底思う。
( ,,゚Д゚)「クーさんも呼ばないとな」
客室に引き篭もったままのクー。
朝御飯を御代わりしていたことから、意外と大食漢なようだった。
きっと今では御腹も空いていることだろう。
そうと決まれば行動だ。
自分の部屋を出て、客室へ向かう。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:29:35.31 ID:uuGeaR/s0
- ( ,,゚Д゚)「しかしまぁ、何か妙に静かだな……」
客室の前。
ドアをノックしようとして、ギコは違和感に気付いた。
人の気配を感じられない、と。
元々、気配を探れるスキルなど持っていないが、人特有の気配を感じないのはおかしい。
意を決して、ドアを開く。
(;,,゚Д゚)「なっ……」
いない。
この客室は、入り口から内部をほとんど見通せる作りになっている。
クローゼットやテーブルの下に隠れない限りは、何処にいようが目に入るはずなのだが。
一応、見えない部分を探してみる。
(;,,゚Д゚)「やっぱりいねぇ……何処に行った?」
彼女が大事そうに持っていた棺桶もない。
ここへ戻ってくる意思はないのだろう。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:31:45.45 ID:uuGeaR/s0
- こんな時間に、一体何処へ。
右腕が無いのだというのに。
もし、今の状態であの女にでも襲われたりすれば――
(;,,゚Д゚)「やべぇ……!」
居ても立ってもいられなかった。
すぐさま踵を返して玄関へ走る。
ノハ#゚听)「えッ? どうしたのギコッ? 御飯はッ?」
(;,,゚Д゚)「ごめん、後で食べる!」
余計な説明は心配される元なので言わない。
上着を引っ掴み、ギコは一目散に外へ飛び出した。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:33:24.33 ID:uuGeaR/s0
- 夜の闇は気配を明確化させる。
光がないことにより、他の感覚が無意識に鋭敏化されるからだ。
その中で戦闘行為を行うとなると、やはり場所は限定される。
それは、人がいない空間だ。
しかし現実、そんな場所はなかなか無い。
街中ともなると当然だ。
では、彼女らはどうやって戦ってきたのか。
その問いに対する答えは簡単である。
――人のいない空間を、作れば良いのだ。
(*゚∀゚)「やぁやぁ、来たネ来たネ」
川 ゚ -゚)「……あのままあの家に居たら、迷惑が掛かる」
(*゚∀゚)「いやぁ、ワタシとしてもそれはやだからネー。
アンタが出てきてくれて良かったヨ」
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:35:22.21 ID:uuGeaR/s0
- 二人が対峙するのは広い場所だった。
足元は砂地。
周囲には何もない。
見上げれば、雲一つない夜空の中で不気味に月が嗤っている。
川 ゚ -゚)「人は?」
(*゚∀゚)「もちろん誰もここには侵入出来ないヨ。
『人払い』の結界は、術式素質を持ってない限りは入ることが出来ないネ」
川 ゚ -゚)「では、昨日の少年は……」
(*゚∀゚)「たまたま術式素質を持っていた、か。
でも、もしそうだったら普通の生活なんて送ってるわけないし
そもそもその時点でワタシ達が知ってないとおかしいヨ」
しかし彼は、現にあの公園内に入ってきた。
術式素質を持っている可能性は高い。
ただ、一つだけ気になる点があった。
彼の接近に女性二人とも気付かなかった、という点だ。
(*゚∀゚)「術式の種類はどうあれ、素質を持っていれば互いに気配で解るはずネ。
それを隠す技術もあるけど……反応を見るに彼は素人以下。 矛盾してるネ」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:37:32.79 ID:uuGeaR/s0
- 川 ゚ -゚)「……だが今日は関係ない、な?」
(*゚∀゚)「そーゆーことヨ。
もうイレギュラーなんて邪魔は入らないし、ワタシの御仕事も今日で終わりネ」
腰から二本の曲刀を取り出す。
(*゚∀゚)「観念するのをオススメするヨ。
なぁに、手荒なことはしないと約束するネ」
川 ゚ -゚)「悪いが、この身体は譲れない」
ドン、という重い音が響いた。
背負っていた棺桶のような物体を、地面に降ろした音だ。
(*゚∀゚)「なら、力尽くで連行するしかないネ! 勝負ヨ!」
中国風の女性が走る。
一歩目から高速で、それは獰猛な獣を髣髴とさせた。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:40:03.94 ID:uuGeaR/s0
- (;,,゚Д゚)「やっべぇな……」
とりあえず自転車を引っ張り出し、ヒートの声を振り切って外へ出たものの。
(;,,゚Д゚)「あの人が何処に行ったのか、全然わかんねぇ」
当然と言えば当然である。
( ,,゚Д゚)「とにかく探し回るしかねぇか……」
こうしている暇は無い。
もしかしたら、今にも彼女が襲われているかもしれないのだ。
解っている。
こうして出歩くのは危険だと解っている。
あの激痛を、まだ受けるのかもしれないと思うと帰りたくなる。
しかし帰れない。
結果的にではあるが、ギコがクーの右腕を奪ったのは事実。
このせいで彼女が死ぬようなことがあれば――
(;,,゚Д゚)「……くそっ!」
何で勝手に、と思うが答えは出ない。
とりあえず行動だ。
ここで悩んでいても仕方ない。
彼女に会って、落ち着いて、それから色々と決めよう。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:43:06.59 ID:uuGeaR/s0
- ペダルを踏み込む。
両手でハンドルを握りこみ、立ち漕ぎの姿勢で――
( ,,゚Д゚)「え」
その時だった。
ビキ、という疼きと共に、右腕に微かな痛みが走る。
(;,,゚Д゚)「イっつ……何だ?」
自分のモノではない腕を見る。
見た目はまったく変わりがないが、幻痛のような痛みは断続的に続く。
まるで主の危険を知らせるように、だ。
(;,,゚Д゚)「これは……」
解る、いや、知らされている。
何となくだが、彼女のいる位置を知った気がする。
場所はあそこだ。
ここからなら十分もあれば辿り着ける。
(;,,゚Д゚)「……行くか」
おそらくは中国風の女性もいる。
彼女はきっと、その女と戦っているはずだ。
右腕がないという状況で、巨大な棺桶を持って、ギコの知り得ない何かのために。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:46:14.45 ID:uuGeaR/s0
- 予想通りの十分後。
ギコは、昨日まで通っていた学園の前に立っていた。
(;,,゚Д゚)「ここ、だよな?」
右腕に問いかけるが返事は無く、断続的な痛みを発しているのみだ。
ただ、この場所に近付くにつれて鼓動のリズムが早くなっていた。
校門から中を伺う。
見えるのは中庭と昇降口、そして視線の端の方に映るグラウンド。
音はなく、光もなく、人の気配さえも感じられない。
そういえば、昨晩も人の気配を感じなかった。
まったく同じ状況なためか、ギコ自身も心の中に確信を持ち始める。
――ここに、クーがいる。
( ,,゚Д゚)「…………」
足を踏み出す前に、少しだけ考える。
自分が行って何になるのか。
ただ迷惑になるだけじゃないのか。
このまま帰って、何事も無かったかのように過ごせば良いのではないか。
甘い誘いが頭を過ぎた。
しかしその全てを否定する存在が、右腕にある。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:47:59.64 ID:uuGeaR/s0
- ( ,,゚Д゚)(そうだ、何にしても腕を返さねぇと……)
この腕がある限り、何事も無かったかのようにするわけにはいかない。
クーのモノなのだから、いつまでも自分が持っていてはいけない。
腕が無くなったのは事実なのだから、事実通りに事を戻さなければ。
使命感とでも言うのだろうか。
いずれにせよ、それがギコの背中を後押しした。
右足を踏み出す。
それが校門を乗り越えた瞬間――
(;,,゚Д゚)「!?」
金属音が響いた。
それは連続で、しかし不協和音のように無茶苦茶に鳴り響く。
まるで子供が鉄琴を適当に打ち鳴らしているようなリズムだ。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:50:25.60 ID:uuGeaR/s0
- 思わず駆け出す。
音は間違いなくグラウンドから発せられていた。
この金属音の正体はイマイチ解らないが、きっと争っているのだろう。
止められる力などない。
狙われれば最期だろう。
しかし、その前に何としても彼女に腕を返さねば――
(;,,゚Д゚)「こ、これは……!?」
グラウンドの中央。
そこで、二つの影がぶつかり合う。
昨夜と同じだ。
中国風な女性が二本の曲刀を操り、クーが棺桶を振り回している。
素早い動作で曲刀を叩き込まれた。
しかし棺桶でガードし、そのまま回転しながら反撃。
それを予測していたかのように防御し、そしてまたぶつかり合う。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:53:07.55 ID:uuGeaR/s0
- (*゚∀゚)「ひゃほー!」
身体をネジのように捻り、その反動を利用して曲刀を振るう。
二連のそれは大気を切り裂きながら迫り
川 ゚ -゚)「ッ!」
構えられた棺桶に防がれた。
それを確認したクーは、棺桶ごと前に倒れるような前屈姿勢で走る。
低い位置からの一撃を仕掛けるつもりだ。
(*゚∀゚)「相変わらず猪突猛進ネ!」
振りかぶった腕から再度、曲刀が放たれた。
左右別々の、しかし着撃のタイミングは同時だろう。
左腕のみの棺桶一つで防ぐには厳しい軌道だ。
どうするのかと疑った瞬間。
川 ゚ -゚)「――ッ!!」
突っ込んだ。
躊躇なく、防御さえも捨てて前へと踏み出したのだ。
布を裂かれるような音と共に鮮血が舞う。
一瞬だけ顔をしかめたクーは、しかし何事もなかったかのように走った。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:55:34.48 ID:uuGeaR/s0
- (;,,゚Д゚)「そうか……!」
彼女は『自身は不死だ』と言っていた。
攻撃を受けても時間さえ経てば修復される。
つまり、動けなくなるほどの攻撃さえ受けなければ良いのだ。
(;,,゚Д゚)(……でも)
それはどうなのかとも思う。
クーは不死であるが、その前に女性である。
女の子の身体に傷が入ることが、どれだけ重大なことかは解っているつもりだ。
(*゚∀゚)「はン! 不死の戦い方ってのは下品だネ!」
川 ゚ -゚)「勝てばいい……それだけだ……!」
未だ曲刀を手に戻していない女目掛けて、棺桶の一撃をぶち込む。
しかしクーの一撃は空を斬るのみに終わる。
たった一足で十メートルの距離を稼いだ中国風の女性が笑いながら
(*゚∀゚)「流石ネ! 連合から数百年も逃げ続けた実績は伊達じゃないカ!」
( ,,゚Д゚)(数百年……?)
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 14:58:26.39 ID:uuGeaR/s0
- 彼女が本当に不死なのだとしたら、頷ける話ではある。
連合とかいう組織からずっと逃げ続けているのだ。
おそらく、その不死という身体を持つが故に。
川 ゚ -゚)「…………」
クーは沈黙のままだ。
肯定なのか、否定なのか、どちらでもないのか。
解らないが、その構えた棺桶が戦闘の意識を如実に表している。
(*゚∀゚)「ふんふん、いいネいいネ! ところで――」
興奮した様子で曲刀を握り直す。
しかしその視線が、突如としてこちらを向いた。
(*゚∀゚)「覗き見は良くないネェ……?」
(;,,゚Д゚)(やべっ!?)
いつからかは知らないが気付かれていた。
こちらに顔を向けたのは、おそらく自分の武器の射程範囲に入ったからだろう。
つまり、来る。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:00:25.87 ID:uuGeaR/s0
- (*゚∀゚)「ひょいさー!!」
昨夜とまったく同じ動作。
両腕を背後へ振りかざし、その反動を利用して二本の曲刀を投擲する。
まるでブーメランのように回転しながら、ギコの方へ飛んだ。
(;,,゚Д゚)「あ……!?」
あの時と同じく緊張のせいか、身体が思うように動かない。
違う。
身体は動く。
緊張とは異なる理由で動けないのだ。
それは恐怖。
何処から、そして何処へ飛ぶか解らない曲刀。
その軌道が解らないからこそ動くことに恐怖を感じる。
思う間にも無情に時間が過ぎていく。
それ即ち、昨夜と同じ地獄を味わうことに等しい。
来る何処から何処へ真っ直ぐ曲がりながら身体を引き裂くために回転しつつ赤い線段々とすぐ目の前に――
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:02:21.91 ID:uuGeaR/s0
- (;,,゚Д゚)「ッ!?」
その時の感覚は『不思議』の一言だった。
もはや頭で考えず、ただ本能に従って身を投げ出す。
全てがスローモーションに見える中、自身がいた空間を曲刀が薙いでいった。
(*;゚∀゚)「にゃ、にゃにぃ!?」
川;゚ -゚)「……!?」
驚きの視線が注がれる。
しかしそんなものを気にしている場合ではない。
(;,,゚Д゚)「いって……ッ」
着地のことをまったく考えていなかった。
そのままヘッドスライディングの要領で、身体を地面へこすり付ける。
慌てて自分の身体をチェックして
(;,,゚Д゚)「はぁ、助かった……」
と、安堵の息を漏らした。
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:04:50.06 ID:uuGeaR/s0
- (*;゚∀゚)「ワ、ワタシの攻撃が避けられたー!?
素人に避けられたー!? ありえないヨー!」
何やら中国風の女性がショックを受けているようだ。
その間に、必死に這うようにしてクーの下へ駆けつける。
川;゚ -゚)「……何をしに来た?」
回避したことを驚いているのか、それとも単に引いているのか
クーは軽い汗を浮かべてギコを見る。
(;,,゚Д゚)「う、腕を返しに……」
川;゚ -゚)「は?」
( ,,゚Д゚)「これはアンタの腕なんだろ……だったら、返す!」
川 ゚ -゚)「……落ち着け、それはお前にあげたんだ」
(;,,゚Д゚)「はぁ!? あげたって……そんな簡単に!?」
川 ゚ -゚)「お前が腕を無くしたのは私の責任だ。
あの時、私が避けずに刃を受け止めていれば――」
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:06:46.58 ID:uuGeaR/s0
- (;,,゚Д゚)「ちょ、待て! ってことは、あの時はアンタが怪我すれば良かったって……そういうことか!?」
川 ゚ -゚)「何か?」
(;,,゚Д゚)「何か? じゃねぇぇぇぇ!!」
ワケも解らず叫ぶギコ。
あの攻撃を回避出来た興奮からか、脳がオーバーヒートを起こしているようだ。
(;,,゚Д゚)「アンタ馬鹿か!? 自分のモンを人にホイホイ渡していいわけねぇだろ!
他人のために怪我していいなんて、そんなことねぇだろ!」
川 ゚ -゚)「それは死があるお前達だけの常識だろう?
私は腕が無くても怪我を負っても生きていけるんだから、別に問題ないと思うが」
(#,,゚Д゚)「大有りだっつの!」
川 ゚ -゚)「意味が解らん」
(#,,゚Д゚)「こっちの台詞だ! そもそも――」
言葉を遮ってクーが動いた。
ギコの胸元を押す。
(;,,゚Д゚)「なぁ!?」
よろけるように数歩下がる。
クーはそのまま後ろを向いて、棺桶を地面に突き立てた。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:09:05.45 ID:uuGeaR/s0
- 激音が響く。
構えた棺桶に曲刀が激突しているが見えた。
それは撫でるように棺桶の表面に傷をつけ、持ち主の下へ戻っていく。
(*゚∀゚)「イレギュラーが二度も続くなんてネ。
しかも腕がくっついてるなんて、どういうマジック使ったヨ」
曲刀を見事にキャッチした女性が、少し楽しげに言う。
(*゚∀゚)「まぁ、ここまで見られたら……今度は切断放置じゃ済まさないネ」
(;,,゚Д゚)「……!?」
冷たい目がこちらを見ている。
隙を見つけて殺しに掛かる気だ。
(*゚∀゚)「何で『人払い』の中に入ってこれたのか、とか色々考えてたけど……簡単なことネ。
ここで殺してしまえば、それで済むヨ」
口封じと同時に、疑問を捨て去るつもりらしい。
単純かつ一石二鳥な考え方だ。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:11:30.08 ID:uuGeaR/s0
- 川 ゚ -゚)「……お前は逃げろ。
そのための時間くらいなら、作ってやれるし作ってやろう」
クーが棺桶を担ぐ。
何かが入っているのか、動かす度に機械的な音が響いた。
(;,,゚Д゚)「え……お、俺は腕を返しに……」
川 ゚ -゚)「この状況でか? その隙にお前は殺されるだろうし、私もダメージを負うぞ」
(;,,゚Д゚)「うっ……」
川 ゚ -゚)「まずは生き延びることを考えるんだ。
生きてさえいれば、後でどうとでもなるからな」
確かに、死んでしまえば元も子もない。
ギコは心の隅で納得した。
ただ、彼女の言った意味とギコの思った意味は異なるのだが、今はまだ気付きもしなかった。
( ,,゚Д゚)「って、ちょっと待て」
川 ゚ -゚)「まだ何か?」
( ,,゚Д゚)「この戦いが終われば、腕を返してもらいに来るんだな?」
川;゚ -゚)「……も、もちろん」
(;,,゚Д゚)(嘘下手だな、おい)
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:13:25.70 ID:uuGeaR/s0
- だが、現状においてはそれがプラスになった。
確信する。
この女性は、もう二度と自分と会う気がないのだと。
勝手に腕を押し付けて、そのまま何処かへ去るつもりなのだ。
(#,,゚Д゚)「……ありえねぇ」
川 ゚ -゚)「?」
(#,,゚Д゚)「ふざけんな! 勝手に押し付けられた方の事情も考えろ!」
自然と足が前へと出た。
慌てるクーの制止を振り切り、敵の下へと走った。
逃げるわけにはいかない。
逃げれば、クーもきっと逃げるだろうから。
だったら目の前の敵を、彼女がいる内に撃退してしまえばいい。
川;゚ -゚)「ばっ、やめろ!!」
(*゚∀゚)「死にたがりや発見ヨ!」
待ち構えていたかのように、その曲刀が放たれる。
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:15:48.89 ID:uuGeaR/s0
- この時点で無謀かと思われがちなギコの行動だが、彼はある種の確信を持って突進していた。
思い出すのは最初の攻撃を回避した瞬間。
あの時、混乱する頭の中で確かに見たのだ。
――軌道を示す赤い線を。
ます一本目が迫る。
ギコから見て右方向から、カーブを描きながらだ。
素人目に見ても、明らかに危険だと判断する。
ただ危険だと解っていてもどうすれば良いのか解らない。
足を止めればいいのか。
背後へ下がればいいのか。
更に前へ走ればいいのか。
思い切って横に飛べばいいのか。
選択肢は思いつくが、そのどれが正解なのか解らない。
あの攻撃が何処を狙っているのか見えないからだ。
だから昨夜もさっきも、思うように身体を動かすことが出来なかった。
見えないから怖いのだ。
だったら、見ればいい。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:17:48.66 ID:uuGeaR/s0
- (;,,゚Д゚)「!!」
先ほどと同じ状況。
全てがスローモーションに見え、回転する刃の輝きさえも捉えられる。
その瞬間だった。
――見えた。
線が見える。
血のように赤い線が、曲刀と自分の身体を繋いでいる。
(;,,゚Д゚)(ってことはッ!!)
左前、十時方向。
その方向へ身を動かせば――!
川;゚ -゚)「なっ」
(*;゚∀゚)「にィっ!?」
ヒュ、という風を斬る音が背後で鳴った。
回避成功の証だ。
(;,,゚Д゚)(俺SUGEEEEEE!!)
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:20:41.29 ID:uuGeaR/s0
- まさか成功するとは。
いや、思ってはいたが、実際に現実となると興奮を隠せない。
何しろ攻撃の軌道を視覚化したのだ。
(*;゚∀゚)「ちぃ……!」
回避した気迫を危険と読み取ったのか。
二本目の曲刀を投げる前にバックステップし、ギコと距離をとった。
(;,,゚Д゚)「っとっと」
慌てて足を止める。
これ以上踏み込むと、視覚化して反応する前に斬られそうだ。
とりあえず相手の戦意を削ることくらいは出来たはずなので、保身に入る。
川;゚ -゚)「な、何だ今のは……?」
追いついてきたクーが目を見開いていた。
当然と言えば当然だ。
彼女からすれば、どの面から見ても完璧な回避だったのだから。
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:23:39.59 ID:uuGeaR/s0
- (;,,゚Д゚)「いや、俺もよく解んねぇんだけど……軌道が見えるっていうか」
川 ゚ -゚)「軌道が……?」
(;,,゚Д゚)「赤い線として見えるんだ。
この攻撃はどうやって飛んでくるのかっていうのが」
川;゚ -゚)「それは、つまり――」
危険の視覚化。
降りかかる危険を、事前に目で捉えることが出来る。
未来予知に等しい能力だ。
川;゚ -゚)「馬鹿な、そんな力など聞いたことがない。
そもそもそれだけの能力を持つお前が、あんな平穏に暮らせるわけが……」
(;,,゚Д゚)「いや、見えたのはさっきのが最初なんけど……」
川;゚ -゚)「……ということは、今の回避はぶっつけ本番というわけか?」
( ,,゚Д゚)「え? あぁ、そうなる」
川;゚ -゚)「この馬鹿! 偶発的に見えたものを信じて突撃するなど馬鹿がすることだぞ!」
(;,,゚Д゚)「いや、その……ごめんなさい」
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:26:20.41 ID:uuGeaR/s0
- 川 ゚ -゚)「まったく、お前は何という――」
こんな状況で説教を始めるクー、というか
(;,,゚Д゚)(何か口調が変わってねぇか……?)
いや、今はそんな些細なことに気を取られている場合ではない。
もっと言えば説教など受けている場合でもない。
(*;゚∀゚)「何が何やら……」
敵が動揺していることから、まだギコの能力に気付いていないようだ。
そこでクーが一歩踏み出す。
川 ゚ -゚)「去れ、お前に勝ち目は無い」
(*゚∀゚)「何だと! そりゃどういう意味ヨ!」
川 ゚ -゚)「この男は未来予知の能力を有しているのだ」
(*;゚∀゚)「な、なんだってー!?」
川 ゚ -゚)「二回も連続で攻撃を避けたのが証拠だ。 既にお前の敗北も見えているそうだぞ」
(;,,゚Д゚)(ちょ、そんなの信じるわけが――)
(*;゚∀゚)「ワ、ワタシ負けるのカ! そりゃ嫌だヨ!」
(;,,゚Д゚)(馬鹿でよかった)
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:28:20.44 ID:uuGeaR/s0
- 川 ゚ -゚)「これは親切心で言ってやっている……今、この場から去れば負けることもあるまい」
(*;゚∀゚)「そうだヨ! 今なら間に合うカ!」
川 ゚ -゚)「私達は、襲われない限りは危害を加えたりしない。
現状を理解したならばさっさと去れ」
(*;゚∀゚)「お、憶えてろヨ! 次はギッタンギッタンにしてやるからネ!」
中国風の女性は一目散に離脱していった。
馬鹿だ。
あいつ馬鹿だ。
ギコからすれば冗談のような話だが、彼女達から見れば本当にありえるのかもしれない。
そもそも住んでいる世界が異なるのだから、こちらの常識は通用しない可能性が高いわけだが。
( ,,゚Д゚)(そこら辺、ちょっと気をつけねぇとな……)
さて、それはともかく当面の危険は去ったようだ。
密かに安堵の息を吐き、クーの方を見やる。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:30:47.23 ID:uuGeaR/s0
- 川 ゚ -゚)「どうにかなったようだな」
(;,,゚Д゚)「あ、あぁ……助かった、ありがとう」
礼の言葉を言う。
何にせよ、あの女を退けたのはクーの言葉なのだから。
それを聞いた彼女は笑みを漏らし
川 ゚ -゚)「いや、助けられたのは私かもしれない。
あのまま戦っていたら、どうなってしまうか解らないからな」
( ,,゚Д゚)「……どういう意味だ?」
川 ゚ -゚)「ともかく移動しよう。
話をするにしても、落ち着くにしても場所が悪い」
( ,,゚Д゚)「別にいいけど逃がさねぇぞ」
川;゚ -゚)「お前は本当に頑固だな……ちゃんと解ってるさ」
とりあえず疑問には答えてくれそうだった。
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:32:45.25 ID:uuGeaR/s0
- 川 ゚ -゚)「それに夜の中を歩くのも危険だしな。
どうせなら屋根があって、御飯や泊まる場所があるのが望ましい」
( ,,゚Д゚)「え、それって……」
川 ゚ -゚)「何処か、条件に合う良い場所を知らないか?」
などと平然な顔で言ってきた。
だからギコとしては、こう答えれば良い。
( ,,゚Д゚)「……あるぜ、俺の家は無駄に広いしな」
川 ゚ -゚)「そうか。 なら道案内を頼むよ。 この辺りの地理には疎いんだ」
棺桶を肩に担って歩き始める。
その後姿に向かって、ギコは無意識に質問を投げかけていた。
(;,,゚Д゚)「あ、あのさ……アンタの名前は何て言うんだ?」
『クー』とは聞いていたが
それが本名なのかコードネームのようなものなのか、イマイチ判断がついていなかった。
これを機会に、冷静になった頭で聞いておこうという魂胆である。
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 15:34:24.74 ID:uuGeaR/s0
- 川 ゚ -゚)「名前か」
問いに対し、彼女は振り向いてこう答えた。
川 ゚ -゚)「私の名は『クー=ルー』。
クーでもルーでも、お前の好きな方で呼んでくれ」
月下。
薄い明かりの下で彼女は名乗った。
その姿。
その声。
その顔。
朝や昼には気付かなかった自分が信じられない。
背景雰囲気、全てまとめて一つの絵画かと思ってしまうような。
溜息が漏れるほど、その姿は美しかった。
――――――――――――――――― To be Continued ――――
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