( ^ω^)とひぐらしのなく頃に。のようです

5: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:07:48.19 ID:bIhUVbEA0
目覚まし時計よりも早く活動を開始した。
朝食をとり終えたころ、ようやく起床時間のベルが鳴る。

隙間から漏れる太陽の光が朝を強要しているようで、どうにも煩わしかった。

朝日が眩しかった。
だから、早くに目が覚めたのだろうか。

いや、それは違う。
そんなことは分かりきっていること。

目を閉じても寝れなかったのだ。
それに、目を閉じていると、嫌な事を考えてしまう・・・・・・僕は言いようのない恐怖に縛られていた。

それはきっと、親しみなれた人の口から発せられるであろう言葉。
きっと、それは僕の聞きたくないような言葉。

まだ内容なんて知る由もない。
だが、なんとなく勘としか言いようがない。
それでも僕は確実に恐れを抱いていた。

恐怖、死よりもずっと恐ろしい恐怖。
自分以外の誰かが傷つくこと、それが今の僕には何よりも嫌だった。



7: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:08:59.77 ID:bIhUVbEA0
着替えを済ませてから、コーヒーを飲もうと思った。
面倒な事は先に終わらせてゆっくりとしたかったから。

シャツのボタンがうまくとめられなかった。

手が震えていた。
初夏、汗ばむ気温、湿度。
だけど、僕の手だけは血が通ってないかのように冷たかった。

恐怖からくる緊張。
緊張からくる体の不具合。
体の不具合から来る精神の乱れ。

嫌なループが僕の中を巡っていた。
それを理解したとき、軽い眩暈を覚えるほどに。

自分の弱さを思い知る……気持ち悪い。



8: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:10:04.68 ID:bIhUVbEA0
不意に玄関のベルが鳴った。
こんな朝からの来訪者は珍しい。
むしろ、ここに住むようになってからは初めてかもしれない。

変な高揚感を抱き、玄関へ駆け寄った。
体中の血液が戻ってきたような感覚、金縛りから解けたような。

勢いよくドアを開けると、来訪者は驚いたような表情を見せた。
さすがに威勢がよすぎたのだろうか、僕は戸惑う。

そんな僕の様子に気づいたのか、彼は申し訳なさそうに口を開いた。


(;'A`)「あ、わりぃ、正直まだ寝ているものかと思って……。」


ドクオだった。
もっとも、一番彼である可能性が高かったのだが。



9: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:10:49.38 ID:bIhUVbEA0
('A`)「いやさぁ、お前最近遅刻しまくりだったじゃん?
   今日ぐらいは遅刻させないように俺がお迎えってやつだよ!」

余計なお世話だ、と言ってやった。
朝っぱらから皮肉を言い合える関係は良いものだと思う。
また、本心としてもありがたい、今は人の心に触れるのが暖かくて嬉しかった・

もっとも、彼が僕の遅刻なんかのために来たのでは無いことは分かっている。
恐らく、彼もまた恐怖を感じた、だからここに来たはず。

('A`)「……あー、その何でもお見通しみたいな目はやめてくれよ。
    ブーンにやられたら、なんか深層心理まで読まれそうだ。」


この冗談も強がりの一種。
本題に踏み込みたくても踏み込めない。

なら、僕から切り出すか?
嫌だ、僕だって怖い、楽しい時間を終わらせたくない。

朝のひと時くらい、この調子でいさせてくれないか……。



10: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:11:37.22 ID:bIhUVbEA0
……それで良いのか?

頭の中で誰かに問いかけられたような気がした。

……それは誰に?

いや、分かっている、それは僕自身。

もっと言うならば、後悔を残したまま生を終えてしまったあの世界の僕。
嫌なことから目を背け、時間におわれるがままに失敗を重ねてしまった経験のある僕。

もっとも、早く起こした行動を起こしたところで結果が良くなったのかは分からない。
何をしようが、未熟な僕では惨劇を回避できなかったのかもしれない。

だが、可能性の幅は広まったかもしれない。
彼女と手をとり、幸せな日々を築けたかもしれない。

だから、僕は今度こそやりとげなければならない。

手遅れになる前に、やれるだけのことはやらなくてはならない。
あの世界の経験を経て、内藤ホライゾンは成長したのだから。


・・・・・・それでいいんだと、あの世界の僕が笑いかけてくれたような気がした



12: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:13:26.71 ID:bIhUVbEA0
( ^ω^)「ドクオ、今日の放課後、ツンをとっつかまえるお。」

ドクオは一瞬だけ顔を引きつらせた。
だけど、僕は目を逸らさない。ただ、彼の目をじっと見据える。

観念したかのように、彼も覚悟を決める素振りを見せてくれた。



('A`)「……そっか、とうとうあいつと決着をつけるんだな?」

( ^ω^)「うん、いつまでも逃げてばっかじゃいられないお。」


逃げる、その言葉にドクオは少し反応した。
恐らく自らが感じている恐怖を見透かされていることに気づいたのだろう。

照れ隠しのように、咳をゴホンと一つしている姿に思わず口元が緩んでしまった



13: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:14:30.65 ID:bIhUVbEA0
一度、部屋に戻り支度をし直し、心の中でいってきますと呟く。
今度はドアをゆっくりと開けて、いつもどおりの朝を再現した。
2度目に感じた朝日は気持ちが良かった。


('A`)「さてさて、藪の中からは何が出てくることやら。」

( ^ω^)「竜が出てきたら友達になりたいお!」

('A`)「……ちげぇねぇな!」


恐怖心が無くなったわけじゃなかった、でもそれ以上に僕たちには強い気持ちがあった。
仲間の力になりたい、これに勝る気持ちはないと信じていたから。。



15: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:15:44.87 ID:bIhUVbEA0
―――――。


学校に来てからの僕達は良い意味でいつもどおりだった。
変に気を張ったりもしてないし、ツンにも態度を変えたりしてない。
現に、今も普通の学生らしく昼休みを満喫していた。



('A`)「とまぁ、そんな訳でナポリタンはケチャップ味しか認めないわけだわ!」

ξ゚听)ξ「カーチャンの作ったやつしかダメって……マザコン?」

(;^ω^)「良い家族愛じゃないかお?」

他愛もない雑談。
こぼれる笑みと、和やかな空気。

こうしていると、ツンに変わった素振りは全く無い。
僕たちの考えなんて唯の思い過ごしなんじゃないかと思うくらいに。

それでも、彼女には何かがあるはずなのだ。
過剰な心配かもしれないが、僕は何故かそう確信している。


そんな心とは裏腹に、何でもないことの様に僕は話を切り出した。



18: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:23:51.37 ID:8qGYVNvU0
( ^ω^)「ツン、今日の放課後は暇かお?」

('A`)(おお?)



ξ゚听)ξ「…ゴメン、ちょっと……。」

初めに断られるのは予想通りだった。
だからこそ、僕たちの考えが的中しているみたいに思ってしまう。
嫌な思考回路だが、僕の思いと口は止まらない。


( ^ω^)「ほんのちょっとだけでいいんだお、15分くらいでもいいんだお。」

ξ゚听)ξ「……それなら、今話せばいいんじゃない?」

ツンが苛立ちの気持ちをを全面的にだしてきた。
これはきっと、もうその話をするなと遠まわしに言っているのだ。

それでも、僕とドクオは引くことが出来ない。
他ならぬ、彼女のために。



20: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:24:51.31 ID:8qGYVNvU0
('A`)「なぁ、俺からも頼むよ、ここ最近はお前がいなくて寂しいんだって!」

ξ゚听)ξ「アンタが寂しいのを私が止めなきゃいけない理由が思い浮かばないわ。」

(;'A`)「……すいません。」


( ^ω^)「僕も寂しいんだお。」

ξ゚听)ξ「うん…・・・でも、やっぱり無理かな・・・・・・。」

(;'A`)(反応の違い……これが現実か。)



24: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:26:18.95 ID:8qGYVNvU0
食堂で食事をとっていた生徒達なのが教室に戻り始め、賑やかさ増していく。
つまり、もうじき昼休みも終わってしまう。早く約束をこじつけなければならない。

徐々に、僕の心にも焦りが生まれ始める。


( ^ω^)「別にツンを困らせたい訳じゃないんだお、お願いだお?」

ξ゚听)ξ「ごめん、やっぱり学校にいたくないから……。」

学校にいたくない。
それはつまり・・・・・・。


('A`)「学校にいたくないってさ、つまりなんかあるんだよな?
   例えば……どっかの先生のこととかだったり?」

ξ )ξ「……っ!!」



業を煮やしたのか、ドクオは直接的な言葉を使う。
『先生』、この言葉にツンが反応を示した風に見えた。



25: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:27:05.22 ID:8qGYVNvU0
ξ )ξ「……。」

( ^ω^)「ツン?」

口を閉ざしたまま、ツンは俯く。
顔は青ざめ、何かに怯えたように震え始めた。


ξ )ξ「……さっきから。」

( ^ω^)「……お?」


言葉と同時に震えが収まり、ツンの目が僕を捕らえる。
その瞳は赤く染まっていた。いや、あまりの気迫に僕はそう感じてしまった。

睨みつけるその目に秘められているものを僕は知っている。
あの世界で僕に向けられた刃、それよりも恐ろしかったのは僕を刺し殺す様な視線。

それと同じものを再び僕は感じていた。

秘められているのは凍り付いてしまうような憎悪の念。
悲しみと怒りが交じり合った、嘆きの言葉を代用するもの。


ξ゚听)ξ「さっきからうるさいのよ!!
     嫌だって言ってるのが分からないの!?
     あんた達と話したくなんか無いって言ってるの!!」



28: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:34:30.22 ID:JbPQ/ufh0
乱暴に立ち上がると、ツンはそう言い放った。
廊下にまで響き渡る声にクラス中の視線が集まる。

言葉というよりは心から現れた叫びが変化したものだと僕は思う。
だからこそ、彼女が本当に苛立ちを感じているのが分かってしまった。


(;^ω^)「ご、ごめんだお……。」

ξ )ξ「……うん。」


(;'A`)「い、いやー、さすがツン!
   演技もそんなに上手いなんて女優の素質も抜群だな!
   みんな驚かしてゴメン、ゴメン!」


「あー、なんだよビックリしたなぁ。」

「ツンちゃんのあんな大きな声初めて聞いたよー。」


(;'A`)(俺、ナイス機転だよな?)



29: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:34:54.22 ID:JbPQ/ufh0
( ^ω^)(ツン・・・・・・。)


ξ )ξ(・・・・・・。)


いつも、いつも彼女とは同じ道を歩んできた。
それは誰が決めたものなのかは分からない、少なくとも僕が作り上げたのではない。

神様がつくりあげた運命というなの道なのだろうか?
それとも、僕がつくりあげた道に彼女が着いてきたのだろうか?


・・・・・・僕は、後者を望んでいた。
彼女が僕のために行動を起こしてくれているのが心地良かった。
それは、この前までは優越感を感じられるからだと思っていた。

だが、それは違っていた。
あの世界で人を信じることを教わった僕は自分自身の気持ちに気付いていた。


僕は彼女のことが好きなのだ。

だからこそ、彼女が共にいるのが心地よかったのだ。



30: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:35:31.38 ID:JbPQ/ufh0
自分の気持ちを知ったときには少し混乱した。
恋とか愛とか、深く考えたことはなかったから。
だから、何という訳ではないが僕は自分自身の気持ちを押し殺した。

そして、このような状況になってその気持ちが溢れ出してくる。

彼女を守りたい。
彼女を救いたい。

僕に出来ることなら何でもしてあげよう。
彼女が暗闇の中にいるのなら、僕が光になってあげたい。

だから、僕はここでひくわけにはいかない。

彼女が拒んだとしても、無理やりにでも手を引っ張ってやる。


( ^ω^)「……それでも僕はあきらめることが出来ないお。
           少しでいいから話を聞かせてくれないかお?」


ξ゚听)ξ「ブーン・・・・・・。」



33: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:36:54.14 ID:JbPQ/ufh0
( ^ω^)「君が嫌だとわめいても、僕はしつこくつきまとうお。
        それで僕が嫌われても構わない、君のためになると僕は思っているから。
         自分でも無茶苦茶だとわかってるし、勝手だと思ってる。だけど・・・・・・。」

( ^ω^)「・・・・・・それでも、君の力になりたい。それだけなんだお。」

('A`)「なんかあったら力になれるかもだし……な?」



ξ゚听)ξ「二人とも……。」

半分あきれた感じの表情をツンは見せる。
観念したと言っている様に僕には感じた。


ξ゚听)ξ「わかったわ。じゃあ、アンタ達の話を聞くわよ・・・」。

( ^ω^)「・・・大丈夫、何があっても僕達とツンは仲間だお。」


僕がそういうと同時にチャイムが鳴り響いた。
生徒たちが次々と元の席に着き始め、僕たちもそれに便乗する。



34: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:37:09.10 ID:JbPQ/ufh0
('A`)「それにしても、大当たりって感じだな。
    一度言ってみたかったんだが『覚悟はいいか?俺は出来てる。』」

( ^ω^)「覚悟なんて、行動の後についてくるもんだお。」


軽口を叩きながらも不安は募るばかりだった。
話を聞く、それだけでこんなに苦労するとは思わなかったから。

それでも、信じなければならない。
どんなことがあっても僕はツンを仲間だと言える。
そう、僕自身のことを信じなければならないんだ。

あの世界で教わった。
信じる心と、人を愛すること。
いつまでも、忘れてはいけない事だった。



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