( ^ω^)机は繋がり僕らは出逢うようです。

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:29:09.13 ID:kzzDN7ps0
《そのさん 一筆けいじょう。》

意識が浮かび上がってきた。

体は喧騒の中で、授業終わってたのかと、漏れたのは嘆息。
むくりと起き上がり、内藤ホライゾンを始動する。ピコン。起動音。
黒板を見、そして気づいた

( -ω-)「あ、ノートとり忘れてたお」
え、何さっそくフリーズ?
真っ白なノートと前方の黒板を交互に見る。

( ^ω^)「……うん、テスト前にショボンに泣きつけばいいお」
眉を下げながら、何で取ってないんですかと僕をなじりながら、
それでもノートを差し出してくれる友人を精密に思い浮かべる。
そしてそのノートをVIP高の核弾頭ことハインリッヒ高岡に奪い去られることも完璧に先見する。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:30:09.43 ID:kzzDN7ps0
(; ^ω^)「…………」
僕の頭の中限定で流れる微妙な空気。……さて、それはともかく。
ノートもさる事ながら、大問題が起こっているのだ。


すなわち、肝心な机の返信がまったく出来てない。
……ノートとこれどっちが学生として重要なのかとかは、推して知るべし。

( ^ω^)「どう書きゃいいかわかんないおー……」
人間熟考すればする程煮詰まるもので、それを身をもって体験してたりする僕。
うんうん。そういう時こそ、

(^ω^ )「とりあえずリサーチ」

他力本願とも言う。





23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:31:40.37 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「おーい、ショボンー」
窓際の三列目、授業をサボるにはいささか教師の目が届きすぎるけれども、
隣りが窓って所を汲むとまあ別に良い席って思ってもいいかななんて感じの場所。

僕の席の基準は授業をサボれるかどうかなのか、
なんてのは聞くだけ野暮と言う物だ。
とにかく、そこの位置に座って外を眺めていたショボンに近寄った。

ショボンといえばこちらに気づいたなり、そのまま座礼する。
こちらも妙に畏まって礼。ほぼ反射。

……なんでこんなに緊張するのか不思議だお。
どうかしましたか。ちなみに両手は膝にきちんと添えられている。本当に不思議な奴だ。

( ^ω^)「いや、なんかそう深刻そうな顔して聞かれると困るお」
空笑い。
どうせ僕の口から発せられる話題なんて高が知れているんだ。
気を張らなくてもいいとは思うのだが、相手の話に全身全霊を持って耳を傾けるのが
ショボンと言う、あるいは裏千家なんとか流の性質らしい。

背後に茶室ぐらいあっても違和感ない。
そう言うスタンドですって言われたらたぶん納得する。
閑話休題。

( ^ω^)「えーっと、ほら、例の机の返信に迷って」
なんかいい案ない? 付言すれば、顎に手を当て瞑想するショボン。
そうですね。ワンクッションが入って、



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:33:44.21 ID:kzzDN7ps0

(´・ω・`) 「暑気日ごとに加わり初蝉の声きく風待月のこ……」
(; ^ω^)「ストッ、ちょww ストォォオップッッ!」

はい? や、小首傾げられても困る。
顎に手を当て迷走するショボン。ワォ、うまく言えてたりする?
僕らの間に流れる微妙な空気。高校一年の一学期初クラス、
その自己紹介の時にいきなりただの人間には興味ありませんとか言い出した感じ。

( ^ω^)「それ重い」
(´・ω・`) 「はあ……、すみません」
って言うか、こいつ本当に高校2年か。

ありがとう(全然参考にならなかったお!)
喉の先まで出てきた後半の言葉を、また無理やりに胃の方に返して、ショボンに手を振る。

だめだ。次。





25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:36:34.27 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「高岡ー」
教室の真ん中に陣取りながら、二、三人の女子と会話をしていたハインリッヒに声をかける。
先に言っておくけど全然期待してない。

从 ゚∀从「あー?」
*(‘‘)*「お、ブーンどうしたの」
川д川「…………」
声を掛けて来たり、あからさまに身引きしたりするハインリッヒの友人。
ちょっと質問があるんだおー。と一声。

从 ゚∀从「何」
( ^ω^)「いや、ほら、例の机のメッセージへの返信」
('、`*川 「あー、それ今高岡から聞いてたよー」
*(‘‘)*「なんかすごいロマンチックよね」
川д川「……そう?」
わいわいと会話を広げようとする女子と軽く笑いあって、

( ^ω^)「なんかいい案無いかお?」
と一言。
聞いとくだけ聞いとけ。ちょっぴり投げやり思考。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:38:09.59 ID:kzzDN7ps0
川д川「……愛しています、だから私は何も語りません」
('、`*川 「シェークスピアか」
从 ゚∀从「欧米か」
シェークスピアは西洋だよ。伊藤さんの知的な突っ込み返しですらもうどうでもいい。
女子の反応は打って響きまくった鐘のようだ。僕若干引き気味。
何ですか。皆さんそう言う気障な奴がご所望ですか。


*(‘‘)*「人と場合と財政によるわね!」


沢近さんが言う。うわなに一番最後生々しい。

川д川「女の子は狡猾じゃないと生きていけない、から……」

サダッチーこと貞子さんが言う。何か触れてはいけない世界な気がするお。
ふとハインリッヒ高岡と目が合う。なんか凄いイイ笑顔でこっちをみながら、

Σb从>∀从「Don´t think, feel!」

(; ^ω^)「ようはいい言い回しが思いつかんかっただけじゃまい……」
从 ゚∀从「なーんかいった?」
そして女子陸上部砲丸投げ部門のエース、ハインリッヒ高岡からのヘッドロック。
し、死ぬ……!!
(;;^ω^)「なな、ななな何も無いですお!!」



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:39:40.47 ID:kzzDN7ps0
そしてジャストタイミングに鳴る授業開始のベル。ある意味福音。

ありがとう(全然参考にならなかったお!)
喉の先まで出てきた本日二度目の後半の言葉(これを言ったら殺される。)を
また無理やりに胃の方に返して、僕たちは席にもどった。


もうなんかみんなだめだ。


そうして僕が結局書いたのは

『初めてそう言われたお! ありがとう』

すんごい普通。
僕と言う人間を正確に表しているように思う。
いろんな意味で等身大。笑える。





28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:40:47.32 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「ってな事があったんですお」
ジュコココココ。もてなされたコーラを飲み干してから、僕はストローの先を噛んだ。
この部屋は少し埃っぽい。
それは締め切ったカーテンと固く掛けられた窓の鍵のせいだ。

3年前からこの部屋の主は外界との交信を一切遮断している。
電気灯の青白い光だけが発光源の部屋。
年がら年中それを浴びまくりの家人は、
3年前の風貌からまったく変わっていないようにも思えた。

外に出たほうがエネルギー使って余計老けるって事だろ。
カラカラと笑う家人は記憶に新しいが、やはりずっと前の記憶と瓜二つである。

世に言うひきこもりだ。

('A`) 「そうか。で、俺になんて言って欲しいんだよお前」
ひきこもりこと家人のドクオが、デスクワーク椅子で回りながら僕に問うた。
いや、あのねぇチミ。ストローから口を離す。

( ^ω^)「ドクオがなんか今日あったかって言ったから話しただけだお」
('A`) 「俺のせいですかそーですか」
ため息とその言葉を返される。歯噛みしていたストローから口を離して、



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:41:34.61 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「義務をまっとうした僕に何かプリー」
('A`) 「俺のコーラでも勝手に飲んどけ」
( ^ω^)「間接キッスっすかお」
('A`) 「絞めるぞ。」
冗談だお。そして冗談じゃねぇお。
露点に達して、表面の濡れ始めたコップを手にとって本日二杯目のコーラを啜る。
ドクオの部屋へ来て遊ぶのはほぼ日課だ。

それは何も先生やドクオの両親に促されてやっている事ではなくて、
僕自身もここに毎日来ている理由はよくわからなかったりする。
しいてあげるなら「なんとなく」

この閉鎖空間のような場所が気に入ってたりするのかも知れないし、
ただ単にドクオが気の置けない仲だからなのかも知れない。

( ^ω^)「つーかドクオには持久力ってもんがないお」
('A`) 「は?」

( ^ω^)「中三になってパッタリ学校も、つか外に出なくなるし」
('A`) 「あー、はいはい。またその話か」

( ^ω^)「長距離走者がそれでいいのかお」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:43:12.35 ID:kzzDN7ps0
小学校からの腐れ縁であるドクオに僕は語りかける。
コーラの炭酸が口の中にまだ残っていて、パチパチと攻撃するように発泡している。

少し説明をしよう。
中学に上がってから、僕とドクオは仲良く陸上部に入った。
そこでドクオは長距離を専門種目にしたという事に、僕の発言は帰来する。
持久力と粘り強さが求められる長距離走者がそれでええんかと言うのが僕の持論。

('A`) 「阿呆。長距離に求められるのは持久力なんかじゃねぇよ」
( ^ω^)「ほぉ……?」

これは興味深い。ドクオが首を一回しする。コキリ、と骨がなった。
時計の針が時間を刻む音と、パソコンの起動音だけが響いている。そんな中でドクオが言う。


('A`) 「諦め。諦めだよ、長距離に大切なのはな」


くあ。欠伸をするのもめんどうくさそうだ。
……って、いやいや。何で?
ドクオの言葉は、僕の持論とは真っ向から対立するものだ。と言うか、それで、いいのか。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 18:44:01.03 ID:kzzDN7ps0
('A`) 「走りきらなきゃ終らんのが長距離だからな。
あー、もうここでいいやーとかあの地点ついたらそこから歩こうとか、
そう言う念を俺らは常に諦めなきゃいかん。」

( ^ω^)「………………」

唐突気味ではあるが、僕はその時過去に一度
何故外に出ないのかとドクオに詰め寄ったことを思い出した。

『さあ? ぜんまいでも切れたんだろ』

そう言えば、あの時もドクオはどこか諦めたように笑っていたように思う。
あの時からこの、目の前の長距離走者は何かを諦めていたのだろうか。

('A`) 「解ったかコラ短距離走者」
( ^ω^)「勉強になったようでならなかったお長距離走者」
ふざけ合って笑い合い、僕らはダウナーに時間を潰していく。
よしっ。と立ち上がったドクオは、やはり何かを諦めたように笑い、

('∀`) 「モンハンやるか」
( ^ω^)「おー。今日はドラゴン狩り祭だおー」

たぶん、青春ってこんなモンだ。

    《そのさん 一筆けいじょう。》終
             そのよんに続く。



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