( ^ω^)がマジ切れしたようです

1: ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:37:40.39 ID:Z+GEqtdc0
投下の前の注意書き。

・この作品は性的な描写、及び不快な表現がふんだんに盛り込まれています。
 苦手な方はスルー推奨。
・作柄、地の文が長い。今回は鋼城樹民の5倍はあるのでめんどくさい人はスルー推奨。
・エロだけ読みたい変態さんは、一時間後に来てほしい。

でははじめます。



5: ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:41:18.99 ID:Z+GEqtdc0
Link
   『( ^ω^)ブーンが植物の世話をしているようです』
                                to
                                 『('A`)ドクオは淫靡に溺れてしまったようです』




               『( ・∀・)モララーは植物と会話をするようです』



8: ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:42:37.69 ID:Z+GEqtdc0
【1.僕はモララー】
僕は、決して誇れるような人間ではない。

この世に生を受けてから、嫌悪と、劣等と、欺瞞に塗れた人生を送っていた。
他人の軽蔑に、不快に、逆鱗に触れないように。
僕と言う人間の本質は、臆病で、卑怯で、狡猾だ。
これからだってきっと、そうだろう。

今思えばそういった僕の人格は生まれた環境に起因しているのだろうか。
いや、そもそも生まれつきにしてひねくれ者の天邪鬼だったのかもしれない。
卵が先か、鶏が先か。
今では当の本人の僕ですらわからなくなってきた。

……ともかく頭の中を整理するために、ここで僕の生い立ちから遡る必要がある。

僕はとある地方で幼少の頃を過ごした。
大した娯楽もない寂れた片田舎の住宅街だ。
住宅街とは言っても、よく整備の行き届いたようなニュータウンの様相はまるでなかった。
手入れもろくにされていない、木造とトタン造が継ぎはぎのように混ざった造りの家々が大半だ。

白昼であっても、人や車の往来も滅多にない。
耳をそばだててみれば、飼われている犬の鳴き声とテレビの音が軒先から零れてくるほどに静かだ。
鼻につくのは半ば産廃場と化した近くの空き地から漂ってくる、
様々な種類のゴミから放たれる匂いが織り交ざった、えも言われぬような臭気だった。

見てのとおり誇れるほどの特徴はなく、むしろ、思い出すだけで吐き気がする。
故郷を出て一人暮らしをするようになってからは、一度も戻っていない。
だが、僕が帰らない理由はそれだけではない。
むしろ、これから語るもう一つのことが僕を故郷から遠ざけているのかもしれない。



10: ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:44:18.64 ID:Z+GEqtdc0
両親はとても厳しい人間だった。

理不尽な意見を押し付けるのではなく、筋の通った正論でいつも僕に接してきた。
ただ、道徳だとか倫理だとかを良く理解していない子供にとっては、
正論も理不尽に、理不尽も正論に変わりのないものであり、
それを幼い一身に受けることは苦痛以外の何物でもなかった。

彼等はまさに謹厳実直を絵に描いたような堅物だった。
僕が何かをするたびに、うるさく口を挟む。
靴を脱いだらきちんと揃えるだとか、おもちゃを出したら必ず元の場所に戻すだとか、
さらには箸の握り方や、言葉づかいに至る一つ一つの所作まで厳しくしつけられた。

こういう教育とはどこの家庭にもある。
多少の差はあれど、『世間一般的』な良識をわきまえている親ならば必ずすることだろう。
しかし、うちの場合は特殊だ。
例えば、夕飯が目の前のテーブルに並んだ数時間後にようやくありつけた、
といったことがしばしばであり、うちの教育は『世間一般的』な範疇を逸していたのだ。

心底うんざりだった。
物心がついたころから、そんな生活だったのだから。

だが、反抗などできもしなかった。
他の人間を知らない当時の僕にとってみれば、いわば両親というものは絶対であり、
彼等の言葉というのは人間の真理以外の何者でもない。
その人間の真理をできない僕と言う存在がとても卑小なものであり、
恥ずべきものであり、到底口答えすることなど憚られた。

悩乱の末にかたどられた感情は抑制され、胸の奥底へと詰め込まれていく。
但し、人間という存在は肉体的にも精神的にも容量に限界がある。
そして、当然ながら僕にもそれがあったようだ。



12: ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:46:01.93 ID:Z+GEqtdc0
異変はとても些細なものだった。

ある日、僕の腕に小さなゴマ粒大の湿疹が現れ、同時にその箇所から不快な痒みが疼きはじめた。
見た目には軽いものであったが、僕はそれにある種の薄気味悪さを感じていた。
敢えて言うなれば、僕の脳内に植え付けられた蝿の卵が孵化したもの、蛆虫が、
神経血管を通じ、五臓六腑、果てには四肢の爪先まで這って来、暴れ回るような不快とでも言おうか。

ともかく耐えがたきものであった。
だが、身体の中のことでは手出しならず、僕はこの陵辱にも似た侵食を甘んじるほかはない。
むしろ蛆虫たちの悪意のままに、僕は痒みに耐え切れず無意識のうちに患部を掻きむしる。
気が付けば、発疹は全身に広がっていた。

両親ははじめのうちは、幼少期によくある軽度の皮膚病かと高をくくっていたが、
日に日に悪化する姿を目の当たりにするや否や、只事ではないと判断し、
僕を医師の元へと連れて行くことに決めた。

医師はアレルギー性のアトピー皮膚炎だと診断する。
そして、治療のために軟膏を処方し一日数回塗布するように、と指示した。
一方、両親のほうも熱心に医師の話に耳を傾け、
食事療法も取り入れるという徹底ぶりで僕の治療に当たった。

だが、数週間経過しても一向に症状は快方へと向かう事はなかった。
むしろ、僕が掻きむしることを止めなかったため、患部が化膿するほどに悪化していた。
薬を塗っても痒みが止まらなかったのだ。

幼心に僕は本能的に悟っていた。
決して直ることはない、と。
そして、その原因もわかっていた。



15: ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:47:51.89 ID:Z+GEqtdc0
治療中も、両親の厳しいしつけは変わらなかった。
これも当然のことで、僕の病状は作法教育の直接の障害にはならなかったためだ。
目を覆いたくなるようなミミズ腫れと噎せ返るような痒みがあるほかは、
日常生活を送るにあたって特に問題はなかったのだ。
一方、僕も普段と同様に不平も愚痴も漏らすことなく、彼等の真理に付き合っていた。

だが、僕の内側では変化が起こっていた。
僕の血肉を吸い喰らって育っていた蛆虫が脱皮し成虫となったのである。

そのきっかけは僕の思考が変わったことだ。

本来ならば。
両親の懸命の治療に対して僕の身体が一向に回復しないことに恥を知り、絶望するはずだった。
彼等の行動は真理。
ならば、それを受け付けない僕という存在は全く別の悪そのものであると思うはずだ。

しかし、僕はその思考に二度と辿り付くことはなかった。

僕は彼等の真理を受け入れることをやめた。
正確に言えば受け入れることができなかった。
満杯に水が注がれたコップに、新たに水を注いでも溢れ出てしまうことと同じだ。
溢れ出した水はコップの側面を伝い、やがて地面へと零れ落ちる。
零れ落ちた水は地面の土や埃や不純物を吸い取って汚水となる。

端的にいえば、僕は彼等の真理を受け入れる『ふり』を覚えたのだ。
絶対不変の真理を変幻自在の虚偽へと変えて彼等に突き返したのだ。



16: ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:49:32.58 ID:Z+GEqtdc0
僕は止む事のない厳しいしつけに対して、両親の顔色を伺いながら、
彼等の望む事を、一番喜ばしい最善の行動をとるようになった。

つまり、表面上から見れば彼等の真理に従っていることに相違はないのだが、
僕の心中での解釈はまるで違っている。
正しいと信じて行っていたわけではないのだ。
ただ、その選択で自分が損害をこうむることがなく、負担の少ないものであるから行っていたのだ。

そして、これはしつけについてのみではなく、僕に影響を与える彼等の行動すべてについても同じだった。

ある日、父親が僕のご機嫌取りのために地元のおもちゃ屋に連れて行ってくれたことがあった。
父親は言う。

「何でも好きなものを一つだけいってみなさい。買ってきてあげよう。さあ、遠慮することはない」

僕は困り果てた。
人間とは不思議なもので、欲しいものを尋ねられると、とたんに欲しいものが浮かばなくなるか、
もしくは、欲しいものが多すぎて悩んでしまうものだ。
そのどちらになったかは忘れてしまったが、僕は何も答えられずに口ごもるばかりだった。

煮え切らない態度の僕の様子を見て、父親の表情は曇りはじめる。

……まずい。
僕は咄嗟に答えた。

( ・∀・)「こけしが欲しい」

「こ……こけし!? ……むう」



18: ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:51:14.20 ID:Z+GEqtdc0
と、父親は驚いた表情を見せ、吃言し、大声をあげた。
それも当然のことで、こけしなど少なくとも遊び盛りの幼児が欲しがるものではない。
僕自身もその異質さを充分理解していた。
ただ、以前に祖母の家に遊びに行ったときに見た、
テレビ台の横に置かれていたこけしが咄嗟に思い浮かんだためにそう言ったまでのことだ。

結果、困惑しながらも、父親はこけしを僕に買い与えた。

僕が考え方を改めてから、皮膚炎の症状はぴたりと止んだ。
つまり、原因は僕の精神的な面にあったというわけだ。

人体というものは、精神的に、肉体的に何らかの異常をきたした場合、
なんらかの反応をみせ(この場合はアトピー皮膚炎)、その後症状を改善するための働きをみせるのだ。
我ながら良く出来た自浄作用だと思った。

と、ここで疑問がでてくるはずだ。
なぜ、精神を抑圧された状態でかんしゃくを起こしたり、徹底的に反抗を行ったりしなかったのか。
幼いとはいっても普通の人間であれば、身体に異常をきたす前にそうするはずである。

恐らく心の奥底に、両親に対する恐怖と背徳心が残っていたのであろう。
真っ向からぶつかれるような力を持っているわけでもない。
それに、自分が卑小で、存在する事自体がおこがましいという考えは変わったわけではない。
その基本があった上で、自衛のためにどう対処するかが変わっただけだ。

そして僕の対人における反応というのは両親以外の他者でも同じであった。
無論、両親が畏敬の念を払う、例えば祖父母や叔父叔母、
会社の上司、町内会の会長、その他もろもろの人間については、
僕も彼らのいうことが真理であると信じて疑わなかった。



20: ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:53:05.18 ID:Z+GEqtdc0
では、その他の範疇に入る者たちはどうなのか?
一言でいえば、判断できない。
いや、判断することから逃避したのだ。

一番初めに頭をよぎったことは、その他の者たちが僕と同様悪であり、虚偽の塊ではないかと考えた。
そう考えるのが、自明の理だ。
だが、仮にそうであった場合、僕が体内に飼っている悪魔の化身とも呼べる蝿を彼らも持っていることになる。
僕は、そのことにおののき、戦慄し、絶望するであろう。
僕は、自分の薄汚さを、卑劣さを、醜悪さを知っている。

だからこそ、その業を知っているからこその恐怖。
このような罪深い人間は僕一人でいいのだ。
それを認めれば、恐らく世界の大半を占めるであろう彼らに怯えて暮らさなければいけない。
残念ながら、僕にそれに耐え切れる強靭さは持ち合わせていない。
己自身の罪にすら怯えきり、辟易しているのだ。

そして、もうひとつはこれとはまったく逆の、つまり、僕以外の人間がすべて真理を持ち合わせている場合だ。
これも、白髪に染まり狂人へと変貌してしまうほどの恐怖だ。
僕の父親と母親と同一の存在が世界じゅうに、無数にいるということを認めなければいけない。

僕に選択の余地も、判断の余地もなかった。
見てはいけないものを見ないこと。
考えていけないことを考えないこと。
ひたすら、自分という意思を押し殺し、何者をも通さない殻に閉じこもり、すべてを遮断する。

それが、僕という人間を存在させうる唯一無二の手段だった。



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