( ^ω^)机は繋がり僕らは出逢うようです。

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 20:25:32.13 ID:oeaWO8oL0
《番外編 水没ぴあの。》


目覚めの音はいつだってその旋律で満たされていた。


起きる前、意識が覚醒する直前。無意識と意識の狭間。
そこへ身を委ねると、微かに聞こえてくる音があった。
微弱な音波であるそれは、心臓の鼓動と一緒に僕へ浸透していくんだ。
静かに何処かが軋む音と一緒に、深く深く僕の内側に注がれていって、やがて泡のように消えていく。


それは、一炊の夢のように消えるのだ。
初めから、そこには何もなかったかのように。



(´-ω-`)「――――……」



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 20:28:08.77 ID:oeaWO8oL0
そうしてふと。どこかが交じり合わない違和感を覚えた。
どこかが違うと僕は感じる。


細部の細部、正解と良く似たジグソーパズルを掴まされたような、感覚。



違う事は理解出来るのだけれど、
何処が違うのかはっきりと言い表す事が出来ないような、そんな――


(´-ω・`)「あ……」


ごし、ごしり、と眠たい目を擦り、僕は起き上がる。
そうして原因を勘ぐる思考。

探ろうと暖かな寝床の中から這い出し、朝の冷えきったそれに体を晒した所でやっと気付いた。
そうか。今まであったかすかな音が、今日は無いのだと。
目覚めと共に聞いていたはずの音を、僕は捉える事がないのだと。そう気付いた。



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 20:30:42.88 ID:oeaWO8oL0
(´-ω・`)「あ……」

外気と酷似した、凍りつく喉を意味のない言葉で震えさせ、
僕はまたゆるゆると弱い動作でフスマへと這った。手が震えるのは、寒さだけが理由ではない。


(´-ω・`)「ああ……」


外を見た。違和感の原因を知った。そして、絶望した。


(´;ω;`)「姉さん……クー、姉さん――」


事情を飲み込みたくないのに、思考は凍りつくのに、
何故か舌だけは名前を何度も繰り返していた。

クー姉さんは、いない。
あの音はもうしない。

あれは、僕だけの幻聴だ。



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 20:35:16.42 ID:oeaWO8oL0
ピアノの音はもうしない。


それを弾いていた弾き手はもう――――


フスマに付けていた手が意外の内に下がる。


(´・ω・`)「クー姉さん、……姉さん」
世界の温度がコンマ刻みで下がっていく。
思考、視界、世界。その全てが凍り付いていく。

僕の頭を撫でる優しい手はもうない。
それを授けてくれた人はもういない――


そうだ。


(´・ω・`)「姉さん……姉さん――」
僕の世界の全てだった、僕の神様だったクー姉さんは殺されたのだ。
学習机まで、病人のような仕草のまま這って行く。



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 20:42:30.18 ID:oeaWO8oL0
その上に飾ってあった写真立てを手にとり、ガラスの感触しかないそれを何度もなぞる。
写真を撮るのを嫌った姉さんが、ただ一枚だけ笑いかけてくれた、
僕の中学入学祝いの時のそれ。

(´・ω・`)「コイツが、この女が――」

僕の隣、鋏で切り取った部分。ただただ忌わしいだけのそれが、それこそが――

何度この写真を見て僕は慙愧に浸っただろう。
幾度この写真を見て僕は感傷の淵へと身を投げただろう。

「……クー姉さん」
写真立てを手にとり、そしてそれを抱き寄せるようにして、
両手に包み、僕はまた布団へと戻っていく。時刻は朝の4時調度。
絶望に浸って全てを惜しむにはいい時間だ。



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 20:42:59.91 ID:oeaWO8oL0

ああ、そうだ。

ピアノの音はもうしないけれど、それを弾いていた弾き手はもういないけれど、
僕の頭を撫でる優しい手はもうないけれど、

それを授けてくれた人はもういない、

けれど。


『ショボン』


眠りに落ちる間際、いつだって神様は僕にそう囁き掛けてくれる。

《番外編 水没ぴあの。》 終
       結局この時点じゃ誰も救われない。



88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 20:45:28.05 ID:oeaWO8oL0
ショボンはクーの事尊敬と言うより、崇拝してたんじゃないかなぁと思うよ。
ツンはショボンにとっての神様殺しだったと言う訳で。

って言うかそう言うのこそ本編で書けよって話ですけどね。
……技量の問題です。精進します。

と言う訳で、一旦席外します。
再三なんで申し訳ないですが、
スレが落ちた場合は日曜日の五時ごろまた立てたいです。では!



戻る