( ^ω^)ブーン達は絡まり合うようです

1: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/20(水) 21:16:23.29 ID:20qfLbkt0
第一話 【夢の訪れ】




太陽は空に上がる限り、この地上に暖かな光を届け続ける。
その光に照らされて地球に住む生物達は生きているのだ。
もちろん、人間も決して例外というわけではない。

しかし、人間とは目先の物事に目を取られる生き物だ。
例え恵みの光によって自らが生きていられる事を知っていようとも、人々は皆その光を避けようとする期間がある。
それが夏だ。

近すぎる太陽から生み出された光は人間を直接だけではなく、アスファルトなどをも照らして、人々を二重三重にも苦しめる。
光が生み出す熱によって確実に体力と水分を奪われていく人間は、ほとんどが光をただ避ける。

(;^ω^)「あー……暑くて死にそうだお」

そしてこの男、内藤ホライゾン。
通称ブーンもほとんどのうちの一人であった。



4: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/20(水) 21:18:49.86 ID:20qfLbkt0
(;'A`)「確かにな。ここ最近の暑さは異常だろ」

(;´・ω・`)「家に帰る前にこうしてコンビニに避難していないと命に支障があるね」

上は白のワイシャツ、下は黒の学生ズボン、そして背負っているのは学生バック。
見るからに学生な彼らは今、コンビニへ緊急避難しているところである。

他愛のない話をしていると、時間は結構進んでいるものだ。
彼らも気付けば入店してから既に数十分が経過しようとしている。

( ^ω^)「やっぱりクーラーは最高だお! もうここに住み着きたいくらいだお!」

(;´・ω・`)「それじゃ普通に迷惑でしょ。さて、そろそろ出ようか」

(#^ω^)「だが断るお。僕は絶対ここから踏み出さないんだお」

(;'A`)「アイスおごってやるから諦めろ。ただし安価なガリガリ君限定でな」

( ^ω^)「僕は ソーダちゃん!」

ドクオが発した禁断の呪文『オゴッテ・ヤール』は即座にブーンの耳へと届く。
この呪文は意志の弱い物なら大抵軽く操れるような代物なのであった。

( ^ω^)「おk! さぁ出るお!」



5: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/20(水) 21:22:05.45 ID:20qfLbkt0
自動ドアが開くと同時に、外からの熱気が彼らを包み込む。
しばらくぶりの暑さは、冷気に慣れきっていた彼らにとっては酷なものであった。

(;^ω^)「ぐはぁ! もう無理! 無理だお! レッツUターンだお!」

(;'A`)「ちょっと落ち着け。あまり暴れるとアイスの汁が俺に飛ぶ!」

(;´・ω・`)「ガリガリ君なんて特に落としやすいアイスなんだから気をつけt(;゚ω゚)「ぎゃぁぁああぁぁあああ!!」

ショボンの心配の声も虚しく、ブーンは悲しみの悲鳴を上げる。
そして、その悲鳴が示すのは――

(;゚ω゚)「アイスが……落ちたお……」

――ガリガリ君転落事故発生なのであった



7: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/20(水) 21:24:56.75 ID:20qfLbkt0
熱されたアスファルトに落ちたアイスは瞬く間に溶けていく。
段々と広がっていく既に液体となったガリガリ君を、それでもブーンは食そうとした。

(;゚ω゚)「まだ間に合うお! 三秒ルールなんだお!」

(;'A`)「無理に決まってるだろ……常考。もう蟻に集られてるじゃないか」

ブーンの物であったアイスの爽やかな青色に、黒のグラデーションが加えられていく。
既にそれが人間の食べられる物ではないことは一目瞭然であった。

(;゚ω゚)「……」

( ;ω;)ブワッ

( ;ω;)「もう死にたいお」

(;´・ω・`)「アイス程度で大袈裟だよ。ほら、気を取り直してもう帰ろう」



8: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/20(水) 21:27:20.50 ID:20qfLbkt0
ショボンの声を聞き、ブーンは泣き泣き帰路につく。
そして数分後に二人の友人と別れたブーンは、無事帰宅をすますのであった。

( ´ω`)「アイスは落とすし、やたら暑いし、今日は最悪だお。こんな日はさっさと寝るに限るお」

誰に言うでもなく一人呟き、彼は自室へと向かう。
木製のドアを開くと、そこにはいつも通りの薄汚れた憩いの場があった。

( ´ω`)「はいはい不健康不健康。……って、お?」

いつも通りの空間に、身を潜めた“異質”に気付く。
正体を探し出すため視線を様々な方向へ巡らせる。
いつも通りのドア、いつも通りの床、いつも通りの布団。

(;^ω^)「布団の傍にあるのはなんだお?」

遂に“異質”の正体を見つけ出す。
それはいつも通りの布団、の傍らに置いてある物であった。

(;^ω^)「これは人形、かお?」



9: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/20(水) 21:30:21.69 ID:20qfLbkt0
確かに手に感じる無機質な触感。
大きさ的にはちょうど床に転がっている空き缶程度。
そして何より、

(;^ω^)「僕にそっくりだお」

その人形はブーンその者を模っていた。
作られた目は虚空を望み、作られた四肢は力無く揺れている。

(;^ω^)「なんでこんな物が僕の部屋に……? なんだか気持ち悪いお」

そこで、ブーンはあることに気付く。
異質な人形の中でも一際異質な存在を。

(;^ω^)「この人形、スネ毛がモッサモサだお」

無機質な人形に似合わず、微かに揺れる大量のスネ毛。
艶やかなスネ毛はまるで麗しき少女の髪のように美しく生えているのであった。



10: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/20(水) 21:33:48.18 ID:20qfLbkt0
( ^ω^)「うはwwwwきめぇwwwwww」

人形の持つ不気味な雰囲気にあまりに不似合いな美しいスネ毛を見て、思わずブーンは吹き出してしまう。
笑いという行為は、緊張や不安を和らげる効用がある。
吹き出したブーンは、部屋に入った時からきつく張っていた緊張の糸を緩めることができた。

( ^ω^)「人形なんか放っておいて至福のお昼寝タイムに突入だお!」

元来の目的を思い出し、すぐ足下に広がっている布団に潜り込む。
そして、視点が変わると見える世界も変わってくるものだ。
枕に頭を乗せたブーンは目の前の異質をすぐさま感知した。

(;^ω^)「またなんか変なのがあるお」

彼の目は、新たに不審物を捉えてしまった。

(;^ω^)「これは封筒かお?」



11: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/20(水) 21:36:14.27 ID:20qfLbkt0
茶褐色の極々一般的なタイプの封筒。
それがブーンの枕元に置いてあった。
もちろん彼には部屋にこのような物を置いた覚えはない。

(;^ω^)「とりあえず開けてみるかお」

そっと封筒を拾い上げ、糊で貼られている部分に指を添える。
紙が千切れる独特の音をたて、封筒の口は開封された。

( ^ω^)「中身は何だお?」

開けられた口を下にして数回上下に振る。
すると、中からは三つ折りされた手紙と切符がそれぞれ一枚ずつ滑るように落ちてきた。



14: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/20(水) 21:37:56.61 ID:20qfLbkt0
茶褐色の極々一般的なタイプの封筒。
それがブーンの枕元に置いてあった。
もちろん彼には部屋にこのような物を置いた覚えはない。

(;^ω^)「とりあえず開けてみるかお」

そっと封筒を拾い上げ、糊で貼られている部分に指を添える。
紙が千切れる独特の音をたて、封筒の口は開封された。

( ^ω^)「中身は何だお?」

開けられた口を下にして数回上下に振る。
すると、中からは三つ折りされた手紙と切符がそれぞれ一枚ずつ滑るように落ちてきた。



15: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/20(水) 21:40:30.33 ID:20qfLbkt0



  ――――――――――――




  拝啓、内藤ホライゾン殿。
  突然の贈り物、さぞかし驚いたことだろう。
  とりあえずこの封筒と一緒に置いた人形を持って、明日切符に示された場所へと来て欲しい。

  僕は急に君達に一攫千金のチャンスをあげようと思ったのだよ。

  とにかく毛根は大切にな。


  追伸:人形に生えている毛は特に君に大切な毛。





       いつもあなたの心に  孫悟空




  ――――――――――――



16: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/20(水) 21:43:25.43 ID:20qfLbkt0
整った綺麗な字で、手紙には簡潔に内容が記されていた。

(;^ω^)「何だおこれ。孫悟空とかわけわからんお。とりあえず切符を見ておくかお……」

小さく呟き、封筒に手紙と同封されていた切符へと意識を向ける。
そこに記されていた言葉は確かに行き先が書いてあった。

『VIP町⇒点字区』

(;^ω^)「点字区かお。やたら遠いお……」

VIP町とはブーン達の生まれ育った土地で、発展もそこそこのこれと言った特徴もない町である。
一方、点字区とはかなり栄えている土地で、人口も多い土地だ。

人口が多いと言うことは、当然障害者の割合も増える。
そんな障害者達のために区を点字だらけにした故にこのような名前になったらしい。
確かな情報ではなく、噂程度のものだが。



17: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/20(水) 21:46:40.01 ID:20qfLbkt0
( ^ω^)「でも、一攫千金……悪くないお」

ブーンの脳裏には先程読んだ手紙の言葉が強く焼き付いている。
『一攫千金』
万人の夢といっても差し支えないであろうその言葉は、彼の心を揺するのには充分な力を持っていた。

( ^ω^)「切符を無駄にするのも勿体ないし、とりあえず行ってみるかお!」

そしてブーンは決意した。
万人の夢に乗ってみようと。
例えこの先何が待ち受けていようとも、きっと大金を獲得してみせると。

( ^ω^)「お金は大事だおー!」

彼の咆吼は閉鎖的な空間の空気を強く振動させた。



戻る第二話