( ^ω^)とひぐらしのなく頃に。のようです

57: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:19:45.24 ID:0Y4HF4B00

【救いの神】

俺とアイツが出会ったのはいつだったかな……。

ああ、思い出した。
大学2年の今頃、良く晴れた夏の日だったっけ。

太陽がむかつくほどに地面を照らして暑くってさ。
夕暮れ時になって、ようやく涼しくなってくるかって時だったよ。

急に雨が降り出すんだもんなぁ。
まぁ、よくある夕立って奴だよ。
丁度、隠れられるような屋根がなくってビチョビチョになるなって覚悟した時にさ。

スッと俺の上に傘が、出てくるでやんの。
驚いて、後ろを向いたら白のワンピース来た女がいてさ。

「雨に濡れるのはお嫌いでしょう?」
って、ニコッて笑いながら言うんだよ。

俺はもうビビッて来たよ。
この人が俺の運命の相手なんだってな。



58: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:21:13.24 ID:0Y4HF4B00

それからは毎日のようにアプローチし続けたよ。

その時いた彼女とも別れた。
家にあったエロ本も全部捨てた。
他の女に目を泳がせるような事もなかった。

夢中になるってのは、ああいう事を言うんだろうな。
その時の俺には、アイツ以外の何にもいらなかった。


恋に奥手になったのもアレが初めての経験だったな。

何十回もデートしたのに、好きの一言がどうしても言えないでやんの。
この関係が崩れたら、もう2度と彼女と話せないんじゃないかってさ。

どうしても、手放したくなかったんだよ。

それでも、勇気を振り絞って「好きです」と一言、そう言ったよ。
もう、冷や汗かきまくりだし、たった4文字の言葉を噛むし、足はガクガク。

多分、俺の人生で一番かっこ悪くて……けど、一番輝いていた時だったよ。



60: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:22:38.20 ID:0Y4HF4B00

んで、アイツがさ、言ってくれた訳よ。

「私もずっと好きでした。夕立の様な突然の事じゃない。
    あの初めて話した時。その前からずっと、ずっと。」

ってさ。

あそこまで泣いたのも初めてだったよ。
鼻水たらすなんて、カッコ悪かったけど、彼女は黙って微笑んでくれてた。

今、思えばあの時が一番幸せだったかもしれないな。

とにかく、その日が俺の色々な初めてが詰まった日だったよ。



64: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:24:01.39 ID:0Y4HF4B00


それからも、色んな初めてをアイツから貰ったよ。


可愛らしい女の子用のプレゼント買ってやるのもアイツ宛が初めてだった。
今まではそんな事、恥ずかしくて絶対しなかったんだぜ?
でもよ、アイツの笑顔がどうしても見たかったから、俺頑張ったんだよ。


愛のあるSEXっていうのか?それも初めてだった。
気持ちいいからするとかじゃねぇんだよ。
本当に愛おしいっていう気持ちが止めらんなくなるんだよな。

まぁ、小さい胸って言ったら殴られたのも良い思い出だよ。


一緒に居るだけで幸せだなんて思えたのも初めてだった。
心が洗われるような気持ちになったんだよな。

とにかく、アイツの存在そのものが俺の幸せだったんだよ。



66: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:25:58.44 ID:0Y4HF4B00

大学卒業と同時に結婚した。

アイツは涙流して喜んでくれたよ。
俺も、自分はどうなっても良いから、アイツを幸せにしようと思ってた。


でもよ、社会ってのは厳しいもんだよな。

一応、大学は出てたけど、元々がこんな性格だからよ。
上司に嫌われちまったんだよな。

毎日毎日、ネチネチネチネチとくだらない説教しやがってよ。
何度ぶん殴ってやろうと分かんねぇくらいだ。
それでも、アイツの為だからと休まず仕事をし続ける。


そんな生活がいつまでも続く筈がねぇ。

嫁に弱音を言う訳にもいかないし、かといって仕事を止める訳にもいかない。
俺のストレスは溜まる一方だった。



68: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:28:59.88 ID:0Y4HF4B00

そこで俺が選んだストレス解消法はなんだと思う?

今、思うとこれが最悪の選択だったんだよな。
笑ってくれよ。

俺は『アルコールと博打』に完璧にはまったんだ。


仕事終わったら、パチンコ行ってさ。
家に着いたら酒を浴びるように飲んだよ。

アイツは俺に止める様に何度も言ってたな。
もちろん、俺がそれぐらいで止める筈がなかった。

俺は毎日、仕事行ってるんだから偉いんだよってさ。
超くだらねぇ理由でえばってだよ。


そんな生活がしばらく続いた後、ある事件が起きた。



69: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:30:50.20 ID:0Y4HF4B00

その日も俺はいつものように家で酒飲んでたよ。

もうそれでデロンデロンに酔っ払っちまってよ。
それでも、まだまだ飲みたりないから、アイツに酒買ってこいって言ったんだ。

そしたらアイツが「もうお酒を飲むのは止めて!!」って叫んでさ。

アイツのそんな大声を聞くのは初めてだったな。
そこで異変に気付いて、改心した……っていうのは俺の妄想でしかないな。


認めろ。

何度も何度も後悔して止まない過ち。

俺は……アイツを殴っちまったんだ。



71: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:33:12.78 ID:0Y4HF4B00

吹っ飛んだアイツを見て俺は正気に戻った。

アルコールが一気に抜けるのが分かったし、全身が凍るように冷たくなってったよ。
でも、殴った右手の熱さだけはいつまでも変わらないままだった。

俺はアイツに何も声をかけられなかった。
唯々、呆然とその場に立ち尽くすだけだったよ。

アイツも、立ち上がった後、俺に何も言わなかった。

大事そうな物だけ持って、そのまま出ていっちまったよ。
もちろん、いくら待っても帰って来なかった。


……こうして俺の幸せな日々はお終いって訳だ。

そうだな、これが1ヶ月くらい前の話だったかな。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 21:35:29.24 ID:0Y4HF4B00

( ゚∀゚)「なぁ、笑っちまうだろ。全世界で一番の馬鹿は俺だと思うぜ。」

目の前の猫は、何の興味も持たないように自らの顔を舐めている。
ミャーと鳴いたのを、勝手に返事だと決め付けて話を続けた。


( ゚∀゚)「仕事も、もうクビになってるだろうな。無断欠勤1ヶ月だぜ。
     しかもよ、未だに酒が止められねぇんだよ。ホントにどうしようもねぇよな。」


腰掛けた神社の石段の冷たさが、頭を冷やしてくれているように感じる。
既に日は落ち、夜の闇が辺りを包んでいた。

猫は俺の方を見直したあと、もう1度ミャーと鳴いて茂みの方へ消えていった。


( ゚∀゚)「あーあ、これで又一人ぼっちか。
     くそ、なんでこんな事になっちまったんだよ……。」



75: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:37:35.67 ID:0Y4HF4B00

出来る事ならやり直したい。
もちろん、出来るはずが無いのもわかっているつもりだ。

ただ、期待せずにはいられない。
何か俺の予想も出来ないような奇跡が起きる事を。

だからこそ、俺は神社なんて場所にいるのかもしれない。



( ゚∀゚)「神様、いるんなら返事くれよ。」

やっぱり、何の反応も返ってこなかった。
けど、そんなのには慣れっこの俺はもう一度問いかける。



78: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:39:26.74 ID:0Y4HF4B00

( ゚∀゚)「神様なんだからよ、俺を助けてくれないか?   
     俺には、もう何にも残されてないからよ。恩返しは出来ないけど。」

辺りの静けさは何ら変わりない。
唯、俺の間抜けな独り言が響くだけ。

ちょっと恥ずかしくなり、背を向けて、家にでも帰ろうかと思った。



そんな時、後ろから声が聞こえた。

「何も残されていない……ならばこの世界を捨ててみませんか?」

ゆったりとした口調。
しかし、その言葉には妙な凄みがあった。



80: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:41:09.79 ID:0Y4HF4B00

慌てて振り返ってみたが、誰も居ない。
幻聴だったのか……?

「もう一度、聞きます。この世界を捨てる気はありませんか?」

……幻聴では無かった。
姿は見えないが、どこからともなく声が聞こえてくる。


( ゚∀゚)「お前は神様か?」

「世間一般的に言えば、そういう類になるでしょう。
 ……それより、私の問いに答えなさい。」


自称神様は妙に俺を急かすようだった。
いや、かえって好都合かもしれない。

今の俺に、この世界への未練なんて無かったから。



83: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:43:08.88 ID:0Y4HF4B00

( ゚∀゚)「あぁいいぜ。こんな世界ゴミ箱へ丸めてポイだ。」

「わかりました。それなら、別の世界へ行ってみる気はありませんか?」

別の世界だって?
これって夢なのか、それとも……。


( ゚∀゚)「どこへだろうと行ってやるよ。
この長岡ジョルジュ一度言った言葉を曲げるつもりはねぇ。」

自分で言っておいて、胸が痛くなる。
……俺はアイツを幸せに出来なかったのに。

「いいでしょう。あなたをそうするだけの人物として認めます。
 これからあなたの名は内藤ジョルジュ。一人の息子を持つ父になります。
 あなたの息子となる内藤ホライゾン、ブーンと呼ぶのが良いでしょう。精一杯愛しなさい。」



85: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:44:59.50 ID:0Y4HF4B00

( ゚∀゚)「……父って事は母にあたる人物もいるのか?」

「ええ。その母となる人物の名は内藤ペニサス。大切にするのですよ。」

アイツ以外を嫁にするなんて虫唾が走る……。
だが、神様がくれるチャンスを逃すわけにはいかない。


( ゚∀゚)「オーケー把握した。ブーンとペニサスだな。」

「きっと、あなたはそこで幸せな日常を手に入れられることでしょう。 
 私が救いの手を差し伸べてあげることをありがたく思いなさい。」


偉そうな物言いに、少しムッときたが我慢する。
それぐらいの理性は持ち合わせているつもりだ。

……あの時も、こう出来ていれば。



86: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/27(金) 21:48:18.23 ID:0Y4HF4B00

「それでは行きなさい愚かな人の子よ。  
    あの子の待つ雛見沢の世界へと。」

夜の闇にそぐわない、神秘的な光が辺りを照らす。

同時に俺の体が白に包まれる。
アイツと腕に抱いたときのよう温かさ、久しぶりだった。




俺が気を失う前に、聞いた音。

かなかなかなかな……。

何ていうんだっけ……。
ああ、そうだ。ひぐらしの鳴く……。



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