( ^ω^)がマジ切れしたようです

1: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:03:12.67 ID:j+KBD1GY0

〜〜〜〜

( ´_ゝ`)「どうも。今晩は皆さん」
(´<_` )「今晩は皆さん。上のがアニジャ。こっちがオトジャです」

( ´_ゝ`)「それはそうとオトジャ。我々がこうやって前に出てきているのは何の為だ?」

(´<_` )「いやぁアニジャ。今これを書いている作者がな、流石兄弟の使い方がわからないそうだ。
       だからこうやってテストを兼ねて書いているそうだ」

( ´_ゝ`)「そうか。だからこうやって地の文も無しの手抜きなんだな?」
(´<_` )「いや、そうじゃないらしい。これもあえての地の文抜きだそうだ」

( ´_ゝ`)「〜だそうだ、って、誰に聞いてるんだ?」
(´<_`;)「え?わ、わからん。誰に聞いたんだろうか……」

( ´_ゝ`)「大体地の文抜く理由にあえてとか使っちゃ駄目だろう」
(´<_`;)「そ、それもそうだが……」

( ´_ゝ`)「まあそれは置いておこう。今はもっと大事な話があるんだ」
(´<_` )「ん?どうしたというのだアニジャ」

( ´_ゝ`)「今から合作の1パートがはじまるらしい」



3: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:05:32.33 ID:j+KBD1GY0
(´<_`;)「な、なぜそれを早く言わないのだアニジャ!!」

( ´_ゝ`)「いや、てっきり知っているものかと……」
(´<_`;)「じ、準備ができていないぞ!!な、何を持っていけばいいんだ?」


( ´_ゝ`)「いや、出番は無いらしい」
(´<_`;)「そ、そうなのか……」


( ´_ゝ`)「嫌がらせしとくか」
(´<_` )「ナイスアイディアだ」

( ´_ゝ`)「えっと……。『料理人さんは、一体どんな包丁をお使いなのでしょうか?』と」
(´<_`;)「……」


ノル゚-゚ノ「まあそれは置いといて、マジ切れ合作Cグループをお楽しみくださいませ」


〜〜〜〜



7: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:07:25.43 ID:j+KBD1GY0


前回までのプリズン○レイクは――

ぎし・・・
          ぎし・・・ぎし・・・
      ,, -─‐-、,,-─-,、
     /        ,'⌒ヽ\
    〈  ,‐-⌒-、ノ,,,  |.  \  ぎし・・・あん・・・
    /, ミ、ノヽ<〉| | |,,,  |.   \
     '|\Nヘ「ヽ||_|__,|.     \
              |L.|  |       ヽ、
   ぎし・・・     | | ,,,|,        .l
.              |_|_,||        .ノ
                |::|::: :|_|       ,ノ |
             rrr´‐::: :j. L,,---‐‐'´ ノ あん・・・
            i´^^i´ ̄~    ̄ ̄ ̄~i‐⌒ヽ,
            ヽ、__ヽ、______」-、__.⌒っ
                           ̄
そうっ・・・・! 忍耐だ 忍耐っ・・・・!
もう・・・・・・ なんでもいいから・・・・・・
ダイブしたいっ・・・・! この欲望の海にっ・・・!
崩れ落ちたいっ・・・・・・! 身を委ねたいっ・・・・・・! 破滅にっ・・・・・・!
何も抜くって決まったわけじゃないんだ・・・・・・・・!
これほど我慢する必要なんてあるのか・・・・?
あれから 「シコシコ」 もないし・・・・・・

ここでドクオ。
燃え盛る寮に自らのリビドーをぶつける。



11: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:10:06.05 ID:j+KBD1GY0

だがこれは正解。
ノルノの突然の来訪にも、柔軟に対応できるその『技量』を見せ付けた。
あくまでも『男』としてでは無い。

ドクオなりの『誠意』。
まがりなりの『決定』である。


【自慰黙示録('A`)のようです】


そして進められる記録――。


(´・ω・`)「そうか。それで出来ているのかね?あの『計画』は」

(;`・ω・´)「い、いえ……。予想以上に難航しt」

(#´・ω・`)「何回言えば気が済むんだ!!!あれはああしろって言ったでしょ!!
       もう!!ぷんすか!!!ぷんすかぷんだよもう!!!」

(;`・ω・´)「す、すみません!!!
      す、すぐにあれはああしておきます!!!申し訳ありません!!!!」

(#´・ω・`)「その台詞も聞き飽きたよ!!!
      はやくあれをああしてくれないと、これもこうできないだろ!!!?ぷんすかぷんだよ!!!?」



14: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:12:01.02 ID:j+KBD1GY0




――――――――こ こ ま で 僕 の 自 演――――――――





    ( ^ω^)がマジ切れするようです・Cグループ

               IN

              料理人 

               &

              くどうへいき



19: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:15:10.28 ID:j+KBD1GY0

――マスター。

私は、正しいのでしょうか。
このままずっと、人間の俗説である、輪廻のように繰り返して、繰り返して――。


ノル゚-゚ノ「繰り返した先に、何があるんでしょうか?」


そんな生産性の欠片もない出来事に、何が生まれようか。

ノル - ノ「マスたふんっ゛!!!!」

勢いよく頭を打ち、その場に倒れるノルノ。
後ろから現れたのは、何が入っているのか、大きなダンボールを抱えたツーがいた。

(;*゚∀゚)「あっ!!!ゴメン!!ゴメンよノルノちゃんっ!!!」
ノル゚-゚ノ「……象さんは、モっと好きデす!」
(;*゚∀゚)「そ、そうなんだ?だだ、大丈夫かなっ……?」

見事に燃えた3号店と寮。
見事に成功した同居計画。

そして、物事は勢いで推し進められて、今に至る。

今というのは、ノルノが、ドアの近くで床にペタリと座り込み、物事を確認しているのに気付かず、
どうやらツーが持ってきたダンボールで強く頭を打ち付けてしまった所までだ。



23: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:16:59.81 ID:j+KBD1GY0

ノル゚-゚ノ「でも……でモ!!!象さんの中でも!!哺乳綱長鼻目ゾウ科の中でも!!」
(;'A`)「こ…これは……」

元から少しおかしな子だと思っていたドクオ達だが、さすがにもうこれは駄目かもわからんね。

なんて事を考える。

ノル -ノ「ボルネオゾウが、別名ピグミーゾウが……大好きです……」
(;*゚∀゚)「く、詳しいんだねノルノちゃん。すごく言いにくいんだけど、頭大丈夫かな……」
(;'A`)「それはストレートすぎだろ……」

ノル - ノ「その時……人は小宇宙を感じるの……」
(;*゚∀゚)「えええええっとね!!こ、これ持ってきたのさっ!!これっ!!」

ツーがごそごそと、先程ノルノの頭に直撃したダンボールを開け、中身を取り出した。
中には、落ち着いた色合いから、派手な発色まで。
色々な服がダンボールへと詰め込まれていた。
一つ取り出して、前と後ろをくるくるとさせ確かめるツー。

(*゚∀゚)「……ほっ。よかったぁ。虫に食われてたりしてなくてさっ!!
    これ!ちょっと着てみてよっ!ほらほら!!」

(;'A`)「おいおい!俺もいるってのにそう強引に服をぬがs……」
(#*゚∀゚)「ドッ君は向こういってなっ!!」

(#)A`)「言う順序逆じゃん……」
ノル;゚-゚ノ「???」

意識がはっきりしてきたノルノに、ツーは何着かの服を推し進めた。



28: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:19:22.61 ID:j+KBD1GY0


(*゚∀゚)「もう秋でしょ?だからそろそろ衣替えの準備とかしようと思ってたところにノルノちゃんが来てさっ。
    去年の服も、捨てるのももったいないし、かわいいのも多いし……。だからノルノちゃんに着て貰おうかな?って思ってね。
    あっ!いらないものを薦めてる訳じゃないよっ!?ただノルノちゃんが気に入ってくれればいいかなぁ〜って。どうかなっ!どうかなっ!?
    これとか……これとかっ!かわいいでしょ?フリフリはノルノちゃんに向いてないかなぁ〜……?じゃあこれとかどうかな?」

ノル;゚-゚ノ「えっと……あの……」
(#)A`)「あーもう駄目駄目。こうなったらとまんねーの。いてぇ」

(*゚∀゚)「ん?こっちのがいいかな?これは去年よく着てたなぁ……。思い出が詰まってるのさっ。
    こんときはまだドッ君と付き合ってない時でさ、わたしもアピールを必死でしてたもんさ!!
    ほらこのミニスカートのチェックも、今年着ても全然いけると思うんだ!!どう?どうかなっ?いいんじゃないっかなっ?」

私の電脳が計算しきれないくらいの言語……。
相変わらず、何度聞いてもこのマシンガントークはすごいです。
それを、いつものように受け流すドクオ様は、少しかっこよく見えました。ブサメンですけど。

それにしてもこれは、マシンガンどころじゃないかもしれない。威力で言うと、対戦車ミサイルくらい?96式多目的誘導……じゃなかった。
早くこの兵器みたいな喋りを止めないとショートしてしまいそうでした。
なんてことなく、足の指の爪を切るドクオ様は、どこかかっこよく見えました。ブサメンですけど。



32: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:21:44.70 ID:j+KBD1GY0

ノル;゚-゚ノ「こっ……これいいなぁ〜!!いかにも秋って感じがしますです!!
    こんなのいただけるなんて嬉しくて言葉も出ないでございますです!!」

(*゚∀゚)「――……でさ、あんときわたしはこう言ったの!
    『これ朝赤龍のナニですか?真っ赤じゃないですか〜』ってね!!
    そうしたら朝青龍の奴なんて言ったと思う?『おいどんは、おかかが好きでゴワス』
    だってさ!!!なんでモンゴルから出てきた奴がゴワスなんだろうか考えてたら一日潰しちゃってさ!
    おもしろいのなん……って、それでいいのかいっ?」

ノル;゚-゚ノ「はっはい!!もうなんか止まらなさそうですし……」

(*゚∀゚)「うーん、いいセンスしてるじゃないかっ!わたしもこれ気に入ってたんだぁ〜。
    これを着てね、バーボンハウスへいそいそと出て行ったもんだよっ。本当にあの頃はウブで……」

ノル;゚-゚ノ「……!!こ、これもいいでござます!!!」

(;*゚∀゚)「ごっ、ござます?ござってあれかい?御座候ってやつかい?回転焼きみたいなあれかい?」

('A`)「あー御座候は白餡にかぎるわ」


ノル;゚-゚ノ「えっと…あの、ございます……です」

この人は、表裏の無い、素晴らしい人。
話が止まらないのがタマに傷。でも、アンドロイドの私にもわかるくらい、『優しさ』に溢れている。



36: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:24:36.53 ID:j+KBD1GY0

無愛想に見えて、優しさの篭っている人。
そして、マスターによく似た素振りが、時に私をあの頃へ戻ったかのように思わせる。ブサメンだけど。

この騒々しくて、変わることの無い一時を過ごす。
全てはこの時代の『規定事項』の為。

過ぎて行く『決められた時間』が、また私の中の『何か』を、小さな力でキュッと握り締めた。
見えそうで見えない、掴めそうで掴めない『優しさ』を汲み取るように、零さないように手を翳して。

そして、夜が更ける。

ツーは、余程はしゃいだのかすぐに布団に入ってしまい、ぐっすり寝てしまっているようだ。
ドクオは、ギコから飲みに誘われたようで、サンダルを履いて出かけていった。

ノルノはそれを確認すると、ゆっくりと起き上がる。

窓からさす青白い月の光。

私の視覚部分は、こうも美しい色を私に与える。
こんなにも美しい星に住めなくなるなんて、本当に考えられなかった。



40: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:27:30.58 ID:j+KBD1GY0

ノル゚-゚ノ「核は、人を狂わせるほどのものなの……?そんなに欲しいの?」

――そんなに、欲しいから戦争が起こったりするのよ。

ノル゚-゚ノ「それなら……。核なんて無ければいいのに。無ければマスターが宇宙へ行く必要なんて……」

――あなたがそう言っても、何も変わらない。

ノル#゚-゚ノ「わかってる!!わかってるけど……」

――あなたは、マスターの思い出を守ればいいの。
  そうすれば、マスターは喜んでくれる。いつでもマスターに会えるの。

ノル - ノ「……それも、わかってる。わかってるの!!」

(*ぅ∀゚)「……んぅ?どうかしたのぉ?ノルノちゃん」

ノル;゚-゚ノ「なっ、なんでもないですです!!ちょっと眠れなくてですですですでです!!」
(*゚∀゚)「そーお?じゃあ眠れそうになったら、お姉さんの布団に入ってきなよっ?」


ノル;゚-゚ノ「……!!あ、ありがとうです」



44: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:29:32.41 ID:j+KBD1GY0

――――

('A`)「おっと。今回はOTONA NO JIJYOは無しだぜ。セクロス描写が欲しいってか?
    ノンノン。俺は猿じゃねんだ。そんな毎回毎回セクロスしてる所を書かれちゃあ
   俺の名前が泣いちまうってな。かっこいい俺は俺じゃねえしな。
   わかるだろ?安易な組み合わせ。あんなのはダメダメ。もうセンスの欠片もねぇっての。
   でもよ、なぜか興奮しちまうんだよ。なぜだと思う?
   そりゃあ、いつもいる彼女が泊まりに来てるのもあるぜ。でもよ、俺あれなんだよあれ。
   アレっ気があるからさ。ほら。言わなくてもお前らだってそうだろ?ほら。ほら。
   あのーあれだよ。あれ。ちょっと小さな女の子が好きだからさ。な?な?
   あ、やっぱお前もそうだった?だろ。やっぱ大きいのもいいけど、小さいのもいいよな。な。
   いや、だからってそういう言い訳にしようと思ってるわけじゃないんだぜ?
   まあ自分の息子はちょっとアレになっちゃってるけどさ、ほら。でも、あれじゃん?」

(,,゚Д゚)「あ?いきなり何言ってんだ?」
('A`)「ああ。いや、ギコさん元気だなぁって」

(,,゚Д゚)「ああ。なんでだろうな。
     なんか知らんが、火事にあう前より元気なんだよ」

――――

   
しかし、私がこうしなければ。
マスターを想い、廻っている私が、こうしなければ――。



47: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:31:13.53 ID:j+KBD1GY0


そして、夜が明ける。
結局ドクオが帰ってくる事は無く、バーボンハウスで一晩を過ごしたようだ。

――だが、ノルノは寝れないでいた。


ノル;゚-゚ノ(く、くるじぃっ……)



そう、苦しさが体を締め付けていた。



53: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:33:45.41 ID:j+KBD1GY0

(*-∀-)「……ドッ君。ダメ!そこは……っ!!らめぇ!!ドッ君……もうあふれ、中学の頃カッコいいと思って怪我もして無いのに腕に包帯巻いて、
    突然腕を押さえて『うっ!……くそっ!……また暴れだしたねっ……』とか言いながらね、息を荒げて
    『あいつ達がまた近づいて来たみたいんだねっ……』なんて言ってたもんさっ……クラスメイトのみんなに『何してんの?ツーちゃん』って聞かれると
    『っふ……邪気眼(自分で作った設定でわたしの持ってる第三の目)を持たぬ物にはわからないだろうねっ……』
    と言いながら人気の無いところに消えていってさっ、テスト中、静まり返った教室の中で『うっ……こんな時にまで……めがっさしつこい奴等だねっ』
    と言って教室飛び出した時のこと思い返すと死にたくなるよっ……。ラクロスの授業で試合してて腕を痛そうに押さえ相手に
    『う……あ……離れ……死にたくなかったら早くわたしから離れなっ!!』とかもやっててねっ、体育の先生もわたしがどういう生徒が知ってたみたい、
    その試合はノーコンテストで終了。毎日こんな感じだったよ、でもやっぱりそんな痛いキャラだとやんきぃグループに、
    『邪気眼見せろよ!邪気眼!』とか言われても『……ふん……うるさい男達だねっ……帰りなっ』とか言ってヤンキー逆上させて、
    炎殺黒龍波くらったりしてたもんさっ、そういう時は何時も腕を痛がる動作で『あんたたち……許さないからねっ……!』って一瞬何かが取り付いたふりして
    『っは……し、静まれ……わたしの腕……怒りを静めるんだよっ!!」と言って腕を思いっきり押さえてた。
    そうやって時間稼ぎして休み時間が終わるのを待ってねっ、授業と授業の間の短い休み時間ならともかく、昼休みに絡まれると悪夢だったもんさ」



何かのコピペを口の端から漏らすツー。

言葉に甘えて、ツーの布団に入ったまではよかった。
気付けば二本の足が、ノルノの腰に蟹ばさみの様に食いつき、ギリギリと締め上げていた。
そして両腕がノルノを雁字搦めにし、アンドロイドのノルノが、操り人形のような体制になっていた。



ノル;゚-゚ノ(お、起こすのも……駄目だし、でも……これは……。寝言も意味がわからない……)
(*-∀-)「ぶるぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ノル; - ノ「ごkぅじゃなわ゛かもとッ!!!」



57: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:36:00.16 ID:j+KBD1GY0


そして、私が目を覚ました頃にはもう対象はおらず、一人布団の中にいた。
おそらくあのままホールドされて気を失ったのでしょうか……。
時計を見ると、昼下がりの午後3時でした。『予定』では、午後8時前後に、ドクオ様と一緒に帰ってくる。
そして、その晩が対象の細胞を採取する機会。

ノル゚-゚ノ「採取したら、そのまま時間を飛ばすわ」

――転送装置は使用可能よ。

ノル゚-゚ノ「……そう。じゃああとは待つだけね」

こう、何もする事の無い時間に、決まって思い出すのはマスターの事。
思い出す……いや、違う。

忘れてないか、確かめている。
私は、不安定な存在。
時空を行き来することによって存在を確立している作られた命。
いつ終わっても不思議じゃない。

そんな不安定な固体。大切な思い出がいつ消えてもおかしくは無い。
光の塊のような、そんな繊細な『大切な思い出』が、私の中に残っている。



60: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:39:03.58 ID:j+KBD1GY0

――――
―――
――

('A`)『こう……あれだよな。親指の爪のこの先のあれが……』
( ^ω^)『あるある』

『頭』に残る、何気ないこのやり取り。
私は、この場面に遭遇した事はありません。
これは『マザー』の記憶。

('A`)『無理矢理引っ張ると変に血が出るんだよ。どうにかしてくれよ人体のメカニズム……』
( ^ω^)『メカニズムまで引っ張り出すなんて、ドクは先を行ってるお!』

見た事も無いやり取りが、私をこうまで動かしている。
考えると、本当に不思議なもの。私が関わっている訳でもない、なんてことのないただの一会話なのに、
これほどまで私の『中』は愛おしく感じて、もっともっと知りたいと、欲している。

('A`)『いやぁ、でもさ。こうやってコンピューターが進化していって、俺達は宇宙にいる訳じゃん?なのにさ、なんで人間ってもんを作れないんだろうな』
( ^ω^)『うーん……。やっぱり、人って難しいんじゃないのかお?理屈じゃねーお!!そんなの関係ねぇお!!そんなの関係ねぇお!!』
('A`)『いつのギャグだよそれ……』

( ^ω^)『ふひひ』
('A`)『でも、お前は別さ』

そんな思い出を、守りたいから私は回る。
マスターの思い出を……、私の思い出を守りたい。

ノル゚-゚ノ「……そう。だから私は回るの。ずっと、ずっと」



65: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:40:57.54 ID:j+KBD1GY0
――ふと気付くと、もう空はもう赤く輝いて、久しく聞くカラスの鳴き声が、聴覚部を刺激していた。
どうも、一人で考え込むと時間がすぐ過ぎてしまう。



『思い出』に、没頭してしまっていた。


ふと思いついたので、昨晩、対象に貰った服を身に纏い、外へ出ることにした。
少し橙味を帯びてきた、空にかかるいわし雲を少し目に入れて、どこかから子供の遊ぶ声がする路地へと出る。

『マスターの世界』には無い、どこか違った懐かしい空気に、私はふわふわとした気持ちになっていた。
私の中にある『これ』は、一体何なのだろうか。言語化できない事物が、私を困らせる。

そう。私は気付き始めている。
私は、余りにも私を理解できていない。

だけど、それは私がアンドロイドだから。という一つの理由付けによって解決される。
人の手によって、何らかの使用理由を持たされ、作られた機械は、自身の事を知らない。

知っているのは、自分が働く理由のみ。



私も、それと一緒。

ノル゚-゚ノ「そう。一緒なの……」



68: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:43:59.44 ID:j+KBD1GY0

―――
――


( ^ω^)『合金が、生きているみたいだお』
('A`)『……そうか?金属は金属。機械は機械だと思うけどな』

( ^ω^)『違うんだお。何にでも、神様がとりついているんだお。ヤオヨロズって言うらしいお。父ちゃんが言ってた気がするお』
('A`)『へぇ。でもよ、人間に作られた物にでも神様は宿るのか?いちいち宿ってたら、神様もいなくなっちまうぞ』

(;^ω^)『そ、それもそうだお』

('A`)『考えすぎだぜ?機械は機械。俺達の手足になってくれるもんだ。
   だからといって、メンテに手ぇ抜いちゃ駄目だ。機械ほど繊細な物は無いからな』



機械は、機械。
それはわかっています。

でも……、それでは私の中に生まれた何かは、一体何なのでしょうか?
私に魂は無いと言います。

でも……。

ノル゚-゚ノ「私の、今のこの蟠り、隔たりは……」

『隔たり?』



71: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:47:12.23 ID:j+KBD1GY0

突如後ろから聞こえた、懐かしい声。
ノルノは驚いて後ろへと振り向く。

('A`)「えっと……ただいま、かな?ノルノちゃん」
(*゚∀゚)「遅くなってゴメンねっ!でも、こんな外でどうしたんだい?」

――いつも、少しだけ期待してしまう。

ノル゚-゚ノ「こんばんは。夕焼けが綺麗だったから外で見てて……」
('A`)「おっ。なんかロマンチストだね」
(*゚∀゚)「今日は雲が無いから、バーボンハウスにも夕焼けが差し込んできて少し眩しかったくらいだもんねっ」

ツーは座り込んでいたノルノに手を差し伸べる。
その手を握り返し、引っ張って立ち上がらせてもらうと、ノルノ達は家の中へと入っていった。


('A`)「それにしてもさ、ノルノちゃん大丈夫だった?」
ノル゚-゚ノ「な、なな何がですか?」

台所に、スーパーの袋と、クーラーボックスを置きながらドクオはノルノへと話しかける。

(;'A`)「あいつ、寝相悪いだろ?
昨日はギコさん達と飲んでていなかったけどさ、肋骨持ってかれたりしてないよね?」

ノル - ノ「ははっ……。はははははははははは」
('A`)「……」



74: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:51:20.30 ID:j+KBD1GY0

(*゚∀゚)「? 何の話をしてるんだい?」
('A`)「いや、何でもねぇ何でもねぇ。知らず知らずにトラウマ作るなんて、さすがだよ。
   ささ、作っちまおうぜ晩飯。ノルノちゃん蟹って嫌い?」

ノル;゚-゚ノ「か……かに……!!!!!!!」


ノル;゚-゚ノ「カニ(蟹)は、甲殻綱・エビ目・カニ下目(Brachyura 別名、短尾下目 たんびかもく)に属する甲殻類の総称。
    タラバガニやヤシガニなどはエビ目・ヤドカリ下目(異尾下目)に属するが、これらも「カニ」として扱うことがある。の、蟹ですますか!?」

('A`)「わーすっげーウィキペディア」
(*゚∀゚)「そうそう!その蟹だよっ!しかもこれは、仕入先の人から特別に譲ってもらった北海道近海で捕れた高級トゥワラブワァガニだよっ!!」

ノル;゚-゚ノ「トゥワラブワァガニ……!!」

ドクオは立ち上がり、指揮者のように箸をゆっくり円を描くように振る。



('A`)「少し舌を巻きながら……皆さんご一緒に!北海道産だけど〜シャンハイ!」



(*゚∀゚)('A`)ノル゚-゚ノ「「「トゥワ〜ラブワァガニ!!」」」



78: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:53:09.91 ID:j+KBD1GY0

ノル;-;ノ「ば、万歳!!帝国万歳!!!」
(;*゚∀゚)「な、泣かなくてもいいのに!!」

('A`)「そっとしておいてやろう……。俺も、一度はしてみたいものさ。幸せ泣きってもんを…よ…」
(;*゚∀゚)「……」

('A`)「ほらほら、ツーも下準備手伝ってくれ。とりあえずその買って来た椎茸頼む」
(*゚∀゚)「はいはいっ」

ノル;-;ノ「ばんざい!バんざい!!」

―――
――


ノルノが、居間で万歳三唱もどきを狂ったようにしている間に、二人は蟹鍋の準備を進めていく。
蟹二杯譲ってもらっただけあって、ただ鍋に入れるだけでは芸が無い。というドクオの提案の元、生と鍋に入れて食べよう、と言うことになった。

蟹の味をバラ付かせないように、薄めの昆布出汁をベースに、醤油、塩、みりん、酒を入れる。
少し沸騰してきたところで、蟹足、ネギ、豆腐、春菊、エノキダケを適当に放り込む。
ツーが作ったタラのすり身団子を少し遅れて鍋に入れると蓋をした。



80: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:56:07.10 ID:j+KBD1GY0

('A`)「それにしても、ノルノちゃん本当に蟹がすきそうだな」
(;*゚∀゚)「さ、さっきから15分くらいずっと万歳三唱してるもんね……。結婚式何回分だろ」


そして、テーブルにカセットコンロを置き、鍋を移動させる。

('A`)「ノルノちゃん!何回目かわかんないけどキリがいいところで止めなさいね!お鍋冷めちゃいますよ!」
(*゚∀゚)「どこの優しいお母さんキャラなのさ」

ノル゚-゚ノ「はーい!」
(;*゚∀゚)「乗っかっちゃった……」

そして10分ほど待ち、そろそろできたかという頃……。
もうなんかノルノとドクオがおかしくなっていた。

('A`)「俺……。この蟹を無事に食べ終えられたら、結婚するんだ」
ノル///ノ「ドキッ!ど、ドクオさん……」
('A`)「そうさノルノ……。一緒に行こう、ピリオドの向こうへっ!!」

ノル;-;ノ「一生、あなたについていきます!!」

(;*゚∀゚)「ノルノちゃんとこは、わたしのポジションじゃなかったのかな?」
('A`)「ツー。すまねぇ。俺はノルノ、そして蟹と共に生きるよ……荒野が俺を呼んでんだ」



84: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 22:59:07.74 ID:j+KBD1GY0

(;*゚∀゚)「荒野に蟹いなくないかい?」


('A`)「ほらほらよーく見なさい!蓋を開けると……そこにはワンダーランドが……!」
(*゚∀゚)「わぁ無視だぁー」

布巾を手に持ち、フタを開けると……。
そこには、いい具合に煮立ち、赤く輝く蟹が笑みを浮かべてこちらを見ていた。

ノル゚-゚ノ「はわわ……」
('A`)「生きてて、よかったよ……ほら、ポン酢を入れておいたからそれを使いな嬢ちゃん……」
ノル゚-゚ノ「ありがとう。名も知らぬお兄さん!」

('A`)「いンや!礼にはおよばねぇよッ!ほら!さっさと食いねェ食いねェ!!」
(;*゚∀゚)「ま、まあいいさっ。いただきまーす」
ノル゚-゚ノ「いただきます〜」

各々小皿に取り合ってもぐもぐと食べる。
こうやって、テーブルを三人で囲んで食べるのも、ノルノにとっては『規定事項』の一つ。
だが、そこには、いつもとは違った温もりがあった。

先ほどまではしゃいでいたノルノも、落ち着きを取り戻し、しなければいけない事を確認した。

ただ、髪の毛を一本取ればいい。
それだけだ。



86: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:02:06.71 ID:j+KBD1GY0

ノル゚-゚ノ「あの、ありがとうございます」
(*゚∀゚)「ん?何がだい?」

ノル゚-゚ノ「私みたいなのを、こうまで優しくしてもらって」
(*゚∀゚)「いいのいいのっ!まあ最初は驚いたけど、寮が使えなくなったんだからしょうがないよっ!いつまでもいてくれていいって感じなんだよっ!?」
('A`)「俺の家……」
(*゚∀゚)「え?そうだったかい?」
('A`)「……」


ノル;-;ノ「ふぁりはほうほはいます……。ほんほうにみなさんやはひぃですめ……」
(;*゚∀゚)「蟹、好きなんだねっ……」

そして、三人がたらふく蟹を食べ終わる。
片づけを手伝っていると、ドクオがカバンから、また一つビニール袋を取り出した。

('A`)「ほら、これ」

そう言って、洗い物をしている二人に見せたものは、花火であった。

(*゚∀゚)「少し時期外れすぎやしないかい?」
('A`)「かなぁ。ブーンが酔った勢いで鼻に突っ込んで線香花火してたからよ、聞いたら沢山あるっつって。だからもらったんだ」

ノル゚-゚ノ「……花火」
('A`)「ん?ノルノちゃん花火とかそういうの苦手?」



88: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:05:05.75 ID:j+KBD1GY0

ノル;゚-゚ノ「いっいえ!大がつくほど大好きです!!」
(;'A`)「そ、そんなに好きなんだ」

(*゚∀゚)「じゃあバケツに水入れるから、先外に出ておいてよっ」
('A`)「そうか?じゃあ先下いってるから、戸締りだけよろすくー」
(*゚∀゚)「はいよっ」

('A`)「じゃあノルノちゃん下行こうか」
ノル゚-゚ノ「わかりました」

そう。
別に焦ることは無い。
今の、今の時間を楽しもう。

それが、たとえ、今手に持っているセンコウハナビのような、儚いものだとしても――。
少し風が吹けば、ポトリと地面に落ちてしまうそれは、私も同じ事。

――悲観的になるのはよくないわ。

わかってる。
わかってるわ。

――ノルノ、あなたはよくやっています。マスターとの思い出を、あなたの思い出を大事にしましょう?

('A`)「うっわ。さびぃ」
ノル゚-゚ノ「もう10月過ぎです」

('A`)「やっぱ寒いからやめとこっか?」
ノル゚-゚ノ「……いえ、花火。したいです」



91: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:08:17.79 ID:j+KBD1GY0

('A`)「そう?ノルノちゃんが言うならいいけどさ」
(*゚∀゚)「待たせたねっ!……って、夜だからやっぱり冷えてるねっ」


('A`)「ちょっと湿気ってるな、この花火」
(*゚∀゚)「まあ、もう時期も時期だししょうがないさっ」
('A`)「明日ブーンのケツ百叩き決定だ。明日はノルノちゃんうちで仕事あるんでしょ?
   ヒールかなんかで踏んづけてやんなよ。喜ぶから」

ノル゚-゚ノ「……」

青、赤、緑。
不規則に変化していくその色を私は見つめる。

('A`)「……ノルノちゃんこれ、火点けてあげようか?」
ノル゚-゚ノ「……」

その光は、宇宙で見た色にも似ていて、懐かしい気持ちにさせる。
マスターと共にみた、宇宙の光。

('A`)「……ノルノちゃん?」
ノル;゚-゚ノ「……!!え、えっと何でございますですか?」
('A`)「いや、火を点けて上げようか?って……まあ、いいか」

ノル゚-゚ノ「ドクオさんは」
('A`)「?」

ノル゚-゚ノ「ドクオさんは、花火。好きですか?」
('A`)「ああ、好きだよ。楽しいじゃん、何かよくわかんないけど」



94: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:10:30.71 ID:j+KBD1GY0



なんとなく、聞いてみただけ。
でも、その何気ない答えを聞けただけで、どこか私は満足してしまった。
ドクオ様のする、一つ一つの仕草が、私に笑顔をくれるマスターに似ていて……。ブサメンだけど。

無性に、切なくなる。
どこかはわからない。でも、人ならこう言うに違いないのでしょう。

ノル゚-゚ノ「……あっ」
(*゚∀゚)「たまに強い風が吹くね」

('A`)「もう秋だぜ秋。一年なんてはえーはえー」
ノル゚-゚ノ「本当に早いですね」

(*゚∀゚)「さっ!花火も終わっちゃったし、お風呂で暖まって寝ちゃうよっ!明日も朝から仕事仕事!」
('A`)「はいよ……って、俺どこで寝ればいいの?ベッドがさ、ベッドがさ」
(*゚∀゚)「わたしとノルノちゃんは同じベッドで寝るから一杯だし……、床だねっ!」

('A`)「ゆ、床……」
(*゚∀゚)「3人で一緒のベッド、ぎゅうぎゅうで寝るのを想像したねっ……?」



('A`)「……」



('∀`)



98: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:13:20.88 ID:j+KBD1GY0
            - ― -─── .─;─.────────━━━,━∴━━━
__       (#*゚∀゚) <中学時代に編み出した秘技だよっ!!!. .; ・
───   r/   (⌒y〜イ,,,ノ     __ ヽ,   、 ・,‘         .   ,ノ ; ; ; ,.
      ,;; /    /ヾ,r'”イj` y'⌒Y⌒´;;`ソヾ,、r X´_,,-‐‐'´〜;..u、ル'、ソ⌒h'";,t, y_ ・;・
    (曲/   ,f  ミ--‐'リ"''‐--''t){"人,;'"r~~`´ ヽ";;,,:リ、゙j"=-,1xハ:''ヘ,,jミ《' シ;#A`))`j・..∴
       l  _, I   jヽノヽ、t`;,.Aヽ、_;;-'''i,ア~'';,,y´ 入ソヽ‐-,,}`'j゙′イ '゙i y’〕、.イ′*
       i  ハ f      ‐-t"'"二==ミ ,,_'-'‐ヾ、 '"゙゙彡    '゙゙゙`⌒ヽニ三,, `,, Y.:;'<ああ。これがあの。
      / / '; ヾ    - -j―── ヾ───ソ──────━━━ゞ 〆) ・:  ヽ━━━
    / ノ  ヽ、 ヽ - ―─────ゝ────────━━・━━/  /(  /━∵,
 ─/ _,/─   丶, ヽ  ― --─── ノ─────────━━━(  / ) /━━━
─/  j'────  .〉 ,i ‐- ―────'─────────━━━..し' ━し━.━━
 (__,ノ        (__j      ―─────────────━━━━

;#A`#++`)「すいマセんでした」
ノル;゚-゚ノ「……」

tanasinnはまちまsげふんげふん。

(#*゚∀゚)「三人でなんて暑苦しいに決まってるだろっっ!!!ねっ!ノルノちゃん!?」

(;'A`)ノル;゚-゚ノ(そ、そこなんだ《ですか》)

そして、夜も更け始めた頃、ノルノとツーはベッドに、ドクオは床にシーツを敷く。
ドクオ達は、仕事で疲れたのか、すぐに寝てしまったようだ。
ノルノは、それを確認した後に、背中を向けて体を丸めるようにして寝ているツーの髪の毛に手をやる。



103: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:15:57.17 ID:j+KBD1GY0

一本、髪の毛を難なく取ると、自己確認する。

ノル゚-゚ノ(これで、いいのね?)

――そう。それでいいの。早く、次の時代へ行きましょう。私。

ノル゚-゚ノ(ええ。わかってるわ)

静かにベッドから出ると、カーテンの隙間からさす青白い光を背中に浴びながら、入り口へと向かう。
すると、後ろから声がした。
後ろを振り向くノルノ。

(ぅA`)「……ノルノちゃん?」

ドクオが、上半身を起こし、目を擦りながらこちらを向いていた。
あれだけの強烈なパンチを食らっておきながら、まだ綺麗な顔をしているなんて流石です。
ブサメンですけど。
でももう、焦る必要も無い。
そのままチェーンロックを外し、鍵を開ける。

でも、最後に……。
最後に、一つだけ、言いたかった。

ノル゚-゚ノ「マスター……。また、お会いしましょう」

ドアを開け、そのまま駆け出すノルノ。
そのドアが閉まる寸前、かすかに聞こえた。



107: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:19:03.39 ID:j+KBD1GY0





『ああ。待ってるからな』




ノル゚-゚ノ「……!!」

気のせいかもしれない。
もう一度、確認しに行こうとも思った。

有り得ない返答。
私の頭の中が出した妄言かもしれない。

でも、耳に残ったマスターと同じ……、同じ声。




……同じ、優しさが篭っていた。ブサメンだけど。



109: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:21:30.65 ID:j+KBD1GY0

ふと、私の頬を、何かが伝った。
それが何か、私には今もわからない。

月を眼前に、すっと立ち尽くす。
輝く光が、ノルノの周りを包み、反射し、光の帯を一つ一つ作っていく。

一瞬の光。
ノルノは、次の『規定事項』の時代へと飛んだ。

もちろん、ノルノがいなくなった時代で、ノルノの存在が認められることは無い。
記憶を消すのは、保険のようなもの。だが、ノルノはそれをしなかった。
頭の中にあった、ノルノの情報は、穴を開けたようにぽっかりと無くなり、少しの疑問も残さない。

そう、微塵も残さないはずであった。

('A`)「あ、あれ……。俺なんで床で寝てんの?」
(*ぅ∀゚)「……?というより、何で家にいるんだい?」

(;'A`)「お、俺の家……」
(*゚∀゚)「まあいいじゃないかっ!ほら、朝早いんじゃないのかい?40秒で仕度しなっ!!」

(;'A`)「あ、ああ……。なんか、誰かいたような気がすんだよなぁ」
(*゚∀゚)「ドッ君の家に泥棒がくるはずないでしょっ!ほら仕度仕度!!」



ノルノはそれを知らない。



111: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:23:29.14 ID:j+KBD1GY0

―――
――



また私の中に聞こえてくる、あの言葉。


(;'A`)『でも、でも…やっぱり…俺も【核】は嫌いだ』

…私も、核は嫌いですマスター。
でも、でも私は……。

(;'A`) 『理屈じゃなくて本能的に好きになれねーな』

今の私は……。

(;'A`) 『過去の惨劇を知りながら戦争に【核】を持ち込んだヤツ。
     発明に手を貸したヤツは…何千回殺しても飽き足りねーと思うよ』


一つの記憶に……、何回も、殺されているのと同じ。

マスター。
私はいけない事をしているのでしょうか?
私は褒められない事をしているのでしょうか?

マスターの言う事は、絶対です。
それは、どのような事があろうと変わりの無い事です。



113: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:26:48.81 ID:j+KBD1GY0

しかし、今マスターが、この『規定事項』を止めろと言っても、私は止めないでしょう。
たとえ、マスターに愛想を尽かされ、捨てられようとも。

私の中のマスターは、私以上の存在なのです。
私が潰れて、動かなくなる時。

それは、マスターの『メモリー』が、揺ぎ無い物に変わる時でしょう。


それまで私は、廻り続けます。

――――




『それにしても、VIPの所の荒巻博士はすごいね』

ノルノが降り立った時代。
それは、人間が宇宙に移住せざるを得なくなるきっかけを作った時代。

( ´ー`)「うちの技術じゃあ、まだあと3,4年はかかるだろうね」

大陸が4つの国に別れ、戦争が静かに続いていた時代。
駆動兵器と呼ばれる物が、力を握ろうとしていた時代。

ノルノが、歴史的巨悪に加担する事に”なる”時代――。



116: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:29:26.03 ID:j+KBD1GY0

ノル゚-゚ノ「そう。全てはマスターの為……着きましたね」

周りを見渡すと、そこは寒空広がる冬の大陸。
地平線の先が、薄っすらと青みを帯びており、周辺には、少ないが建造物が立っていた。

ラウンジ共和国と呼ばれる、大陸にある四つの国の一つであるこの場所で、ノルノは、”人間”を作る。
それも『規定事項』の内の一つ。

ノル゚-゚ノ「北に1kmほど進んだ建物が、ラウンジ共和国第一研究所。ここでいいのね?私」

――そう。そこにいるシラネーヨという男。その男に、さっきとった髪の毛。
  それと、私のメモリーチップに入っているデータを紙媒体に複写して渡しなさい。
  メモリーは私のボックスに入れておくわ。中に入ると男がいる。その男から紙とペンを借りて書けばいいわ。私。

ノル゚-゚ノ「……わかった」

この時代には、少しマッチしていない、ツーからもらった少し薄地のコートを着て研究所へと歩いていく。
ラウンジは、実質ν帝国の占領行為を受けていなかった為、ごくごく平和なものであった。
国民性からして、少し異質なものであるので、戦争などそっちのけで文明の発展を望んでいたのだ。

そうであるからこそ、この『規定事項』をパスするにあたって、好条件が揃っていた。
今、クローン技術に非常に興味を持っている男。シラネーヨ。

この対象に近づき、先ほど得ることに成功した髪の毛から、ツーのクローンを作る。
なぜツーのクローンを作る必要があるのか?
それは、もちろんドクの『メモリー』補完に無くてはならないものだからだ。



119: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:33:01.51 ID:j+KBD1GY0
歴史というのは、人と人が、糸のように繋がり、紡いでいくものである。
その糸は、非常に細く、脆い。

ノル゚-゚ノ「――すいません」

風一つ吹けば、切れてしまうかもしれないし、もし切れたとしても、その切れた断面がどこかの糸に絡みつき、
小さな糸団子を作るかもしれない。
そういう、細かな確立で歴史は作られていく。
もちろん、全ての歴史からすれば、ドクの一生など極小さなものである。

ノル゚-゚ノ「この紙を、ここにいらっしゃる最高責任者、シラネーヨ様に見せていただけますか?」

ノルノは、そのドクの細い糸に関わる糸を、正しい方向へと誘うのだ。
そうすることによって、ドクの『メモリー』は補完される。

(;´ー`)「この紙、見せてもらったよ。どうも君は、一味違うらしいね」
ノル゚-゚ノ「……」

そして、その糸の一本が、このツーの髪の毛一本でもある。

このツーのクローンをラウンジで作り出すことによって、ドクの親友、
ブーンが生まれる要因に、遠目ながら繋がる事になるのだ。

ノル゚-゚ノ「その技術を、私は使いこなす事ができます」

ドクの糸を、ノルノは細く長く紡いでいく。
それは、慣れた手つきではあるが、悲しみを帯びた一連の作業。
運命や、使命などという言葉では表す事の出来ない、何かがそこにはあった。



121: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:35:51.25 ID:j+KBD1GY0

シラネーヨは、腰に手を添え、珍しそうにじろじろと、小さな入れ物に入っている髪の毛を眺める。
ノルノは、とにかくこの髪の毛でクローンを作らないといけない。そう、シラネーヨに言い放った。

( ´ー`)「いや、まあ作れれば何でもいいのさ。クローンとかキメラとか、そういうのに今はちょうど興味があってね。
      君がこの実験を知っているかのようだ。一体どこから来たんだい?その身なりからすると、テンゴク地区かな?」

ノル゚-゚ノ「……そうです。テンゴク地区からです」

( ´ー`)「あそこはいいよね。野菜がよく出きるいい土地さ。ラウンジも外交に力を入れれば、畜産も発達すると思うんだけどねぇ……。
      でもほら、最近はν帝国がアレだからさ。テンゴク地区までは国境警備令が出てないから安心だけどね……っと、そうだそうだ早速取り掛かろう」

ブツブツと独り言を言いながら、ノルノに自動昇降機を指差し進む。
乗り込み、しばしの間地下へ向かう。
扉が開いた先には、大きなケージに、色々な動物が閉じ込められていた。

そして、奥に進んでいくと、大きなカプセルと共に、気泡を吐いている機械。
培養液と思われる、緑色に輝く液体がそこには入っていた。



123: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:39:46.59 ID:j+KBD1GY0

( ´ー`)「さあ。ここだよ」
ノル゚-゚ノ「ここまできちんと揃っているだなんて……」

それは、ノルノがいる時代。
核で人間が地球に住めなくなった時代のクローン技術に、近いものであった。

( ´ー`)「設備は、きちんとしているはずだよ。ここにいる偏屈達が、理詰め理詰めでひねり出したんだからね」

ノルノは設備に近づくと、電子パネルに触れ、操作を始めた。
小さな受け皿のような機器に、ツーの髪の毛を置き、更に操作を進める。

ノル゚-゚ノ「このまま進める事ができるのですが、一つだけ了承をえたいことがあります」
( ´ー`)「なんだい?」

ノル゚-゚ノ「クローンというのは、完璧なものではない。という事です」
( ´ー`)「……どういうことだい?クローンは、平たく言って、本人そのものを作れるという事だろう?」
ノル゚-゚ノ「そうです。しかし、今のこの技術。いえ、この時代では作ることはできません。不可能なのです」

ノルノが何を言い出すのか、神妙な面持ちで眉を顰めるシラネーヨ。

ノル゚-゚ノ「この時代で作る事の出きるクローン。それは、精神面において、少しだけ欠落した面が見られる、同一人物という事です」
( ´ー`)「欠落……?」



126: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:43:08.79 ID:j+KBD1GY0

ノル゚-゚ノ「例えば、Aがいたとします。そのAは、優しく、気立てがいい。そして、そのAからクローンを作るとします。
    この時代の技術では、完全なAを作る事ができません。決して技術力不足という訳ではありません。時期尚早なだけです。
    そして、出来上がったAは、性格が全く違いますし、好きな食べ物、趣味……もろもろが変わってしまうのです」

(;´ー`)「という事は、器だけ同じ、別人が出来上がるということなのかい?
      それにしても、ノルノ……君だったっけ?君は時代時代というが、まるで未来から来たような言い方だ」

ノル゚-゚ノ「ええ。私は未来から来た者ですし、人間でもありません」

そう言って、右腕からドリルを展開して見せる。
シラネーヨは『ひっ』と小さな声を上げて、二、三歩後ろへと下がった。

ノル゚-゚ノ「私はアンドロイド。未来から、過去の英知を携わり、今この場に立っています」
(;´ー`)「つ、疲れてるんだな僕も。まあ三日もぶっ続けで研究してたんだ、しょうがないさ……」

ノル゚-゚ノ「……私は、あなたへと助けを乞うているのです。
    今、この事実を受け入れれば、あなたは研究者として伸びるでしょう」



ノルノは、シラネーヨに揺さぶりをかけた。
シラネーヨという人間は、自己のステージを上げる為に、このような実験に及んでいる。
ただ、ただ人間としての高みを目指したいだけの人間だ。



128: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:44:57.78 ID:j+KBD1GY0

そして、シラネーヨの答えは『Yes』。
苦笑いを浮かべながらも、ノルノへとはっきりそう言った。

( ´ー`)「この際、君がどういった理由で、どうやってここにきたのか、なんて考えない事にするよ。
      おそらく、君は間違いなく未来から来たアンドロイド。機械人間だ。それを受け入れて、僕はこの実験に挑むことにする」

ノル゚-゚ノ「……ありがとうございます。それではさっそく……」

ノルノは、先程弄繰り回した電子パネルから、情報を抽出する。
それは、先程まで一緒にいた、あの明るい女性の、全てのデータ。
データをシラネーヨに見せながら、実験を進める。

(;´ー`)「……。開いた口がふさがらないとは、まさにこの事だね……、全く」
ノル゚-゚ノ「私が未来に帰れば”私の記憶”は消える。でも”私に教わった記憶”は消えないわ」

気泡を出しながら、緑色の液体に浮かぶ小さな子供を見つめながら、ノルノは言う。
実験を始めて、まだ一週間も経っていない。

もう見た目では、2歳程である。
驚異的な速度で成長する”ツー”を、ただただシラネーヨは見ていた。

( ´ー`)「……。それにしても、この成長速度ではすぐに寿命を迎えてしまうんじゃないのかい?」
ノル゚-゚ノ「私達の技術が作る、クローンというのは”元の年齢”まですぐ育ちます。ここまでは簡単なのです」

( ´ー`)「空の入れ物が、できるという事かい?」
ノル゚-゚ノ「……言い方は悪いですが、そうです」



131: ◆Cy/9gwA.RE :2007/09/28(金) 23:46:49.46 ID:j+KBD1GY0

( ´ー`)「……楽しみだね。非常に楽しみだ。教育方法によっては、超エリートも簡単に作れるんだからね。
      その方法を考えるのも、また実験か。どんどん枝分かれしていくなんて、なんて幸せなんだろう。知識の探求が尽きない」
ノル゚-゚ノ「……」

凄まじい上昇志向。
この生まれつきの野心が、後に戦争の大きな鍵になる事は、ノルノも知らない。
多くの駆動兵器を生み出し、戦争を終結させる人員の一人となり、統一国を担う人物へと成って行く。

ノル゚-゚ノ「それでは、私は次の時代へと行きます」
( ´ー`)「……わかったよ。もう君を思い出すことはできないんだろうけど、
      僕に知識を、ありがとう。ノルノ君」

ノル゚-゚ノ「さようなら。シラネーヨ様」
( ´ー`)「さようなら」

何かの機械を向けるノルノを前に、シラネーヨは立ち尽くす。
目の前で、眩しい光の帯が連なっていく様子を、シラネーヨは目を細めながら見ていた。。


―――
――




そして、ノルノは数年後の世界へと飛ぶ。


『メモリー』の補完は、近い。



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