( ^ω^)とひぐらしのなく頃に。のようです
- 2: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:33:45.91 ID:oXBLVk9S0
予想通り、綿流しのお祭りは中止となった。
オヤシロ様の生まれ変わりと言われている梨花ちゃんがいなくなったのだから、当然と言えば、当然である。
実際、僕が知る世界でも無かったような操作網が展開されていた。
もちろん、見つかるはずなど無い。
捜索場所に土の下なんていう場所を思い浮かべる人はいないから。
埋めた場所は僕にしか分からない。
つまり、僕が訪れない限りは誰も知る由もないのである。
それを知っている僕にとって、梨花ちゃんの捜索をする事は心を困憊させるばかりであった。
・・・犯人を知っている推理小説なんてつまらないだろう?
それと同じこと。
- 3: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:34:56.26 ID:oXBLVk9S0
いつまで、この退屈な日々が続くのだろうか。
この調子では一月どころではない。
皆、口を開けば「梨花ちゃん、梨花ちゃん、梨花ちゃん」・・・。
この世界の敵はいなくなったんだ。
僕がこの世界に平和をもたらしたんだ。
なのに、僕の幸せは戻ってこない。
あんな難儀を僕が請け負ってやったというのに!
あいつらは僕に感謝をしてもいいくらいの筈だ。
命を、日常を僕が守ってやったんだから。
ああ、苛立ちがおさまらない・・・。
- 4: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:36:01.86 ID:oXBLVk9S0
- ( ^ω^)「おはようだお、沙都子。」
沙都子「おはようですわ、ブーンさん・・・。」
学校へ行くため沙都子と待ち合わせをしたのだが、やはり彼女は浮かない表情だった。
まぁ、今はまだ仕方ないと諦める。
( ^ω^)「とりあえず、学校行くかお?」
沙都子「そうですわね・・・。」
今の僕が彼女にかけられる言葉なんてある訳が無い。
活気の無い目、見せない笑顔、覇気の無い声。
・・・そこにいつもの沙都子の姿は無かった。
- 6: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:37:54.13 ID:oXBLVk9S0
レナ「おはよう。ブーン君と沙都子ちゃん!」
圭一「よぉ、沙都子とブーン!今日も俺たちの方が先だったみたいだな!」
( ^ω^)「おはようだお。」
沙都子「おはようですわ・・・。」
待ってました、と言わんばかりに挨拶をしてきたレナと圭一。
その言葉は沙都子を元気付ける為なのか、予想外に明るかった。
・・・しかし、それは逆効果。
沙都子の顔の曇りが一層、濃くなっていく。
ちなみに魅音は既に机に突っ伏してお休みのようである。
恐らく、昨日、一昨日と存分に睡眠も出来ないまま梨花ちゃんの捜索をしていたのであろう。
園崎家次期頭首とはそういった立場なのである。
- 9: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:39:25.85 ID:oXBLVk9S0
沙都子「・・・梨花の捜査はどうなったんでございますの?」
レナ「うん、沙都子ちゃんや私達が帰った後も、魅音ちゃんや大人の人達がずっと捜してくれていたんだけど・・・。」
圭一「2日かけても、あまり良い結果は得られなかったみたいだな・・・。」
沙都子「そう・・・ですか・・・。」
うなだれる沙都子。
今はこんな調子でもきっといつかは。
圭一「でも、お祭りの会合が終わった後、梨花ちゃんが若い男と一緒にどこかへ行くのを見たって言う人がいたんだ。」
僕の心臓が大きく跳ね上がる。
・・・見られていたのか。
いや、それぐらいは想定内のはずだ。
落ち着け、僕。
- 11: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:41:40.54 ID:oXBLVk9S0
- レナ「あと、警察の人が言っていたのを魅音ちゃんが聞いたらしいんだけど、梨花ちゃんの自転車が意図的にパンクさせられていたんだって。」
圭一「ああ、これをやった奴が恐らく、その不審な若者だろうって事で捜査を進めているらしいぜ。」
沙都子「・・・自転車が置いてあったということが、他にどんな意味があるか分かりまして・・?」
沙都子が脅しをかけるかのような声を発する。
レナと圭一、僕でさえも、その言葉の迫力に体が硬直した。
沙都子「梨花の自転車が置かれたままになっていたという事は、遠くには行ってはいない事になるのですわ。」
レナ「うん、それは分かるよ。」
( ^ω^)「すくなくとも、県外には出られない訳だお。」
- 12: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:43:04.22 ID:oXBLVk9S0
沙都子「それなのに、梨花の姿は全く見られていない・・・と言うことは。」
圭一「何者かに連れ去られて監禁されているか、もしくは・・・。」
沙都子「そうですわ。既に『死』んでしまっているのかもしれない・・・。」
沈黙。
まさか、沙都子が梨花の死をほのめかすような事を言うとは誰も思わなかったのだろう。
梨花が死んでいる事を知っている僕でさえ、この展開には驚きを隠せないのだから。
しかし、これは好都合か。
レナ「沙都子ちゃん、不安なのは分かるけど・・・。」
圭一「ああ、信じる事を忘れちゃ駄目だぜ。梨花ちゃんはきっと帰ってくるって。」
沙都子「あなたは何も知らないから、そんな事が言えるのですわっ!」
沙都子が吼える。
教室に居た生徒が何事かと騒ぎはじめた。
- 13: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:44:22.51 ID:oXBLVk9S0
沙都子「あの時もそうだった!にーにーは帰って来なかったけど、次の日にはまた私の頭を笑いながら撫でてくれると思ってた!」
沙都子「でも、帰ってなんて来なかった!私が待っていても、ずっと、ずっと!!」
彼女が言っているのは兄の『北条悟史』の事だろう。
去年の綿流しに鬼隠しにあった事になっているはずだ。
圭一「お、落ち着けよ沙都子・・・。」
沙都子「うるさい!近づくな!」
歩み寄る圭一を沙都子が突き飛ばした。
吹き飛ばされた圭一は、机と共に大きな音をたてて倒れこむ。
- 14: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:45:53.82 ID:oXBLVk9S0
沙都子「家に帰っても、暗いまま。誰も居ない部屋で一人寂しく夜を過ごす気持ちがお前にわかるのか!?」
沙都子「恵まれた環境、暖かい家族。どちらも持ち合わせたお前に私の気持ちが分かるはずなんてないっ!」
沙都子「梨花!にーにー!どこにいってしまったんですのぉ・・・。」
彼女の言葉の前に心を痛めないものなんて、恐らくはいない。
それは、心の奥に溜めていた気持ちが溢れ出たもの。
悲しみ、怒り、憎しみ、不安、嘆き・・・。
自分の最も大切な人を2度も失くしてしまった。
きっと、その心は気付かないままにボロボロになってしまったのだろう・・・。
- 16: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:47:14.53 ID:oXBLVk9S0
レナ「ごめんね。私達、無神経だったよね・・・。」
レナ「でもね。不安なのは私達も同じなの。梨花ちゃんは私にとっても大事な仲間だから。」
レナ「その不安をちょっとでも、取り除きたいから梨花ちゃんはきっと帰ってくると信じる私達の気持ちも正しいと思うんだよ・・・?」
レナが沙都子をなだめるように、そう言った。
その優しさは聖母を感じさせるほどの包容力を持っている。
その証拠に先ほどまでの喚きが嘘のように、沙都子は静かに泣くだけになっていた。
( ^ω^)「ちょっといいかお?」
・・・言ってはいけない言葉なのかもしれない。
しかし、既に僕の口は止まらなかった。
- 18: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:48:50.97 ID:oXBLVk9S0
( ^ω^)「信じたり、期待しすぎるのも良くないお。」
僕の言葉に全員が信じられないという表情をみせる。
気にせず、僕は話を続ける。
だって、これは真実を知る物の助言。
( ^ω^)「期待が大きすぎると、その反動も大きいお。期待しないでおくというのも、精神の自己防衛の一つだお。」
圭一「おい・・・ブーン。お前、自分が何を言っているか分かっているのか・・・?」
( ^ω^)「ん、なんだお?」
圭一「お前も沙都子と同じ、いやそれ以上。
梨花ちゃんが生きている事を信じるな。それに近い事を言ってるんだぞ?」
- 21: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:51:13.08 ID:oXBLVk9S0
( ^ω^)「そうだお。そのぐらいの覚悟があっても良いと僕は言ったんだお。」
圭一「てめぇ!」
圭一が僕の顔を殴りつけた。
自分の覚悟を決めるときに、自らを殴った時とは比較にならないほどの痛みを感じた。
同時に僕は理解する。
こいつも僕の『敵』であると。
( ^ω^)「・・・ふざけるなおっ!!」
殴り合いの大喧嘩。
このクラス内でほぼ最上級生にあたる僕達を止められる者はいない。
そう理解した下級生は先生を呼びに駆け出す。
僕達の乱闘は先生が訪れるその時まで続いた。
もちろん、短い時間で済むはずもなく二人の体は見るも無残な程にボロボロ
になってしまった・・・。
- 24: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:53:25.37 ID:oXBLVk9S0
その日の学校は悲惨なものだった。
沙都子は、一時はレナによって落ち着きを取り戻し、騒ぎ出すような事は無かった。
しかし、元気な姿を見ることは出来ないまま。
魅音は疲れが抜けないのか授業中ですら、夢の世界だった。
こんな時こそ、委員長がクラスをまとめるべきと思うが、そこは魅音である。
圭一は僕への怒りが収まらないのか、ずっとムスッとしていた。
レナは一日中それをなだめる事に費やしていた。
うだる様な暑さにクラス中の雰囲気の悪さ。
二つが重なり合い、笑顔を浮かべる生徒は誰一人としていなかった。
- 25: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:54:06.91 ID:oXBLVk9S0
そして、僕は思う。
これが、僕の望んだ世界?
沙都子は壊れる寸前。
疲れきった魅音。
圭一との間には壁が出来てしまった。
レナは何も言わないが、心中穏やかでないだろう。
なんでこうなった?
僕は間違った事はしていない。
仲間を、世界を守るために戦った勇者じゃないか。
その僕が何故、殴られ、罵倒され、疎まれなければならないんだ。
- 27: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:55:25.92 ID:oXBLVk9S0
- 僕が正しいのなら間違っているのはあいつら?
・・・・。
・・・・。
間違っていると言う事はあいつらは敵?
・・・・。
・・・・。
敵は排除しないと幸せになれない?
・・・・。
・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・?
殺す?
- 28: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:56:16.36 ID:oXBLVk9S0
頭によぎるは、あの言葉。
「人を殺して幸せになる。こんな考えを持つ人が異常でない訳がない」
だが、敵の言葉を認めてはならない。
僕はこの手で幸せを掴みとるんだ。
・・・でも、幸せって何?
初めは全てを守り、仲間達とこの雛見沢で過ごす事だった。
次は一人の犠牲を代償に、残された人達と過ごしていく事だった。
じゃあ、今度は?
仲間を失くしてでも、生きていく事?
それが僕の幸せ?
- 32: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:57:09.36 ID:oXBLVk9S0
間違っているのは僕で、世界は正しい。
そうだったら、どんなに良いことだろう。
しかし、今となってはそんな事は言えない。
後戻りなんて出来ない。
僕の幸せを脅かそうとする存在は消さなければならない。
・・・でも。
生きていく事が幸せになるなんて思わなかったな・・・。
- 34: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:58:21.10 ID:oXBLVk9S0
- 学校も終わり、家に帰って再び手にした金属バット。
血さえ拭けば怪しまれる事も無いと思って、持ち帰ったのである。
まさか、もう一度、血に濡れてもらう事になるなんてなぁ・・・。
返り血を浴びたときの事を考え、着替えをもち、自転車に跨る。
向かうはダム建設現場跡地。
レナが今日もこの場所で一人、宝探しをしているはずだ。
あの場所なら他の人に見られる事もない。
一人ずつ、確実に消していく。
- 35: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 20:59:37.85 ID:oXBLVk9S0
燃えるように輝く太陽が僕を照らす。
そして、ひぐらしのなき声だけがその場を包み、神秘的な雰囲気が漂う。
ゴミ山を越えた先にレナを見つけた。
地の利はあちらにあるが、今の僕なら確実に殺す事が出来ると思い、足音を殺すなんて事はしない。
むしろ、こちらの事を気付かせるくらいの音を立ててゴミ山を駆け降りる。
しかし、レナは振り返らない。
まるで僕がここに来る事を分かっていたというように背中が語っていた。
背を向けたまま彼女が口を開く。
レナ「ブーン君、どうしたのかな、かな?」
質問している内容とは裏腹に彼女は既に答えを知っている。
そんな気がした。
( ^ω^)「・・・君を殺しにきたお。」
レナ「・・・やっぱり、梨花ちゃんを殺したのはブーン君だったんだね。」
( ^ω^)「『やっぱり』かお。・・・理由は?」
- 38: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:00:36.25 ID:oXBLVk9S0
- レナ「・・・うん。自転車がパンクしていたでしょ?あれだけでも、ある程度、絞り込む事ができたんだよ。」
レナ「犯人の人は、梨花ちゃんと自転車を使わずにどこかへ行く事が目的だった。恐らくはそれが一番確実な方法だったんだと思う。」
レナ「梨花ちゃんが知らない人について行くなんて思えない。そうなったら、犯人は少なくともこの村の住人。
しかも、割と梨花ちゃんとは親しい間柄にある、ね。」
( ^ω^)「でも、僕以外にもそんな人は沢山いるお?」
レナ「そうだね。でも、それとね?若い男の人がっていう話があったでしょ。」
レナ「知ってると思うけど、この雛見沢に若い男の人なんて滅多にいないんだよ。」
レナ「梨花ちゃんと仲がよくて、若い男の人・・・圭一君とブーン君のどちらか。
でも、圭一君ね?あの日私と一緒にいたんだよ。だから・・・。」
- 39: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:01:41.11 ID:oXBLVk9S0
( ^ω^)「・・・ふぅん、たったそれだけで仲間の事を人殺しだと決め付けたのかお?」
レナ「沙都子ちゃんから聞いたよ。・・・梨花ちゃんからお買い物の伝言頼まれてたんだって?」
レナ「でもね・・・。これは本当に偶然だったんだけど、あの日はスーパーがタイムセールをやる筈だったんだよ。」
( ^ω^)「それに、何の意味があるのかお?」
レナ「タイムセールの開始時刻は午後6時・・・会合が終わるほんの少し後。」
レナ「つまりね、梨花ちゃんはそれに行くつもりだったから、買い物が少し遅くなってもいいと考えていたはずなんだよ。」
レナ「だから、梨花ちゃんからの伝言なんて嘘・・・違うかな、かな?」
- 42: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:03:24.21 ID:oXBLVk9S0
本当にたったそれだけの事。
それだけの事で・・・彼女は僕の事を疑っているのか。
本当にたったそれだけの事。
それだけの事で・・・彼女は真実を見抜いてしまったのか。
でも、それなら尚の事、僕は彼女を殺さなければならない。
僕が殺人者と知りかけているのだから。
幸せを脅かそうとする者なのだから。
悲しいけど、それが彼女の運命。
悲しいけど、これが僕の宿命。
- 43: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:04:42.48 ID:oXBLVk9S0
- レナ「・・・けどね、やっぱり信じきれなかったんだ。ブーン君が梨花ちゃんを殺すなんて事は。」
白いスカートをひるがえし、振り返ったレナは言う。
その目は薄っすらと赤くなっていた。
( ^ω^)「・・・お?」
レナ「だから、今日私は一人でこの場所に来た。でも、ブーン君は来てしまったんだね。」
( ^ω^)「そうだお。君を殺す為だお。」
レナ「信じていたんだよ。あなたはここには来ないって。」
( ^ω^)「残念だったお。信じない事も時には自己防衛になると僕は言ったお?」
レナ「ううん、今でも信じているよ。ブーン君は私を殺したりしない。きっと、自分の犯した罪を償ってくれるって。」
・・・この状況で何を言っているんだ?
僕を信じている?
- 45: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:06:29.95 ID:oXBLVk9S0
レナ「梨花ちゃんを殺してしまった。確かに、これは許される事は難しい罪だよ。」
( ^ω^)「そうだお。僕には後戻りなんて出来ないお。」
レナ「でもね。ブーン君にはもう一つ償える事の出来る罪があるはずだよ。」
償える罪?
レナ「私は梨花ちゃんとブーン君の間に何があったのかは知らない。」
レナ「でも、きっとブーン君は梨花ちゃんの事を・・・『信じなかった』はずだよ。」
信じなかったことが償える事の出来る罪?
- 48: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:08:35.97 ID:oXBLVk9S0
- ( ^ω^)「・・・今度は僕に君を信じろというのかお?」
レナ「そうだよ。後戻りなんて出来ないなんて考えないで欲しい。」
レナ「許されない罪だって忘れずに生きていけば、償える。きっと、元の日常に戻れるんだよ?」
レナ「皆で笑って、騒いで、楽しんで・・・。時間はかかるかもしれないけど、いつかは必ず。」
・・・時間があれば元の日常に戻れる?
僕が今している事は間違いだというのか?
僕がおかしいとでも言うのか!?
- 50: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:09:34.96 ID:oXBLVk9S0
- (;゚ω゚)「ふ、ふざけるなお!僕はお前の言う事なんか信じないお!
バットを天高く空に掲げる。
これを振り下ろせば全てが終わる!
レナ「・・・それでも、私はブーン君の事を信じているよ。」
真っ直ぐに僕を見据えてレナは言い放つ。
その目は僕には眩しすぎる程、強い光を放っていた。
頭を庇う素振りなんてみせない。
僕を見つめ・・・そして、微笑んだ。
- 53: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:11:30.75 ID:oXBLVk9S0
- 瞬間、フラッシュバック。
この光景に似た状況があったんじゃないか?
それは、綿流しの前日。
梨花ちゃんを殺した日。
そうだ、彼女も頭を庇う素振りなんてみせなかったじゃないか。
僕はそれを世界を諦めたからだと思っていた。
でも、違かった。
・・・彼女も最後まで僕を信じていた?
54: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:13:02.68 ID:oXBLVk9S0
「人を殺して幸せになる。こんな考えを持つ人が異常でない訳がない。」
これは僕への忠告。
人を殺す事で幸せになんてなれない。
それを分からせるため。
彼女はそれを知らせるために自ら体を捧げた?
僕は何も理解しようとせず、彼女を敵と決め付け、殺した。
信じようなんて、考えようともしなかった。
・・・彼女の強さを目の前にして、怯えるようにバットを振るってしまった。
- 55: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:14:01.05 ID:oXBLVk9S0
- ( ω )「あ・・・あ・・・ああ・・・・。」
握り締めていたバットを地に落とし、僕は膝を落とした。
そうだったんだ。
梨花ちゃんは僕を信じてくれていたんだ。
あの時も、きっと思い直してくれると。
人を殺すことで、救えるものなんて何も無いから、と。
レナ「・・・信じてくれるんだね?私の事?」
( ω )「信じるお・・・レナの事を。」
レナの腕の中に包まれる。
それは、お母さんの腕の中のように安らぎを与えてくれた。
その安心感が僕の心を奮わせる。
その優しさが僕の心の憑き物を取り払う。
- 57: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:15:11.77 ID:oXBLVk9S0
( ;ω;)「そして、信じなければならなかったんだお!梨花ちゃんの事も!」
罪を認めた僕が重ねる懺悔の言葉。
感情が溢れ出し、心のダムを崩壊させる。
溢れ出る謝罪の言葉は涙へと姿を変える。
後悔なんて、しても、しても、止まらない。
涙なんて、流しても、流しても、止まらない。
汚れてしまった僕の手は、洗っても、洗っても、血の匂いがするんだよ。
- 60: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:16:23.90 ID:oXBLVk9S0
レナ「梨花ちゃんにも悪い所があったんだと思う。それでもね、人を殺すなんて事は絶対に選んではいけない選択肢だったんだよ。
( ;ω;)「そうだお・・・僕は、僕は・・・。」
レナ「今から、皆に打ち明けよう?仲間の中で認め合うのも、警察に自首する事もきっと出来る。
どちらを選んでも、後悔しない結果を残そう?」
( ;ω;)「・・・ごめんだお。」
レナ「うん!じゃあ、レナは皆を呼んでくるね!」
レナは嬉しそうに走って行ってしまった。
ごめんという言葉の意味も知らずに。
・・・ごめんね。
また、嘘をついてしまったね。
もう、遅いんだよ。
- 63: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:18:36.41 ID:oXBLVk9S0
- 何度も何度も抑えてきた衝動。
認めたくなかった。
ゲームの中で幾度と無く見てきた症状。
首が痒い、痒い、痒い、痒いよ。
( ;ω;)「うっ、うぐ、うえっ・・・。」
泣きながら首を掻き毟り続ける。
哀れな操り人形は僕だったんだ。
バリッ、バリッ、バリッ。
皮膚を越え肉に辿りつこうとも、爪が剥がれ落ちようとも、僕の手は止まらない。
きっと、これは信じる事が出来なかった僕への罰。
- 64: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:19:32.03 ID:oXBLVk9S0
掻き毟る手はいつしか、血にまみれる。
これが愚かな殺人者の最期。
これが信じる事の出来なかった者の最期。
かなかなかな・・・。
かなかなかな・・・。
ああ・・・ひぐらしのなく声が・・・。
段々と・・・小さくなって・・・いっ・・・て・・・・。
- 67: ◆9d9cVF02x2 :2007/06/29(金) 21:20:40.18 ID:oXBLVk9S0
( ^ω^)とひぐらしのなく頃に
―――――――――――――――橋渡し編
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