( ^ω^)机は繋がり僕らは出逢うようです。
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:03:23.54 ID:Waa+rs2n0
- 《そのじゅういち 明日のありか。》
('A`)「なあ、クー先輩は痛かったと思うか? 親友に裏切られて、トラックに轢かれて――
死ぬ間際ってさぁ、暖かくて寒いってよく言うじゃん? 本当なのかね、あれ」
(♯^ω^)「ドクオお前ェッッ!!」
怒声、と言うより僕の声は怨嗟の色が濃く出ていたように思う。
立ち上がり、ドクオの襟首を掴んで引き寄せると言う行為は純粋に怒りから来るものだったけれど、とにかく。
――――結果的に、
(♯^ω^)「………………ッ」
息を飲んだのは僕の方だった。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:04:47.01 ID:Waa+rs2n0
- 視線を無理矢理合わせたと言うのに、ドクオの焦点は僕にない。
まるで僕と言う穴から、どこか遠くの風景を見ているように笑っている。
その光景に思わずたじろぐけれど、ちっぽけな矜持は手を離す事を許さなかった。
拳に力を込めて、僕は再度ドクオを見た。
(♯ ^ω^)「お前は言って良い事と悪い事も解らなくなったかお……ッ!」
(♯'A`)「やって良い事と悪い事も解んなくなったのかよテメェはァッ!」
ほぼ同時に言い合った。
憤慨と悲憤、そう言う、マイナスの怒りがミキサーに掛けられてぐちゃぐちゃになったような感情。
その声が壁に反響して消えていくにつれて、沈黙がその割合を増して行く。
いよいよ無言になった僕らに、不愉快な感情がその牙を剥く。
それは怒りや悲しみなどではなく――
(^ω^ )「……帰るお」
('A`)「…………」
ドクオの襟首から手を離す代わりに、床に置いてあった自分の鞄を取る。
一度もこちらを向こうとしない彼を一瞥すれば、舌打ちが漏れた。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:08:12.61 ID:Waa+rs2n0
- ドアノブに手を掛け、回す。それを一気に引く。
そうして漂って来たどこか場違いな夕飯の匂いにもう一度舌打ち。
「高岡に会え」
声。肩が振れるが、振り返るような真似はしない。
発生源は一つしかないし、消去法を適応させるまでもない。
無言で廊下に出る。後ろ手に閉める間際、
('A`)「これ以上逃げ続けるつーんなら、諦めないって言うんなら、
俺はブーン、お前を絶対に許さないからな」
声。扉が閉じた。
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:10:40.37 ID:Waa+rs2n0
- ( ´ω`)「………………」
壁によりかかり、そのままずるずるとしな垂れ落ちる。
せり上がって来たのは、またあの例の不愉快な感情だ。
それは怒りや悲しみなどではなく――
( ´ω`)「――……畜生ォ」
自己嫌悪。
/
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:12:03.06 ID:Waa+rs2n0
- 从 ゚∀从「「ブーン(高岡)、ちょっといいか(お)?」」(^ω^ )
从 ゚∀从「「……お?」」(^ω^ )
朝一番に交わした言葉がまったく一緒だったってのは、どんな巡り合わせなんだろう。
しかもそれはおはようでも拳でもない訳で。
間抜けにも口を空けたままの僕と、目を見開いて手は顔の辺りで浮遊中と言う、
レアで間抜けな表情を見せるハインリッヒ。新たな一面を見た。
…………。
朝一番に咀嚼するこの沈黙。雨音だけが間を流れる。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:13:54.60 ID:Waa+rs2n0
- 从 ゚∀从「……なんだよ」
( ^ω^)「……そっちこそ」
宙ぶらりんだった拳をハインが握り締める。
皮と皮、筋肉が極限にまで固まった時に出る鈍いギュウと言う音。
(; ゜ω゜)「い、言います、言いますお!」
扇風機の振り子機能如く首を横に振る。縦にも振る。
頭を占める一念はただこれだけだ。いこーる シニタクネェ。
*(‘‘)*「またイチャついてんのか、アンタら」
川д川「…………乳繰り合ってんのか」
その思考を裂くようにして、女子の声がした。
玉を転がすような可愛らしい声を、砲丸投げのプリンスもといハインリッヒが出せる訳はない。
まあ声がした方向やら、さっきから視界の端にちらつく二つくくりの黒髪から見てもそれは一目瞭然ではあるけれど。
って言うか後者の生々しい単語が耳にへばり付いて離れないんだけど。
今僕は心の底から事実無根だと叫びたい。その上で抹消したい。
女の子がそんなこと口にする者ではありませんとも言いたい。僕は親か。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:15:38.92 ID:Waa+rs2n0
- 从 ゚∀从「はよ、ペニサスにサダッチー」
*(‘‘)*「おっはー」
川д川「……よう」
僕が無駄な思考をフル回転でまわしている間に、ハインは答えを述べた。
あの苦労と言うか脳みその中のツッコミはどこに行けばいいんだろう。
川д川「……内藤君は女の子に夢、見すぎ」
*(‘‘)*「ブーンキモチワルイ」
(; ^ω^)「きっ、キモチワルイとは何事ですか沢近氏ぃ!」
从 >∀从「キモチワルイ」
さらりと便乗して留めを刺しに来るハインリッヒ。
物凄いイイ笑顔で言い切りやがった。
(; ^ω^)「お前らはよってたかって、」
貞子さんが肩に手を置く。言葉が遮られる。そして、
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:16:53.92 ID:Waa+rs2n0
川д川「……気持ち悪いってキモイの最上級のこと」
真の刺客は味方の内に。囁くように言われた。
沢近さんとハインリッヒがだなだなそうだなとか言って同調してくる。
( -ω-)「……このうらみはらさでおくべきかお」
ぽつりと呟き、そして笑った。
どこか懐かしい感じすらするこの雰囲気に、だろうか。
最近ご無沙汰だったからなぁ、なんて思うとまた笑いが漏れた。
その僕を見やる彼女たちは一様に、
*(‘‘)*「ブーンキモチワルイ」
从 ゚∀从「前々から思ってたけどマゾだな、お前」
川д川「…………変態」
こ い つ ら ……!
反論しようと口を開きかけた所で、チャイムが響く。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:18:44.31 ID:Waa+rs2n0
- それで何が変わるでもないだろうが、ハインがスピーカーの方を向いた。
从 从ノシ「おう、じゃあな」
そして言う。そのまま自分の席の方へ歩いて行こうとする。
その仕草につられる様にして、沢近さんも自分の席に戻って行く。
(と言っても僕の隣なのだけれど)そして僕の隣に、生暖かさがある。
(^ω^ )「…………お?」
川д川「…………」
横に感じた気配に、首をそちらに回せば視界に入って来たのは
艶の良い黒髪、糸を垂らしたように繊細な。
僕よりも遥かに手入れの行き届いたそれと、僕よりも少し低い身長の女の子。
(; ^ω^)「貞子、さん?」
川д川「内藤君」
( ^ω^)「お?」
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:20:06.97 ID:Waa+rs2n0
川д川「ハインは、本当は誰よりも臆病なの」
呟くように、囁くように。蝶の羽音みたく小さな声で貞子さんは言った。
この喧騒にかき消されないのが不思議な位の声量。
(; ^ω^)「なにを、いきなり――」
川д川「だから……」
ちゃんと彼女を見てあげて。彼女は確かに、そう言った。
『あいつはいつも遠まわしだからのぉ』
荒巻先生の言葉がリフレインされる。……なんなんだ?
( ^ω^)「あいつの、どこがだお?」
僕は言い、それから待つ。
黒髪の間から覗く、貞子さんの形のいい唇が小さく震え――
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:24:19.18 ID:Waa+rs2n0
「ほら、席つけ席ー」
前方から数学教師の声がする。
蜘蛛の子を散らしたように各自自分の定位置に戻るクラスメート。
不動のように思われていた貞子さんの体が小さく動く。
川д川「たいむあっぷ」
貞子さんが言う。
( ^ω^)「の、ようだお」
僕も言う。笑い合い、それから貞子さんは小さく、
それこそ消えかかる蝋燭の火のように、お願い。とだけ告げた。
( ^ω^)「なにお、」
僕の言葉が伝わるよりも早く、彼女が背を向ける。
もう僕へ向ける事はないと、貞子さんの小さな背中が代弁していた。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:26:56.28 ID:Waa+rs2n0
- ( ^ω^)「…………」
もしくは、僕の言葉は全て、貞子さんが着込む制服の深い紺に吸収されたのだろうか。
引き止め聞き出すことも出来なければ、このままの状態で声を張ることすら到底無理なことのように思えた。
『俺は……わたし、はっ!』
過去が白昼夢のように迫ってくる。喧騒の中、僕はただ無言だった。
下がってきた眉尻を指でマッサージしてから、鈍い動作でイスに座る。
見渡した教室には、教卓に授業の用意を広げる教師とクラスメートの後頭部。
(^ω^ )「……お?」
そう言えば。呟く。
「須田ァー、須田は? ……休みか」
ショボンの声を聞いていない。窓際の、ショボンの席を見ても、彼の姿はない。
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:30:00.18 ID:Waa+rs2n0
- ( -ω-)「…………」
梅雨の湿気、朝の倦怠感。
体の中を徘徊するそれらを抱きかかえるようにして、僕は机の上に寝そべった。
そのまま瞼を閉じて、眠気を浸透させていく。
ザアザアと、ザウザウと、いつか聞いた木擦れの音のような雨音がする。
そうして段々と意識は沈んで、やがて浮かんでくる時を待つ。
『――――お前は陸上をやる為に生まれてきたんだ』
『お前が走らなくてどうするんだ――』
誘蛾灯に導かれた羽虫たちのように、言葉が僕に降りかかってくる。
僕の足はとうの昔にひしゃげたと言うのに、それでも群がってくるそれらはまるで亡者だ。
ぜんまいが切れたのかも知れない。いつ、と言うのは思い出せない。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:32:22.61 ID:Waa+rs2n0
- 『諦め。諦めだよ、長距離に大切なのはな』
僕が諦められるんだろうか?
『ヤマアラシだの。『自己の自立』と『相手との一体感』という欲求の、ジレンマ』
僕に何が出来るって言うんだろう。
『私は、君の方こそ――』
――僕は、
「……ン、ブー…………っち、内藤ホライゾンッ!!」
( ゜ω゜)「は、はいおぇ!!!??」
耳が痛てぇ。勢い良く立ち上がる。
ぎい、木製の椅子が一度悲鳴をあげ、大袈裟な音を立てて倒れた。
(^ω^ )「………………」
いつか味わったような微妙な空気が流れる。
視界にはジト目でこちらをみるヘリカル沢近。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:36:19.50 ID:Waa+rs2n0
- *(‘‘)*「大丈夫? 随分うなされてたみたいだけど」
( ^ω^)「……心配するんならもうちょっと優しく起こして欲しかったですお」
*(‘‘)*「ごめんごめん。でも流石に4時間も隣で寝息交じりに
うんうん唸られたらそりゃむかっ腹も立つって☆」
( ^ω^)「語尾に星ってどうなんですかお☆」
*(‘‘)*「ブーンキモチワルイ」
( ^ω^)「一度とならずニ度までも言いますかお。ってか、あれ?」
会話のほうれん草が歯に詰まる。
どうも変な数字が間に挟まっていたような気がした。
歯車が合わないまま周り、思考の金属が軋む音がする。
( ^ω^)「4時間……?」
*(‘‘)*「今昼休み。ブーン、アンタ何しに来てんの学校に」
教室内を見渡す。鼻についたのは、油とソースの、弁当の匂い。
動かされた机、財布を持ちつつ教室を出て行くクラスメート。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:38:27.21 ID:Waa+rs2n0
- 教室に残る組の机の上には、大小さまざまな弁当箱。
腕時計を見た。
12時33分。
(; ^ω^)「えーっと、……寝に?」
*(‘‘)*「保健室いってら」
朱印を押すかのように、額に沢近さんの手が添えられた。
ぐらりと鈍く頭痛がする。あー、もう。と呟き、それから。
( ^ω^)「いってきますお」
ため息。
そうして立ち上がり、廊下に出る。出て行き際に沢近さんからお大事に、と言われた。
( ^ω^)ノシ「おっおー」
手を振り、敷居を跨ぐ。
喧騒が一瞬遠のき、また戻ってくる。まるで世界が切り替わったみたいだ。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:41:17.38 ID:Waa+rs2n0
- ( ´ω`)「なんで、今更にあんな夢お……」
歩きながら、独白する。よって来た眉間のしわと鈍い頭痛。
アレは高校入学当初によく見た夢だ。それでもここまで酷い事は今までなかったハズだし。
本当に、何で今更。出てくるのはため息と舌打ちばかりだ。
そしてあの最後の声の事を考えてみた。
『私は、君の方こそ――』
それは酷く、懐かしい声だったように思う。
誰の声だったのか、僕はどんな状態でその声を聞いていたのかとか、まったく思い出せないけれど
その声の人を僕は、僕らはとても尊敬していたように思う。
( ^ω^)「…………おっおー」
考えあぐねていれば、たどり着いた保健室の扉。
引き戸のそれに手を置き、引く。カラカラと音を当てながら開く扉の中に、
(ヽ´ω`)「しつれいしますお」
そっと弱々しげに声を投げ入れる。
休ませて貰うんだから、まあ一応は病人らしくね。
/
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:42:29.79 ID:Waa+rs2n0
- 帝紀2001年、独立宇宙ステーションVIPは侵略者に狙われていた――
内藤ホライゾンことブーン博士はVIP最後の希望として、
メイド美少女(?)型アンドロイド・ハインちゃんを開発する。
そうしてメイド美少女(?)型アンドロイド・ハインちゃんはストロガノフ皇帝が率いる侵略軍に挑むのであった!
新番組・冥土美少女型アンドロイド・ハインリッヒ高岡、
第1話「惨殺☆ 虐殺☆ 血の海に立つアンドロイド!」
……VIPの未来は、オレが守る!
( ´ω`)「………………」
なんだか別の意味で頭が痛くなってきた。凄いスペクタクルな夢を見たような気がする。
思い出したくないけれど、何かビニール製で露出度の高い服を来た昔馴染みが
バールのようなものを振り回している感じの夢を見たような気がする。絶対思い出したくないけど。
中学と違って高校の保健室は休息希望者を、よっぽどのことが無い限り拒まないからいい。
中学の時はサボりたい一心で、心拍数上げるために保健室までダッシュで行って、
息を整えてから入ったり、体温計を手で擦ったりしてどうにかベットで寝る権利を得ようとしたものだ。
ベットで横になりながら、少し昔の事を思い出してみたりする。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:45:53.14 ID:Waa+rs2n0
- 今は何時だろうか。確認したいけれども、起き上がる程の気力は無い。
時間を気にするくらいなら、もうちょっとベットでまどろんでいたい。そんな感じ。
( ´ω`)「……それにしてもすっげー夢だったお」
横になったままの姿勢で両手を天井に上げ、伸びをする。
ベット同士を仕切るためのカーテンが弱くはためいていた。
「内藤君、起きたの?」
ふくよかな、肉のついた女性の声が向こう側で響く。保健室の先生の声だ。
軽く相槌を打って、起き上がった。そのまま声を向こう岸に投げた。
( ^ω^)「先生、今何時ですかお?」
「6時間目終わって30分位かしら。それにしても良く寝たわねぇ」
パソコンのキータイプと音と一緒に、先生がくすくすと笑う。
きっと保健室の先生には仕草の試験とかがあるんだろう。どれだけ安心出来るかとかそんな感じの。……どうでもいいか。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:48:20.24 ID:Waa+rs2n0
- ( ^ω^)「成長期ですからお!」
「はいはい、それでも保健室を仮眠所にするのはよしてね」
バレてら。
立ち上がって数歩歩いた。
掛けていた眼鏡を外す動作をしていた先生がこっちを向く。
やさしくその肌に刻まれたしわと、やんわりと弧を描く口元。
これでも若い頃はブイブイやったのよ、と言うのはあくまで自称のことだ。
「――はい、これ保健室利用書。担任の先生に」
( ^ω^)「ありがとうございますお」
差し出されたA4サイズのわら半紙を受け取り、軽くお辞儀をする。
「内藤君」
(^ω^ )「お?」
「いってらっしゃい」
そうやって先生は微笑む。僕も軽く笑い、それから
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:50:46.88 ID:Waa+rs2n0
( ^ω^)「いってきますお」
/
( ^ω^)「ゆけぇ、ハインちゃん! 今こそ侵略軍を蹴散らすんだお!!」
从 ゚∀从「は?」
( ^ω^)「いや、もう本当こっちの話ですお、調子乗り過ぎましたおムシャクシャしてたんですお」
从 ゚∀从「…………遅い」
教室の扉を開けて、一番最初に目に飛び込んできたハネッ気のある黒髪を指さし、
反射で言い切った言葉を即座に撤回し謝った。脳みそに行く前に脊椎で全部処理されたな。
不躾にも教卓に座りながら腕を組んでいたハインリッヒが僕を睨む。
( ^ω^)「おっおー、いや、メイド美少女(?)型アンドロイド・ハインちゃんは
相棒の武器であるバールのようなものを携えて皇帝の侵略軍のドタマかち割り、
ちぎっては投げちぎっては投げ、立ち向かうんだお。
そんでもって独立自営宇宙ステーションVIPの平和を護ろうと…………」
从 ゚∀从「これ以上ふさげた事言うようなら、お前の頭陥没させてやろうかアァ?」
( ^ω^)「いやもう正直僕は何を言ってるのかすら今よく理解できてないんですお
ごめんなさいお懺悔の気持ちで一杯ですお!?」
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:53:29.88 ID:Waa+rs2n0
- 防御ラインとして両手を突き出す。拳はノーセンキュー放課後の喧騒から少し外れた自分の教室。
後方の連絡黒板では文化祭へのカウントダウン。
( ^ω^)「お、皆は……?」
从 ゚∀从「帰ったよ。文化祭2日前だっつーのにイカれてるなこのクラスは」
それでも笑いながら言うハイン。
そう言えば保健室からここに来る途中、他の教室では忙しなく準備をしていたように思う。
それらの音たちから蓋を被せたように、この教室は静かだ。
首を動かして見渡す。
从 ゚∀从「で、何だよ。話って」
( ^ω^)「はなし……?」
从 ゚∀从「朝なんか言い出してただろ、お前」
教卓から降りたハインリッヒが、数歩歩き出し喉を鳴らす。
空中に舞う埃が、ガラスの破片のように西日に反射して光っていた。
つられ肺に吸い込む空気も何処か埃っぽく、かすかに木材の匂い
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:56:46.63 ID:Waa+rs2n0
- ( ^ω^)「それはお前も一緒だお?」
こきり、首を回せば骨が鳴る。
あみだくじの動きのように、不規則な動きで机を横切り、教室を下っているハインを見た。
从 ゚∀从「俺はいいんだよ。それに多分、」
一旦言葉を止め、足も止めて彼女は振り向かないまま言う。
背中は微かに震えていたような気がする。それを問い詰めれば、ハインはどう逃げるだろう。
女の意地だとでも笑うだろうか。さして関係のない思考が回り、
从 ゚−从「俺の聞きたいことと一緒だと思うから」
ハインリッヒが振り向いた。
僕を捕らえる力強い視線と、真一文字に結ばれた口元。
何処か遠くのクギを打つ音が、僕の手の中にあったプリントの滑り落ちる音が、
迷い込んだ隘路の出口に光が差す音が、カタリと。聞こえた。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 12:58:53.17 ID:Waa+rs2n0
- ( ^ω^)「…………」
僕は息を呑む。
ハインリッヒの眉間に刻まれたシワは、フザケタ事を言える雰囲気を作らない。
僕は息を吐く。
自分が出来る限りの強い視線をハインに返し、対峙し合う。
腹をくくり、全部を受け止める決意と逃げないって誓いを立てて、
( ^ω^)「教えて欲しいんだお。三年前の事故の事。机向こうの――クー先輩の事を」
鮮烈な西日と共に、僕へ届けられる言葉は
从 ゚∀从「やっぱり、な」
その言葉。
眼光を和らげ、口元を歪めるハインリッヒ。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 13:01:21.56 ID:Waa+rs2n0
- ( ^ω^)「やっぱり、と言う事は話すつもりだったのかお?」
从 ゚∀从「藻川から話は聞いた。可笑しいとは思ってたんだよ。
お前がクー先輩の事、綺麗さっぱり忘れちゃうなんてさ」
藻川、と言う単語に思わず反応する。
それに気づいてか無意識か、ハインリッヒは軽くまた笑い、小さく息をついた。
从 ゚∀从「……ったく、こんな話。しないと思ってたんだけどな」
熟れきったリンゴとオレンジをドロドロに溶かしたような赤い光の中で、ハインリッヒが言う。
声は震えていないし、涙も浮かべている訳でもないのに
ハインリッヒの雰囲気は「泣き出しそう」にしていた。
( ^ω^)「……………」
从 ゚∀从「特に、お前には」
ハインが笑う。
その表情は微かな苦笑ともとれたし、脆い微笑のようにも、見えた。
《そのじゅういち 明日のありか。》 終わり
そのじゅうにに続く!
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