(´・ω・`)ショボンが悲しい夏を振りかえるようです
- 4: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:21:27.51 ID:DXpNuSU90
【絶望編】
祭りが終わってからの三日間、「KAKA」のメンバーは休養をとることにした。
それは僕とジョルジュが提案したんだけど、もちろん下心あってのことだ。
この三日間を使って――それぞれの彼女とデートをするのだ。
そんなことを知ってか知らずか、クーさんとしぃも賛成してくれた。
久しぶりの休みを手に入れた僕は、初日の休みをゆっくりと休養に使い、二日目にしぃと映画を見に行くことにした。しぃとの初デートだ。
(´・ω・`) 「やば、予定よりかなり早く来ちゃった」
僕としぃはVIP駅で10時に待ち合わせの約束をしていた。
しかし、僕の腕時計を見ると、まだ9時丁度であった。
(´・ω・`) 「なんかすることないかな……」
- 7: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:23:30.51 ID:DXpNuSU90
僕は適当に周りを見渡す。
駅前だけあって色々なものがある。コンビニ、本屋、カラオケ。
(´・ω・`) (ああ、そういえば)
VIP駅前には名物があることを思い出した。
それはホームレスによる露店街。通称「お宝通り」
「お宝通り」と呼ばれるようになったのは、その名の通りお宝がたくさんあるからだ。
ホームレスのおじさん達がどこから拾ってきたかわからないようなものを、格安で売ってくれる。
その中には、腕時計やアクセサリー、中にはどこから手に入れたのか、ブランドもののコーナーもあった。
そのお買い得な商品と、露店を開いているおじさん達のきさくで明るい性格。「お宝通り」が人気スポットになるのも当然のことだった。
(´・ω・`) (警察からはさいさん注意されてるみたいだけどね……ん?)
- 9: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:25:34.38 ID:DXpNuSU90
パッと「お宝通り」を見渡したときに、まずその店が目に入った。
周りの露店と比べると、一際小さく、みすぼらしく見える店の構え。そして、その店にマッチしている、哀愁の漂っているお爺さん。そしてその横に座っている少年。
僕は自然とその店に引き寄せられていった。
店の前まで来て気づいたのだが、この店には商品が並んでいない。
お爺さんの前にあるダンボール箱の上は、少し色褪せているだけだった。
(´・ω・`) 「すいません、ここは何のお店ですか?」
/ ,' 3 「……」
反応がない。ただの屍のようだ。
('A`;) 「あー、お兄さん。そのジジィいつも寝てるから気にしないで」
(´・ω・`;) (死んでるわけじゃなかったのね)
それにしても、僕に話しかけてきたこの少年。どう見ても中学生くらいである。
中学生がホームレスのおじさんの手伝いをしている店。なんとも怪しい。
ここには近づかないほうがいいかな、と思い、僕が店から離れようとした、その時――
- 12: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:27:45.74 ID:DXpNuSU90
/ ,' 3 「待たれい。そこの兄さん」
今まで寝ていたお爺さんが突然立ち上がった。
僕はいきなりの展開に驚いたが、お手伝いの少年のほうが更に驚いている様子だった。それほどこのお爺さんが起きることは珍しいのだろうか。
(´・ω・`;) 「えーと、なんでしょうか?」
/ ,' 3 「なーに、この店に興味があってきたんだろう? 今すぐ商品を出すからちょっと待ってなさい」
お爺さんはそう言うと、カッターを取り出し、ダンボール箱にゆっくりと縦に筋をつけていった。
そしてゆっくりと開けられたダンボール箱の中には―― 一つの指輪が入っていた。
/ ,' 3 「どうじゃ。これは年代物の指輪じゃぞい。本物のルビーを使っておる」
('A`;) 「おいおい、ジジィ。それは――」
/ ,' 3 「黙れ小僧。どうじゃ、そこの少年。三千円で売ってやろう」
(´・ω・`;) 「……
- 14: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:29:51.79 ID:DXpNuSU90
年代物とはいえ、なかなか綺麗な指輪だった。
本物のルビーを使っているのに、三千円。しぃに渡すのに最適じゃないか。
しかし、隣りにいる少年の態度からして、なにか裏がありそうだ。
/ ,' 3 「少年、わしはこれを気に入ったものにしか売らぬ。もちろん裏はあるのだが、今買わなきゃこれは一生手に入らないと思いなさい」
(´・ω・`;) (やっぱ裏あるんだ)
そりゃあおいしい話には、絶対裏がある。
でも、お爺さんの人柄を見ていると、決して僕にそれを押し付けようとしているのではなく、切実に僕に譲ろうとしていると感じられた。
その後、五分間僕は考えた。そして、散々迷ったあげく――僕は財布から野口英世を三人分取り出し、お爺さんに渡した。
/ ,' 3 「毎度ありじゃ、少年」
(´・ω・`) 「いえ、こちらこそ申し訳ないです」
('A`) 「あーあ。知らねえぞ、ジジィ」
- 17: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:32:26.20 ID:DXpNuSU90
お爺さんは野口英世を確認すると、僕に指輪を手渡す。
その指輪は年代物、と聞いたが全くすり減ってもいなく、新品に近い状態だった。恐らく良く手入れしてあったのだろう。
僕は指輪をポケットにしまうと、お爺さんに一礼して立ち去った。
去り際に、お爺さんがなにか呟いたような気がしたが、それは通りの蝉騒に掻き消され、聞き取ることができなかった。
いい買い物をしたな、と僕は上機嫌になりながら再び待ち合わせ場所へと向かう。
「お宝通り」はVIP駅からそう離れてはいない。僕は数分と経たないうちにVIP駅に着いたのだが――そこには既にしぃが待っていた。
(´・ω・`;) 「早いね、しぃ」
(*゚ー゚) 「あ、ショボン! ごめんね〜、ワクワクして早く来ちゃった」
僕はしぃの言葉に思わず笑みがこぼれてしまった。
僕とのデートを楽しみにしてくれていたなんて――すごく嬉しい。まあ、僕も同じくらい楽しみにしてたんだけど。
- 19: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:34:40.27 ID:DXpNuSU90
(´・ω・`) 「じゃあ行こうか」
(*゚ー゚) 「うん!」
僕達が行く映画館は隣町にある。電車にすると、一駅分の距離だ。
僕は130円の切符を二枚買い、一枚をしぃに手渡す。ホームに出ると丁度良く電車が来ていたので、僕らはそれに乗った。
幸い、車内は混んでいなかったので、僕としぃは座席へ座ることができた。
(*゚ー゚) 「今日見にいく映画、なんて名前だっけ〜?」
(´・ω・`) 「ああ、【世界の中心でぬるぽと叫ぶ】だよ」
(*゚ー゚) 「ガッ!」
(´・ω・`;) 「どうしたの?」
(;゚ー゚) 「あれ、私どうしたんだろ……」
- 20: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:36:55.01 ID:DXpNuSU90
しぃとの会話を楽しんでいるうちに、電車はすぐに目的の駅に着いてしまった。
僕としぃは電車から降りて、改札を出る。
僕が歩こうと思った瞬間、しぃが立ち止まった。
(´・ω・`) 「ん? どうしたの?」
(*゚ー゚) 「今日は手、握ってくれないの?」
(´・ω・`*) 「あ、ごめん。気づかなかったよ」
僕は慌ててしぃの手を握る。
その手は少しの間震えていたが、すぐにその震えは止まった。
- 24: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:39:56.06 ID:DXpNuSU90
映画館は駅から徒歩十分のところにあるので、僕としぃはその間楽しく会話をする。
ライブのこと、学校のこと、色々話した。でも、どの話題も――必ず僕達四人に関わることだった。
それにしても、しぃが、クーさんとジョルジュが付き合ってるのを、知らなかったのは意外だったなあ。
僕達が映画館に近づくにつれ、段々人が増えていくような気がした。
そして、映画館に着いたときには、それが勘違いじゃないことがわかった。
映画館の前にはすごい行列ができていたのだ。そして、その人たちはみんな【世界の中心でぬるぽと叫ぶ】のパンフレットを持っていた。
(*゚ー゚) 「多いね……」
(´・ω・`;) 「こんな人気のある映画だったなんて……」
完全に予想外だ。
11時上演の映画だけど、もしかしたらこの回は見れないかもしれない。
- 27: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:42:06.05 ID:DXpNuSU90
(´・ω・`) 「しぃ、どうする? 他の映画を見ようか?」
(*゚ー゚) 「うん、そーだねー。他のやつ探してみようかー」
僕としぃは映画館に入り、なんの映画がやっているのか確認する。
しかしどれもあと一、二時間は待つものばかりで―― いや、一つだけあった。
(´・ω・`) 「もう、これでいいよね? ってあと一分で始まっちゃう!」
(*゚ー゚) 「え!? じゃあこれ観ようか!」
(´・ω・`) 「すいません! 大人二枚ください!」
僕は受け付けの女の人から、チケットを二枚もらう。
そしてしぃの手を引いて、上映されているロビーへ向かった。
ロビーに入ると、そこには数人の人がいるだけで、全く人気の無い映画であることが伺えた。
僕としぃは一番後ろの席に座る。そのとき丁度上演開始のブザーが鳴った。
あ、この映画は――
- 29: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:44:11.65 ID:DXpNuSU90
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
\(^0^)/ 今オワタが会いに逝くよー (凍宝)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(*゚ー゚) 「……」
(´・ω・`;) 「……」
(*゚ー゚) 「……」
(´・ω・`;) 「ごめん」
どうやら僕達の初デートは出だしで躓いてしまったようだった。
映画館から出たあとのことが怖くてたまらないよ。そうだ、この映画が終わったらしぃに土下座しよう。
不貞腐れてるしぃの横で、僕はガックリと項垂れた。
- 33: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:46:57.33 ID:DXpNuSU90
映画を観終わった僕らは、近くの喫茶店に入った。
僕はちょっと格好つけてアイスコーヒーを、しぃは女の子らしくアイスミルクティーを注文した。
そして僕らが話す話題は――
(*゚ー゚) 「すっごい面白かったね!!!」
(´・ω・`*) 「うん! オワタが谷に落ちるところなんかすごいハラハラした!」
(*゚ー゚) 「そうそう! でもそのときに、あの人が――あ、ミルクティー来た」
注文の品がきてからも、僕らは「今オワタが会いに逝くよー」の話題で盛り上がった。
あの映画、予想以上に僕らのツボにはまったのだ。高クオリティーのアニメーションに、オワタのテンションと作品のストーリーのギャップがなかなか面白い。
気づけば語り始めて三時間が経っていた。
- 36: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:49:05.29 ID:DXpNuSU90
(´・ω・`) 「あー、そろそろ出よう。次どこ行こうか?」
(*゚ー゚) 「あ……。ごめん、私このあとちょっと用事があるんだ」
(´・ω・`;) 「え? あ、そうなんだ。わかったよ」
(*゚ー゚) 「本当にごめんね。また今度絶対遊ぼうね」
普通彼氏とのデートより優先するものがあるだろうか、と少し疑問を持ったが、僕は素直にしぃの言葉を受け入れることにした。
しぃが先に席をたち、僕が二人分のお会計を済ませる。
そして、二人一緒に店を出たところで――僕はポケットの中に入っている指輪を思い出した。
(´・ω・`) (今渡さなくちゃいけないな……)
- 38: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:51:18.87 ID:DXpNuSU90
そう思えども、手はなかなかポケットへ向かわない。
喫茶店にいるときの僕なら躊躇なく指輪を渡せただろう。
しかし、デートの途中でしぃが帰ってしまうと言い出してから、指輪を受け取ってもらえないかもしれないと恐怖心を抱くようになってしまった。
(*゚ー゚) 「それじゃあ、そろそろ私行くね」
(´・ω・`) 「あ、うん」
しぃはそう言うと、僕に手を振りながら背をむけ、駅に向かって歩き始めた。
(´・ω・`;) (どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう。ああ、もう――)
僕は考えることをやめて、しぃを全速力で追いかけた。
しぃとの距離はけっこう離れていて、長距離走の苦手な僕にとってはなかなか厳しかったが、なんとかしぃに追いつくことができた。
(´・ω・`) 「しぃ!」
(*゚ー゚) 「!?」
- 42: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:53:22.97 ID:DXpNuSU90
突然呼び止められたしぃは驚いた様子を見せて、ゆっくりと振り返った。
振り返ったしぃの表情は、少し凍りついているように見えた。
(´・ω・`;) (やっぱり呼び止めないほうが良かったかな)
(*゚ー゚) 「ショボン、どうしたの?」
(´・ω・`;) 「え、いやーあのー」
(*゚ー゚) 「なに?」
どうしよう。ああ、僕ってやっぱり意気地がないなぁ。もうどうにでもなれ。
僕は、手を乱暴にポケットに突っ込むと――指輪をしぃの前に差し出した。
- 44: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:55:29.41 ID:DXpNuSU90
(*゚ー゚) 「……」
(´・ω・`;) 「あの、これ指輪……しぃに……」
どうもイマイチ反応が薄い。やっぱりしぃは僕のこと嫌いなんじゃないのかな。
そう思った瞬間――しぃが僕に抱きついてきた。
(´・ω・`;) 「え、え、え。いきなりどうしたの?」
(*゚ー゚) 「ありがとう! 本当に嬉しい!」
そう言ったしぃの目はうっすらと滲んでいた。
僕はそのしぃの表情を見て、ああやっぱり渡して良かったなあ、と思えた。
街中だと言うのに、抱き合っている僕ら。周りで冷やかしてくる人もいるけど、僕は大丈夫だった。
だって、僕らはこの指輪で繋がっているから。この指輪は僕らの愛を具象化したものなんだ。
この時の僕はすごい幸せな気分だった。
- 46: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:57:40.01 ID:DXpNuSU90
三日間の休養期間を終えた僕は、「KAKA」の練習にいくために学校へ向かった。
久しぶりに四人で会えると思うと、ついワクワクしてしまい、三十分前に音楽室に着いてしまった。
僕はゆっくりと音楽室の扉を開ける。
(´・ω・`) 「やっぱ誰もいないよね……」
僕はボーっと昨日のことを思い出していた。
あの後、しぃは左手の薬指に指輪をはめていた。そして、何度も「ありがとう」って言ってたなぁ。
しばらく一人で浮かれていると、いきなり音楽室の扉が開かれた。
(´・ω・`;) 「わっ!」
川; ゚ -゚) 「どうした、ショボン」
(´・ω・`) 「ああ、いやなんでもないです。あれ、ジョルジュと一緒じゃないんですか」
川 ゚ -゚) 「別に一緒に来る必要はないだろう」
(´・ω・`) 「ふーん」
- 47: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 19:59:50.18 ID:DXpNuSU90
久しぶりに見るクーさんは、どこか疲れているように見えた。
でもそれも錯覚だと思うことにした。だって、楽譜を前にしたクーさんの表情はやっぱり生き生きとしているから。
それから十分ほど経って、しぃもやってきた。
(*゚ー゚) 「クーさん、ショボン、おはよ〜」
川 ゚ -゚) 「うむ、お早う」
(´・ω・`) 「おはよー」
僕はしぃの左手をチラッと見る。
左手の薬指には、ちゃんと指輪がはめてあったので、僕はホッとした。
それから三人で話をしながらジョルジュを待ったが、三十分待ってもジョルジュは音楽室に姿を見せなかった。
クーさんとしぃに聞いても、二人は「知らない」の一点張り。
仕方がないので、三人で先に練習を始めることにした。
- 49: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 20:01:59.63 ID:DXpNuSU90
(*゚ー゚) 「う〜ん」
(´・ω・`) 「やっぱひさしぶりだからね」
川 ゚ -゚) 「……」
今僕らが演奏し終えたのは、もちろん僕らのオリジナル曲だ。
だが、久しぶりにやったからか、ドラムのジョルジュがいないせいか、イマイチしっくりこなかった。
(*゚ー゚) 「もう一回、やってみようか」
(´・ω・`) 「ああ」
その後何回も同じ曲を繰り返す。
しかし、やっぱりうまくいかない。段々と悪くなっていく感じだ。
どうもこのままだと悪循環になりそうだし、ジョルジュも来る様子はないので、今日の練習は早めに切り上げることにした。
- 53: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 20:05:04.29 ID:DXpNuSU90
(´・ω・`) 「僕、このあとジョルジュの家に寄ってみるよ。クーさんとしぃはどうする?」
(*゚ー゚) 「あ〜私はいいや。先に帰るね」
川 ゚ -゚) 「私もちょっと行くところがある。パスだ」
どうも盛り上がらない雰囲気のまま、しぃとクーさんと僕は音楽室を後にした。
校門を出ると、しぃとクーさんは駅の方向へ。ジョルジュの家は逆方向なので、僕達はここで別れることにした。
僕は、前回しぃに教えてもらった道を辿っていく。
記憶力はいいほうなので、一度も迷わずジョルジュの家まで行くことができた。
僕はジョルジュの家の前に立つと、早速インターホンを押した。
- 54: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 20:07:05.41 ID:DXpNuSU90
「はい」
(´・ω・`) 「ジョルジュ君の友達のショボンです」
「……ショボンか、どうした」
(´・ω・`) 「なんだ、ジョルジュか。今日休んだけどどうしたのかな、と思って」
「とりあえずあがれよ。今家には誰もいないからさ。玄関あいてるから二階まであがってきて」
ジョルジュがそう言うと、インターホンは切れてしまった。
少し気が引けたが、僕はジョルジュの家のドアを開けることにした。
(´・ω・`) 「お邪魔しま〜す」
当然返事は返ってくるわけがないが、言わないと申し訳ないような気がした。
とりあえず、脱いだ靴を整え、二階への階段を昇る。階段を昇り終えると、そこにはジョルジュの部屋がある。
ドアが閉まっていたので、コンコン、とノックすると、「入れよ」とジョルジュの声が聞こえた。僕は、ドアの取っ手を掴み、ゆっくりと引く。
- 58: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 20:10:21.29 ID:DXpNuSU90
以前ジョルジュの部屋はサッカーで溢れていた。今のジョルジュの部屋はどうなっているんだろう。
僕がドアを開け、見た先にあったのは――あらゆるものが散乱した部屋だった。
破られた紙、皴になってしまっている服、真っ二つに割られたCD。そして、信じられないことに――半分焼け焦げてしまっているカカの直筆サイン。
ジョルジュの部屋は嵐が過ぎ去ったあとのような光景で、しかし、それらは人為的になされたことがよくわかる。
(´・ω・`;) 「おいおい、どうしたんだこの有様は」
( ∀ ) 「……」
返事をしないジョルジュ。なんだか異様な雰囲気がする。
今ジョルジュを下手に刺激すると切れてしまいそうで――
( ∀ ) 「怖がるなよ……」
(´・ω・`;) 「わ! い、いきなり人の感情を読んだりしないでくれよ」
( ∀ ) 「勝手に流れ込んでくるんだから仕方がないだろ……」
また会話が途切れてしまう。
しかし、ジョルジュの身になにかが起こったことは絶対である。
ずっと黙ってても仕方がないので、僕は自分から切り出すことにした。
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