( ^ω^)ブーン達は絡まり合うようです

2: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:27:56.66 ID:fXZe91o90
第三話 【導く思考】




('A`)「もう帰らね? 俺ら十分頑張ったよね? うん頑張った。よし帰ろう」

見渡す限りに人、人、人。
偉く無機質な街の壁や地には、噂と違わず点字が所狭しと設置されている。
彼らは今、点字区に降り立ったところである。

(;^ω^)「まだ目的地に着いたばかりじゃないかお。お前は一体何を頑張ったんだお」

ごねるドクオに宥めるブーン。
そんな二人の存在は人の雑踏の中でも一際浮いた存在であった。

('A`)「だってよぉ……お前の人形はまだスネ毛だから良いじゃねぇか。俺のチン毛人形の悲惨さを見てみろよ」

背中に背負っていたリュックサックの口を開け、中から人形を取り出そうとする。
口が開いたことにより差し込んできた光に照らされて、その異形は姿を現した。



4: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:30:38.71 ID:fXZe91o90
('A`)「ほら、見ろ。チン毛がモッサモサ」

彼の手によって外へと出された人形は、ブーンの場合と同じく彼自身によく似ていた。
ドクオそっくりの痩せこけた体付き、ドクオそっくりの鬱蒼とした顔立ち。
唯一、ブーンの場合と違っていたのは、

(;^ω^)「うわ、本当にチン毛モッサモサだお」

生えていた毛の位置だけであった。

('A`)「お前こんなの持って集合場所に集まれるか? 皆がチン毛ならまだしも一人だけとかまず無理だろ。だから帰ろうぜ」

(;^ω^)「そういや、集合場所って点字区のどこらへんなんだお?」

ドクオの尋常無き迫力で迫ってくる頼み事に対し、ブーンは咄嗟に話題を変えた。
彼の気持ちは痛いほどわかるが、一攫千金を前にして逃げ出すことなどブーンの中ではあってはならないことなのである。

(;'A`)「またスルーかよ。でも確かに点字区の何処に集合なんて手紙には書いていなかったな」



6: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:32:30.96 ID:fXZe91o90
点字区は、広い。
この広大な土地で主催者の「孫悟空」とやらは何処に集めるつもりであったのであろう。
それ以前に何をやるつもりなのであったのだろう。

様々な疑問が彼らの思考を着実に支配し始めてきた時、ブーンがあることに気付く。

( ^ω^)「ドクオ人形のチン毛が……風と関係無く向こう側を指しているお」

今、風は東の方向へと吹いている。
しかし、ドクオ人形のチン毛は西を指していたのだ。
まるでチン毛が彼らを導こうとしているかのように。

('A`)「本当だな。ブーン、お前の人形も出してみてくれ」

( ^ω^)「おk。わかったお」

ドクオが先程やっていたように、ブーンも人形をどこからともなく取り出す。
そして人形のスネ毛はドクオのそれと同じように、意志を持つかの如く西を指していた。

( ^ω^)「スネ毛も同じ方向を向いているお」

('A`)「よし、とりあえずは毛に道案内させてみようぜ」



10: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:35:20.00 ID:fXZe91o90
( ^ω^)「ここなのかお?」

毛に導かれ、ひたすら西に向かって数分。
遂に西を指し続けていた毛が、力を失い項垂れた。

('A`)「たぶんここだな。毛も立たなくなったし」

そこにあったのはまるで雲を貫いてしまっているのではないかと思えるほどに、天へと伸びるビル。
建築物特有の冷たさが、夏の暑さの中でも一際目立って感じられた。

(;^ω^)「しかしでかい建物だお。入りづら過ぎるお」

(;'A`)「確かにこれで場所違ってたら軽く死ねるな」

尋ね人を拒むかのような雰囲気のビルを前に、二人は入るべきか悩んでいた。



――とある張り紙を見るまでは。



12: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:37:54.91 ID:fXZe91o90
('A`)「ん? なんか張ってあるぞ」

( ^ω^)「えっと、『やぁ(´・ω・`)ようこそ、(中略)それじゃあ人形を持って入ってもらおうか』って書いてあるお」

('A`)「中略部分が長すぎて漠然としてるけど、ここで決定って事で良さそうだな。入るぞ」

やはり点字まみれの扉の前に立ち、手を掛ける。
少し力を込めて開けると、ひんやりとした冷ややかな空気が外へと逃げていった。

( ^ω^)「お、中は冷房が効いてるお! 早く入るんだお!」

('A`)「ん、結構先客がいるみたいだな」

中に入ると、そこには何人もの人々が集まっていた。
老若男女、国籍問わずに集めてきたのであろうか。
皆が皆、その手には一部極端に毛を生やした人形が握られていた。

(;^ω^)「というか、ここはビルじゃなかったのかお?」

ブーンが驚くのも仕方がない。
建物の外見はビルのようであったが、中は巨大なモニター以外は特に目を引くような物は置いていない。
ビルと言うよりもただの立方体を象った空間と言った方が正しいだろう。



13: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:39:37.93 ID:fXZe91o90
『よし、これで皆が揃ったようだね』

突如、どこからともなく声が響いた。
その場にいる人間はほとんど全員、視線を動かしその声の主を捜し出す。
しかし、彼らの労力は無駄に終わる。

(´・ω・`)『はじめまして、なのかな? 皆を招待した孫悟空です』

先程から黒に染められていたモニターが、突如一人の男を映し出して存在を主張し始めたのだから。
そして、その映し出された姿がブーン達を驚かせた。

(;^ω^)「ちょ、何やってんだお。ショb(∴゚ з゚ )「ショボンじゃないか! 何でそこに映ってるんだい?」

( ^ω^)(マイナーAAのくせに台詞被せやがって……。あわよくばあいつの首もげないかお)

(;^ω^)「え? 何で君はしょbξ゚听)ξ「なんであんたがショボンを知ってるのよ!?」

( ^ω^)(肉便器のくせに僕と被せるなお。次やったら犯すお)



15: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:42:11.41 ID:fXZe91o90
(;^ω^)「何で皆知ってるんd|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「何で皆ショボンのことを知ってるんだい?」

(#^ω^)「いい加減ウザいお! 僕にも台詞くれお! なんでどんな形か良くわからないAAにすら被せられるんだお!!」

遂に蓄積されたストレスにより、怒りを爆発させるブーン。
感情の赴くままに大声を上げる。が、これがいけなかったようだ。

(;^ω^)「……おおっ?」

ブーンの背筋に一瞬悪寒が走り、暑くもないのに嫌な汗が流れ始める。
恐る恐る先程暴言を投げ掛けた相手に目をやると、

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「メジャーなAAだからって調子のんなよ。その暴言後悔させてやっからな。暗い道歩くときは後ろに気をつけろや」




(;^ω^)どうやらブーンは怒らせてはいけない人の怒りを買ったようです



17: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:44:39.20 ID:fXZe91o90
(;´・ω・`)『そろそろ僕の話を聞いてもらっても良いかな?』

モニターに映った男が、痺れを切らして声を上げる。
その声は、とある男の怒りによって殺伐としていた空気の中を透き通るように響いていった。

(´・ω・`)『とりあえず君らの疑問は後で答えるとして、まず僕から質問。西遊記って話知ってるよね?』

( `ハ´)「朕の国家、中国の伝統的な話アルね」

口元に立派な髭を生やした、切れ目の男が口を挟む。
どうやら自国の誇れる話が出てきて思わず声が出てしまったのであろう。

(´・ω・`)『そう、その話に孫悟空っているよね。それが僕』

皆の知るショボンと同じ顔をした男が、自身の正体を話す。
とても重大なことを、とてもサラリと。



18: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:47:22.05 ID:fXZe91o90
(;`ハ´)「な……? でも西遊記は数百年もの歴史ある大昔の話アルよ。それにあれは物語で実話なワケがないアル!」

(´・ω・`)『ここの地名は何でしょう?』

自身の持つ知識で考えて、有り得ない状況に陥り焦っている男に対し、モニターの男は唐突に問いただした。

(;`ハ´)「ここは点字区アルよ」

(´・ω・`)『点字区と天竺ってなんか似てね?』

(;`ハ´)「ハッ……! で、でもここは話によると点字が多いから点字区だったはずアルよ」

(´・ω・`)『天竺に着いた後に三蔵法師が病を煩って目を悪くしちゃってね、そこら中を点字まみれにしたらそんな噂が広まったらしいね』

(;`ハ´)「なるほどアル……」

( ^ω^)「いや、『なるほどアル……』とか納得するなお」



19: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:49:59.89 ID:fXZe91o90
川 ゚ -゚)「そうだ。そんなことでは納得できんぞ」

次は黒く艶やかな長髪を揺らした日本人形のような女が口を開く。

川 ゚ -゚)「第一、お前は私達の知っているショボンに酷似している。それについてまず答えはないのか」

真っ直ぐに男を見据え、シッカリとした口調で問いただす。
答えをはぐらかすことを許さぬ意志がその瞳の奥には隠れていた。

⌒*(・∀・)*⌒「うん、近所のショボンお兄ちゃんにそっくりだ!」

続いては、幼女が人の間をかいくぐって前に出てくる。
年はまだ5つ6つあたりであろうか。
とても幼い顔には、何が楽しいのか満面の笑みが張り付いていた。



21: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:52:04.28 ID:fXZe91o90
(´・ω・`)『僕は孫悟空だよ? 髪を抜いて放つと分身ができるって話聞いたこと無い?』

⌒*(・∀・)*⌒「……?」

幼女はよくわからなかったらしいが、モニターの男の発言はその場の空気を軽く変えるほどの力を持っていた。
幼女を覗いたほぼ全員が何かに気が付いたようである。

(;´・_ゝ・`)「もしかして、あのショボンは君の分身?」

最初に口を開いたのは何処か気の弱そうな青年。
背は高いが、線が細いためやはり全体の雰囲気としても覇気が感じられない。

(´・ω・`)『そうだよ。君ら全員の分のショボンを作るのは大変だったんだから。
       もともと西遊記で抜きすぎて禿げてたのに大ダメージだよ』



23: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:54:39.15 ID:fXZe91o90
(;´・_ゝ・`)「でも、なんでそんなことを? 僕らが選ばれた選考基準だってわからないし」

(´・ω・`)『君達はね、実を言うと皆僕の子孫なんだ。ショボンを通して君達を監視していた。
      それでわかったんだ。僅かながら僕の能力も受け継いでいるってことをね』
  _
( ゚∀゚)「ってことは、俺らも髪を抜けば分身ができるのか」

筋骨隆々、漢、ガチムチ。
今度はそれらの言葉全てに当て嵌まるであろう男が言葉を発した。
彼は、体中の至る所からから熱気が出ていられるようにも感じられる。

(´・ω・`)『うーん、半分正解。君達に人形が届いたでしょ? あの人形と同じ部分に生えてる毛を使えば特別な力を発揮するよ』
  _
( ゚∀゚)「なんだよそれ。分身はしねぇのか?」

モニターの男の解答が気に食わなかったらしき男は、その太い眉をしかめて再度問う。

(´・ω・`)「まぁそのうち慣れるさ」



24: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:57:50.92 ID:fXZe91o90
('A`)「それで、どうするんだ」

(´・ω・`)『え?』

('A`)「その力を何に使うのとか、一攫千金はどうするのとか」

突然投げ掛けられたドクオの質問にモニターの男は即座に対処できなかったようである。
少し考える時間を取って、そしてゆっくりと語り始めた。

(´・ω・`)『今現在も三蔵法師の子孫はこの現世に存在している。そしてまだ僕は三蔵法師の血を守りたいと思ってるんだ。
      だけど僕はもう現役を引退したからその子孫達を守れない。だから、代わりにその子孫を守るために君らに頑張ってもらいたいんだ』




(´・ω・`)『そして守る力を誰が一番持っているのか試すために、君らにバトルロワイヤル的なことをやってもらう』



26: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 20:59:55.20 ID:fXZe91o90
(;^ω^)「それって……殺し合いをしろってことかお?」

男の声を聞いたブーンは、退いたばかりの汗を再度流して言葉を投げ掛けた。
その一言で、彼らのいる空間の空気は騒然としだす。

ξ;゚听)ξ「何それ……。有り得ないわよ……」

(;^^ω)「このご時世にそれはないホマ」

,(・)(・),「逃げ出したいのに作者都合で扉が開かないよ!」

(゜3゜)「殺し合いとか何の冗談だよwww」

( ´_ゝ`)「殺し合い? 何それ食えんの?」

(´<_` )「お前はとりあえず姿慎めよ」



28: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 21:02:03.30 ID:fXZe91o90
(´・ω・`)『別に殺し合えなんて言ってないよ。とりあえず君らにはちょっと地下へと来てもらう』

騒然とした中にも一際響く声が通った。
その声を合図に、今まで何もなかった角の方の床に線が入り、段々と陥没していく。
数分後には、それは地下へと誘う階段へと変貌していた。

( ^ω^)「近代的な技術ktkr」

('A`)「とにかく降りてみようぜ。命の危険はなさそうだし」

一段一段踏み外さぬように、慎重に足を運んでいく。
明るくもない中、転ばぬよう降りるのには苦労したが、ようやく皆が地下に降り立った。

(;^ω^)「これはなんなんだお?」

そこには、シンプルな部屋の雰囲気に似付かわしくない機械が多量に設置されていたのだ。



31: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 21:04:54.88 ID:fXZe91o90
ブーンがその機械へと歩を進める。
見た感じは、ゲームセンターのレーシングゲームと似た形をしている。
しかし、比べるとこの機械の方が数倍複雑な造りをしているようだ。

(´・ω・`)『無事降りられたようだね。じゃあその機械をセットしてもらおうか』

どこから聞こえてくるのか、先程までモニターに映っていた男の声が響いた。
それは、しっかりと皆の耳へと届けられる。

(-_-)「どうやって……セットすれば……」

小柄で気弱そうな少年が誰にも聞こえないかのような声で小さく呟く。
少年はどこか、ドクオと似たような雰囲気を持っていた。



34: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 21:07:06.57 ID:fXZe91o90
(´・ω・`)『機械の横に台座みたいのがあるでしょ? まずそこに持ってきた人形を置いてもらおうか』

小さく呟かれたはずの質問に対し、的確に応答する声。
どうやって言葉を聞き取っているのだろうと、ブーンは不思議に思った。
とにかく皆、男の言う通りに人形を設置したようである。

(´・ω・`)『それじゃあ次は機械に座って。連結されてるヘルメットみたいな物に頭を入れてもらう』

( ^ω^)(ヘルメット……これかお?)

ブーンが見つけたのはフルフェイスヘルメットのような物。
ただ一つオリジナルと違うところを挙げるとすれば、様々なコードがヘルメットと機械を繋いでいるところだけであった。
赤や青のコードに結ばれたヘルメットを、ブーンは躊躇無くかぶった。

( ^ω^)「レッツ一攫千金だお!」

そして彼の意識は次第に遠退いていく事となる。



35: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/24(日) 21:09:41.35 ID:fXZe91o90
全員がヘルメットを被った空間には、もう既に皆の意識は残っていなかった。
聞こえるのは僅かな呼吸音だけ。

(´・ω・`)「どうやら全員飛んだようだね」

部屋への放送のスイッチを切った部屋で、男が呟く。
つい先程まで地下の部屋を移していたモニターは、既に別の光景を映していた。
自然が豊かで、都会の喧騒など関係の無いようなのどかな土地と――



(;^ω^)『ここは一体何処だお!』



――そこに存在して戸惑うブーン達の姿を。



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