( ^ω^)がマジ切れしたようです

336: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/12(金) 02:10:06.92 ID:REY3R2KS0
ゲリラな彼らは今日も生きているようです。 謎のドクオ合作編。



何だか唐突に腹の空いたような、それに似たような違和感を覚えてしまい、
俺はまどろみから解放された。

軽い頭痛を抱えながらフっと瞼を開かせると
真っ白なペンキを塗りたくられた天井がまず、飛び込んできた。
やはり見慣れた光景だったのだが
今一度、自分の居るこの空間について確認しようと半身を起こして
首を何度か回したところ、呆気なく自分の部屋、それも
寝室であることに確証を得たのだった。

自分の横たわっているベッドのシーツを見ても、タンスの上の宝石箱を見ても、
壁に備え付けておいた丸時計を見ても、立てかけたスタンドミラーを見ても、
いつも開けっ放しにしてあるバルコニーへ続くガラス戸を見ても、
風に舞う白のカーテンを見ても、頭上の輝く蛍光灯を見ても、
間違いなかった。


確実にここは、俺の部屋だ。



340: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/12(金) 02:13:00.17 ID:REY3R2KS0
丸時計を見る限りでは、今は夜中の二時らしい。

それにしても流石、郊外の一角というべきか
この夜の世界は死んでいるかのように静かであった。





「―――え?」

音の状態について考えた瞬間
この空間があまりにも静か過ぎることに気づいたのだった。
物音一つ、存在していない。


           おかしい。

まだ自然が傍に残されているこの郊外には虫の鳴き声がよく響いているもので、
疲れているときなど時折うっとうしいとすら感じていたのである。
今は十月。特にスズムシの活動が活発な
この時期に、この静けさは有り得なかった。



343: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/12(金) 02:14:49.11 ID:REY3R2KS0


「………!」

一体これはどういうことだ。

夜風になびくレースの白カーテン越しにチラチラと映る外の景色を具に見やるのだが、
いつもの景色と寸分変わりのないものだった。普通の景色だ。



それにしても、この奇妙な違和感は何だ……。



夢世界と現実世界の判断方法として有効的と言われている
手の平の確認を行おうと、目の近くで両手を開いた際、俺は驚いてしまった。


「な、んで……だ……?」


手の平を広げた感覚は確かにあったはずなのに、今のあるはずなのに。
視界にそれは映りこんでいなかった。


自分の手のひらが無かった。



344: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/12(金) 02:16:44.68 ID:REY3R2KS0


「そんな、そんなバカなッ!」

驚き、バっとベッドから起き上がりシーツの皺の具合を眺めたのだが、
キチンとそれは人の形に寄れている。俺の身体は確かに存在しているのだ。


だが、見えないのだ。目には映らないのだ。

屈んでも自分の脚や股がどこにあるのか分からなかった。



     俺は透明人間にでもなってしまったのだろうか―――。



    



346: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/12(金) 02:18:51.76 ID:REY3R2KS0



急いで宝石箱の鍵を開けて中を覗き込んでみる。

愛用の腕時計、十字架のネックレス、小さなヒスイの聖母像。
どれもこれも、全て俺の愛している大切な品ばかりだ。
念入りに一つ一つチェックしたのだが、全て本物に間違いなかった。
途中、何だかどうしようもない不快感が襲い掛かってきたのが少し気になったが。
まぁいい。
この異常事態のせいで、盗まれてはいやしないかと心配してしまったのだが
それは杞憂だったようで安心した。

相変わらず箱を漁る手は、見えなかったのだが。



……鏡ならどうだろう。
フト思いつき、緊張しながらもスタンドミラーの前にゆっくりと向かっていった。



姿勢を正して鏡の正面に立った。
そこには俺の全身が普通に映っており、思わず安堵した。


(;'A`)「俺だ……」

いつもの俺の顔だ、寝巻きだ。鏡に映る世界は全くもって正しい世界であった。



348: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/12(金) 02:21:15.23 ID:REY3R2KS0



音が無いこと、自分の姿が鏡以外に確認出来ないこと。
この二つの異常を除けば、今の世界は全くもって正常なものだった。

しかし、あまりにもその二つの異常な事柄が巨大過ぎたのだが。


(;'A`)「………」

顔をペタペタと両手で触れてみる。髭を剃り忘れていたようで
ザラザラした髭の感触が手の平に走った。
勿論、鏡には顔を滑る手の姿は映っている。
それでも目には何も映らない。

身体全体が幻影肢に陥ってしまったような気がして、悪寒が走った。


一旦鏡から離れてベッドに向かい、そこの上で胡坐をかいた。
絡み合う脚と足の感覚がどうにも気になったのだが、
無視して思考の海に全てを投げ込ませることにした。


「………」


考えられる現象を逐一シミュレートしたのだが、まるで該当しなかった。
当然だ、こんな超常現象を常識で考える方がどうかしている。



349: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/12(金) 02:23:11.58 ID:REY3R2KS0
「……常識外に、決まってんだろ……」


SF、お伽話、都市伝説、ありとあらゆる空想話にも可能性を伸ばした。
そうでもしないと、この現実から脱出できない。


……もう、深夜の三時か。
不規則な生活などしない俺はこの時間には必ず眠っているはずだ。
そもそも、二時に目が覚めることなど滅多に無いのだが。
そして何だろう、この湧き上がる充実感は。眠気など起きた時点で存在していなかった。



まだだ、まだ……起きていたい……活動していたい……。


そんな情念が込み上げて来る。
また一つ、異常な事態が増えてしまった。

俺の身体はどうかしてしまったのだろうか。


「一体何なんだっ……たく」

焦りの篭った一言を発した瞬間、ようやく俺は気づいてしまった。



351: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/12(金) 02:25:19.95 ID:REY3R2KS0
気づいたというよりは、思いついたというべきか。
僕のこの異常状態を引き起こしている要因、真実を。


これが正しければ、本当に正しいのなら……
僕は二つの、二つの、恐ろしい……事実が。


「うっ……!」

「ぅわぁぁぁあああぁっぁぁぁあァァァアアア!!!」


居ても立ってもいられず、俺は部屋を飛び出した。
廊下に足を踏み入れた際、俺は自分の姿の映っているスタンドガラスをチラと横目で見た。





( A )



恐怖に精神を毟り取られながらも、
鬼の形相のようになってしまっている男の顔が映っていた。


あ、これ俺だっけ……?    もういいや。



353: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/12(金) 02:27:23.51 ID:REY3R2KS0
家から乱暴に抜け出すと、夢中で閑静な住宅街を走り抜けた。

気持ちいい。涼しい風が纏わりついてくる。
空腹を隠し通せるような快感だ。

「ァハ……ハッ……ハハハハァ……!」


堪らず、笑いを上げてしまった。

ああ……それにしても静か過ぎる世界だ、本当に……。
 まるで死んでしまっているかのようだ。当然か……。



夜をどこまでも駆け抜けた。
とうとう僕は涙まで流してしまった、嗚咽が情景と共に過ぎ去っていく

「早く、早く」と誰かが脳内で急かしている。
どうしてか囚われてしまった自分を、解放させたくて。
乾いた腹を満たしたくて、落ち着かずに居られなくて。

血が欲しくて。




謎のドクオ合作編 終



356: ◆tOPTGOuTpU :2007/10/12(金) 02:30:22.89 ID:REY3R2KS0
あとがき?

自分のブーン系書くキッカケ的存在のピアノの人の作品を使用できるなんて夢みたいだった!
新作の「彼らは〜」から拝借させていただきました。
クー編みたいな、ちょっと考えたり、かつ不条理な物語が書きたかったです。
これが結果です。


あんまゲリラみたいじゃなくってすみませんでした。
それでは引き続きゲリラお楽しみください!



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