( ^ω^)とひぐらしのなく頃に。のようです

48: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:49:32.61 ID:JbPQ/ufh0
('A`)「おじゃましまーっす!」

ξ゚听)ξ「・・・・・・お邪魔します。」

( ^ω^)「……いらっしゃいませ、だお。」


('A`)「・・・・い、いやぁブーンの家に3人で揃うなんて久しぶりだよな全く!!
        なんだか、俺懐かしさのあまりついつい小躍りしちゃいたいよ!」


( ^ω^)「本当に久しぶり、だお。」

ξ゚听)ξ「そう・・・ね。」


(;'A`)(・・・・・・うあー。)



52: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:55:39.12 ID:eeb11pxd0
放課後、僕の家にツンを連れてきた。
逃げるように帰ろうとしたツンを、である。
約束を忘れた等と、小学生でも見抜けそうな嘘をつくツンはどこか痛々しく思えた。


道中に会話はなかった。
いや、僕とドクオは雰囲気の悪さを改善しようと努力をしたつもりである。

しかし、ツンが口を開くことはなかった。
そのうち、僕のほうも話しかけるのを止めた。


どうせ、この後嫌となるほど話を聞く事になるのだから。

確証は無いが、そう思っていた。
それも、聞きたくないような話であることも。


ツンは決して、自分の気持ちを語らなかった。

しかし、言われなくても分かる、
彼女の目の中に絶望という名の暗闇が見える、そんな風な気がしたから。



54: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:57:12.04 ID:eeb11pxd0
( ^ω^)「じゃあ、僕はお茶を入れてくるから少し待っててほしいお。」

ξ゚听)ξ「「・・・そう、ご自由に。」


('A`)「お、おお!とびっきり熱いお茶を頼むぜ、夏だけどな!!」

('A`)(・・・ツンとタイマンはきついから、なるべく早く頼むぞ!)



ドクオが何かを求めるような目をしていたが、とりあえずは無視する。

お茶っ葉を取り出し、お湯を作る作業。
それだけの作業に、有り得ないほどの時間をかけるようにした。

お茶を入れるなんて口実で僕は考える時間が少しでも欲しかったから。



56: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 22:59:23.96 ID:eeb11pxd0

考えていた、何を聞けば良いのか。
いや、それ以前に僕が踏み込んで良いのかということを。

僕が質問し、彼女が答えるということ。
それは即ち、彼女の傷を抉り取ることに繋がるのである。

もし、今日の僕が彼女に更なる傷を負わせることになったら?
知られたくない秘密を無理やり聞き出して、僕はどうするんだ?
彼女を助けたいと言ったが、果たして僕にどうにか出来る問題なのか?

不安になる材料はいくらでもある。
ツンの今日の態度を見てからはそれが一気に加速したのも事実である。

また、反対に逆の思いもであるのだが。



57: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:00:03.04 ID:eeb11pxd0

わかっている、わかっているのだ。
僕もドクオも、もう引き返せない位置まで踏み込んだのだ。

光の届かない場所まで踏み込んでしまった。
この奈落の底の入り口には決して戻ることが出来ないんだ。


だからこそ、負の思いとは逆の思いもまた強くなる。
彼女を救いたいという気持ち、それは何事よりも強く輝く正の思い。
そして、『救う』という言葉に込められた力は僕だけのものではない。

あの世界の僕が言うのだ。
『彼女達に教えてもらった事を忘れるな』と。
何度も何度も、それを心に誓えと言われたのだ。

僕自身も忘れるわけにはいかない。
死んでまでして、ようやく手に入れた心の力なのだから。



58: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:01:27.79 ID:eeb11pxd0
深い思考の渦から目覚めさせた甲高い音。
どうやら、ヤカンのお湯が沸いてしまったらしい。

もっとも、最後の心の準備は出来た。
後は真正面からツンの闇とぶつかるだけだ。

どんなに醜悪なものでも。
どんなにおぞましいものでも。
僕達は立ち向かわなければならないんだ。


・・・それは好奇心や同情といった心のせいで?
・・・踏み込めないとこまできてしまったから諦めで?
・・・あの世界の自分自身の記憶に咎められるのが嫌だから?

どれも違う。
これは僕の決断であり、本当の心。

理由なんてたった一つ、シンプルだ。

『好きな女の子の力になりたい。』
男である以上、これ以上の理由が必要なんて思えないだろ?



59: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:03:17.13 ID:eeb11pxd0
( ^ω^)「すまんこつ、待たせたお。」

ξ゚听)ξ「気にしてないわ、ありがとう。」

('A`)「全くだぜ・・・気にしてなんか・・・。」


ドクオが5歳は老けて見えるのは気のせいだろうか。
うん、きっと気のせいだろう。


('A`)「いやぁ、この暑いのに熱いお茶なんてね。
     こりゃあ、冬にはマグマが湯飲みに入ってるに違いないってな!」


ξ゚听)ξ「・・・・・・。」

( ^ω^)「・・・・・・。」

('A`)「・・・・・・うん、おいしいなぁ。」



60: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:05:00.70 ID:eeb11pxd0
それから、10分程だろうか。
痺れを切らしたと言う言い方は変だが、僕から話を始める事にした。


( ^ω^)「さて、今日ここに来た理由はわかってるお?」

ξ゚听)ξ「・・・私に話があるんでしょ?」


( ^ω^)「・・・正直、そう言ったけど少し違うんだお。
      僕とドクオはツンに話をして貰いたくてここに呼んだんだお。」

('A`)「こっちからじゃなくて、そっちから言ってくれるのが理想だったんだけどな。
      流石に俺たちも我慢ならねぇから、こういう形で話を聞くことにしたんだ。」


ξ゚听)ξ「・・・・・・私には何も話すような事は無いわ。」


ツンがまたしても、冷たい口調になっていく。
昼休みの二の舞になるのは避けたかったので、逃げる様に話をすすめる。



63: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:07:04.48 ID:eeb11pxd0
( ^ω^)「ツンが自分から話をしないというなら、こうするお。
        僕達の質問に正直に答える、それでもいいお?」

ξ゚听)ξ「アンタ達がそれで良いならどうぞ?」


ツンは挑発的に見下した目を向けてきた。
それは、正直に話す気はサラサラないと言っている様で、僕には悲しかった。

まだ、足りない。
ツンに真実を語らせるのはまだ無理だ。
だからこそ、少しずつ追い詰めていくことが必要なのだ。

一気にまくしたてるのではダメだ。
それでは、錯乱を引き起こしかねない。

一つずつ細かい質問を重ねていき、最後に叩きつける。
これがドクオと決めた攻略法のようなものだった。

もっとも、マニュアル通りにならないのは承知の上だ。
・・・・・・恐らく、ヒートするのは間違いないだろうから。



64: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:08:40.82 ID:eeb11pxd0
('A`)「じゃあ、まず一つ目といこうか。
     ・・・最近、付き合いが悪いのはどうしてなんだ?」

ξ゚听)ξ「別に付き合い悪い訳じゃないでしょ?
      ただ、学校で騒ぐとめんどくさいからいないだけ。」


( ^ω^)「学校で騒ぐと、どうしてメンドクサイんだお?

ξ゚听)ξ「最近、部活止めちゃったからね。
     それなのに遊びほうけてるなんて知られたら、気まずいでしょ?」


('A`)「ならよ、何で部活止めたんだよ?」

ξ゚听)ξ「学生の本業は勉強って言うでしょ? 
     それに、ブーンに一泡吹かせたいからちょっと本腰入れようかなってね。」


・・・・・どうやら、本気で正直に答える気はないらしい。
ドクオもそれ感じ取っているのか、少し呆れた表情だ。

もう少し、踏み込んでみるか・・・。



65: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:11:15.18 ID:eeb11pxd0
( ^ω^)「今日の昼休み、どうしてあんなに怒ったんだお?」

ξ゚听)ξ「なんていうか、あんまりしつこいからかな。
      ・・・でも、あれは確かに言い過ぎたし謝るわ、ごめん。」


( ^ω^)「それは別に良いんだお・・・それより、僕の言ったこと覚えてるお?」

ξ゚听)ξ「・・・何?」



( ^ω^)「僕は『正直に答える』と言って、ツンもそれに承諾したお?
     ・・・今、ツンが話した答えの中には本当に『正直な答え』はあったのかお?」


ξ゚听)ξ「・・・・・・何が言いたいの?」

( ^ω^)「ツンは嘘をついてるんじゃないかって・・・・・・。」

そこまで僕が言ったところで、ドンと大きな音が部屋に響く。

ドクオが机を叩き、おもむろにたちあがったのである。
珍しく感情をあらわにし、こぶしを強く握ってる姿が伺えた。

だが、この行動はまずい。
この先の展開は恐らく僕の考えが当たるなら・・・。



66: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:13:41.22 ID:eeb11pxd0
('A`)「もう我慢ならねぇ、やっぱり探りあいは俺の性根に合わないわ。
     ブーンには悪いが、単刀直入にいかせてもらうぜ。」

(;^ω^)「ちょ、おま、落ち着けって・・・。」

('A`)「いや、もうダメだね。限界なんてとうに越えた。
     今俺に出来るのは、ただ突き抜けて走ることだけだ。」


ξ゚听)ξ「・・・アンタ、さっきから何言ってるの?頭おかしいんじゃないの?」

('A`)「まさか、自分でも驚くくらい冷静だよ。
     お前にぶつける質問の内容だって、さっきからずっと考えてた。」

ξ゚听)ξ「・・・はぁ?」


('A`)「本当はもっと時間をかけなきゃいけねぇのかも知れねぇ。
     だけど、ブーンと違って俺はそんなにうまくいけないみたいだからな。
      単刀直入に言う、『モナーの野郎と一体何があったんだ』?」

ξ゚听)ξ「・・・・・・。」



67: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:15:30.76 ID:eeb11pxd0
僕の作戦は水泡となって消えてしまった。
だが、もしかしたらこれで良かったのかもしれない。

嘆きの言葉こそ、彼女が抱える闇の象徴。
それこそが本当の真実、言葉。
何より、ドクオの発言が核心をついてしまっている。
もう、後には戻れない。ドクオの言うようにただ、前へ。


( ^ω^)「・・・ツンには何も聞いてないけど、これが僕達の推測から出た本当に聞きたかった質問だお。
      ツンとモナー先生の間に何かがあって、それのせいで最近の調子が悪いと思ってるお。」

ξ゚听)ξ「・・・モナー先生とは何も関係ないわ。」

( ^ω^)「それでも、最近のツンには必ず何かがあったはずなんだお。
       今は推測の域をでないけど、普通でいられなくなるようなそんなものが。」

ξ゚听)ξ「さっきから、何も無いって言ってるのがわからない?
      ・・・そろそろ、いい加減にしてもらいたいんだけど。」

ツンの苛立ちが目立ち始める。
恐らく、昼休みの時の様になるのは間違いないだろう。



68: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:17:33.32 ID:eeb11pxd0
だけど・・・何故か僕の心は高揚していた。
いや、気持ちの高ぶりはもしかしたら良いものではなかったのかもしれない。

これは悲しみと怒りの混ざり合った感情だ。
信じてくれない悲しみと、その負の感情をうまく抑えられない自分への怒り。
同時に巻き起こったそれは、僕の理性の鎖を蝕んでしまった。

だから・・・・・・。

僕の起こした行動は、自分でも理解し難かった。


( ^ω^)「ツン、ちょっとこっちにくるお。」

ξ;゚听)ξ「何?・・・って、きゃっ!」

(;'A`)「お、おいブーン!!」

ツンを無理やりに引き寄せる。
同時に、押し倒し手を押さえつけた。



69: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:20:21.90 ID:eeb11pxd0
( ^ω^)「・・・これは一体なんだお?」

ツンの手にあった包帯を乱暴に引きちぎる。
それを見たとき、ドクオもはっとしたような顔を見せた。

その手には、目を覆いたくなるような傷痕。

平行な直線の線がいくつも並んでいた。
実際に目にするのは初めてだが、間違いない。
これがリストカットの痕、彼女の心の傷を映し出すものだ。


ξ )ξ「・・・・・・。」

('A`)「悪い、お前は隠してたつもりだろうが知ってたんだ。
    それが何のための包帯だったっかってことぐらいは簡単に予想できたからな。」



70: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:22:23.11 ID:eeb11pxd0
( ^ω^)「さぁ、話してもらうお。
       何がツンをそうさせるのか、何を隠しているのか。」

ξ )ξ「・・・・・・。」


('A`)「辛いかもしれんが、人に打ち明けるのは意外と悪いもんじゃないんだぜ?
     自分だけで抱え込むのは・・・ただ、空しいだけだ。」

ξ )ξ「・・・・・・。」



ξ )ξ「私は・・・私は・・・。」

ツンは立ち上がり俯いたままだが、ゆっくりと話始める。
僕達はようやく彼女の闇と対峙する、そう感じた。



72: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:25:50.25 ID:eeb11pxd0
ξ )ξ「・・・数ヶ月前、私の親が離婚したわ。
      それは予測は出来ていたけど、あまりにも衝撃的な出来事で・・・・。
      だから、私はその辛さを誰かに打ち明けたかった。」

('A`)「俺たちには打ち明けようとは思わなかったのか?」

ξ )ξ「言える訳が無いわ、アンタ達の笑顔をみてたらなおさらね。
     ・・・・そして私は教室で一人、泣いていたわ。」

少し悔しかった。
彼女が僕達を頼ってくれなかったことが。

だけども、今はそこは問題点じゃないのも分かっている。
ここからが本番ということだ。



73: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:27:39.06 ID:eeb11pxd0
ξ )ξ「そんな時、現れたのが・・・アンタ達の言うとおりモナー先生よ。
     大人特有の包容力っていうのに私はすっかり彼を頼り切ったわ。」

ξ )ξ「そして何度か相談を続けたある日・・・家に招待されたわ。
     今思えば、それが何を意味するのかなんて簡単に理解できる。
     それでも、私は特別扱いされてることに優越感を持って、のこのことついていった。」


('A`)「・・・・・・。」

( ^ω^)「・・・!」

正直言って、この先のことは予測できた。
しかし、僕が驚いたのはツンの話の内容ではない。

ツンの爪が、腕に深い傷をつけていたのである。



75: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:29:53.15 ID:eeb11pxd0
ξ )ξ「そして・・・私は犯されたわ。
     あはは、自分の注意力深さの無さに今でも笑っちゃう。」

掻き毟る手が更に加速する。
傷痕と爪が赤く染まる。


ξ )ξ「レイプってさ、本当に痛いだけなのよ?
     漫画とかそういうののは全部フィクションだから、あんまり願望持たないほうがいいわ。」

ガリガリと音が聞こえる様になる。
それに気付いたドクオが固まっているのが見える。


ξ )ξ「その後は写真とか撮られて脅迫されてさ。
     誰かに言ったら、これをお前の知り合いという知り合いにばらまいてやつね。
     そこら辺だけは、漫画と全く同じなんて笑っちゃうわよね。」

血が腕を伝うようになる。
そこまできて、ようやく僕の震えがおさまった。



76: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:36:50.04 ID:eeb11pxd0
ξ )ξ「私は・・・私はね・・・。」

(;゚ω゚)「もういい、もういいんだお、ツン!!」

彼女の事をもう一度、押さえつけた。
そして、彼女の顔が僕の目に映し出される。

涙が、零れ落ちていた。


ξ;凵G)ξ「私は!何があってもブーンとドクオにそんな事を知られたくなかった!!
      汚れてしまった私を見て、二人がどう思うのかを思うと怖くて、辛くて、悲しくて!!
      そんな感情を忘れるために痛みで紛らわすことしか出来なかった!!」

ξ;凵G)ξ「嫌われたくなかった、そうなるなら死ぬほうがマシだった!
       だから、何度も死ぬことも考えた、けど会えなくなるのも辛かった!!
       何度、先生に汚されても、私は耐えることしか出来なかった!」

ξ;凵G)ξ「だけどね、それも今日で全部終わり!
      二人に知られてしまったから、私の秘密がばれてしまったから!!
      汚れきった私の姿が、照らされてしまったから!!」



78: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:39:09.75 ID:eeb11pxd0
(;^ω^)「ツ、ツンは汚れてなんか・・・。」

ξ;凵G)ξ「そんな気休めは少したりとも聞きたくない!
       現に、今のドクオを見ればそれはわかる!!」

(;'A`)「あ・・・うう・・・ああ・・・・。」


ドクオはうろたえていた、戸惑っていた。
実際に目にしたツンの気迫に圧倒されていた。

そして、汚れてしまったと言うツンに少なからずの嫌悪感を抱いていた。


ξ )ξ「同情とか、そういうのは全く欲しくないわ。
     もう、私に残されているのは終わりへの道だけ。
     私は、先生を道連れにして・・・・・・。」



79: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:40:56.82 ID:eeb11pxd0
(  ω )「・・・・・・。」

彼女の言うことに圧倒されたのはドクオだけなのか。
嫌悪感を抱いたのは、本当にドクオだけなのか。

嫌、違う。

僕自身も彼女に対し、何かしらの悪い感情を抱いたのは確かだった。


それは予測できていたこと。
しかし、実際に耳にすると、どうしても黒い感情が湧き上がる。

僕は確定に近い予測をしながらも、期待をしていた。
彼女が、綺麗なままでいることを。
美しく、可憐なイメージを崩そうとはしなかったのだ。



80: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:42:30.20 ID:eeb11pxd0
僕は信じ切れなかったのだ。
彼女が汚れてしまったから、憂いを抱いたのだ。

そう感じたとき、僕は一気に力が抜けてしまった。


彼女を掴んでいた手を放し、立ち尽くす。
ツンの絶望を帯びた顔が嫌に目に付いてしまった。

ξ )ξ「・・・もういいわ、帰るわよ。『さよなら』」


ツンは扉に向かって歩き出す。
その扉の向こうはきっと、奈落の世界。

だから、さよならという言葉に秘められた意味。
それを考えると、引き止めたくてしょうがないのに。

でも、僕の体は少したりとも反応してくれなかったんだ。



81: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:44:21.53 ID:eeb11pxd0
僕に勇気をわけてください。
神様がいるなら、闘う力を僕に。

でも、気付いている。
勇気は神様がくれるなんてものではない。
闘う気持ちはきっといつだってここにある。

忘れるな、信じ続けろ。
僕自身を、彼女を救うと決めた信じる心を。

奇跡は信じる心が引き起こすものなんだから。


『僕はツンが好きなんだ!!』

耳に入ってきた声。
誰かが、声を荒げてそう叫んだ。



83: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:46:31.21 ID:eeb11pxd0
ξ;゚听)ξ「え・・・・?」

ツンが足を止めてこちらを振り返る。
信じられないといった表情で僕を見つめていた。


(;'A`)「ブーン、おまえ・・・?」

ドクオもまた同じような顔をしていた。
でも、そこには僅かな希望を抱いてるような片鱗もある。

つまり、今『好き』と叫んだのはこの僕だ。
・・・・・無意識の内に叫んだのか?

違う、助けてくれたんだ。
自らの成長という名の形で、手助けしてくれた。


・・・そうだろ?
ありがとう、『あの世界の僕』。



84: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:49:13.78 ID:eeb11pxd0
( ^ω^)「僕は君のことが好きだお、ツン。
       これが愛だと、最近になってようやく気付いた。
       いや、教えられた。人を愛すること、人を信じること。」

( ^ω^)「少年が僕に言ったお、『運命は簡単に打ち滅ぼせる』と。
       だから今、絶望しているようなツンの運命だって、力を合わせればきっと打ち砕けると信じている。
       でも・・・確かに、ツンに僅かの嫌悪感を抱いたのは確かだったお。」


ξ;゚听)ξ「そ、それなら・・・。」

( ^ω^)「言ったお、僕は君が好きなんだって。
       そんなちっぽけな嫌悪感なんて吹き飛んでしまうほど、僕は君が好きなんだお。」

これが僕の本心。
嘘偽り無い、誠の言葉。



85: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:51:12.06 ID:eeb11pxd0
 ^ω^)「そして、二人の少女は言った『最後まで信じつけろ』と。
       それを死を賭けてまで教えてくれた少女達には感謝している。
       僕は今、ツンの事を何があっても仲間だと言い続ける事が出来る。
       ・・・・・この言葉が真実だと、自分自身を信じることが出来るお。」

( ^ω^)「あの世界の僕を通して僕は成長したんだお。
       君を愛することが出来た、ドクオと親友になることが出来た。
       だから、僕は君が何を言おうと、君に関わり続けるお。
       死なせない、悲しませない、僕が君を取り巻く運命の呪縛をぶち破るお。」


・・・だから、だから。


ブーン「ツンも僕を信じて、仲間だと言って欲しい。
     今までと同じように、いやそれ以上に、笑いあいたいんだお。」



86: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:54:13.46 ID:eeb11pxd0
ξ )ξ「・・・・・・。」

('A`)「なんていうか・・・俺が言っていいのかわからないんだけどさ。
    ブーンの言ってることは本当だし、それに俺も同じ気分だ。
    ツンが俺たちに嫌われたくなかったのはわかるけどさ。
    それでも、そんな簡単に切れるような仲じゃないってことなんだよ。
    ・・・・・・『俺たちは仲間』だからさ。」


ξ )ξ「・・・私は、汚れてる。
     この先もその事実は変わることは無いわ。」

( ^ω^)「でも、僕がツンを好きという事実も変わることはないお。
       ドクオが仲間であるという事も、同じように。」


ツンはゆっくりと歩き出す。

僕達の方向に。



88: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:56:37.64 ID:eeb11pxd0
ξ;凵G)ξ「嫌われて、拒絶されると思ったんだよ!?
      汚らわしい目を向けられると思ったんだよ!?
      それなのに、それなのに・・・・・・。」

ツンが僕にもたれるように崩れ落ちる。
背中に手をまわして、強く抱きしめる。

この手を二度と、放すことが無いように。


( ^ω^)「むかえにくるのが遅くなってしまったお。 
       もう、絶対にこんな思いはさせないお・・・・・・。」


ξ;凵G)ξ「うん・・・うん・・・ありがとう。
       私も好き、ブーンが大好きだよ・・・・・・。」

伝わってくる暖かさは紛れも無く本物で。
僕が何よりも求めていたものだった。



90: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/13(日) 23:59:31.51 ID:eeb11pxd0
ξ;凵G)ξ「ドクオも・・・ありがとう。」

('A`)「お、おお!正直、ここは無視してくれてた方が良かったけどな!」


( ^ω^)「何言ってるんだお、ほら。」

ドクオの事もこちらに引き寄せる。
3人で手を繋ぎ、改めて仲間だと認識しあう。

これが、僕の望んでいた世界。


ξ;凵G)ξ「私は本当に嬉しい、二人とこう出来るのをずっと夢見てた。
      でも、あの人がいる限りは絶対に無理だと思ってた。」

ξ゚ー゚)ξ「けど・・・この手の温もりは本物だね。」


ニコリと笑ったツンの笑顔は眩しいくらいに輝いていて。
きっと、どんなものよりも美しいと僕は思った。



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/14(月) 00:01:45.40 ID:wVHWfE8X0
('A`)「ところでさブーン。」

( ^ω^)「ん?なんだお?」

('A`)「さっきの少年の少女ってさ・・・圭一とかの事なのか?」



( ^ω^)「そうだけど・・・いや、違うお。」

('A`)「あ、そうなのか・・・何か嫌に現実っぽく話すからさ。」
   それに、死を賭けてって・・・・どういうこと?」


( ^ω^)「いつか、必ず話すお。
       僕が経験した、ありえないけど最高の体験の話を。」



92: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/14(月) 00:02:51.14 ID:wVHWfE8X0
そう、あの世界の体験があるから今の僕がある。
あの世界の体験があるからこそ、僕はツンを救うことが出来る。

それはきっと、紛れもない真実。
ゲームの世界なんかじゃない、現実に起きた事。

だから、神様に感謝しよう。
あの世界に僕を連れてってくれた神様に。

一度は恨みをもってしまったけど、今は感謝するばかりだ。
もう一度、会えるのなら必ず伝えよう。


ありがとう、と。



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