( ^ω^)ブーン達は絡まり合うようです

4: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:17:19.02 ID:RKCldnzf0
第五話 【建前の裏】




⌒*(・∀・)*⌒「ここどこー? なんでみんないないのー?」

青い空に輝く太陽の下。
背の高い草に紛れながらも、一人の幼子がポツリと佇んでいる。
全参加者の中で最年少、ツイン照美だ。

⌒*(・∀・)*⌒「ばーちゃるせかいとかよくわかんないや」

さすがにこの年では主催者の説明の意味が理解できないのであろう。
元々半分ほど身体を隠している草むらでしゃがみ込む。
小さな身体がすっぽりと草の中に隠れてしまっていた。

⌒*(・∀・)*⌒「かくれんぼだ!」

今がどのような状況であったとしても、彼女には関係ないのだ。
無邪気な笑みを草むらの中から飛び出させて空を仰いだ。



7: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:20:12.09 ID:RKCldnzf0
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「ん? そこにいるのは照美ちゃんかい?」

生い茂る草の中から飛び出た笑顔を、とある男が発見した。
ブーンに対して尋常無きほどにまで冷たい怒りを露わにした男、榊原マリントンである。

⌒*(・∀・)*⌒「あ、榊原先生だ!」

声を聞きつけた瞬間、変わらぬ笑顔のまま小さな歩幅で男の元へと向かう幼女。

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「やっぱり照美ちゃんかw さぁ、こっちにおいで」

そんな彼女に対し、こちらも優しい笑みを作って迎える。
これが榊原マリントンの仕事、「幼稚園の先生」としての特技だから。

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ(まずは照美の人形ゲットだなwww)



8: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:23:29.00 ID:RKCldnzf0
表面上のそれとは全く違う種類の笑いを心の中で押し留める。
もし少しでも怪しまれるようなことがあれば、人形を奪い取ることは難しくなってしまうから。
それでも一歩一歩近づいてくる獲物に対して、男は心の高鳴りを感じられずにはいられなかった。

⌒*(・∀・)*⌒「先生! 幼稚園ぶりだねー」

既にあと数歩踏み出せば手の届く距離にまで接近している。
彼女の手に握られた人形が、榊原の興奮を更に高めた。

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「そうだね。ところで照美ちゃん、そのお人形を見せてくれないかな?」

普段から先生として園児からの信頼だけは築いてきた。
この言葉によって、今までの行いの成果が発揮される瞬間である。
確実に人形は榊原の手に渡るであろう。

しかし、

⌒*(・∀・)*⌒「やだー」

彼女の答えはNOであった。



10: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:25:24.44 ID:RKCldnzf0
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「な、なんでだい?」

想定外の答えに少々心を乱される。
大丈夫、まだ良い先生を装える。
そう自分に言い聞かし、榊原は自身の受け持つ園児に問うのであった。

⌒*(・∀・)*⌒「だって先生嘘つきだもん。本当はさっきお兄ちゃんに怒った時みたいな悪い人なんでしょ?」

さっきというのはブーンに脅しをかけたときであろうか。
あの時は完全に不覚であった。
まさか、集められたメンバーの中に自分の幼稚園の園児が紛れ込んでいるとは思わなかったのだから。

⌒*(・∀・)*⌒「それにこのお人形さんは私のだから誰にも渡さないよ! 渡したらママに怒られちゃう」

止めの一言。
これによって榊原の自制心は完全に打ち砕かれてしまう。



12: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:28:56.88 ID:RKCldnzf0
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「まだ小便臭い餓鬼が調子のんなよ。
           俺は幼稚園なんかさっさと辞めて賞金で豪遊したいんだよ。ほら、人形よこせって」

遂に隠された本性を現しながら榊原は前屈の姿勢を取る。
いつの間に脱いだのであろうか。裸足だ。
そして、露わになった足の甲に申し訳程度に生えている毛を数本掴み、

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「ッッッ!!!」

一気に引き抜いた。

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「お前が最初から大人しく人形渡せば良かったんだからな。恨むなら自分を恨めよ」

⌒*(・∀・)*⌒「……?」



14: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:31:17.87 ID:RKCldnzf0
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「俺は餓鬼が相手だろうと容赦しないぞ。もがき苦しめ!」

大きく振りかぶるモーションを取り、毛を掴んだ手をそのまま振り下ろす。
彼の手から離れていった毛は、風の中を失速することもなく幼女へと向かって飛んでいく。
そして、引き寄せられるかのように幼女の腹部に命中した。

⌒*(; ∀ )*⌒「え?」

まるで大の大人が本気でサンドバックを蹴飛ばしたかのような音が辺りに轟く。
確実に毛が当たった音ではない。打撃の音だ。

⌒*(; ∀ )*⌒「うぅ……痛い……痛いよう……」

あまりにもダメージが大きいのか、泣き叫ぶこともなく地に蹲る。
ただただ、必死に痛みを堪えるのみであった。

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「俺の毛は足の甲の毛でな。毛が当たった場所に格闘家の蹴り並みのダメージを与えさせられるらしいんだわ。
           お前みたいな餓鬼には到底耐えられないだろうなw よし、お前が落とした人形はもらっておくぜ」



16: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:34:24.56 ID:RKCldnzf0
大きすぎる衝撃に、強く握られていた人形も飛ばされたのであろうか。
地面に力無く置かれている人形を見つけ、拾い上げる。
落とされた際に付いた土を二、三度叩き落とし、毛に手を掛ける。

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「こいつの毛は耳毛かw まぁリタイアするやつの能力なんかどうでも良いがな」

一人呟き、毛を握った腕に力を込める。
しかし、抜けない。

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「何だこれ。抜けないじゃないか。……ん? なんだこの匂いh

異変に気付き、言葉を言い切る前に榊原は意識を失う。
倒れた彼の傍らには一本の縮れ毛が落ちていた。

川 ゚ -゚)「ツン、間に合ったようだぞ」

ξ゚听)ξ「良かった。私の毛って効果は絶大なのね」



17: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:36:30.00 ID:RKCldnzf0
⌒*(; ∀ )*⌒「だ…れ……?」

まだダメージはあるのだろう。
必死になって絞り出した、それでも今にも消え入りそうな声が風に乗って彼女らの耳に届く。

川 ゚ -゚)「私が一部始終見ていた。君は助かったんだ。少し寝てなさい。ほら、ツン」

ξ゚听)ξ「大丈夫よ。さっきの毛の効果であの子もそろそろ気を失うわ」

二人が会話をしている間にも、照美の意識は朦朧としていく。
鼻の奥に残る、少し不快な匂いだけが気がかりであった。

ξ゚听)ξ「もう寝たみたいね。とりあえずこの男を脱落させておくわよ」

川 ゚ -゚)「あぁ、頼んだ」



19: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:38:14.55 ID:RKCldnzf0
気を失い、倒れている男のバックから人形を取り出す。
足の甲だけ異様に伸びている毛に、ツンは自身の人形の毛を絡ませる。

川 ゚ -゚)「よく毛の抜き方を知っているな」

ξ゚听)ξ「前話を見たもの」

川 ゚ -゚)「そうか」

無駄口を叩きながらも、毛を絡ませ合う作業は止めない。
十分に絡みついたところで、遂にツンは人形を引っ張る。
そして、人形の脱毛と同時に無様な男の姿は消えていくのであった。




――榊原マリントン(足の甲の毛)脱落――


――残り17名――



20: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:41:23.48 ID:RKCldnzf0
(゜3゜)「お前2対1で本気で勝てると思ってるのかよ」

⊂⌒(  ・ω・)「絶対無理に決まってる」

また、彼女らと離れた場所ではもう一つの戦いが起きようとしていた。

( `ハ´)「ホッホッホ、なんでお前らマイナーAAが作品に出演できたか教えてやるアルよ」

中国人、シナーを二人の男が囲っている。
人数的に絶対的不利のような状況下でもシナーは余裕の笑みを浮かべていた。

( `ハ´)「参加者を集めるためにはAAが大量に必要アル。そこでお前らは朕のようなメジャーAAの噛ませ犬として出演したのでアルよ」

⊂⌒( #・ω・)「なんか怒った」

(゜3゜)「あまりバカにするなよ!」



21: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:43:20.14 ID:RKCldnzf0
( `∀´)「もう、遅いアルよ」

⊂⌒(メ; ω )「うっ……」

それは一瞬の出来事であった。
突然シナーの顔から髭が消えたかと思うと、次の瞬間には既に一人倒れていたのだ。

(;゜3゜)「カラマロス大! お前何をしたんだよ!」

( `∀´)「お前も終わりアル」

(;゜3゜)「え……?」

思わず聞き返した刹那、彼は強烈な衝撃を背中に感じた。
有り得ない。敵は目の前にいるのに、何故?
そんな疑問を余所に、彼の意識は遠くへと旅立ってしまった。

( `ハ´)「これで朕の勝ちアルねw 早く優勝して弟のニダーに請求された賠償金を払わないと……」



23: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:45:21.55 ID:RKCldnzf0
彼、シナーはこのゲームが始まる数日前、弟のニダーのゲームソフト『キムチ造り』のデータを誤って消してしまっていた。

<#ヽ`∀´>『ファビョーン!! 謝罪汁! 損害賠償を請求するニダ!』

どう考えても自分の過失な為に起こった問題だ。
ここは大人しく賠償金を払うことを決めた。
だが、その判断が良くなかった。

<ヽ`∀´>『ホルホルwww慰謝料とか弁償代とか含めて日本円で約100万円程払ってもらうニダ』

(;`ハ´)『な……それはさすがに高すぎるアルよ』

<#ヽ`A´>『シナーがウリのデータを消したニダ! 文句あるニダか!』

(;`ハ´)『うぅ……』

こうして、シナーはニダーの言われる通り賠償金を払うため、ゲームに参加したのであった。



27: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:48:02.90 ID:RKCldnzf0
( `ハ´)「この人形の毛を抜けばいいアルね。話の流れ的に朕の人形も使って……」

そしてシナーはそれぞれの人形に生えている毛に、自分の人形に生えている毛を絡まらせて抜いた。
音もなく、あまりにもあっさりと気絶していた男達は消えていく。
その結果は完全にシナーの勝利を意味していた。

( `ハ´)「朕の髭は絶対無敵アル……。大金、待ってるアルよ!!」




――佐々木カラマロス大(ケツ毛)脱落――


――田中ポセイドン(ヘソ毛)脱落――


――残り15名――



28: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 20:50:06.35 ID:RKCldnzf0
(´・ω・`)「うん、皆頑張って毛を駆使しているね」

閉鎖された一室で男が一人、満足そうに呟く。
手に持たれた煙草は、ゆらゆらと紫煙を上げている。

(´・ω・`)「今のところはまだ、誰が勝つのかわからないな」

彼の目は巨大なモニターに向けられている。
一人で行動する者、グループを作る者、ひたすら隠れている者。
様々な人間がそのモニターには映っていた。

(´・ω・`)「僕の子孫は頑張ってくれていますよ。見てくれています? 三蔵法師様」

誰に向かうでもなく言葉を漏らす。
その声は、閉鎖的な空間に虚しく響くのみであった。



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