( ^ω^)机は繋がり僕らは出逢うようです。

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 19:13:31.09 ID:oeaWO8oL0
《番外編 乱売こんびにくえすと》

ピンポーン、とコンビニの警報機が作動して、軽い音を立てた。

从 ゚∀从「いらっしゃいぁ――」

自分の隣に立っていた同僚兼、クラスメート兼親友のハインリッヒ高岡が、
半ば呆然としながら固まる。口も『せ』の形でフリーズされていて、

うん、面白いな。

間抜けに開かれた口を右手で閉じさせてやる。
監視カメラなりでこれを確認した店長は何て思うだろうな。とかも思う。
蚊が止まってたんですとでも言っておこう。今冬だけど。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 19:16:10.85 ID:oeaWO8oL0
从 ゚∀从「ってぇ!」
少し意気よい良くやりすぎたんだろうか、舌を噛んだらしいハインが此方をにらんできた。
それに物応じする事なく、少し抑えた声量で正論を振りしてみたりする。

('、`*川「お客さまの前だぞ」
从 ゚∀从「…………違げぇ」
そうしてぽつりと漏らされたのは否定の言葉。
レジに両手を突いてうな垂れたハインを、ちょっと心躍る気持ち抑えながら見てみる。
こいつがげんなりする時は大抵面白い事が起きるのだ経験上。

('、`*川「?」
从'ー'从 「〜♪ 〜〜♪」
浮き足立った足取りで、出入り口のカゴをとる女性客。
紛れもなくその人は今入ってきた『お客様』で、私にはそれ以外の何者にも見えない。

('、`*川「どう言うことだ?」
そちらに顔を向けまいと全力でそれを逸らしていたハインに問う。
はぁああああ、と出てきたのは返答ではなくため息だった。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 19:23:04.53 ID:oeaWO8oL0
('、`*川「おい、ハインリ――」
从'ー'从「あらぁそこにいるのはハインちゃんじゃない!」
私の声を遮ったのは、女性客のぽやぽやした声だった。
何だかこちらの頭の中もぽやぽやしそうになるような、いい子守り歌になる声。

気取られない程度に観察してみる。やはり彼女が纏うのは陽だまりのような雰囲気だ。
肩口までの髪と、大きく純粋な目をした人。
そしてそれはどことなく――

从 ∀从「…………ヒトチガイデス」

隣で蓄音機みたいな発音をするハインに似ていた。
顔に浮かんだ冷や汗らしきものを見て、余程来て欲しくなかったのだなと推測してみる。
そうして至った結論は、
('、`*川「ご家族の方か?」
从'ー'从「ハインちゃん? ハインちゃんよねぇ?」
从 ∀从「…………ヒトチガイデス」
バッチリ当たっていたらしい。いやそれでもうんうん。


とても面白いなぁ、この状況。


しょせん人の不幸は蜜の味だった。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 19:30:21.60 ID:oeaWO8oL0
从'ー'从「あらまあまあ、そうね、そうよねぇ、ハインちゃんよねぇ?」
「ヒトチガイデス つってんだろ バカ」
从'ー'从「あれれぇ……? えっーと、じゃあ……」
('、`*川「コイツは確かにハインリッヒ高岡です」

从♯゚∀从「オイ伊藤てめぇ! 「よねぇ!」

両手を胸のあたりで合わせて、ニコニコと笑う高岡姉(仮)
噛み付くように反論してきたハインを一言で収縮させた。……素晴らしい。
客が一人もいないのは幸いな事だった。狼狽したハインをまじかで見れるチャンスはそうそうない。


从 ゚∀从「……教てねーのに何で来れるんだよ」

从'ー'从「風につられて来たらここに来たのよ〜」

从 ∀从「スナフキンかお前は」



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 19:38:51.84 ID:oeaWO8oL0
从'ー'从「うんうん、でもハインちゃんがバイト頑張ってる姿見れるって感激だわ〜」
从 ゚∀从「……帰れ。それか一介の客して店にこい」
状況を冷静に把握し租借しながら見る。
下手なバラエティー番組よりも面白かったりするこのやり取り。
ハイン観察日記にまた新しい1ページが刻めるなと確かな収穫にちょっと満足げな私。

从'ー'从「売上、厳しいの?」

怪訝そうな、また慈しむような。
この世の最たる悲劇を目の当たりにした時に出る声よりも、
もっとずっと悲痛そうなな声が高岡姉(仮)から漏れる。

从 ゚∀从「この現状を見てそれを言えるなら大したモンだな」

ガランドウの店内を見渡して愚痴るハイン。
その隣にいる私も軽く頷く。客なんぞ一人もいない。
景気がよくなったなどと言うのはただの世迷言にしか聞こえない冷風がここには吹いている。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 19:43:05.18 ID:oeaWO8oL0
从'ー'从「解ったわ〜! じゃあ私、ちょっと奮発しちゃうわね〜」
从;;゚∀从「……おい、まさかおま」
ハインが何かしら言おうとしたのも聞こえてないのか、
高岡姉(仮)は天使のような微笑を浮かべ、何か分厚い皮の製品をバックから取り出し、ただ一言。



从'ー'从「ここの棚の端から端全部頂戴!」




ガムやらの製品が陳列された棚の、上から下を指して、満足げに頷いた。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 19:44:28.17 ID:oeaWO8oL0
从♯゚∀从「おま、おまぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
何も言えないけれど何も言わない訳にはいけなかったらしい
ハインの声が店内に響き渡る。今日は観察日記の筆が進む進む。豊作にも程がある。

('、`*川「ありがとうございます!」

从'ー'从「いえいえ〜、ハインちゃんのこと、よろしくね〜」

('、`*川「ええ、こちらこそ。いつもお世話になってます(観測的な意味で)」


从♯゚∀从「おま、おまえ、おまえらぁああ!」


ドサ、ドサリ。
福沢諭吉さんフルメンバー出場で、


《 お買い上げありがとうござましたー 》



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 19:48:47.93 ID:oeaWO8oL0



('、`*川「中々可愛らしいお姉さんじゃないか。売上にも貢献してくれたし」


カウンターに突っ伏してぷるぷる震えているハインに、声をかける。
そうして顔に浮かんでくる満面の笑み。いかんいかん。戒めて真顔に戻す。
それにしても面白い。面白いにも程があるぞハイン。

('、`*川「それにしても羽振りのいいお姉さんだったな」
从 ∀从「…………」
私の言葉をスイッチにしたかのように、
むくり。擬態語をつけるならそんな言葉がぴったりにハインが起き上がって来た。

从 ∀从「…………」
無言のままこちらを見る。その眉間に刻々と刻まれた渓谷。
そうしてその憮然とした態度のまま、ハインはぽつりと呟いた。



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 19:49:51.94 ID:oeaWO8oL0



从 ゚∀从「あれカーちゃんだよ」




('、`*川「…………」



ピンポーン、とコンビニの警報機が作動して、軽い音を立てる。
わおーん。どこかで響く犬の遠吠え。

そんな感じで午後8時、金儲けの真っ最中。



《番外編 乱売こんびにくえすと。》終
             お買い上げ、ありがとうございました!



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