( ^ω^)がサイレンの鳴る雛見沢でわらべ唄を歌うようです

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/09(土) 22:45:21.41 ID:YGoE3WQx0

八月十九日 午後


そして四度目のサイレンが哭く



やがて街が見えてきた。
よかった。これで助かる。
血だらけだし、ああそれに刀なんて持っていては怪しまれるな。
だけどどうしてだろう、手が刀から吸いついて離れようとしない。
いやだなあ、力を入れすぎていたせいだろうか。

とりあえず刀はそのままに、ぼくはゆっくりと視線を上げた。
そこにあるはずの街を見るために。
平和な、血なんて滅多に流れない、ふつうの世界を。

ふつうの、世界、を。



97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/09(土) 22:47:28.42 ID:YGoE3WQx0

( ゜ω゜)「……………」

その時ぼくは見たのは、平和な街などではなかった。



ぼくが見たのは、―――絶望だった。



( ゜ω゜)「なん…、で……?」



101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/09(土) 22:48:43.58 ID:YGoE3WQx0

眼下に広がったのは、灰色の街。
そう、あの村と同じ。
草木は枯れ、かわりに、あの木が、
…ミノムシの木が、あたり一面に生えていた。

「うう、…ウ、実の蟲、みのむしホシい…み、の蟲……」

(;゜ω゜)「ひッ…!」

実の蟲をもとめ、さまよう、ニンゲンたち。
いたるところで実の蟲をもぎとり、むしゃぶりつくニンゲンたち。

( ゜ω゜)「なんで…なんでこんな…」


(´・ω・`) 『これってミノムシの種だよね。ちょっと持って帰ろう。
      少しくらい、大丈夫だろう。あれすごくおいしかったからね、自分でも植えてみようと思うんだ』


(;゜ω゜)「アあ…あ……そんな、そんな!!!!」



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/09(土) 22:49:42.82 ID:YGoE3WQx0

みのむし ぶらりんしゃん 
みのむし ぶらりんしゃん

どこからか響く、わらべ唄。
実の蟲を讃え、求める、忌まわしき唄。

せっかく、助かったと思ったのに。
生きて帰れたのに。
こんなの嘘だ、夢だ、夢に決まってる。
悪い夢を、ずっと見ているんだ。

ああ、なんで、なんでこんな、かみさま――

その時、ひとつの音が空気を震わせた。



108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/09(土) 22:50:50.59 ID:YGoE3WQx0

サイレンだ。

悲しげに、四度目のサイレンが、哭いている。

ごめん、もうだめだよ、ドクオ。
だめだった、だめだったよ。

(  ω )「もう、いいんだお、警告はもう要らないんだお…」

サイレンは鳴り止まない。
さらに強く、鳴り響く。
それはぼくに何かを、警告以外のなにかを訴えているようだった。



111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/09(土) 22:54:10.99 ID:YGoE3WQx0

( ^ω^)「…生きろと、言っているのかお、ドクオ」

手元を見る。
握り締めているのは、日本刀。

たったひとつの、ぼくの武器。

そうだな、ドクオ。
太陽は昇らないかもしれない。
もう一度血を流すかもしれない。
それでもぼくは。


―――生きてやる。


こうなったら、絶対に生き延びてやる。
ぼくは死なない。絶対に死なない。


ぼくは太陽の昇らぬ空に、日本刀をかかげた。
サイレンがあたりを包み込み、いっそう強く響いた。






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