( ^ω^)がマジ切れしたようです
- 146: 代理 :2007/10/06(土) 00:14:41.11 ID:5Wxb+3Da0
('A`)「その3」
从'ー'从「……およ?」
気がついたら、あたしはだだっ広い野原の真ん中に居た。
从'ー'从「……なんじゃー?」
見渡す限り広がる野原に、ただ一人。これはいったいどういう状況かね。
从'ー'从「……」
とりあえず、目に付いた大きな木の元へ向かうことにする。ざくざくと、踏まれる草が音を立てる。
木の前まで来た。大きな木だ。あたしのアパートよりも背が高そうだ。大きく広がった枝は、周り一面に陰を作っていた。
- 150: 代理 :2007/10/06(土) 00:16:08.26 ID:5Wxb+3Da0
- 从'ー'从「……誰?」
( ´∀`) 「やぁ」
从'ー'从「……モナーくん?」
木の陰から現れたのはモナーくん。普段どおりの格好で、両手はポケットの中だった。
从'ー'从「ここどこ?」
( ´∀`) 「うーん……まぁ、なんともいえないところなんだけど……」
从'ー'从「?」
イミフ。そんな疑問符いっぱいのあたしを尻目に、モナーくんはてこてこと近づいてくる。
( ´∀`) 「まぁー、そんなことはどうでもいいんだモナ」
从'ー'从「ほうほう」
( ´∀`) 「僕がなんで来たかって言うとー」
从'ー'从「言うとー」
( ´∀`) 「まあ、つまるところ」
从'ー'从「?」
あたしを嘗め回す様に見てくるモナーくん。やだ、なんかいつもと雰囲気が違う。
- 151: 代理 :2007/10/06(土) 00:17:39.13 ID:5Wxb+3Da0
- 从;'−'从「(はっ、これってもしかして……)」
無意味に緊張してくるあたし。やば、変なやつに見られるかも。
( ´∀`) 「渡辺さん」
从;'−'从「は、はいっ」
あたしの耳に口を近づけて、モナーくんはささやくように言った。
「浮気すんのはやめろよ、って言いにきたモナ」
- 154: 代理 :2007/10/06(土) 00:19:15.57 ID:5Wxb+3Da0
- 从;'−'从「ひゃぁっくぁwせdrftgyふじこlp;」
飛び起きた。言葉にならない声を上げながら。
从;'−'从「おlp;@:「」……って、あれ?」
目に飛び込んできたのはドラムのセット。そしてその椅子に座ったまま眠るクーちゃんの姿。
从;'−'从「スタジオ?」
さらに見渡す。床に直接寝転がって眠っている内藤くんとドクオくん。ベースを抱きながら壁に寄りかかって眠っているショボンくん。
从;'−'从「あれ……?」
記憶をたどる。公園で、バンドを組んで駅前で演奏してやろう、という話になった。そんで、とりあえずスタジオに行った、そこまで思い出した。
从;'−'从「(ちょっとお酒が入ってたからなぁ……)」
あわせてみて、騒ぎまくって、疲れて、気がついたら誰もしゃべらなくなり……そのあたりで、視界がブラックアウトした。
つまるところ、寝落ちしたと。
从;'−'从「(で、今のは夢か……)」
- 156: 代理 :2007/10/06(土) 00:21:20.42 ID:5Wxb+3Da0
- 確かに長岡くんと親しくしすぎかな。その辺の罪悪感が、モナーくんを夢で見せたのかな。
从;'−'从「(どこまで純情なんだ……)」
どこの高校生だ、まったく。
起き上がろうとして、手を床につこうとした、その時。何かやわらかいものに触れた。むにゅ、と音がした……感じがした。
从'ー'从「?」
その手の向こう側で何かがごそりと動き、大声を上げた。
(;゚∀゚) 「あじゃぱ――――」
从;'−'从「あ、ゴメン!」
(;゚∀゚) 「お、お、起こすときでも、そこは触るもんじゃないぜ……」
从;'−'从「あ、あたしが触ったのってもしかして……」
- 161: 代理 :2007/10/06(土) 00:22:58.89 ID:5Wxb+3Da0
- (;゚∀゚) 「……」
从;'−'从「……」
(;゚∀゚)b「……」
从;'−'从「……」
d(;゚∀゚)b「……」
从;'−'从「手、洗ってきますね」
d(;゚∀゚)b 「……なんかショックだ」
- 165: 代理 :2007/10/06(土) 00:24:44.74 ID:5Wxb+3Da0
- キュッと、音を立てて蛇口を閉めた。
从;'−'从「はぁ――……」
ついでに顔も洗う。じゃばじゃばじゃばーと。ハンカチで顔を拭いて、寝癖のついた髪をなおした。
( ゚∀゚)「おう、ずいぶん長かったな」
从'ー'从「……誰かさんのせいでね」
(;゚∀゚) 「俺のせいじゃないんだぜ……」
从'ー'从「まぁいいや。みんなはまだ寝てる?」
( ゚∀゚)「おお。ぐーぐー寝てんぜ。まだ寝かしておいてやろーぜ。退室の時間まで、まだ一時間とちょっとある」
从'ー'从「そうだね。……あたしは、もう眠れそうにないや……」
(;゚∀゚) 「含みのある言い方すんなおい。ま、まぁいいや。ちょっと、そとに出てみようぜ」
从'ー'从「うん」
壁にかかる時計で時間を確認した。朝の五時だ。ちょっと、おなかがすいた。
- 167: 代理 :2007/10/06(土) 00:25:52.68 ID:5Wxb+3Da0
- ( ゚∀゚)「まだ日はでてねぇな」
从'ー'从「ほんとだ。まだ暗い」
少し寒い。長岡くんは煙草を取り出して火をつけた。煙草のにおいが、風に乗って運ばれてくる。
( ゚∀゚)「少し、走ってみようか」
マジェスティのシートの下から、昨日と同じようにヘルメットを取り出した。投げられたヘルメットを、あたしは受け取る。
从'ー'从「どこまでいくの?」
( ゚∀゚)「寝起きのお日様でも見に行こうぜ」
エンジンを暖機させながら、長岡くんは吸い終わった煙草を投げ捨てた。完全に消えてない煙が、朝の風に吹かれた。
从'ー'从「捨てちゃまずいんじゃないの?」
( ゚∀゚)「いや、もういいさ」
にやりと笑い、そして言う。
( ゚∀゚)「もともと、反乱でも起こそうって思ってたくらいだからな」
- 169: 代理 :2007/10/06(土) 00:28:06.20 ID:5Wxb+3Da0
冷たい風を感じながら。長岡くんの肩につかまりながら。
長岡くんの運転するマジェスティは、ほとんど車の通っていない道を進んでいく。
( ゚∀゚)「演奏、合わせんの初めてだったけど、結構うまくいったな」
从'ー'从「まぁ、あたしパワーコード使いまくりだけどね。ソロもわかんないところは省いたし」
( ゚∀゚)「ショボンも結構ルート音だけで済ませてたよな」
从'ー'从「長岡くんも、歌詞が飛ぶのはなんとかしたほうが良いと思うよ」
- 172: 代理 :2007/10/06(土) 00:29:49.82 ID:5Wxb+3Da0
冷たい風を感じながら。長岡くんの肩につかまりながら。
長岡くんの運転するマジェスティは、ほとんど車の通っていない道を進んでいく。
( ゚∀゚)「演奏、合わせんの初めてだったけど、結構うまくいったな」
从'ー'从「まぁ、あたしパワーコード使いまくりだけどね。ソロもわかんないところは省いたし」
( ゚∀゚)「ショボンも結構ルート音だけで済ませてたよな」
从'ー'从「長岡くんも、歌詞が飛ぶのはなんとかしたほうが良いと思うよ」
- 175: 代理 :2007/10/06(土) 00:30:30.73 ID:5Wxb+3Da0
- (;゚∀゚) 「あー……判ってんだけどよ、どうしても飛んじまう。まぁ、もしもの時は歌詞なんか捨てて直接言ってやるさ」
从'ー'从「言うって、何を?」
( ゚∀゚)「言いたいことを、だよ」
バイクはさらに加速する。マンションやビルなどの大きい建物はすでになくなり、道は山道になった。日はまだ見えてこないけど、
薄暗かった世界に少しずつ光が差し始めた。
从'ー'从「良い気持ち」
ゆるい風を受けながら、木で囲まれた道を軽快に走っていく。ただそれだけのことなのに、すごく気持ちいい。
耳障りでないエギゾーストノートがまた、快適さを助長する。将来的にはビッグスクーターに乗ろうかな。
( ゚∀゚)「渡辺さんは普段何に乗ってんだ?」
从'ー'从「ん?あたしはビーノ。2stのね。燃費悪いけど、リミッター解除したら70キロちょい出るようになったよ」
( ゚∀゚)「へぇ」
広かった道はどんどん狭くなり、薄暗かった世界はどんどん明るくなってくる。その中を、あたしたちの乗るマジェスティはぐんぐん進んでいく。
( ゚∀゚)「間に合うかどうか、ぎりぎりだな……少し飛ばすぞ、しっかりつかまれよ」
从;'−'从「わっ……ちょっと!」
( ゚∀゚)「あっはっは、悪い悪い。でも、まだまだ飛ばすぜ」
从;'−'从「はわわわわわわ」
- 179: 代理 :2007/10/06(土) 00:33:12.85 ID:5Wxb+3Da0
- 当然だけど、あたしの原付なんかとは比べ物にならないその速度。70キロ以上の速度を、あたしは単車で経験したことはない。
自分がハンドルを握れないバイクの後ろは、なんだかジェットコースターみたいで、思わず目を閉じてしまった。
あたしが目を閉じた、その瞬間。
从;´ー'从「あれ?」
急に世界が開けた。まぶたの裏が、急に明るくなった。
( ゚∀゚)「っと、ここだ」
バイクが止まる。長岡くんはヘルメットをとって、ペタンコになった髪を、しゃかしゃかと指で直した。
( ゚∀゚)「着いたよ。なんとか間に合ったな」
从;'−'从「……ここは?」
アスファルトの上。ゆるい左カーブの道の上に、バイクは止まっていた。ウインカーがちかちかと点滅し、エンジンはアイドリング状態だった。
( ゚∀゚)「ほら」
差し出された手をつかむ。長岡くんに手を引かれて、あたしはバイクを降りた。
从;'−'从「っと……」
( ゚∀゚)「大丈夫か?」
从'ー'从「大丈夫。へーき」
- 183: 代理 :2007/10/06(土) 00:35:06.56 ID:5Wxb+3Da0
- ( ゚∀゚)「ほら、見てみ」
ガードレールの近くまで手を引っ張られる。あたしはヘルメットを取りながら顔を上げた。
そして。
从'ー'从「……あ」
その、視界に飛び込んできた光景に、あたしは言葉を失った。
湖だ。
それも、おそろしく透明度の高い。
ゆらゆらと光る水面は、白い光を放っていた。
( ゚∀゚)「すげーだろ?ラウン湖っていうんだ。透明度はバイカル湖並だぜ」
水平線が見える。まるで海みたいだ。森を切り開いたらしく、水につかる木が水際を作っている。ふわっとした風が、その木々をなでた。
从'ー'从「……きれい」
ガードレールから身を乗り出して、その視界に入るもの全てを目に焼きつけようとする。足元にあった石が蹴られてコロコロと転がり、
ガードレールの下の絶壁を落ちていった。
- 186: 代理 :2007/10/06(土) 00:37:06.16 ID:5Wxb+3Da0
- ( ゚∀゚)「あんまりそっち行くと危ないぜ。……っと、そろそろだな」
从'ー'从「そろそろって?」
( ゚∀゚)「水平線のあたりを見てみ」
言われたとおり、横一直線の水平線を見た。風に吹かれて揺れる湖面には朝霧がかかり、幻想的な雰囲気を作っている。
視界の隅で、白い鳥が群れを作って飛んでいった。
从'ー'从「あ」
水面が、わずかにオレンジ色を帯びてきた。薄暗かった湖面が、だんだんと明るくなってくる。
朝霧のフィルターを通して、反射する水面の光もオレンジに染まっていく。
水につかる木々の緑が日に照らされ、視界の中で存在感を増してくる。そこで、空にひとつも雲が浮かんでいないことに気づいた。
そして、ゆっくりと、太陽が水平線から顔を出し始めた。
( ゚∀゚)「日の出の直後数分は、太陽を直接見ても眩しくない。そして、その色は赤ではなくずっとオレンジに近い」
从'ー'从「ちょっと黙ってて!」
(;゚∀゚) 「はいはい……」
太陽を中心とした幾重にも重なる光の層が、湖面と空に広がっていった。薄暗い陸の世界も、ゆっくりと確実に光を帯びていく。
水平線に残る黒い影は、太陽に近づくにつれて薄くなって、やがては消えていく。
薄い空はオレンジに染まり、太陽から離れるにつれて青みを増していく。
从'ー'从「……ああ」
やばい、これ。綺麗過ぎる。今まで見てきた、どんなものよりも。
- 189: 代理 :2007/10/06(土) 00:39:34.74 ID:5Wxb+3Da0
- ( ゚∀゚)「これを見せようと思ってたんだ」
やがて、太陽はその姿の全てをさらけ出した。長岡くんが言うように、凝視しても眩しくない。
そして燃えるような色を放っていた。今まで見たどの太陽にも当てはまらない、そんな色。
( ゚∀゚)「俺もたまにここにくるんだ。これを見ようと思って。いつもは一人なんだけどな」
从'ー'从「すごい……。言葉が見つからない」
( ゚∀゚)「俺も最初はそうだった。……今もそうか。仕事がうまくいかなくても、何もかもをなかったことにしてくれるような。
つらいことも、過去にかえてくれるような……そんな気がするよ」
从'ー'从「……そうだね」
どんな人にも、決まって朝がくるんだ。公平な、均一な朝が。だけど、今日の朝は他の人とは違うと思いたい。いや、違うと思う。
今日、あたしが迎えた朝は、今までに迎えたどんな朝とも違う。
今までで一番、素敵な朝だ。雄大で、幸福な朝だ。そして、これからもう二度と迎えることができないだろう朝だ。
いいね、この感じ。こんな朝を独り占め。……もとい、二人占め?まぁ、いいや。そんなこと。
Today ie the greatest.
今日はこれだ。
从'ー'从「今日は良い日、今までで一番」
( ゚∀゚)「スマッシングパンプキンズか?」
- 192: 代理 :2007/10/06(土) 00:42:22.59 ID:5Wxb+3Da0
- 从'ー'从「せーかい。よくわかったね」
( ゚∀゚)「昨日も言ってたじゃん。そりゃ、わかるよな」
从'ー'从「えへへへ」
( ゚∀゚)「さて、戻るか。そろそろ行かないと、予定のスタジオの時間切れちゃうだろ」
ヘルメットをかぶりながら、バイクに戻ろうとする長岡くん。あたしは、その背中をTシャツの上から引っ張った。
从'ー'从「待って!」
( ゚∀゚)「もっと見てたい?っつっても、もう数分くらいしかこの状態は続かないぜ」
朝日の光に照らされて、長岡くんはオレンジ色に染まっていた。多分、あたしもそうなんだろうと思いながら、言う。
从'ー'从「うん。あと五分!それだけ!」
( ゚∀゚)「うーん、まぁそのくらいなら。おk、あと五分な」
从'ー'从「ありがと!」
再び太陽とのにらめっこに入る。これも、あともって数分だけ。
今しか見れないこの太陽を、あたしは目にしっかりと焼き付ける。
- 195: 代理 :2007/10/06(土) 00:44:38.24 ID:5Wxb+3Da0
Today is the greatest. The day I`ve ever known.
今日は良い日だ。
それも、知りうる限りでは、一番の。
- 196: 代理 :2007/10/06(土) 00:45:44.85 ID:5Wxb+3Da0
- ………
……
…
時刻は夕方。六時ごろ。
先ほど太陽が月とバトンタッチした。バトンをもらった月は、太陽には及ばないものの、柔らか光でふんわりと街を照らす。
その光に照らされる、ヴィップ。異常なほどきれいなまち。
その市街地を、一台のメルセデスが走っていた。運転しているのは見るからに高価そうなスーツを着た男。
車内はエンジン音も聞こえず、ステレオから流れてくるラジオの音だけが響いていた。
と、助手席においてあった携帯電話が鳴った。運転中だというのに、男は臆せずに電話に出る。
(´<_` )「私だ」
『弟者か。俺だ』
(´<_` )「兄者か」
弟者、と呼ばれた男は右折待ちの車に構わず黄色信号で車を直進させた。携帯電話を肩と耳ではさみ、右手でシフトアップする。
『昨日の駅前での件だ。バルケンの報告によると、路上で演奏していたのは男女二人。女のほうのギターは、すぐそばの楽器店で買っていたことが判った』
(´<_` )「ほう。で、おおよその見当はついたのか?」
『店員に聞いたところ、女はしゃべり方が妙な感じだったらしい。のろいというか、とろいというか。
語尾を延ばすというか。それでもしっかりと値切っていったらしいがな』
(´<_` )「この街の住民か?」
- 200: 代理 :2007/10/06(土) 00:47:06.18 ID:5Wxb+3Da0
- 『見たことはないと言っていた。常連ではないらしい。五万……大した金ではないが、そのギターを衝動的に買っていったことになるな』
(´<_` )「それなりに富んだ人物ということか」
『どうなんだろうな。まぁ、女のほうはつまるところ謎だ。で、だ。問題はここだ』
(´<_` )「どうした」
『一緒に演奏していた、男のほう。バルケンの報告では、ジョルジュではないかということだ』
(´<_` )「ジョルジュだと?あの、落ちこぼれか?」
『ああ。まぁ、あの男は確かに何度か路上で歌っているところを発見されている。まぁ、まったく騒がれていなかったから無視していたが』
(´<_` )「それが間違いないなら、あの男は」
『そうだ。処罰の対象だ。まだ、確信が得られたわけではないが。最近、妙な動きもしていたしな』
(´<_` )「……そうなのか?」
『謀反の疑いあり、か?まぁ、あんな落ちこぼれが反乱を起こしたところで、何にもならないがな』
(´<_` )「まさに明智光秀だな」
『おいおい。あいつが明智光秀じゃあ、俺たちは討ち取られちまうぞ?その天下も11日でおわったが』
(´<_` )「はっは。そうだったな」
『まぁ、お前はとにかく現場に向かってくれ。新騒音条例に反する連中を野放しにすることはできない。もし、今日、見つけたら……判ってるな?』
- 205: 代理 :2007/10/06(土) 00:49:57.32 ID:5Wxb+3Da0
- (´<_` )「ああ」
『よし、安心した。頼んだぞ。俺はカウントダウンの準備がある。じゃあな』
(´<_` )「ああ」
通話の切れた携帯電話を助手席に置く。弟者はステアリングを両手で握り、運転に集中する。
巨大なマンションの立ち並ぶヒルズを抜け、ウォルマートとエッソの通りを抜ける。
1リットル140円と書かれたプレートを見て舌打ちをして、前を走っていた黒のバイクをパスした。
半ば強引に追い抜いたので、急ブレーキをかけるバイクをミラーで確認できた。
(´<_` )「(バイク程度で、この俺の前を走れると思うな、愚民ども)」
駅前へ。悠々とメルセデスを走らせる。
ヴィップ駅、と大きく書かれた駅ビルが見える。地上十二階の娯楽施設が隣接するその駅は、ここ数年でずいぶんと利用客数が増えた。
CPの美化政策が効いているのだろうか、今では他市の職員からも美化の参考として訪れられることすらがある。
(´<_` )「(まぁ……まさかカウントダウンまで真似できるとは思えないがな)」
ウインカーを出して、メルセデスを路肩に停めた。エンジンを切って車外に出る。夕方の、涼しい風が弟者の体を通り抜けた。
上着のポケットから煙草を取り出す。キャビンの赤い箱が、黒のスーツに映える。
(´<_` )「(マルボロアイスミントは買うべきじゃなかったな……。やはり俺はキャビンだ)」
一息すって、大きく白い煙を吐いた。さっきまで路上で散々なことをやっていた割りに、手には携帯灰皿を持っているあたり、なんだか滑稽に見える。
(´<_` )「(昨日現れたのはこのあたりの時間……。もし今日も現れるならこの時間だろう)」
- 210: 代理 :2007/10/06(土) 00:52:11.61 ID:5Wxb+3Da0
- 煙草片手に、鋭い目つきで駅前全体を見渡す。ふと、ゲームセンターの前でたむろしているDQN風の高校生が視界に入ったので、
レベル2の駆除を電話で指示した。
(´<_` )「(それ以外に、該当なし……か)」
夕方のこの時間。家路を急ぐサラリーマンや、部活帰りの学生、買い物へ向かう主婦。それぞれが別々の目的を持って、この街を歩いている。
(´<_` )「(ジョルジュも馬鹿じゃない。仮にも元候補生だからな。二日連続で路上演奏なんてやれば、我々に見つかることは判っているんだろう)」
二本目の煙草に火をつけ、これを吸い終わったら戻ろう、と弟者は決めた。
キャビンの苦い煙が、風に吹かれて空に消えていった。
弟者は車を走らせて帰っていった。
そのため、駅前に止まったトラックの陰から、ずっとこちらを見ている6人に気づくことはなかった。
………
……
…
- 213: 代理 :2007/10/06(土) 00:54:17.53 ID:5Wxb+3Da0
- (;゚∀゚) 「行ったか?」
(炎^ω^)「おっおっ。もう行ったお」
(;゚∀゚) 「ふぅ……よかった」
(´・ω・`)「あのメルセデスがどうかしたのかい?」
(;゚∀゚) 「いや、なぁ、ドクオ?」
(;'A`)「ええ」
从'ー'从「ま、いいじゃん。これで居なくなったんだし」
( ゚∀゚)「そうだな……。これからが本番だ」
トラックの陰に身を潜めて、あたしたち5人は顔を見合わせてにんまりと笑った。運転席からクーちゃんが降りてきて、言った。
川 ゚ -゚)「じゃあ、手はずどおりやろうか」
('A`)「おk。サブは任せろ」
(炎^ω^)「おっおっ。僕もおkだお」
川 ゚ -゚)「じゃあ、ステージ側。準備はいいか?」
(´・ω・`)「おkさ」
- 215: 代理 :2007/10/06(土) 00:56:14.39 ID:5Wxb+3Da0
- 从'ー'从「だいじょーぶだよ」
( ゚∀゚)「おk。いつでもいけるさ」
川 ゚ -゚)「私もおkだ。よし……」
全部で三曲。昨日の今日で、準備できたんだからたいしたもんだ。スコアなんかもないから、みんながもともと知ってる曲から選んだ。
長岡くんが選んだ曲が一曲、あたしが選んだ曲が一曲。あとはショボンくんとクーちゃんが相談して選んだ曲が一曲。
( ゚∀゚)「こんな短い時間でやったんだ。駄目なら駄目でもともとさ。とにかく、がんばろうぜ」
長岡くんの言葉に、全員がおう、と答える。緊張と、期待が入り混じった、居ても立ってもいなくなるような、その感覚。
武者震い。足が落ち着かない。ぶるぶると体が震える。
从'ー'从「じゃあ、いこ」
不安を押し隠すように、あたしは言った。ポールリードスミスを、しっかりと握り締めて。
- 218: 代理 :2007/10/06(土) 00:58:06.46 ID:5Wxb+3Da0
- 今回の為に、まずあたしたちは一台のトラックを準備した。大型の、荷台の側面が開くタイプ。これはステージのかわりにするためだ。
アンプは、スタジオのマーシャルをリースした。結構お金が要ったけど、あれだ、こんなのあとでどうにでもなる。
そうこうして、一通りライブのセッティングは完了した。一度、人気のない山奥まで行って音を出してみたけど、風がない限り大丈夫だった。
从'ー'从「(今、風は、大丈夫……)」
音が流されることはない。トラックの天井にセットした赤灯が、あたしを照らして、ギターを照らして、エフェクターを照らして、内側の壁に消えた。
( ゚∀゚)「テストテスト。音あってるかどうか確かめようぜ」
(´・ω・`)「じゃあ、Aコードで」
从'ー'从「りょーかい。……って、長岡くんなんか違くない?」
(;゚∀゚) 「ありゃ」
(´・ω・`)「熱で狂ったんだね。そこも計算に入れてチューニングしないと」
(;゚∀゚) 「スマンカッタ」
('A`)「うぃーっす。もう開けても大丈夫ですかい?」
(;゚∀゚) 「あーちょっと待て!……っと、これで合ってるか?」
从'ー'从「えっと。うん、合ってる合ってる。ドクオくん、おkだよ」
('A`)「りょーかい。じゃあ、今開けるよ」
从'ー'从「(緊張してきた……)」
- 221: 代理 :2007/10/06(土) 01:00:24.16 ID:5Wxb+3Da0
- 先に酒でも飲んでおけばよかったかな。なんて、後悔ともいえないような後悔が頭をよぎる。
あたしは酔っ払って失敗とかしたことないけど。
なんとなく、そんな気分だった。
('A`)「開けたらびっくり、なんと10万人の観客が!……なんてことはありえないからな、ただの駅前でやる路上演奏と変わらないんだからな」
( ゚∀゚)「ずいぶん迷惑な音量でやるけどな」
川 ゚ -゚)「その自己中っぷりが良いんじゃないか」
从'ー'从「ははっ、そうだね〜」
緊張はしていても、リラックスを忘れないで。まぁ、あたしたちを見るためだけにここに来てる人なんていないんだ。
単なる自己満足。ただ楽しんで、やればいい。
さ、がんばろう。
目の前の壁が、音を立てて開いていった。夜の街の明るさが、あたしたちを映し出す。
視線を感じた。道行く人が、みんなこちらを見てくる。信号待ちのドライバーも、いきなり現れた変なステージにびっくりしてるみたいだ。
从'ー'从「(まーあ、当然の反応だろうね……)」
どうでもいいか、そんなこと。さあ、皆様聴いてみて下さいな。ついでに、CP?の方たちも。
これはもとから、あなたたちに喧嘩を仕掛けるためのライブなんですから。
足を止めてくれなくても、この音量なら耳に届くはず。まったく、迷惑極まりないだろうね。
( ゚∀゚)「俺イズヒア―――――!!!」
川 ゚ -゚)「おらおらおらっ!」
- 222: 代理 :2007/10/06(土) 01:03:02.50 ID:5Wxb+3Da0
- 長岡くんのイミフなシャウトに、クーがクラッシュシンバルでこたえる。その姿に、思わず笑みがこぼれた。あたしも、スケールを無意味に速弾きしてみる。
从'ー'从「(さ、いくよ)」
スティックが刻むリズムに合わせて、あたしは思いっきり弦をピックで引っかいた。
最初の曲は、THE HIGH-LOWS、『胸がドキドキ』。
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