(´・ω・`)ショボンが悲しい夏を振りかえるようです

278: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 22:40:30.15 ID:DXpNuSU90

エピローグ

今年の夏もやっぱり暑い。
やっぱり夏は好きになれそうにないな。

「そのあと僕とお母さんは結婚したんだ。なんせ翌年の五月につーが生まれてしまったからね。大変だったよ、高校生の父と母になったんだから」

そう言ってつーを見ると、既にもうスヤスヤと眠っていた。
ずっと一人で思い出を語っていたのか、と思うと、ついつい苦笑してしまう。
じゃあそのついでに独り言でもさせてもらおうかな。



283: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 22:42:49.21 ID:DXpNuSU90

なあ、ジョルジュ。聞こえるか。
ジョルジュと一緒に過ごした夏は、希望で溢れていた。
ジョルジュがいなくなった後の夏は、絶望が渦巻いていた。
その後数ヶ月の間は、特になにもなかったよ。希望も絶望も。
でも、僕は新たな希望を見つけたんだ。それは――僕としぃとの間に生まれた可愛い娘、つー。
つーがいれば僕は一生頑張れるような気がするよ。
そしたら、ジョルジュとの約束は守れそうだ。あの曲の最後のように、希望をもって生きぬける。
だから、ジョルジュ。お前はゆっくりと休んでくれ。休むのが飽きたなら――また一緒にバンドを組もう。
そのときは、僕がそっちへ行くまで待っててくれないか。いつも申し訳ないな。
最後に――本当にありがとう、ジョルジュ。



288: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 22:44:44.68 ID:DXpNuSU90

僕はゆっくりと空を見上げる。
そこには、雲ひとつない夏の空が広がっていた。

「夏も意外と悪くないかな」

そう僕が呟いた瞬間、隣の部屋からしぃがやってきた。

「あら、今なんて言ったの?」

「いや、なんでもないよ」

僕らは静かに、笑った。



292: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 22:45:58.29 ID:DXpNuSU90

それにしてもこんな昔話を実の娘にするなんて、ひどいお父さんにもほどがあるな。
いや、待てよ。そもそも、つーが「悲しいから?」なんて言い出すからいけない――え?

僕は昔、こんな感じの体験をしたことがあるぞ。
そう、あれは……ジョルジュ。ジョルジュと一緒にいたときのことだ。
バンドを組むのに踏み切れない僕に対して、ジョルジュが僕の感情を読み取った。
それと同じ感覚だ。

僕は少し考え込む。
隣でしぃが「どうしたの?」と聞いてくるが、無視をする。

僕が適当な理由をつけたのに、つーはそれを見破った。
僕はそれを子供の直感だと思ったが、まさか――

僕は急いで書斎からジョルジュの遺書を取り出す。
それを何回も読み返す……あった。



299: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 22:48:03.59 ID:DXpNuSU90

「しぃには本当に申し訳ないことをしてしまいました。
本当は何回謝っても足らないくらいなのですが、この書面をもってもう一度謝罪します。」


ここだ。
僕はこれを、あの音楽室での出来事だと思っていた。しぃが倒れてしまったときの。
だが、それなら僕とクーさんも同じことをされたから、しぃだけに謝るのはおかしい。
まさか、本当に申し訳ないことっていうのは――

僕はつーを見る。すやすやと寝息を立てている。可愛い寝顔だ。
しかし、よく見ると僕に似ているところは全くない。
パッチリした目と、赤く染まった頬は、しぃによく似ている。そして、いつも元気な声を発するこの口は――



314: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 22:50:21.51 ID:DXpNuSU90

僕はしぃを見る。しぃは僕を見て微笑んでいる。
そして、そのしぃの左手の薬指にはあの指輪がはめてある。
なあ、しぃ。
その指輪の裏にはなんて彫ってあるんだっけ?
なんでつーは俺に全く似てないんだろうな?
なんでつーには――ジョルジュと同じ力があるんだろうな?



322: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 22:52:37.37 ID:DXpNuSU90

ジョルジュ、最後にもう一度だけ独り言を言わせてくれ。
あの曲には、続きがあったんだな。驚いたよ。
希望の後に絶望。そして、新たな希望。ここまでだと思っていたよ。
まさか、その続きに――新たな絶望があったなんて。
なあ、ジョルジュ。やっぱりお前が約束を破ったんだな。
だって、お前の力――しっかり受け継がれているぞ。



334: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 22:55:00.60 ID:DXpNuSU90

僕は再びしぃを見る。そして寝ているつーを見る。
僕はどうすればいいんだろうな。ああ、やっぱり夏って嫌いだよ。
だってまた新たな悲しみが生まれてしまったからね。

なあ、僕はどうすればいい?
この力はまた回りを不幸にするのかな?
いや、もうすでに――不幸になった人がいるみたいだ。

僕はゆっくり、しぃとつーを両手で包み込んだ。


(´・ω・`)ショボンが悲しい夏を振りかえるようです END



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