(´・ω・`)ショボンが悲しい夏を振りかえるようです

37: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:17:27.18 ID:JUWRz7gi0

そこからの時間は夢のようだった。
二人は僕がいったことの無いような場所へ連れて行ってくれた。
ファッションショップ、カラオケ、ちょっと危ない本屋――すべてが新鮮だった。
そして最後にゲームセンターに行くことになった。僕が行きたかったから、二人にお願いをしたんだ。二人は快くOKしてくれた。

ゲームセンターについた僕らは最初に太鼓の達人、というゲームをやった。
僕とジョルジュで、トレイントレインの曲を選んだ。

( ゚∀゚) 「うぉぉぉぉぉ! 俺の太鼓の達人っぷりを見ろぉぉぉ!」

(*゚ー゚) 「……」

(´・ω・`;) 「すごい……」

気づけば回りに人だかりができていた。その原因を作ったジョルジュ。彼の鉢さばきは神だった。
終わってみればジョルジュは一番上のクラス、対して僕は一番下のクラスだった。

(´・ω・`) 「ショボーン」

( ゚∀゚) 「ふっ……相手が悪かったな」

(*゚ー゚) 「次はUFOキャッチャーやろうよ!」



41: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:20:41.20 ID:JUWRz7gi0

しかし、UFOキャッチャーで僕は意外な才能を発揮した。
初めてやったのだが、なんだが面白いようにとれる。

(´・ω・`) 「よっ……」

僕が狙ったのは、モナー人形。今流行のキャラクターだ。ノマネコとは別ものさ。
そして、クレーンがモナー人形を掴み――ポトリと穴へ吸い込まれていった。

(*゚ー゚) 「すごーい!!」

(; ゚∀゚) 「またとりやがった……」

(´・ω・`) 「10個めだね。今日は調子がいいなぁ」

気づけばまた人だかりができていた。さきほどから百発百中の僕に気づいたらしい。
僕は調子に乗ってもう一回やろうと、財布から100円とりだした。すると、ジョルジュに止められた。

( ゚∀゚) 「これ以上やらないほうがいいみたいだ……。怒ってる人がいる」

(´・ω・`) 「そうなの?」

僕は周りを見るが、みな羨望の眼差しで僕を見ている気がする。
怒ってる人などいるようには見えないが、ここはジョルジュに従うことにした。

僕らがUFOキャッチャーから離れて、次の人が入った瞬間のことだった。

「キャー!」



43: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:22:44.51 ID:JUWRz7gi0

女の人の叫ぶ声がする。僕らがさきほどいたUFOキャッチャーのほうからだ。
ジョルジュと僕は慌ててもといた場所に向かっていった。
するとそこには男女のカップルとそれを囲む数人の男たちがいた。

(♯)^ω^) 「な、なにするんだお!」

ξ;凵G)ξ 「そうよ! ブーンがなにをしたっていうの!」

DQN 「うるせー! 俺らがずっとやろうと思ってたんだよ!」

(♯)^ω^) 「僕らはちゃんと並んでたお!」

DQN 「うるせーんだよ!」

そう言うと男たちは、ブーンと呼ばれた青年を殴り始めた。
ブーン青年は頭だけをガードしてうずくまっている。そして、それを見て泣き叫ぶ彼女と思われる人物。
僕はどうしようかと迷ってるうちに、ジョルジュが勢いよく飛び出していった。

(♯゚∀゚) 「てめぇら! 一人に多勢で恥ずかしくねぇのか!」

そう言って、ジョルジュが一人の男に飛び掛ろうとした瞬間――僕はとっさに叫んだ。

「なにをしている! 警察だ!!」

DQN 「やべ、逃げろ!」

警察、の声に反応した男たちは急いでゲームセンターから逃げてしまった。
ジョルジュは危機一髪、輪に入らないですんだ。これも僕の機転のおかげかな。



46: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:26:10.29 ID:JUWRz7gi0

( ゚∀゚) 「助かったぜ、ショボン」

(*゚ー゚) 「ショボン君、すごいじゃん!」

僕は二人から褒められて、少し誇らしかった。

それからもう少しだけゲームセンターで遊んで、僕たちはここをあとにした。
三人でゆっくりと歩く。学校のことや、今日のこと、色々話しながら。こーゆー時間は意外と嫌いじゃない。
そしてとうとうジョルジュとしぃとわかれる道まできてしまった。

( ゚∀゚) 「それじゃあ、ここでお別れだな」

(´・ω・`) 「……ああ」

(*゚ー゚) 「うん、ショボン君帰ったらメールするね」

(´・ω・`) 「……うん」

僕は帰りたくなかった。
この夢のように楽しい時間を捨てたくなかった。あの苦しい現実に帰りたくなかった。
だけどそれは許されない。時間の流れというのは時に残酷なんだ。

ジョルジュとしぃに手を振って、僕は二人に背を向けゆっくりと歩き出す。
二人は同じ道だ。僕はまた一人ぼっちだ。
だけど、今日ほど一人じゃないと感じたことはない。僕は二人に対する感謝の気持ちを我慢しきれなくなった。
僕は急いで振り返り、大きな声で叫んだ。



49: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:28:16.03 ID:JUWRz7gi0

(´・ω・`*) 「ジョルジュ! しぃ! 今日は楽しかった!! 本当にありがとう!!」

二人はだいぶ遠くまで歩いていたが、なんとか僕の声は届いたようだ。二人はこっちを振り向き手を振ってくれた。
僕はそれを確認すると、手を振りかえして、全速力で家へと帰った。


次の日、目が覚めるとそこはいつもの現実だった。なにも変わらない現実。
いつものように着替えをすませて、朝の準備をする。朝食のときの両親の様子からすると、昨晩のことはばれていないようだった。
そして、今日も二十分前に学校に着くよう家をでた。

(´・ω・`) 「いってきます」

誰も返事をするわけでもない。ただの習慣。
このつまらない習慣が、自分がいつもの日常を過ごしていることを感じさせる。このことが僕を欝にさせる。

学校へ到着し、教室へと向かう。途中で廊下の時計を見ると、やはり登校時間の二十分前だった。
やっぱり僕は変わらないな、と心の中で僕は自分に皮肉を言い、教室に入る。
その教室ではやっぱりみんな勉強をしている。昨日まではなんとも思わなかったこの風景が、今はとてつもなく鬱陶しくてたまらなかった。



51: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:30:45.25 ID:JUWRz7gi0

それから十分ほどたって、しぃが教室に入ってきた。
しぃが僕に向かって手を振ってきたので、僕も慌てて振り返す。こんなときが僕の日常で唯一の幸せかもしれない。
そして、次の幸せは登校時間ぎりぎりにやってくるだろう。僕はジョルジュが来るのをいまかいまかと待っていた。

(´・ω・`) (あれ……。もうチャイムなっちゃったぞ)

ジョルジュはいつもの時間にやってこなかった。
そして、担任がやってきて出席を取る。すると担任が思わぬ言葉を口にした。

担任 「ジョルジュは、ちょっと遅れてくる。部活のことでなんか呼び出されているらしい」

(´・ω・`) (部活のこと?)

僕はしぃのほうを見た。彼女の表情から驚きの色が見えることから、彼女もこのことは知らなかったのだろう。
朝のSHRが終わると、僕は慌ててしぃのところに向かった。

(´・ω・`) 「ジョルジュは一体どうしたんだ。部活のことってなにか聞いてない?」

(*゚ー゚) 「ううん、なにも聞いてないよ。どうしたんだろう」

僕らがそんなことを話しているうちに、一時間目の先生がやってきてしまったので、僕は一旦席にもどった。
それからもずーっとジョルジュは来ない。二時間目も、三時間目も。僕は段々と不安になっていった。



55: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:33:06.81 ID:JUWRz7gi0

そして4時間目に入った。
この学校の生徒はみなマジメなので、静かな授業時間がしばらく続いていた。
しかし、その雰囲気は突然乱暴に開けられたドアの音で壊されてしまった。
みんなが一斉にドアに注目する。僕はみんなにつられてドアのほうを見た。

(♯゚∀゚) 「……」

そこにいたのはジョルジュだった。
ジョルジュはなにも言わないで、自分の席に着き、そのまま顔を伏せてしまった。
僕は何度もジョルジュのほうを見たが、ジョルジュは結局僕のほうを向いてくれることはなかった。

4時間目が終わると、僕はすぐにジョルジュの席へと向かった。

(´・ω・`;) 「ジョルジュ、どうしたんだ。心配したんだぞ」

しかし、なんの反応もない。
その様子を見ていたしぃが、慌ててこっちに向かってきた。

(*゚ー゚) 「ジョルジュ君。部活のことってなんだったの?」

やはりなんの反応もない。
しばらくの間沈黙が続いたが、僕は微妙にだがジョルジュの肩が震えているのに気がついた。
もしかして――



56: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:35:10.45 ID:JUWRz7gi0

(´・ω・`) 「泣いているのか……? ジョルジュ」

どうやら図星だったようだ。ジョルジュの肩がはっきりと震え始めた。
しかし、それでもジョルジュは僕の言葉を無視している。僕はどうすればいいのかわからなくなった。
そのとき、しぃがゆっくりと口を開いた。

(*゚ー゚) 「部活のことなんでしょ? 私には教えてくれないの?」

ジョルジュは答えようとしない。

(*゚ー゚) 「どうして!? 私だってマネージャーなのよ!? 同じ部活の仲間なのよ!」

しぃは言い終わると、息を荒げながら泣き始めてしまった。僕はそんなしぃをただ見ることしかできなかった。
ジョルジュはやっぱりまだ震えている。が、そのジョルジュがくぐもった声で一言いった。



63: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:38:15.42 ID:JUWRz7gi0

(  ∀ ) 「ごめん……。サッカー部終わっちゃったよ……」

ジョルジュの言ったことはある程度予想できたことだった。
だけど、僕は予想以上にダメージを受けていた。それは、サッカー部のことについてじゃない。泣いてるジョルジュとしぃを見てだ。
二人はこれほどサッカー部に思いをかけていたということと、自分がこれほど思いをかけれるものがない、という事実。
結局二人はずっと泣いていて、僕はそれを眺めているだけだった。そして5時間目に入ると、ジョルジュは早退した。

結局その日は、しぃとは別々に帰った。
僕はすることもないので、急いで家へと帰りしぃにメールをする。

(´・ω・`) (大丈夫? 部活のことショックだろうけど、頑張って……、送信)

それから10分ほどしてしぃからメールが返ってきた。
僕は携帯を開いて、メールを確認する。


07/06 16:02

From 椎名しぃ
Sub 件名なし

私は大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。
それよりジョルジュからメール返ってこないんだ。
悪いけど、ショボン君のほうからもメールしてくれない?



66: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:40:31.51 ID:JUWRz7gi0

僕は、了解の旨をメールに添えて返信する。どうやらしぃは大丈夫のようで安心した。
そして、僕はすぐにジョルジュにメールをする。内容はさきほどのしぃと同じようなものだ。
しかし、三十分たってもメールは返ってこなかった。僕は仕方がないので、携帯を閉じて、ベッドに寝転がる。
だが、そこで大事なことに気づいた。

(´・ω・`;) 「塾とピアノ……」

僕は急いで着替える。
塾は四時からなので、本来は学校から直で向かっているのだが、このままでは一時間の遅刻だ。
僕は塾用のバッグを抱えて、教材をつめこむ。しかし、乱暴にやっているのでなかなか入らない。
そこで不意に僕は虚脱感に襲われた。

(´・ω・`) (なんで僕はこんなことをしているんだろう。未だに父の言うことに従うなんて馬鹿馬鹿しいじゃないか)

僕はそう思うと、バッグを放り投げてベットへと再び寝転ぶ。
今日は全部さぼろう。ジョルジュとしぃが傷ついてるときに僕だけいつも通りなんて。
僕は母に、塾にいく、と声をかけると家から飛び出した。
自転車に乗ると、僕はジョルジュの家に向かう。そこで、再び僕は重要なことに気づく。

(´・ω・`) (ジョルジュの家なんて知らんがな)



70: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:42:56.94 ID:JUWRz7gi0

僕は急ブレーキをかける。急いで、携帯をとりだしてしぃに電話する。
数回の呼び出し音の後、電話がつながった。

(*゚ー゚) 「もしもし?」

(´・ω・`) 「しぃ! 突然だけどジョルジュの家知ってる!?」

(*゚ー゚) 「知ってるけど、これから行くつもり?」

(´・ω・`) 「ああ! 頼むから教えてくれ!」

(*゚ー゚) 「じゃぁ私も行くから、駅で待ち合わせしよう!」

(´・ω・`) 「わかった!」

僕は電話を切ると、急いで駅へと自転車へこぐ。
5分ほどして駅についたときには、まだしぃは着ていなかった。
僕は色んなことを考えた。ジョルジュは会ってくれるだろうか。会ってくれたらなんて声をかけようか。
僕はジョルジュを友達だと思っている。だが、ジョルジュは僕のことをどう思っているだろうか、など。
そうしているうちにしぃはやってきた。自転車にまたがったしぃは、まだ制服のままだった。



72: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:45:00.88 ID:JUWRz7gi0

(*゚ー゚) 「ごめん、待たせたね。すぐ行こう!」

しぃはものすごいスピードで自転車をこいでいく。僕はしぃを見失わないので精一杯だった。
自転車をこぎはじめてから十分ほどすると、しぃは少し小さな一軒家の前でブレーキをかけた。僕もそれに続いた。

(*゚ー゚) 「ここがジョルジュ君の家だよ」

確かにそこには「長岡」の表札がかかっていた。僕はその表札の下にあるインターホンを押す。

「……はい」

女の人の声だ。きっと母親かな。
僕は、ゆっくりと返事をする。

(´・ω・`) 「ジョルジュ君の友達です。ジョルジュ君はいらっしゃいますか?」

「ちょっと待っててね」

女の人がそう言うと、インターホンは切れた。
それから5分ほど待ったが、なんの動きもない。僕としぃはお互いの顔を見合わせながら、ひたすらジョルジュを待っていた。
更にそれから5分ほどして、もう帰ろうかな、と思ったときに、ゆっくりと玄関のドアが開いた。



75: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:47:08.02 ID:JUWRz7gi0

( ゚∀゚) 「ショボン、しぃ……。あがれよ」

ジョルジュはそう言うと、僕らを手招きした。
僕としぃは黙ってそれに従う。ジョルジュは二人が入ったのを確認すると、ドアを閉めて二階へとあがる。

( ゚∀゚) 「ついてこいよ」

ジョルジュはそう言ってどんどん階段を登り、階段の目の前にある部屋に入っていった。
しぃと僕も続けてその部屋に入る。
その部屋は狭いが、サッカーで溢れた部屋だった。
世界各国の有名選手のポスター、いくつもあるサッカーボール、恐らく宝物であろう誰かの直筆サイン。
それらすべてがジョルジュのサッカーへの思いを感じさせた。

ジョルジュがいつ持ってきたのか、僕らにお茶を出す。
そして布団の上にどかっと座った。



77: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:49:13.85 ID:JUWRz7gi0

( ゚∀゚) 「二人とも来てくれてありがとう。もう俺は大丈夫だ」

(´・ω・`) 「そうか、よかったよ。でも無理はしないでくれ」

とりあえずジョルジュが大丈夫そうで良かった。
僕が安心した矢先、しぃがジョルジュに尋ねる。

(*゚ー゚) 「どうしてサッカー部は廃部になったの?」

( ゚∀゚) 「……先輩二人が部をやめた。進学を目指すって。そしたら部活動総括部の先公が、二人じゃ部活として認められない、だと」

(´・ω・`) 「恐らく、経費削減の口実だろうね……」

うちの学校は、部活動には全く力を入れていなかったため、部活動にかけるお金は最小限に抑えるようにしている、と聞いた。
そのため丁度部員の減ったサッカー部が狙われてしまったのだろう。なんとも不条理な話だ。



80: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:51:34.83 ID:JUWRz7gi0

僕が心配そうにジョルジュを見ると、ジョルジュは乾いた笑い声をあげる。

( ゚∀゚) 「小学校からサッカー続けてきて、ずっとサッカーやろうと思っていた。勉強はそこそこできたから、記念にこの進学校受けたらたまたま受かっちゃって。
ついつい有頂天になっちゃってさ、サッカーやりたくて受けようと思ってた高校を蹴って、こっちへ入学したら、このザマさ」

ずいぶんと軽く話しているように見えるが、僕にはとても悲しみがこもっている言葉に聞こえた。
ジョルジュはなにか失ったように、ぼっーと空をみつめている。ちょっと危ないな、と僕は思った。

それからずーっと沈黙が続いた。
この三人でいるときはあまりこうゆう空気を体験したことがない。とても居づらい。
なんとかこの状況を打破しようと思って、僕は適当に話題をふってみた。

(´・ω・`) 「あのさ、この間遊んだときジョルジュすごく太鼓のゲーム上手だったよね」

( ゚∀゚) 「……」

食いつきが悪い。これは失敗か。
だが、僕は頑張って話を続ける。



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