( ^ω^)とひぐらしのなく頃に。のようです

138: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:10:21.70 ID:LdiFmqZV0
ジリリリリリリリリリリ!


騒がしい音を立てて、目覚まし時計の音が鳴り響く。
カーテンの隙間からこぼれる朝日が眩しいほどに僕を照らす。
……今日も、一日が始まった。


睡魔を感じる我が身を無理矢理たたき起こす。
枕元に準備しておいた服に着替え、そのまま洗面所へ向かう。


冷たい水で顔を引き締めると、眠気は簡単に吹き飛んだ。
ひんやりとした頬の感触に、火照る熱さも解消し満足である。


( ^ω^)「……ニコッ。」


鏡に向かってスマイル。
一応言っておくが、別にナルシストという訳ではない。


ただ、自分の笑顔の愛くるしさが好きなだけだ!



140: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:11:24.35 ID:LdiFmqZV0
朝食を済ませ、残りの身支度を整える。
家族のいない孤独な一日の始まり。
だが、慣れしたんだ朝に、今となっては何の気苦労も感じない。


いってきますと、誰もいない家に向かって別れを告げる。
どうせまた、しばらく帰ってこないのだから。


それと、何故かは知らないが、PCの電源は点けたままにしておいた。
もちろん、あのゲームをディスプレイに映したままで。
不思議とそれが当然であるかのように感じた。


扉の向こうの世界は相変わらず暑い。
もうじき、梅雨も終わり本格的な夏が来るのだろう。


少しずつだが、蝉の鳴き声がそれの到来を感じさせた。



143: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:12:33.99 ID:LdiFmqZV0
――――。


( ^ω^)「おはよーだお。」


('A`)「おはよう……ってか、今日も遅刻しないのかよ。」


(;^ω^)「いや、なんで残念そうに言うんだお。」


少しはけだるさを克服したドクオ。
まぁ、人間にはまだ程遠い。
ようやく、負け犬から馬の骨と言ったところか……。


(#'A`)「声に出てんぞ……!」


( ^ω^)「出してるんだお。」


急に殴りかかってきた。
僕もクロスカウンターで対応。
だが、それも予測していたようで同時に頬を殴りあう感じに。



145: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:14:03.20 ID:LdiFmqZV0
ξ゚听)ξ「バカ二人、何やってんのよ。」


ゴツンと頭部に鈍い痛みが走る。
ドクオも頭を押さえているので、同じ境遇だろう。
所謂、ダブルチョップというやつだ、教科書の角で。


('A`)「武器は反則だ!」


( ^ω^)「武器は禁止だ!」


ξ゚听)ξ「なんのルールよ。てか、か弱い女の子なんだがら例外を認めなさい。」



( ^ω^)「『か弱い女の子』なら例外を認めるお。」


ξ゚听)ξ「オーケー、机の角がお好みなようね。
    その額を叩き割ってあげるから、覚悟してなさいよ。」


(;'A`)「か弱いの『か』の字もねぇじゃねぇか。」



148: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:15:45.78 ID:LdiFmqZV0
こんな風にふざけあえる関係もいいものだ。
そこには何の気負いもなく、あるのは純粋な笑顔だけ。
幸せを、確かに感じていた。


ξ゚听)ξ「……何、ニヤニヤしてるのよ?」


( ^ω^)「いや、ツンは相変わらず可愛いなと思ったんだお。」


ξ;゚听)ξ「え、あう……な、何よいきなり。」


( ^ω^)「どうもしないお、ただそう思っただけだお。」


ツンは煙をあげて真っ赤になった。
うん、これは可愛いと思わざるを得ない。


(;'A`)(……こいつら、時折俺の存在を無視するんだよなぁ。)



150: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:17:27.70 ID:LdiFmqZV0
ガラガラと扉の開く音がする。
先生が教室にやってきたのだろう。
もちろん、モナーとは別の人が臨時担任をしているのだが。


ξ゚听)ξ「………。」


ブーン「何も心配いらないお、席に戻った方がいいお。」


ξ゚听)ξ「うん……。」


言われるがままに席に戻るツン。
最近では部活にも戻り、元の生活に近づきつつある。
未だに傷は癒えきれていないが……少しずつ治していけば良い。


('A`)「なぁ、写真とかってどうなったんだよ?」


( ^ω^)「警察の人に処分してもらったみたいだお。
     モナーの部屋にもの凄い量があったみたいらしいけど…。
     とりあえず、見つかった分は誰の目に留まらぬようにって。」



151: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:18:12.95 ID:LdiFmqZV0
('A`)「でもさ、警察の人には見られちゃうだろ?」


( ^ω^)「そこら辺は覚悟の上ってか、ジョルジュさんに聞いてないのかお?」


('A`)「あー、何でも嫁さんが戻ってきたとかなんとかで最近話して無くてな。
    なんか、幸せそうだし事件のこと聞くのも気が引けちまった。」



( ^ω^)「そうかお、ジョルジュさんも幸せになれたなら良かったお。」


('A`)「知り合い……だったのか?」


( ^ω^)「まぁ、なんというか……これも後々の話って事で。」


鐘の音が鳴り響く。
HRが終わり、授業の開始である。


いつも通りに始まる、平凡でそれでも幸せな日々だ。



152: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:18:32.23 ID:LdiFmqZV0
……だけど。


やらなくてはならない事がある。
ずっと待っててくれた人に恩返しをしなくてはならないから。
だから、この幸せも一時期お預けである。


『だから――このbarukisuが―――』


訪れる第五感とも言える奇妙な感覚。
行かなくてはならない、いつも通りに。
けれども、同じようになるつもりは全く無かった。


さぁ行こうと、心に秘めた時。
小さな紙が僕の机の上にポトンと落ちてきた。



153: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:18:50.44 ID:LdiFmqZV0
紙を開くと中には丸っこく可愛らしい文字で一言。
ただ、『いってらっしゃい』とそれだけ。


そして、近くの席にいり親友も一言だけ呟く。
『頑張ってこい』と、目もあわせずに。



どうやら、察してくれていたらしい。
いや、隠していたつもりではあったが無駄だったみたいだ。
仲間であるが故に。


理解と同時に、席を立った。
何も言わずに教室を去り、駆け出す。
後ろからざわめく声が聞こえたが、気には留めなかった。


ただ、あの場所に向かうと心に決めただけ。



155: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:20:05.39 ID:LdiFmqZV0
校舎裏は相変わらず静けさに満ちている。
自らの高鳴った鼓動の大きさがもっとも大きい音のように感じた。
他の生徒は授業中なのだから、当たり前なのだが。


暑さのせいか、汗が吹き出ていた。
夏を感じさせる気温と走った事による体温の上昇のせいか。
それでも、その場に流れる雰囲気はそんな体を冷ます程に冷え切っている。


ふと、背後に気配を感じた。


『おめでとう、幸せを手に入れたのね。』


背後の何かは、そう僕を祝福した。
この声は聞き覚えのある、この場所で聞いた声。


そして―――



156: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:21:55.75 ID:LdiFmqZV0
( ^ω^)「ありがとうだお、ペニサスさん。」


振り返り、姿を確認してからそう言った。
その人は少しだけ驚く様子を見せる。
もっとも、本当に僅かな変化ではあったのだが。


('、`*川「驚いたわ、思ったよりも状況把握が早いのね。」


ペニサス、あの世界で僕の母だった人。
その人が今現在、当然のようにそこに立っていた。


( ^ω^)「ジョルジュさんに会った時点で、貴方にも会えると思ってましたお。
       もっとも、こういった形でというのは不思議なものだけど。」


('、`*川「それだけの根拠で?勘と呼んでも差し支えないじゃない。」



157: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:22:53.20 ID:LdiFmqZV0
( ^ω^)「八幡神社の怪談話って知ってるかお?」


('、`*川「さぁ?聞かせてくれる?」


( ^ω^)「……昔、あの神社がまだ無かった頃の話だお。
         その場所には一軒の家があって、一組の親子が住んでたんだお。
         母と息子の、二人だけの家族。」


('、`*川「………。」


( ^ω^)「もっとも、息子は生まれてきてから一年。
       たった、それだけの時間しか生きられなかったんだお。
       昔の事だから、良い治療も受けられず病気にその人生を終わらせた。」


だが、と続け。


( ^ω^)「当然のように母親の方は諦めがつかなかったお。
       いつまで経っても、その事実を受け止めきれずに嘆き続けた。
       肉体が滅んでも、尚。」



159: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:24:23.95 ID:LdiFmqZV0
( ^ω^)「いつしか、彼女はこの町全てを愛する者となった。
       全ての人間を自らの子供と思う事で、寂しさを紛らわしたんだお。
       幽霊と呼ぶよりかは、神に近い存在になったんだお。」


……そして。


( ^ω^)「いつの日か、神社に祀られ文字通り神となった。  
       それが八幡神社の始まりで、残されている伝説とも呼べる怪談だお。
       一人の母親の愛が、人間の範疇を超えて神となった悲劇とも喜劇とも呼べるもの。」


('、`*川「……なかなか面白い話ね。」


( ^ω^)「そうかお?とても悲しいお話だと僕は思うお。」


若く、綺麗な女性だったようだ。
今、この目の前にいる人物のように。



162: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:25:48.86 ID:LdiFmqZV0
('、`*川「神様はね、貴方のことも息子と思っていたわ。」


( ^ω^)「うん、だからこそ『向こうの世界でも母として現れた。』」


('、`*川「……そういう事ね、それにあの世界も貴方の為に作られたのよ。
     というよりかは、膨らんだ妄想と神の力が混ざり合って発生した世界か。
     だけど、神という存在に対し憎しみを持っている時期があったから、神の存在もなかったわ。
     だから、あの世界の難易度も上がった訳だけどね。」


( ^ω^)「…そうかお。」


('、`*川「でも、もう何の心配もいらないわ。
     貴方が成長を遂げたからには、危険に身を晒す必要は無い。
     本当の両親の願いも叶えられたようなものよ。」


( ^ω^)「いや、それじゃダメなんだお。」


('、`*川「……え?」



164: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:27:17.37 ID:LdiFmqZV0
( ^ω^)「僕が願って創ってしまった世界なんだお。
       神様のいない世界では、本当の粗筋が組み立てられないんだお。
       だって、神の存在がないと物語が変わってしまうから。」


('、`*川「…貴方が、その代わりを果たそうって?」


( ^ω^)「うん、その通りだお。
       それにあの世界では僕を待っててくれているみたいだから。
       こんな僕でも、今度こそは力になれると思うんだお。」


('、`*川「成長した力を、課せられた試練自体に使うのね。
     変な話だけど…貴方が出した選択なら私は止めないわ。
     両親を守れなかった罪滅ぼしに、もう一度あの世界に橋を渡す。」


光の玉が現れる。
それは、世界と世界を繋ぐ扉なのだろう。



165: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:28:52.32 ID:LdiFmqZV0
( ^ω^)「それじゃあ、行ってくるお。
    今度こそ、昭和58年の運命を打ち滅ぼしに。」


('、`*川「神様の代わり、なんて無謀な真似をするものね。
     けれど、一つだけ言うなら『奇跡は信じる心が引き起こすもの』ね。
     私も教えられたものだけど、今では確かにそう思えるわ。」


( ^ω^)「……僕も、いつもその言葉を心に念じてるお。」


そんなペニサスの言葉に応え、一歩踏み出す。
光は辺りを包み、それでも尚輝きを増した。
そんな中、僕は一言だけこの言葉を残しておく。



『行って来ますお、お母さん』



白く染まる視界により、反応を見ることは出来なかった。
けれど、僕の想いは伝わったと信じている。



167: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:29:22.41 ID:LdiFmqZV0







かなかなかな……。


かなかなかな……。





ひぐらしが一斉に鳴き始めた。




168: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:29:49.59 ID:LdiFmqZV0






( ^ω^)とひぐらしのなく頃に







――――――――――――――――夢写し編




170: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:30:39.66 ID:LdiFmqZV0
【エピローグ】


魅音「折角の綿流しのお祭りなのに元気ないねぇ。」


圭一「いやさぁ、ブーンいないと何か変な感じだなって……。」


レナ「うん、寂しいよね……。」


魅音「そんな悲しい事のように言っちゃダメだよ。
    私達は感謝しないといけないんだからさ。」


沙都子「そうですわ、今私達がこうしていられるのはブーンさんのおかげなんですから。」


梨花「それは言いすぎなのですよ。」


沙都子「そ、そうでして!?」



圭一「まぁ、俺達がうじうじしてるのなんてブーンも望んでないよな。
   ここはパーッと『さよならブーン、いつまでも俺達の心の中に祭り!』でも……。」


レナ「な、なんだか亡くなった人みたいで止めた方がいいと思うんだよ、だよ!」



172: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:32:21.82 ID:LdiFmqZV0
魅音「まぁさぁ、ブーンが好きなのは楽しんでる私達なんだよ。
   だったらさ、いつも通りに遊んでるのが一番じゃないかな?」


梨花「そうなのです、ブーンが守ってくれた笑顔なのです。」


圭一「……そうだな、笑ってないと申し訳たたねぇな!」


レナ「うん、ブーン君の分まで楽しむくらいじゃないとね!」


沙都子「でも、そうですわね……こういうのはいかかですこと?」



魅音「うん、それはいいね!そうしよう!」


圭一「ああ、それなら良いお祭りになりそうだ!!」



一同「雛見沢『六』凶爆闘だ!!」



175: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:33:40.61 ID:LdiFmqZV0

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飛ぶ鳥は跡を残します
それは本当に小さな傷


飛ぶ鳥は夢を運びます
飛べない者の希望をのせて


飛ぶ鳥は前に進みます
どこまでも続く空を自由に羽ばたいて


そして飛ぶ鳥は教えてくれました。
翼は私達の背中にもついているものだと



Frederica Bernkastel


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177: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:35:16.40 ID:LdiFmqZV0
―――。



ひぐらしは鳴いていない。


車の通りは多く、空気は汚い。


見渡せば高層ビルが立ち並ぶ。


スリルなんてものとは程遠い。


そんな平凡な世界。


安全と安泰だけが求められる世界。



でも、それが僕の世界。


僕の愛する、望み通りの世界。


だって、そこには確かな幸せが待ってるから。



178: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:35:55.85 ID:LdiFmqZV0






『おかえり』





『ただいま、だお。』








179: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:36:57.60 ID:LdiFmqZV0

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幸せはいつだってそこにある
気付くのは難しいことかもしれない


幸せはいつだってそこにある
遠くを眺める必要なんてなかった


幸せはいつだってここにある
望んでいるものはすぐ傍に


世界はこんなにも美しいのだから



horizon naito


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180: ◆9d9cVF02x2 :2008/01/27(日) 22:37:17.92 ID:LdiFmqZV0





( ^ω^)とひぐらしのなく頃に








―――――――――――――完



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