( ^ω^)ブーン達は絡まり合うようです
- 3: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 20:54:21.23 ID:2fXECG1x0
- 第四話 【近代の力】
(;^ω^)「ここは一体何処だお!」
穏やかな風に揺れる草花。
輝く太陽に歌う鳥達。
ここは無人島なのであろうか、人為的な建造物は何処にも見あたらない。
(;^ω^)「さっきまでビルの地下にいたはずなのに……」
確かに先程まで彼はコンクリートに囲まれた空間の中にいた。
なのに今は見知らぬ場所にいる。
(;^ω^)「えっと……地下に降りて……そしたら機械がいっぱい並んであって……」
今までの記憶を必死に整理するブーン。
そして、彼は遂にここに飛ばされた原因を思い当たる。
(;^ω^)「そういえばヘルメットに頭を入れた瞬間に眠くなって……そこからいきなり飛ばされたんだお!」
- 5: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 20:56:58.15 ID:2fXECG1x0
- (´・ω・`)『やっほー。聞こえるー?』
どこからか間延びした声が響いてくる。
それは、つい先刻までよく聞いていた声。
(´・ω・`)『どうやら皆そっちの世界に飛べたようだから説明するねー』
スピーカーのような物は見渡す限り見当たらない。
ならばこの声はどこから? 等とブーンが考えている間にも言葉は続けられる。
(´・ω・`)『きっと君達は今の自分の状況に混乱しているだろうから、まずそこから説明するよ』
(´・ω・`)『君らがいるのはバーチャル世界みたいな物なんだ。西遊記の旅の時に記憶に残った島をイメージして僕が作った物さ』
( ^ω^)「バーチャル……かお?」
(´・ω・`)『例の機械をセットした瞬間に精神だけをそっちに送らせてもらったんだ。現実世界じゃ存分に戦ってもらうほどの土地を確保するのは難しいからね』
- 6: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 20:59:19.94 ID:2fXECG1x0
- (´・ω・`)『あ、もちろん精神だけ送ったといっても殴られたり蹴られたりすれば痛いし傷つくから気をつけてね』
淡々とこれから起こるゲームの説明を続ける孫悟空。
彼の声は澄み切った空気を震えさせて、何処までも広がっていく。
(´・ω・`)『では、ここから更に踏み込んだ説明をするよ』
(´・ω・`)『皆さんには、ビルの方でも述べたように僕の能力を何らかの形で継いでいます。それで戦ってね。
僕と同じように毛を抜いて放てば、その毛特有の能力を発揮するから。ちなみに人形に生えている毛ね』
(´・ω・`)『サービスとしてゲーム中に毛が無くなって弾切れなんか起こさないように発毛剤を全員に、ゲームを面白くするためにランダムで育毛剤を三人に持たせました。
発毛剤は毛が少なくなってきたら塗ると良いよ。モッサモサになるから。育毛剤は抜いた毛に塗ると巨大化して武器へと育ちます。武器化に向き不向きな毛もあるから気をつけて』
( ^ω^)「発毛剤? そんなの何処に……って、お?」
肩から腰にかけて違和感があるのに気付く。
目を移すと、最初に映ったのはくすんだ緑色。
- 7: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:01:33.49 ID:2fXECG1x0
- (;^ω^)「いつの間に僕はバックなんて持ってたんだお?」
彼の肩に掛けられていたのは、ちょうど一般的なサイズのバック。
見覚えのない物ではあったが、肩に感じる重みがその存在を主張していた。
(´・ω・`)『荷物とか手で持ち歩くのは大変でしょ。君らの持っているバックも僕のサービスだから。
中にはさっき述べたアイテムと、それぞれの人形が入っているから確認をしておいてね』
(´・ω・`)『じゃあ次はゲームのルールね。まず、ここは肉体ではなく精神しかないから殺そうとしても殺せません。
この世界で殺すほどのダメージを与えればリアルな世界で精神崩壊を起こす可能性はあるけどね。』
(´・ω・`)『相手を負かす場合は、相手の人形を奪って毛を抜いてください。毛を抜かれた人は強制的に現実世界に引き戻されます。
時間制限は一切無し。道具は何を使ってもおk。最後の一人が決定するまで続くから心の準備はしておいてね』
(´・ω・`)『それと気になっているだろうから言っておくね。一攫千金は本当だから。じゃあ、頑張って戦い遂げてきてね。健闘を祈るよー』
- 8: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:03:33.24 ID:2fXECG1x0
- 断続的に響いてきた声が、遂に途切れた。
それは、暗にゲームの始まりを意味していた。
(;^ω^)「人形の毛を抜かれる? 何か屈辱的で嫌だお。とりあえずドクオと合流しないと……」
( ^ω^)ノ□「こんな時こそ隠し持ってきた携帯電話の出番だお! もしもし、ドクオ?」
(´・ω・`)『ちょwww携帯持ち込むなwww』
('A`)『もしもし、なんか用か?』
(´・ω・`)『お前も持ってきたのかwww』
( ^ω^)「とりあえずGPS情報送るからナビウォークを駆使して僕のところへ来てくれお」
(´・ω・`)『テラ近代的wwww』
- 11: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:05:54.61 ID:2fXECG1x0
- (´・ω・`)『とにかく現実世界の物を持ち込んだらダメでしょ。没収ね』
先刻途切れたばかりであるはずの声が再度響いた。
それが参加者全員の耳に声が届くと同時に、ブーンの持っていた携帯電話は音もなく消えていった。
(;^ω^)「これじゃドクオと合流できないお!」
('A`)「呼んだか?」
( ^ω^)「ドクオktkr! なんで僕の位置がわかったんだお?」
('A`)「お前から送られてきたデータを記憶した」
(´・ω・`)『すげぇwwwww』
- 13: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:08:23.62 ID:2fXECG1x0
- (´・ω・`)『もう合流できちゃったのは仕方がないか。えっと、さっき言い忘れたことが一つあるからしっかりと聞いていてね。
君らはまだ現実では毛を使えません。だからこの世界では体験版程度の力だけれども覚醒させてみました。早速毛の確認をしてみてね』
プツッと放送の途切れる音が聞こえる。
残った音は静かに吹く風の音だけ。
( ^ω^)「ドクオ! とりあえず毛を試してみるお!」
('A`)「あぁ、そうだけど……人形と同じ部分の毛を抜かなくちゃいけないんだよな?」
どちらかというと乗り気ではないのだろうか。
若干俯き加減でドクオが尋ねる。
( ^ω^)「当たり前だお! 孫悟空の言ってたこともう忘れたのかお?」
('A`)「いや、覚えてはいるんだけどさぁ……」
(;'A`)「チン毛抜くのかぁ……」
- 14: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:10:57.08 ID:2fXECG1x0
- (;^ω^)「あ……」
ドクオの言葉を聞き、ブーンは即座に後悔した。
チン毛を抜くなんて嫌に決まっている。辛いに決まっている。
なのに、何故自分は親友の気持ちを汲み取ってやれなかったのであろうかと。
( ;ω;)「ドクオ、ごめん! ごめんだお! 僕のやったことは決して許されることではないお!
いや、もし許してくれたとしても僕が納得いかないお! この事は僕の一生をもって償うお!」
強すぎる後悔の念はブーンの感情を破綻させる。
止め処なく流れ来る涙には、友を思う優しい心が込められているのであろう。
一滴一滴、大粒な涙が地を濡らしていった。
('A`)「もう良い」
( ;ω;)「お?」
('A`)「もう良いんだ、ブーン。これは俺の心の弱さが呼び寄せてしまった試練なのさ。
だから、俺はこの試練を耐え抜いてみせる! 俺のためにも! お前のためにも!!」
- 17: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:13:27.71 ID:2fXECG1x0
- 泣きじゃくるブーンに優しい言葉を掛けたドクオは、そのまま手を自身の秘部に伸ばす。
まるで余所者を拒むかのような縮れを起こしている毛の抵抗も気にせずに、特に太い一本を指に絡めさせる。
('A`)「見ててくれ。これが弱き心を持った漢の哀しき末路だ。サラバだ……我が親友、ブーン」
(`A')「はぁぁああぁぁぁぁぁあぁあぁぁああああ!!!!!」
最期の言葉を残し、ドクオは最終決戦へと移る。
最強の相手は皮膚の深くに眠っていた毛根だ。
じわり、じわりと地表に向かって毛根が前進していることがドクオには感じられた。
そして――
(゚A゚)「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッ!!!」
――戦いは終わった。
- 18: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:15:54.27 ID:2fXECG1x0
- ( ^ω^)「チン毛抜くのに2レスも使うなお。とりあえず僕もスネ毛抜くお。痛っ!」
ブーンも普通にスネ毛を抜いた。
それはもう葛藤していたドクオが物凄く切なく見えるほどに。
('A`)「あー、痛ぇ。抜いた毛を投げれば良いんだよな? やるぞ」
( ^ω^)「おk」
二人の指先から、先程まで身体の一部であった毛が離れていく。
それは重力に逆らうこともせずにゆっくりと地面に落ちていった。
(;'A`)「……あれ? 何も起こらない?」
(;^ω^)「僕の毛は勝手にウネウネしてるだけだお。きめぇwwwww」
想定外の動きの無さに唖然とする二人であった。
- 20: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:18:18.97 ID:2fXECG1x0
- (;-_-)「う……うぐぅ……」
毛に翻弄されている二人とはだいぶ離れた所に、力無く地に伏せている者がいた。
孫悟空に機械の使い方を聞いていた男、ヒッキーだ。
(;-_-)「なんで、こんなことに……」
呻くような苦しげな声で呟く。
その時、身体の自由を失うほどのダメージを受けた男の背中に二つの影が差し込んだ。
( ´_ゝ`)「お前の毛、鼻毛は某漫画と被るから即刻削除することに決めた」
(´<_` )「俺と兄者のコンビネーションには誰も敵わないさ」
(;-_-)「待って……僕には勝たなくちゃいけない理由が……」
( ´_ゝ`)「知るかよバーローwwww」
(´<_` )「鬼畜現る。とりあえず聞くだけ聞くから言ってみろよ」
- 21: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:20:25.80 ID:2fXECG1x0
- そしてヒッキーは語り出す。
自分がこのゲームに参加せざるをえなかった理由を。
(-_-)『もう2ちゃんも飽きたし、本格的にやることなくなってきたなぁ』
元々ヒッキーは自宅警備員をやっていた。
そう言えば聞こえは良いが、所謂ただの引きこもりニートである。
(-_-)『そろそろ朝の5時か……寝ようかな』
完全に昼夜逆転生活を送っていた彼は、太陽が昇ってから眠りに堕ちることなど多々あることであった。
しかし、その日はこの生活を後悔することとなる。
- 24: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:23:57.87 ID:2fXECG1x0
- (-_-)『もう夕方か……』
西に沈みゆく夕陽が窓から差しこみ、彼の部屋をオレンジに染め上げる。
目覚めて小さく伸びをした後、照らされた部屋を見てヒッキーは違和感を感じた。
(;-_-)『掃除されてる……?』
自分が生活をしやすいように、大抵の物はパソコンからあまり離れないように置いておいた。
だが今はどうだろう。
いつか食べようと思っていた、少し賞味期限の切れたスナック菓子は捨てられている。
そのうち使うであろうと考えて保管しておいた、用途のよくわからないネジも見当たらない。
なのに、隠していたエロ本は丁寧に机の上に綺麗に並べられている。
(;-_-)『エロ本まで見つかったのか……。あれ? エロ本の隣に置き手紙と変なのがある』
彼が見つけたのは折りたたまれた手紙。
丁寧に折られている手紙を広げて、内容を読み始めた。
- 26: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:25:49.85 ID:2fXECG1x0
- ――――――――――――
凄い寝ていたから勝手に掃除させてもらいました。
あまりの汚さにビックリしたよ。
まさかヒッキーにあんなフェチがあったなんてね……////
あと、掃除している間に変な手紙と人形を見つけました。
手紙によると、人形を持って点字区に行けば一攫千金のチャンスらしいです。
いつもゴロゴロしてるあなたを養うのは疲れたので、頑張って大金を獲得してきてください。
もし行かなかったり、大金を取れなかったらあなたとは縁を切ります。
あなたの愛しの母より
――――――――――――
- 28: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:28:00.12 ID:2fXECG1x0
- (;-_-)『これはやばいな……。人形ってこれ……だよね?』
次に彼が目を移したのは彼自身によく似た人形。
身体つきも顔つきも全く一緒のように見える。
ただ一つ、鼻毛が物凄く伸びているのを除いて。
(;-_-)『うわっ、気持ち悪い……』
禍々しいオーラを放っている人形に一瞬たじろぐ。
しかし、それを持って行かないと親との縁を切られてしまう。
完全に寄生虫生活を送っていた彼にとって、縁切りとは死刑宣告を受けた事と等しかった。
(;-_-)『行かなくちゃ……大金を獲得しなくちゃ……』
自分の命を守るため、数年ぶりに家から出たヒッキー。
彼を照らす夕陽は、静かに見守っているようにも感じられた。
- 30: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:30:01.07 ID:2fXECG1x0
- ( ´_ゝ`)「それで終わりか?」
(;-_-)「え?」
(´<_` )「それで話は終わりなのかと聞いている」
(;-_-)「まぁ……うん……」
一通り話を聞き終えた兄弟が、口を開く。
威圧的で、高慢な態度で。
(´<_` )「一応全部話し終えて満足したろ。兄者、もう抜いても良いぞ」
( ´_ゝ`)「把握した」
- 32: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:32:52.27 ID:2fXECG1x0
- いつの間に奪ったのであろう。
兄者の手にはヒッキーそっくりな人形が握られていた。
(;-_-)「ちょ、ちょっと待って……!」
ヒッキーの願いも虚しく、兄者の指は既に鼻毛を掴んでいた。
しっかりと握り、引っ張る。
これでヒッキーは敗者となる、はずであった。
(;´_ゝ`)「ん? 抜けないぞ」
人形から飛び出ている鼻毛は、精一杯引っ張ったところで、全く抜ける気配を見せなかった。
( ´_ゝ`)「なぁ弟者、これどうすればいい?」
(´<_` )「この話のタイトルを見ろ」
( ´_ゝ`)「絡まり合う……? なるほど、そういうことか」
- 35: ◆qvQN8eIyTE :2007/06/28(木) 21:35:21.83 ID:2fXECG1x0
- 何かを悟ったような兄者は、人形を握っている手とは逆の、空いている手に自分の人形を持つ。
手の指の毛が物凄い長さを誇っている人形を。
( ´_ゝ`)「これをこうして……」
互いの人形から伸びている毛を絡ませ合い、兄者の人形を引っ張る。
すると、先程までの屈強さが嘘のように、簡単にヒッキー人形の鼻毛が抜けていってしまった。
(;-_-)「あ……そんな……縁を切られt
言葉を紡いでいる最中にも、ヒッキーの姿は跡形もなく消えてしまう。
その場に残ったのは兄者、弟者、そして持ち主の無くなったバックと人形のみである。
( ´_ゝ`)「おk。要領は掴んだ」
(´<_` )「しかし開始直後に勝ってしまうなんて」
( ´_ゝ`)b「「流石だな。俺ら」」d(´<_` )
――ヒッキー(鼻毛)脱落――
――残り18名――
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