( ^ω^)ブーン達は絡まり合うようです

35: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:04:37.46 ID:RKCldnzf0
第六話 【絡み始め】




(;^ω^)「うー……どうするお?」

目の前にはただうねるだけのスネ毛と全く動かないチン毛。
このままでは優勝どころか戦うこともできないであろう。
ブーンはこれからについてただ悩むばかりであった。

('A`)「お前のはまだ動くから希望があって良くね? 俺の全く動かないから絶望じゃね?」

広い空の下、悩む彼らの背中はとても小さかった。
空からは太陽が強い日差しで照りつける。

(;^ω^)「このままじゃ一攫千金なんて夢のまた夢なんだお」

('A`)「さて、どうするかね」



36: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:07:10.62 ID:RKCldnzf0
二人が相談しあっている間にも、見知らぬ者は息を潜めて隙を狙っている。

(;^ω^)「とりあえずもう一本抜いてみるお」

ブーンが屈み、指をスネ毛に絡まらせた瞬間に、それは来た。
地を蹴る音が小さく響き、突然彼らの前に人影が映る。
二人が反応する前に、既にその人影はブーンを蹴り飛ばしていた。

(;゚ω゚)「痛っ!! いきなりなんだお!」

予期せぬ出来事と、いきなりの暴力にただ驚く。
蹴られた箇所に確かに残る痛みが、相手が敵であることを示していた。

(´・_ゝ・`)「油断していちゃダメだよ。ここはいつでも戦闘状態でいないとね」



37: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:08:59.78 ID:RKCldnzf0
('A`)「うわっ、地味な顔」

思わず声を上げる。
ドクオも人のことを言えるような顔ではないが、それでも尚言いたくなるような地味さだったのだ。

(´・_ゝ・`)「君には言われたくないな。僕は盛岡デミタス。以後お見知りを」

登場の仕方とは裏腹に、優しげな言葉をかけるデミタス。
しかし、彼の目は闘志に満ちていた。

(´・_ゝ・`)「お見知りおきを、なんて言っても君らはここで負けるんだけどねw 使えないんでしょ? 毛」

(;^ω^)「なんでそれを知ってるんだお?」

(´・_ゝ・`)「ずっと見ていたからさ。君らが毛を試している時からね」

('A`)「覗きかよ」



38: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:10:54.65 ID:RKCldnzf0
ドクオの何気ない一言。
その言葉を聞きつけたデミタスは、先程までの雰囲気とは打って変わって怒りを露わにしだす。

(#´・_ゝ・`)「僕を覗き呼ばわりするな! あれは……あれはアイツが悪いんだ!」

( ^ω^)「あいつ? 産業でkwsk頼むお」

ブーンの問いに、ハッと気付いたような素振りを見せるデミタス。
どうやら、怒りにまかせて自分が口を滑らしたことに気付いたらしい。

(´・_ゝ・`)「どうやら失言したようだね。
       それじゃあ僕がこのゲームに参加する理由になった原因でもある『あいつ』について説明しよう」

( ^ω^)「wktk」

('A`)「wktk」



40: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:13:02.57 ID:RKCldnzf0
(´・_ゝ・`)「隣の家の女が窓を開けて部屋の様子を見せつけてくる
      何気なく見ていたら起訴→実刑コンボを喰らう
      保釈金ゲットの為にこのゲームに参加」

( ^ω^)「これは酷い」

('A`)「これは酷い」

デミタスの参加理由に対し、口を揃えて意見を言う二人。
彼らの眼差しは敬うものでも哀れむものでもなく、ただ軽蔑の意のみを込めたものであった。

(#´・_ゝ・`)「黙れ! とにかく君達は毛が使えないんでしょ? さっさと倒してあげるよ」

(;^ω^)「ちょ、毛の使えない僕達とガチでやりあうのかお?」

(´・_ゝ・`)「当たり前でしょ。どうやら僕の毛は攻撃向けじゃないようだからね、毛の使えない君達を狙ったのさ」



41: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:15:28.24 ID:RKCldnzf0
('A`)「攻撃向きじゃないのか。なら俺らにも勝ち目はあるな」

デミタスの言葉を受け、地面に落ちていたチン毛を拾い上げるドクオ。
しかし、チン毛は全く動かないままである。

(´・_ゝ・`)「ついでに言っておくけど、僕空手四段持ってるからね。素手でも君らには負けないよ」

ドクオの動向を覗いながらも、彼は言葉を投げ掛ける。
絶対的な余裕があるのだろうか、ドクオの行為を妨害しようとする気配は見せない。

(;^ω^)「ドクオ、ガチでピンチだお! 僕ら毛も使えないのにどうするんだお」

('A`)「大丈夫。お前には言ってなかったけどな、バックの中を見たら入ってたんだ」




('A`)「育毛剤がな」



42: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:17:37.07 ID:RKCldnzf0
育毛剤、説明では抜いた毛に塗ると巨大な武器と成長させる道具。
確か参加者の中では三人にしか配られていなかったはずだ。
その三人の内の一人がドクオだったのである。

('A`)「……よし、これでおkだろ」

バックから取り出した小型な容器に入っていた液体を指に付け、拾い上げたチン毛に塗りたくる。
液体の付いたチン毛は艶やかに照りだした。

('A`)「お、変わってきたな。どうなるんだ」

先程まで全く動きを見せなかったチン毛が細かい振動を始める。
一回揺れる度に、少しずつではあるが確実にチン毛は大きく成長していった。
そして数秒後。

(;^ω^)「これは……なんとも……」

チン毛はただ大きくなっただけであった。



44: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:20:11.18 ID:RKCldnzf0
('A`)「想像していたのと若干違うな。でも、硬くなってるし武器としては使えそうだ」

確認として二、三回軽く巨大化した毛を叩く。
硬質なものを叩いた時特有の乾いた音が、小さく響いた。

('A`)「おk。これなら勝てる」

確信したかのような顔で呟くドクオ。

(´・_ゝ・`)「もう準備はできたかい? 素人が武器を持っても意味がないのにね。もう行くよ!」

デミタスが口を開いたと思った瞬間、既にデミタスはその場にはいなかった。
彼が移動した先は、


(;'A`)「ブーン!」


武器を持たない丸腰のブーンの元。



45: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:22:36.86 ID:RKCldnzf0
(;^ω^)「ちょwwwwこっちくんなお!」

デミタスの接近に気付いたブーンは必死で逃げようとする。
しかし、運動もまともにできない彼と武道経験者の運動能力はまさに雲泥の差であった。

(´・_ゝ・`)「逃げられるとでも思ったのかい?」

両手を軽く前に出した構えから、目にも止まらぬスピードで正面付きを放つ。

( ゚ω゚)「――――ッッッ!!」

デミタスが繰り出した突きはブーンの胸に当たり、彼の呼吸を妨げる。
何もできず苦しむブーンに対し、デミタスは構えを解くことはない。

(´・_ゝ・`)「まだ終わらないよ」

左足で地を踏みしめ、右足での中段蹴り。
しっかりと蹴りが腹にめり込んだことが感じられると、少し足を引いてそのまま上段蹴り。

(´・_ゝ・`)「何?」

だが、彼の足に伝わったのは、肉体ではなく硬質な物を蹴った衝撃。
デミタスの目には、硬くて黒い木刀、いや、毛刀が映っていた。



46: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:25:10.52 ID:RKCldnzf0
('A`)「ブーン! 大丈夫か!」

(メメ; ω )「なんとか……大丈夫だお……」

自身のチン毛でデミタスの攻撃を防ぎながら、突きと蹴りをそれぞれ一発ずつ当てられたブーンに声をかける。
素人に空手有段者の攻撃が与えられたのだ。
無事なわけがない。

('A`)「俺が勝ってくるから待ってろよ」

(メメ;^ω^)「把握したお……」

ブーンを後ろに下げて、ドクオは一旦デミタスとバックステップで距離を取る。
少々間が開いたところで、ドクオは毛刀を構えた。

(´・_ゝ・`)「なんだ、素人じゃなかったんだね」

('A`)「一応剣道部に所属しているからな。チン毛も太くて、刀に向いていたようだ」

腹の辺りで握られた毛刀の剣先はデミタスの喉元に向かって伸びている。
ドクオが取った構えは正眼の構え。
守りにも攻めにも対応できる、剣道においては基本中の基本な構えだ。



48: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:27:34.90 ID:RKCldnzf0
('A`)「それとアンタ、四段だったよな。俺剣道二段だから。あと二段足りなかったな」

一足一刀、あと一歩踏み込めば刀が届く位置でドクオは声をかける。
相手の呼吸を覗いながら、打ち込みにいけるタイミングを計っているのだ。

(´・_ゝ・`)「なんの話をしているんだい? 二段足りないのは君の方じゃないか」

デミタスの方も重心を落とし、いつ向かってこられても対応できるよう気を入れる。
自分の方が段位は上でも、相手は武器を持っているのだ。
油断はできない。

その場にいる三人を空に輝く太陽が照らし続ける。
バーチャル世界内でも夏のままなのであろうか。
止まったまま動きを見せない二人の顎先から、小粒の汗が滴り落ちた。

('A`)「今だっ!」

左足で強く地を蹴り、両の手首を使って毛刀を引き寄せる。
右足で強く地を踏み、身体全体を使って毛刀を打ち下ろす。
ドクオの手には、確実に『面打ち』が決まった感触が届いた。

('A`)「剣道三倍段って知らないのか。剣道は武器がある分、他の武道より有利なんだよ。
   空手が剣道に勝とうとしたら剣道の三倍、段位を持ってないと無理なんだ。だから、アンタは六段必要だった。あと二段だったな」



49: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:30:01.48 ID:RKCldnzf0
(´・_ゝ・`)「へぇ、そうだったんだ。知らなかったよ」

(;'A`)「なっ……!?」

確かに打ちが当たった感覚はあった。
確実に相手にダメージを与えたはずだった。
しかし、毛刀の先では無傷なデミタスが薄ら笑いを浮かべていた。

(´・_ゝ・`)「あ、言い忘れてたけど僕の毛は背中毛ね。抜くの大変だったんだから」

(メメ;^ω^)「背中毛……使い方が全くわからんお」

(´・_ゝ・`)「背中は身体のどこよりも丈夫な部分。なら、そこに生えている毛も存分に守る力はあるはずだよね」

ドクオの毛刀の鋒をよく見ると、そこには無数の毛が宙を浮いていた。
まるでデミタスを守るかの如く、毛が毛刀の進行を阻止しているのだ。

(;'A`)「くそっ、いつの間に抜いたんだ」

(´・_ゝ・`)「いや、戦いが始まる前からずっと抜いておいたよ。この毛は僕の周りを舞い続けているんだ」



51: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:31:47.47 ID:RKCldnzf0
(;'A`)「チッ」

一人鍔迫り合いの状態から、軽く引き面を放って後退。
やはり、その打ちもデミタスの周りを舞う毛によって防がれてしまう。
勝負はまた、一足一刀の間合いからに戻るのであった。

('A`)「おい、ブーン!」

(メメ^ω^)「なんだお?」

急にブーンに声を投げ掛けるドクオ。

('∀`)「俺がこの戦いに勝ったらアイスおごれよ」

突然の約束。
しかし、ブーンはこの言葉の真意に気付いていた。
ブーンの仕事は彼を勇気づけ、背中を押してやればいいのだ。

(メメ^ω^)b「ガリガリ君限定でおkだお」

('∀`)「わかった!」



52: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:34:20.70 ID:RKCldnzf0
そしてブーンからデミタスへと視線を戻す。

('A`)「俺、アイス好きなんだ。だから、絶対アンタには勝たせてもらうわ」

毛刀の柄に当たる部分を強く握り直す。
今までの鍛錬と自分の生み出した武器、そして友人に掛けてもらった後押しの言葉。
負ける気は、しなかった。

(メメ^ω^)(しかし、ガリガリ君には良い思い出が無いお……)

一方、ブーンはガリガリ君について考えていた。
先日ドクオに買ってもらったアイスを落としてしまったこと。
溶けゆくアイスに群がる蟻たちが憎かったこと。

(メメ^ω^)(蟻……もしかしたら……!)

何かに気付き、自分のスネ毛に手を当てる。

(メメ^ω^)(いける、きっといけるお!)

先程まで絶対的暴力を繰り出し続けていた男に勝つ道筋を見出す。
彼の心は喜びに震えていた。



53: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:36:41.93 ID:RKCldnzf0
('A`)「……」

(´・_ゝ・`)「……」

今度は互いに言葉はない。
どちらも自分の手の内を相手に見せたのだ。
次こそ、一瞬の油断が命取りになりかねない。

永遠とも取れる、長い沈黙がその場を支配した。

(`・_ゝ・´)「フッ!!」

先にしかけたのはデミタスであった。
低い姿勢のまま、空に跳ねる。
その勢いに乗せて、腰の入った最高の突き。

('A`)「っと!」

しかし、ドクオの毛刀がその突きを左へ流す。
隙だらけになったデミタスへ、毛刀を左肩へ持ち上げて『担ぎ面』を放つ。
本来の面打ちよりも振りかぶる範囲が狭い故、スピードの出る打ち方だ。

だが、その打ちはデミタスの毛によって防がれる

(;´・_ゝ・`)「グアッ!」

はずであった。



55: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:39:06.47 ID:RKCldnzf0
('A`)「当たった?」

あまりにも呆気なく打ちが決まったため、技を放った本人のドクオでさえ驚いていた。
ついさっき完璧に防がれたのが嘘のように、簡単に当たったのだ。

(メメ´・_ゝ・`)「何故、攻撃が当たったんだ……?」

毛の持ち主であるデミタスでさえ、驚きの表情を隠しきれない。

(メメ`ω´)「フンッ! フンッ!」

そして彼らの後ろでは、小粒の黒い物体をひたすら投げ続けるブーンの姿があった。

('A`)「とりあえず隙有り!」

デミタスの喉元を向き続けていた毛刀を、勢いよく前に突き出す。
今度は、剣道の突きが完全に決まった瞬間であった。



57: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:41:30.24 ID:RKCldnzf0
首を強く突かれたデミタスは力無く地に伏せ、気を失ってしまう。
終わってみればドクオの完全勝利であった。
結果的に一発も攻撃を受けることなく、デミタスを倒したのだ。

(メメ^ω^)「ドクオ! やったお!」

('A`)「あぁ、ガリガリ君頼むぜ。……って、チン毛はもう使えないようだな」

ドクオの手元から伸びる毛刀は、ちょうど中間付近で真っ二つに折れていた。
あまりの激しい戦いに耐えきれなかったのであろうか。
静かに、ドクオは毛刀を地に置いた。

('A`)「チン毛、お疲れ。で、ブーン。お前は一体何をしたんだ?」

急にデミタスの毛が防御に回らなくなった瞬間、視界の端にはブーンが何か行動を起こしていたのが映った。
自分は特に戦い以外の行動を起こしていない。
ならば完璧な防御を誇っていたデミタスの背中毛を、彼が制御したと考えるのが自然であろう。



59: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:44:13.19 ID:RKCldnzf0
(メメ^ω^)「あぁ、あれだお。蟻んこだお」

('A`)「蟻んこ?」

ブーンの言葉の意味が汲み取れなくて、思わず復唱する。
蟻がどうしたというのだろうか。
ドクオは更に聞き質した。

('A`)「なにが蟻なんだ?」

(メメ^ω^)「ドクオに買ってもらったアイスのこと思い出したんだお。蟻に食べられちゃったことも。
       で、ブーンはよくスネ毛を絡ませ合って蟻んこ作ったりすることを連想したんだお。それで作ってみたら本当にスネ毛が蟻になったから投げつけてみたんだお」

('A`)「なんかわけわからん発想だな。でも、デミタスの背中毛はその蟻を防いでいて俺の攻撃を防げなかったと考えると納得いくか……」

ブーンの説明に一人納得するドクオ。
兎にも角にも激戦を勝利したのだから文句は付けられない。
地に根ざす草が、勝利を祝福するかのように揺らめいていた。



60: ◆qvQN8eIyTE :2007/07/01(日) 21:46:33.92 ID:RKCldnzf0
('A`)「じゃあ早速人形の毛を抜くか。ブーン、取ってきてくれ」

(メメ^ω^)「おk」

地に倒れているデミタスの近くに落ちてあったバックを拾い上げる。
開いて中を見ると、少し減っている発毛剤の容器と人形が入っていた。

(メメ^ω^)「背中毛いっぱい使うために使ったんだおね……。一応もらっとくお」

バックの口をわざわざ開けるのが面倒なため、発毛剤をポケットにしまい込む。
人形を掴み取り、ドクオの元へと持って行った。

('A`)「じゃあ話の流れ上、毛を絡ませて抜くか」

ドクオ人形のチン毛を背中毛に絡ませ、引き抜く。
あまりにも抵抗無く抜け、デミタスはこの世界から去っていった。




――盛岡デミタス(背中毛)脱落――


――残り14名――



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