( ^ω^)机は繋がり僕らは出逢うようです。

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:07:00.16 ID:kzzDN7ps0
やがて僕らは繋がる。

茫漠とした距離を跨いで、横たわる永劫の溝を越えて、

そうして僕と君は出逢う。
きっと、やたぶん、じゃなく

( ^ω^)「絶対に、会えるお」

人気のない教室。最後列、出入り口に一番近い廊下側。
軽くそれらを見渡して、僕は自分の机をなぞる。
『絶対なんてこの世にはないよ。絶対に。』
整った字体を脳裏に思い浮かべて、小さく笑った。

朝日を背中で受けて、ああこれが全部のスタートラインだったんだと柄にもなく感慨深く頷いてみた。
窓から燦燦と注がれる日の光を一身に受ける自分の机を見、
出来るだけゆったりとした動作で両腕を天に掲げて、伸びをする。

凍った氷が溶けて行くように、時計の針が一日分進んでいく。
そうして今日が始まって行く。

これは僕と、
そして彼女

僕らを繋ぐ物語。

( ^ω^)机は繋がり僕らは出逢うようです。
《 そのいち 落書きつくえ》



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:08:18.62 ID:kzzDN7ps0
『眠い、眠い眠い眠い……眠いお……』
頭が下に行ってはまた浮上している。
心なしか視界に入る物の割り合いが黒板からノートに刻一刻と移っているような気がする。
最後列、出入り口に一番近い廊下側。寝るのと授業を聞き流すには最高のポイントだ。


「この因数分解の公式は絶対に覚えとけよー」
水面下の意識を繋ぐのは、公式を読み上げる数学教諭の声と
自分が当てられた時を仮定する恐怖のみ。


『えっ、今どこっスかお?』
『103ページだ授業中に寝るなバカモン』

この。
この103ページの更に詳細で重要な問題を探し当てる時間の、どうしようもないやるせなさを思う心だ。

生真面目に授業受ける奴のため息なんて聞こえてきた日にはどうすればいいんだ。
その上に当てられた問題が解らないとかになると自分の運命を呪いたくもなる。
しかし漕ぎ出した船はそう簡単に引き戻せなくて。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:08:59.92 ID:kzzDN7ps0
腰を落として、腕で簡易枕を作る。
僕を繋ぎ止めていた一抹の思いはどこかに消し飛んだらしい。

「期末テスト近いからな。だらけるなよ、諸君。」

諸君って勿論僕も含まれてるおね。ってな訳であくびを1つ。
悪い姿勢を取っているせいか少し痛む腰。僕は筆箱を漁る。
中からシャーペンを取って、その黒鉛を机に向けた。


( ^ω^)『うっうっうー♪ 時間の果てまでブーン♪』

軽快なメロディを頭の中で再生する。
3分とも掛からず机上に出現したイラスト。

        ヽ     
         (^ω^)-┐
       ┗-ヽ ノ
         ┏┘

この小生意気なフェイスは僕をデフォルメ化した物で、
結構ムカツクと人気である。ムカツクと言う評価が果たして良いのか悪いのかはさて置いて、
僕自身も結構気に入ってたりしてる。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:10:30.92 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「……やっぱりかお」

机に書いた落書きほど上手く書けるのは何故なのだろう。
しかもそれを書き写そうと思うと失敗する。
もしかするとこれは偉大な発見になるかもしれない。
……どうでもいいか。

ため息一つ。
消しゴムを取り、イラストに押し当て、

( ^ω^)「…………」
なんだか消すのもためらわれた。小さく息を吐く。
両腕でバリケードを作り、そのまま机へ寝そべった。


惰性と緩慢で形成された毎日を省みる日はいつか来るのだろうか。
僕としては、僕の30代とか40代なんて一生訪れないような気がする。
哲学的だけど非量産で、なんか中学二年生的な思考がぐるぐると回り、それはやがて眠気に変換されていく。


段々と意識から離れていく数学教諭の声。
小さく息を吐いて、また吸って。そうして思った。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:11:34.26 ID:kzzDN7ps0
青春って、こんなもんかお?


限りある化石燃料、つまりは青春を無駄に燃え尽くす高校2年の梅雨始め。

そんなこんなでこれが始まり。
日本中探さなくても山ほどあるような、没個性的なありふれた一コマ。


こんななんの変哲もない感じで、僕らの物語は始まる。


《そのいち 落書きつくえ。》 終
                そのにに続く!



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