( ^ω^)とひぐらしのなく頃に。のようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:18:01.05 ID:MUewyLZ50

――――ジリリリリリ


目が覚めると共に、心に大きなひっかかりがあるのを感じた。
それの正体は分からない、でも何かを忘れているような……。

違和感を拭える事はなかなか出来なかった。

冷たい水で、心を引き締める意味もこめて顔を洗う。
それでも、いまだ寝ぼけ眼の自分の頬をパチンと叩き、鏡の中の自分を見つめた。


この心のもやもやは何だ?

大切な事、忘れてはならない事のはず。

お前は一体何を忘れている?


しかし、答えを出す事が出来ない。
仕様がなしと、僕はいつも通りの朝を過ごすことにした。

コーヒー、トースト、焼きベーコン、目玉焼き。
特筆すべき事も無い、いつも通りの普通の朝食を机に並べる。
そこまできて、ハッと思い出した。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:20:51.27 ID:MUewyLZ50

そう、思い出してしまったのだ。
朝からの違和感の正体を。

ああ、僕は何という事を忘れていたんだ!
こんな、こんな大事な事が頭からとんでいたなんてありえない!

……とも思えたが、僕の心は不思議と落ち着いていた。
きっと、今までの経験が僕に多少の事ではうろたえない心を作ってくれたのだろう。

ベランダに出て空気を思いっきり吸い込んだ。
雛見沢ほどではないが、朝特有の爽やかさのおかげで美味しく感じられた。
薄っすらと夏の訪れを感じさせる日光を受け、一日の始まりを実感する。


ここまで来て、僕はようやく口に出す事ができた。

僕が起きた瞬間から抱いていた違和感。

そう、それは時計の針が9時を過ぎていたのを見たときから始まったのだ。


( ^ω^)「さて、遅刻だお」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:24:21.25 ID:MUewyLZ50

( ´∀`)「まーた内藤は遅刻かモナ。いい加減にするモナよ。」

( ´ω`)「はい、すいませんでしたお。気を付けてはいるのですが……。」

クラス中からクスクスと笑い声が聞こえる。
既に僕の遅刻による先生の小言は、朝の恒例行事と化していた。


('A`)「おめでとう!これで15連続だな!
   もう、こっちの世界には慣れてないなんて厨二言い訳は通用しねぇぞ!」

実際、いまだに慣れていないんだから仕方が無い。
雛見沢に行く前は遅刻なんて少なかったんだけど、あっちにいる間にのんびりする癖がついたようだ。


('A`)「私としては20ぐらいはいくと思うのですが、どうでしょうか?」

( ^ω^)「うーん、30なんてのも夢では無いと思うお!」

('A`)「なるほど、流石に目標はお高いですね!」

( ^ω^)「いやーそれ程でも。」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:27:29.96 ID:MUewyLZ50

なんてドクオとふざけていると、紙の丸めた物が飛んできた。
中を確認してみると、丸っこい可愛らしい文字で毒々しい言葉が書かれている。

『笑い事じゃねぇだろうが、今日こそ永遠の眠りにつくのも良いんじゃない?』

ξ゚听)ξ「ベー!」


あっかんべーなんて、お前は小学生かと言いたかった。
もちろん、こんな事を言えば酷い目にあうのは分かっているので口にはださないのだが。


('A`)「まぁ、ツンもお前の事を心配してくれてるんだよ。」

( ^ω^)「もちろん、理解してるお!」

('A`)b「流石だな」

( ^ω^)b「ドクオの気遣いもだお!」


(#´∀`)「お前ら……いい加減にするモナよ。」

こうして怒られる僕達の姿もまた、朝の恒例行事。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:31:01.44 ID:MUewyLZ50

この世界に戻ってから2週間程経っただろうか。
いまだ、僕が望んでいた平穏な世界が崩れる事はなかった。

勉強して、遊んで、笑って。
このサイクルが壊れることは無い。

きっと、いつまでも続く平和な日々。
少なくとも僕はそうだと信じている。


……そのはずなのに

この胸騒ぎはなんなのだろうか。

ざわざわと胸の中で何かが暴れまわっている感覚。
不安が具現化して襲い掛かっているかのごとく。

今日の天候は久々の曇り。

まるで僕の心を映すかのような薄汚れた灰色。
無性に、気持ちが悪かった。



11: 夢写し編 2ページ :2007/08/23(木) 20:34:35.86 ID:MUewyLZ50

放課後、周りの生徒達は待ってましたと言わんばかりに早々と教室から出て行った。
目的は部活であったり、娯楽であったり、帰宅だけを求めている人と様々ではあるのだが。

そんな中、僕とドクオは机から動こうとはしない。
部活にも入っていないし、これといってすることも無い。
教室内で適当にダラダラと過ごす、ここ最近の間はそんな調子だった。


('A`)「どうした、ツンは帰るのかよ?部活はどうしたんだ?」

ξ゚听)ξ「……あー、部活は止めちゃったわ。」

( ^ω^)「どうしてだお?」

ξ゚听)ξ「別に、止めたいから止めた。それだけよ。」

突き放すかのような言葉。
はっきりとした拒絶の意志。

これは僕だけが感じているだけではない様で、ドクオも面食らった顔をしていた。


ツンもさすがに言い過ぎたと思ったのか、口で手を押さえている。
逆に言えば、それは自分の言葉に問題があったと理解しているという事。

それが示す事実は、ツンは僕達に何かを隠している。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:37:25.46 ID:MUewyLZ50

('A`)「……最近はあんま遊んでないしさ、ちょっとここで話さないか?」

ξ゚听)ξ「……ごめん、ちょっと帰りたいんだ。」

('A`)「なんでだ?」

ξ゚听)ξ「学校に居たくないの。それだけ、じゃあね。」

(;^ω^)「あ、ちょっとツン!」


そう言って、足早にツンは教室から出ていってしまった。

とてもじゃないけど家に帰るだけとは思えない。
何かに怯えている、僕の目にはそんな風に映った。

もちろん、それが何なのかは僕には分からない。
ただ、胸騒ぎが先程より大きくなったように感じた。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:39:34.74 ID:MUewyLZ50

( ^ω^)「何か、ツン変じゃないかお?」

('A`)「お前もそう思うか?実は俺もちょっと前からそう思ってたんだ。」

( ^ω^)「やっぱアレかお?」

('A`)「んー、確かにツンの両親の離婚はそれっぽいよな
   でも、俺にはそれが本当の理由とは思えないんだよなぁ。」


( ^ω^)「ほうほう、というと?」

('A`)「……ちょっと近付け。周りには聞かれたくない。」


ほとんどの人が出て行ったとはいえ、教室にはまばらながら残っている人もいた。
もっとも、僕達と同じように長居する様子を見せている人はいないのだが。

ほんの2、3人にすら聞かれたくない話。
ドクオにしては珍しく、良い内容では無いのが窺える。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:41:26.24 ID:MUewyLZ50

('A`)「アイツが最近、腕に包帯巻いてるの知ってるだろ?」

( ^ω^)「ん、料理で火傷したって言ってたお?」

('A`)「……それ、何かおかしくないか?」


ツンの腕に巻いていた包帯に違和感。

そう言われれば、2週間も怪我の状態が変わらないというのはおかしいかもしれない。
いや、それ以前に包帯の範囲が大きくなってはいなかったか?


( ^ω^)「……確かに、なんか変だお。」

('A`)「だろ?それで俺なりに包帯の理由を考えてみたんだよ。」

( ^ω^)「へぇ、どうなんだお?」


ドクオは更に僕との距離を縮める。
どうやら、更に悪い内容になるらしい。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:43:50.98 ID:MUewyLZ50

('A`)「アイツ、多分リストカットしてるぜ。」

ドクオの発言に、一瞬固まってしまった。
さも、当たり前の様に言うから直の事である。


(;^ω^)「マジかお?」

('A`)「ああ、大マジだ。 確立としては80、いや90%ぐらいだな。」

( ^ω^)「……やけに高いじゃないかお。」

('A`)「あー、ちょっとこれ見てくれないか?」


そう言ってドクオは腕につけていたブレスをとった。
よく見れば薄っすらと、ひっかかれたような傷の痕がある。

そして、ドクオは苦々しい笑顔を見せた。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:45:43.55 ID:MUewyLZ50

(;^ω^)「……これはひょっとして。」

('A`)「そうだよ、俺も少し前はリストカッターだったんだ。」


……正直言って、目玉が飛び出るかと思うほど驚いた。

だって、僕とドクオは小学校の頃からの付き合いだ。
そんな彼が、リストカットに走る程の悩みを抱えていたとは知らなかった。


(;^ω^)「何があったんだお?」

('A`)「今は俺の事より、ツンだろうが。
   経験者の俺が語るんだ。さっきの俺の話の信憑性も深まるだろ?」


リストカットとは刃物で手首を傷つけるものだけでは無いらしい。

手を噛んだり、シャーペンの先で自分の体を刺したり。
そんな些細な事と思えるそれが自傷行為、つまりリストカットしている人の行動。

ツンもまた、そのようにしていたとドクオは言った。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:47:53.91 ID:MUewyLZ50

( ^ω^)「リストカット……なら、それをする理由があるはずだお。」

('A`)「これでようやく話が元に戻るわけなんだよ。
   ……原因は何か、しかも両親の離婚以上のとびっきりの奴だ。」

( ^ω^)「……ツンを悩ませる種、かお。」


僕の中のツンは笑顔か、怒っているか、照れているか。
他の表情なんて、あまり見たことが無い。
泣き顔なんて指で数えるほどだった気がする。

気丈な性格だと思っていた。
だが、ひょっとして素直になれない事の延長線上だったのか?

僕達に悩みも吐けず、抱え、爆発した。
その形がリストカットとして現れているのだろうか。

……だとしたら悔しい。

そして、僕の思いを伝えなくてはならない。
どんな悩みでも言える様な仲間になりたい。

この胸に掲げた誓いに、もう一度強い想いをこめた。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:49:53.57 ID:MUewyLZ50

( ^ω^)「やっぱり、最近の行動にヒントがあるんじゃないかお?」

('A`)「んー、最近のツンは変だもんなぁ。」

( ^ω^)「部活を辞めて……遊ぶ回数も減ってきて……。」

('A`)「隠し事をして……俺達から逃げるように家に帰って……。」

そこで少しひっかかった。
僕達から逃げるように家に帰る?


( ^ω^)「……そういえばツンが言ってたお。『学校に居たくない』って。」

('A`)「そういえばそうだな。んで、そこから何が分かるんだ?」


今までの話と、この僕の予想を組み合わせる。
『リストカット、逃げる、学校にいたくない。』

不器用ながらも、一つずつピースが当てはまる手応えを感じた。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:52:45.15 ID:MUewyLZ50

( ^ω^)「……ツンは、この学校にある何かに怯えてるじゃないかお?」

('A`)「へ?」

( ^ω^)「だから、部活も辞めて学校にいる時間を減らした。
      僕達と遊ぶのも止めて、家にすぐ帰るようにした。 
      学校に、そうさせる何かがあるから。」


('A`)「で、その何かって何だよ。」

(;^ω^)「いや、それを二人で見つけようって思ってですね……。」


そんな時、ガラガラと教室のドアが開く。
現実に引き戻されるかのように、僕達は話を中断した。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 20:55:19.70 ID:MUewyLZ50

( ´∀`)「何だ、まだお前らいたのかモナ。
      二人きりで教室でそんな密着して……あ、お邪魔だったモナ?」

教室を見まわすと、さっきまでいた生徒達の姿は消えていた。
話に集中しすぎて、気付かなかったらしい。


(;^ω^)「いやいや、僕達はガチホモとかそんなじゃないっすよ。」

( ´∀`)「僕は勉強のお邪魔かと言ったモナよ。
       ……そうかー、二人はそういう関係だったモナかー。」

(;^ω^)「……本当に勘弁だお。」


(;'A`)(……この先生、侮れないな。)



45 名前: ◆9d9cVF02x2 投稿日: 2007/08/23(木) 20:57:32.71 ID:MUewyLZ50

( ´∀`)「冗談は程ほどにして、そろそろ帰るモナよ。
      部活も無いのに、学校に居るのはあまり良い事とは言えないモナ。」

('A`)「あーそうだな。じゃあ、帰るか。」

( ^ω^)「だお、先生バイブー。」

( ´∀`)「はいはい、さいならモナー。」


そういえば、先生は何をしに教室へ戻ってきたのだろうか?
そんな疑問も浮かんだが、ドクオの居る手前、口には出さなかった。
どうせ、大した理由でもないだろう。


……扉を閉じる前に、少しだけ声が聞こえた。

( ´∀`)「〜〜はいないモナか。最近、来ないモナね。
      まぁ、良い。呼び出せば済むことだモナ……。」



49 名前: ◆9d9cVF02x2 投稿日: 2007/08/23(木) 20:59:55.05 ID:MUewyLZ50

時刻は5時過ぎといったところだろうか。
天候のこともあり、廊下は薄暗く感じられた。


('A`)「……そういやさ、モナー先生とツンの噂を聞いたんだよ。」

( ^ω^)「どんなだお?」

('A`)「いや、二人っきりで話をしている姿を見た奴が何人もいるらしいくてな。
   雰囲気的に二人は付き合ってるんじゃないかって、くだらない話だよ。」

(;^ω^)「何だおそれ。まぁ、モナー先生は良い人そうだから大丈夫だお。」


('A`)「ところがどっこい、そうもいかないんだよなぁ。」

( ^ω^)「……え?」


思わず、歩を止めてしまった。
モナー先生にも何か僕の知らない事があるのか?



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 21:02:56.77 ID:MUewyLZ50

('A`)「これもまた噂なんだけどよ。モナーのやつ最近、離婚したらしいんだ。」

( ^ω^)「離婚かお?」

('A`)「ああ、だがその離婚の原因っていうのがDVだって言うからビックリだ。
   性行為の強要から始まって、最終的に奥さんの顔を殴っちまったらしい。
   警察には注意だけで済んだけど、慰謝料たっぷりなんだってよ。」


(;^ω^)「マジかお……てか、何でドクオはそんな事知ってるんだお?」

('A`)「まぁその、警察の知り合いがいるんだよ。
   んで、うちの先生の話だっていうから深く聞いてみた。」


モナー先生にそんな一面があるなんて知らなかった。
生徒にも人気のある良い先生だと思ってたんだがな……。

しかし、それならツンとの繋がりが気になる。

もしも、そんな一面を先生が出したとしたら……?



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 21:05:29.62 ID:MUewyLZ50

('A`)「でもよ、俺今日は嬉しかったよ。」

( ^ω^)「ん?何でだお?」

ドクオは唸りながら、頭をポリポリとかいた。
照れ隠しのつもりなんだろう。


('A`)「自分でも意味が分かんないだけどさ。
   ……なんつーか、こうやって人に相談出来た事自体がなのかな?」

( ^ω^)「仲間なんだから、当然だお。」

('A`)「いやさ……前に相談しないで、一人で色々とやった様な気がするんだよ。
   その時と比べて、今は上手くいく気がするっていうのかな。」

( ^ω^)「じゃあ、その時はダメだったのかお?」

('A`)「ああ、最後まで誰かに助けを求めていた……そんな気がするよ。」


ドクオが語る不思議な体験。
無かったようで、確実に起きたと思えるその記憶。

ん?どこかでそんな体験について聞いた事がなかっただろうか。



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 21:07:39.64 ID:MUewyLZ50

('A`)「……今度、ツンに話を聞こうぜ。」

ドクオは今日一番の真剣な表情を見せる。
その瞳から、僕は運命を変えるだけの強固な意志を感じた。


( ^ω^)「うん、ツンの悩みを聞いてあげたいお。
      だって、僕達は……。」


('A`)「仲間、だからな。」

( ^ω^)「……だお!」


僕達は笑いあう。
今は、二人の間に不安なんてものは存在しなかった。

互いに互いの事をこう思っているのだ。
こいつとなら、何でも出来ると。

そう僕は信じたい。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/23(木) 21:10:22.24 ID:MUewyLZ50

雲は更に厚みを重ね、静かに雨が降り始める。

先程のように、これが不吉の象徴だとは思わない事にした。
梅雨の天候に一喜一憂するのも馬鹿らしいと気付いたから。

傘が無いので、雫を直に浴びる事になる。
ポツポツと小さな音をたてて、降り続ける雨。
あの世界の終わりの時と同じように、段々と大きくなる雨粒。

そんな雨という存在に、心の中で宣戦布告をしておこう。
この世界を救う大きな目標を掲げよう。

今度こそ、僕は運命を打ち破ってやる。

2度も繰り返した敗北の記憶を引き継ぎ、内藤ホライゾンは成長したのだから。



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