(´・ω・`)ショボンが悲しい夏を振りかえるようです
- 82: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:53:36.92 ID:JUWRz7gi0
(´・ω・`;) 「だからさ、サッカー諦めて新しいことをやってみたら?太鼓の技術生かしてドラムとか」
( ゚∀゚) 「あんま適当なこと言うなよ。俺がどれだけサッカーに打ち込んできたと思ってんだ」
ジョルジュは静かに言ったが、微妙に語気を荒げている。
やっぱりサッカーに変わるものはなかなかないのだろう。
しかし、そこでしぃが思わぬことを言った。
(*゚ー゚) 「いいじゃない、ドラム。やりなよ」
( ゚∀゚) 「だから無理だって言ってんだろ」
(*゚ー゚) 「やってもいないのに無理無理言うんだ」
ジョルジュはそこで黙ってしまった。
しぃはどうしてこんなに挑戦的なのだろう。ジョルジュを挑発しようとしてるとしか思えない。
いつジョルジュが切れるかわからない。僕はハラハラしていた。
しかし、次にジョルジュが言った言葉は意外な言葉だった。
- 87: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 22:57:52.66 ID:JUWRz7gi0
( ゚∀゚) 「二人が一緒にやってくれるなら、やる」
(´・ω・`;) 「え?」
予想外です。本当に(ryとか言ってる場合じゃない。
さすがにしぃは嫌で――
(*゚ー゚) 「いいよ。むしろ私もやりたい」
またまた予想外です。本当に(ryって二人とも僕のほうを見てるじゃないか。
どうしよう。僕は一旦相手の出方を見てみることにした。
(´・ω・`;) 「僕バンドの楽器なんてできないよ」
(*゚ー゚) 「私もできないよ」
( ゚∀゚) 「俺だって」
問題解決。そっこう論破されてしまいました。
僕だって本当はやりたい。けど、塾やピアノはどうすればいい? 父になんていえばいい?
僕って本当に自分でなにも決められないんだ。情けない。
- 89: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:00:00.78 ID:JUWRz7gi0
( ゚∀゚) 「情けないと思うなら、変わるチャンスだと思えよ」
(´・ω・`;) 「え?」
ジョルジュに思っていることを言い当てられてドキッとした。そんな顔に出ていたのか。
だがそれよりも――
(´・ω・`) (変われるチャンス……)
いつも親にしたがうことしかできない自分。
なにをやっても一生懸命になれない自分。
だけどこの二人といるときは、自由な、自然体の自分でいられた気がする。
僕は思わずフッ、と微笑んだ。
(´・ω・`) 「変われるチャンスがあるなら、喜んで受け取るよ」
(*゚ー゚) 「ふふ、決まりね」
( ゚∀゚) 「半端はなしだぞ、やるからには徹底的にな」
- 95: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:02:28.81 ID:JUWRz7gi0
三人で指きりをした。絶対中途半端にはやめない、と。
そのあと、担当を決めた。当然ジョルジュはドラム。しぃはボーカルとエレキギター。僕はベースをやることに決まった。
そして最後に迷ったのが――
(*゚ー゚) 「バンド名どうしようか」
(´・ω・`) 「うーん」
( ゚∀゚) 「俺つけたい名前あるんだけど……いい?」
意外にもジョルジュから意見がでた。
なにも決まらないよりはましだが――
(´・ω・`;) 「カカ……?」
(*゚∀゚) 「ああ! 往年のサッカーの名選手だ! なかなかセンスよくね?」
正直僕は勘弁してほしかった。
しぃもきっと嫌がるだろうな、と思い、しぃのほうを見るとなにかを書いていた。
(´・ω・`) 「しぃ、なに書いてるの?」
(*゚ー゚) 「部員勧誘用のポスター」
そこには、女の子特有のセンスの感じられるポスターがあった。
ちょうど完成したみたいで、バンド名の横には――「KAKA」
- 103: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:05:55.01 ID:JUWRz7gi0
( ゚∀゚)b 「GJ!」
(´・ω・`) (……/(^0^)\フッジサーン)
まぁでもジョルジュが立ち直ったみたいだったから、僕はそれだけで満足していた。
僕らはそのあと、馬鹿な話をして盛り上がった。それからもう遅くなっていたので、僕たちはジョルジュの家をあとにした。
最後にジョルジュの部屋を見る前に見たのは――カカの直筆サインだった。
家に帰った僕は、二日連続の親子喧嘩をした。昨日のよりもひどくて、母は泣き出してしまった。
まあ、塾とピアノをさぼった僕が悪いのかもしれないけどね、でも僕はいつまでも親のいいなりじゃないんだ。明日からももちろんそうだ。
(´・ω・`) 「変われるチャンス、か」
僕はベッドに入ってからもずっとジョルジュの言葉について考えていた。そしてそのまま眠りに落ちてしまった。
その晩、僕はしぃと楽しく話している夢を見た。もちろん起きたら忘れてしまうけどね。
- 106: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:08:15.70 ID:JUWRz7gi0
次の日の放課後、僕たち三人は空き教室に集まった。
「KAKA」一番最初のミーティングだ。
話題はとかく新入部員についてだった。しぃはポスターを貼ったので、絶対来ると言い張り、ジョルジュは絶対来ないと言う。僕はそれを見守る。
二人とも本気で口論しているわけではない、この雰囲気を楽しんでいるのだ。
( ゚∀゚) 「絶対こない!」
(*゚ー゚) 「くるから〜」
(´・ω・`) 「じゃぁうまい棒100本かけてみればいいじゃないか」
( ゚∀゚) (*゚ー゚) 「のった!!!」
川 ゚ -゚) 「じゃぁそこの彼はうまい棒100本だな」
( ゚∀゚) 「なんでだよ! まだきてない……」
目の前にはナイスバディの黒髪美人。ジョルジュはそのまま卒倒してしまった。
- 110: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:10:34.70 ID:JUWRz7gi0
名前は須名クー。二年生の合唱部部長。「KAKA」のポスターを見てきたそうだ。
ジョルジュはさきほどからクーさんの質問役をかってでている。ジョルジュの態度からは下心丸見えだっていうのに。
( ゚∀゚) 「二年で部長なんてすごいですね〜」
川 ゚ -゚) 「部員が一人しかいなかったからな」
( ゚∀゚) 「どうして「KAKA」に入ろうと思ったんですか? いや、大歓迎ですけど」
川 ゚ -゚) 「廃部になった」
そこでジョルジュの質問がぴたっと止まった。
恐らく、廃部になったサッカー部のことを思い出したのだろう。
僕にはジョルジュが悲しそうな顔をしているように見えた。恐らくクーさんにもそう見えたのだろう。クーさんが逆に質問した
川 ゚ -゚) 「君も廃部の煽りを受けたのか」
( ゚∀゚) 「……はい」
川 ゚ ー゚) 「なら安心した。私が廃部になったから来た、と思われたくなかったのでな。本気だということを君なら理解してくれるだろう」
( ゚∀゚) 「……はい!」
僕はなぜか急にこの二人がお似合いのカップルに見えてしまった。きっと目の錯覚だろう。
しぃもニコニコしている。仲間が増えて嬉しいんだろう。
- 115: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:12:40.68 ID:JUWRz7gi0
それから四人で馬鹿な話で盛り上がった。クーさんは気さくな人で、どんな話題にもついてきた。そして冷静なツッコミを入れる。
クーさんが加わることによってさらに、「KAKA」は盛り上がりをみせていた。
(´・ω・`) 「ところで、担当どうするの?」
( ゚∀゚) 「あー、そういえば決めなおさなくちゃな」
(*゚ー゚) 「クーさんはもちろんボーカル頼みますよ! 元合唱部の名にかけて!」
川 ゚ -゚) 「わかった」
( ゚∀゚) 「じゃあしぃはどうする?」
(*゚ー゚) 「私はギターだけでいいよー」
(´・ω・`) 「じゃあ、クーさんがボーカル、しぃがギター、ジョルジュがドラム、僕がベースでいいね」
もちろん僕は、さんせーと返ってくるのだと思っていた。
しかし、一人から予想外の答えが返ってきた。
- 116: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:14:45.94 ID:JUWRz7gi0
川 ゚ -゚) 「ちょっと待った。ショボンがベース? 君はピアノに決まってるだろう」
(´・ω・`;) 「え?」
川 ゚ -゚) 「関東コンクールの君の演奏聞いていたぞ。とても素晴らしいものだった。あれだけのものを生かさないなんてもったいないじゃないか」
まさか関東コンクールをクーさんが聞きに来ていたなんて。たしかにあの時は会心の演奏ができたときだった。
しかし、バンドにピアノはどうかと思う。僕がそのことをみんなに伝えると、見事に反論された。
( ゚∀゚) 「いいんじゃねーの?型にとらわれないところとか、俺たちらしくて」
(*゚ー゚) 「ピアノがあるバンドなんて素敵じゃない」
川 ゚ -゚) 「ピアノ大好き」
かくして僕の担当はピアノとなってしまった。正直ピアノは弾きたくなかったが、周りの雰囲気を読むこととしよう。
結局僕らは今週の土曜日に初練習の約束をした。クーさんとメルアドを交換したとき、ジョルジュがすごい喜んでいたなぁ。
- 122: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:17:10.24 ID:JUWRz7gi0
僕は土曜日が待ち遠しくて仕方がなかった。
正直ピアノは嫌だったけど、みんなと会えると思えば問題ない。
土曜日まで僕は塾だけはさぼり続けた。ピアノは腕がなまらないようにもレッスンだけは受けた。
父は、そんな僕を見てなにも言わなくなっていた。恐らく呆れてしまったのだろう。だが、僕にとってもそっちのほうが好都合だった。
そして、とうとう当日がやってきた。
僕は制服をきて、約束の時間の十分前に着くようにでる。
(´・ω・`) (十分しか違わないけど、これは僕の意思なんだ)
そしてきっかり十分前に学校に到着。目指すは三階の音楽室。
音楽室の前まで来ると、僕は深呼吸をした。これから僕の新しい生活がはじまるんだ――僕は思い切り音楽室の防音ドアを押した
(´・ω・`) 「やあ、みんな。集まってるかい」
思い切りドアを押してもローテンションの僕。朝は低血圧なんだ。
音楽室を見渡すと、ちゃんと全員きていた。いつ揃えたのかジョルジュとしぃは楽器までもっている。
- 125: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:19:15.33 ID:JUWRz7gi0
川 ゚ -゚) 「やあ」
(*゚ー゚) 「おはよー!楽器、バイト代はたいて買っちゃったー」
( ゚∀゚) 「やっと来たな!俺もローンで買っちゃったぜ!じゃあさっそく始めようぜ!」
みんなのハイテンションぶりを見て、僕も思わず嬉しくなる。やっぱり来て良かった。
僕はみんなに促されるまま、ピアノの前に座らせられる。鍵盤を少し叩いてみた。心地よい音がする。ちゃんと調律はしてあるようだ。
センターにボーカルのクーさん、その右にギターのしぃ、クーさんの左にピアノの僕、みんなの後ろにドラムのジョルジュ。
このフォーメーションで僕らの記念すべき初練習は行われた。
(; ゚∀゚) 「……」
(*゚ー゚) 「……」
(´・ω・`;) 「……」
川 ゚ -゚) 「これはひどい」
- 129: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:21:26.49 ID:JUWRz7gi0
クーさんの一言にジョルジュとしぃが、がっくりと項垂れた。
クーさんの歌唱力は半端なく、流石合唱部と言わざるをえなかった。
僕のピアノも一応全国コンクールに出ている。クーさんにひけをとらないつもりだ。
だが、ジョルジュとしぃは素人同然の実力。
「かえるの歌(アレンジVer.)」で合わせて演奏してみたが、かえるが踏み潰されたような演奏になってしまった。
結局そのあとは、各自それぞれ独学で練習。
僕はクーさんと何回か合わせてみたけど、彼女の流麗な声には何度も聞きほれてしまうほどだった。
かくして第一回目の練習は、予想通り期待はずれの結果となってしまった。
- 134: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:23:30.73 ID:JUWRz7gi0
それから夏休みに向けて、僕らは毎日放課後も土日も集まった。
僕はそのために、最近顔色の良くない父に、塾とピアノのレッスンをやめることを伝えた。
予想に反して、父は「ああ、そうか」と一言言っただけだった。
夏休みに入る直前になると、ジョルジュもしぃもそれなりに上達してきていた。
期末テスト期間を除くと、四人で毎日練習していたから、そりゃ上手くもなるだろう。
なんとかバンドとして形をなしてきたところで、また新たな問題に直面した。
川 ゚ -゚) 「オリジナル曲を作りたい」
( ゚∀゚) 「そりゃまたどうしてですか?」
川 ゚ -゚) 「既存の邦楽では、ショボンのピアノを生かすことはできない」
(´・ω・`) 「……」
たしかに今の邦楽バンドでピアノが主体で扱われているものは少ない。
そのためにオリジナル曲を作るのは賛成だった。しかし、誰が作曲・作詞をするのだろうか。僕にはそんな才能はない。
- 138: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:25:40.10 ID:JUWRz7gi0
( ゚∀゚) 「作詞はかわりばんこでやろーぜー。別に作る曲は一曲じゃないだろうし」
これには僕をはじめ、全員が賛成した。すると残る問題は作曲だけ。
これには意外な人物が立候補した。
( ゚∀゚) 「俺やってもいい?」
(*゚ー゚) 「できるの?」
( ゚∀゚) 「ああ、なんとなくできそうな気がする」
川 ゚ -゚) 「じゃあ頼もうか」
(´・ω・`;) (そんな適当でいいのか……)
ジョルジュは7月中にオリジナル曲を作る、と宣言した。
そして作詞を担当するのは、しぃになった。ジョルジュは不安要素満載だなぁ。
その日の練習は結局、作詞と作曲の時間にあてられることになった。暇な僕は一人でずっとピアノを弾いてた。そりゃもう飽きるくらいに。
- 139: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:27:46.72 ID:JUWRz7gi0
結局、夏休みに入るまでに曲は完成しなかった。そりゃ作詞や作曲は半端なく難しい。かといって半端なものは扱いたくない。
終業式を終えたしぃとジョルジュと僕は、音楽室に集まって雑談をしていた。
(*゚ー゚) 「テストどうだったー?」
(; ゚∀゚) 「十教科で、420点……。下から二番目でした」
(´・ω・`) 「880点くらいかな。ぎりぎり十番目に入れたよ」
( ゚∀゚) 「てめー! なんでそんな頭良いんだよ!」
(´・ω・`) 「これでも落ちたんだけどね。しぃはどうだった?」
(*゚ー゚) 「380点」
(; ゚∀゚) 「まぁ、そういう時もあるよ……」
(*゚ー゚) 「なによー! ジョルジュとあんま変わらないでしょー!」
(´・ω・`) 「やれやれ、五十歩百歩だ…あぶっ!」
しぃの鉄拳が僕の腹にめりこんだところで、音楽室のドアが勢いよくあけられた。
そこには、息を切らせて小さな紙切れをもっているクーさんだった。
- 142: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/19(火) 23:30:29.62 ID:JUWRz7gi0
( ゚∀゚) 「お、クーさんじゃないですか〜。遅いですよ〜」
(*゚ー゚) 「その紙切れ、なんですか??」
僕は、クーさんの尋常じゃない様子になにか胸騒ぎを感じた。
まさか、また廃部? いや、部活動申請はしていない。なら、なんなんだろう。
僕らがクーさんに注目していると、クーさんはゆっくりと口を開いた。
川 ゚ -゚) 「残念なお知らせがある」
(´・ω・`;) (; ゚∀゚) 「!?」
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