( ^ω^)ブーン達は絡まり合うようです
- 3: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:10:00.31 ID:PgYnTDDW0
- 第十一話 【闇夜の虫】
('A`)「ん……んん……」
ゆっくりと瞼を開く。
どのくらい寝ていたのだろうか。
視界に入り込んでくる光が、自分の目を突き刺して、少し痛い。
('A`)「あれ……? 俺は……」
段々と視界が眩さに慣れていくと同時に、長い間見ていた夢のような映像を思い出す。
断片的で不鮮明で、だけれども確かに心は弾んでいて。
('A`)「ここって……?」
目を覚ましたと同時に、布団から出ようとする。
しかし、見えてきたのは無機質な機械、空間。
('A`)「ちょ、もしかして!」
ハッとして辺りを見回す。
コンクリートに囲まれたシンプルな部屋、上へ繋がる階段、同じような機械の羅列。
- 5: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:11:43.64 ID:PgYnTDDW0
- ('A`)「夢じゃ……無かった……」
眠ったように、大量に有る機械の内の一つに身を預ける姿。
同じく、ピクリとも動かないもう一つの姿。
この空間に残っているのは、その二人と自分だけであった。
('A`)「あと二人だけなのか」
他に機械で眠っている者はいない。
見ていても全く動くことのない者達を待っていても埒があかないので、
ドクオはとりあえず階段を上ることにした。
('A`)「もう少し頑張れば優勝できたのになぁ」
一人呟きながらも、硬質な足音が一定のリズムで響く。
相変わらず階段は暗い。
踏み外さないよう、注意して一段一段を上がっていった。
- 6: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:14:12.38 ID:PgYnTDDW0
- 階段を上りきると、目に入ってきたのは地下と変わらないシンプルな空間。
そして、巨大なモニターと少しの人数。
('A`)「ん? あのモニター……」
映っているのは見覚えのある景色と人物。
どうやら見た感じでは、向かい合って話しているようだ。
カメラに向かって照る夕陽が眩しい。
そして届いてくる音声。
孫悟空が、残り二人だということを伝えているのであろうか。
(;'A`)「やっぱりブーンの奴、俺の言葉聞いていねぇ……」
苦々しい表情で、小さく言葉を漏らす。
そんな瞬間、視界に入ってくる確かな違和感。
| 。。|
ノ つДノつ「あびゃあばびゃあっばびゃっばびゃwwwww」
いや、違和感ではない。不快感だ。
(;'A`)「何こいつ」
呟いた言葉は、まさしくドクオの心情であった。
- 7: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:16:08.99 ID:PgYnTDDW0
- ( ^^ω)「僕は初めは戦いたくなんかなかったんだホマ」
( ^ω^)「お?」
( ^^ω)「どうせ君が最後の敵ホマ? それなら少し語っておきたいんだホマ」
( ^ω^)「……おぉ」
孫悟空の、『これが最後の戦いとなる』という放送が止まった後、
ブーンと対峙する男、マルタスニムは瀬川はゆっくりと言葉を紡ぐ。
二人を照らす夕陽は、影を東へと伸ばしつつ、落ちようとしている。
( ^^ω)「あの時が僕に戦う決意をくれたんだホマ」
( ^ω^)「あの時……かお」
( ^^ω)「そう、初めての敵と遭遇した時ホマ」
そしてマルタスニムは語り始める。
自身の今までの戦歴を。
- 8: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:18:49.30 ID:PgYnTDDW0
- | ..|
ノ つДノつ『いきなり敵はっけーん』
僕がよくわからない状態で、ひたすら歩いていた時だったホマ。
突然野太い声が響いたかと思うと、そいつが現れてきたんだホマ。
(;^^ω)『……変態ホマか?』
半裸で。
| ..|
ノ つДノつ『顔が変な奴に言われたくない。さっさと倒しちゃうぞー』
いきなり剥き出しだった胸毛を、そいつは一気に抜いて僕に投げ付けてきたんだホマ。
その毛は、ちょうど僕の周りを囲むようにして落ちたんだホマ。
(;^^ω)『熱ッ! 熱いホマッ!!』
まさかの発火。
胸毛がいきなり燃え始めるなんて完全に予想外だったホマ。
- 10: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:20:19.38 ID:PgYnTDDW0
- 迫り来る火の恐怖と、着々と減っていく僕の体力。
遂には死すらも覚悟した瞬間だったホマ。
『戦いたい』
『負けたくない』
『こいつを、倒したい』
僕の中に声が響いたんだホマ。
それはたぶん毛の心。
そして、気付いたら僕は……
( ゚゚ω)『はぁ……はぁ……』
| 。。|
ノ つДノつ『な、何これ……うぁぁぁあぁあぁああ!!』
やつを、倒していたんだホマ。
- 12: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:23:52.86 ID:PgYnTDDW0
- (;'A`)「おい! 気付けよブーン! あいつはもう準備を……」
モニターに語りかけるも、声が届くはずもなく。
話に夢中になりすぎて、ブーンはマルタスニムの行動に気付けずにいる。
彼が勝ちを掴むための準備が成されているのを。
ξ#゚听)ξ「ちょっとうるさいから黙ってて!」
突然後ろから発せられた怒声。
思わず体をビクつかせた。
(;'A`)「えっと、サーセン……」
声の元に目を向けると、きつい顔つきの女、無表情な女、小さな幼女の三人組が見えた。
幼女'`ァ'`ァ
⌒*(・∀・)*⌒「何見てんの? きもーい」
ドクオは誰に見せるでもなく、こっそりと涙を流した。
その涙は、夜空に瞬く数多の星達のように美しかった。
- 14: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:26:10.54 ID:PgYnTDDW0
- ( ^^ω)「次に、三人組の女達と戦ったホマ」
夕陽と化した太陽が完全に沈む頃。
優しく照らす月が空に昇り出す頃。
マルタスニムはまた、静かに語り始める。
( ^^ω)「その頃には既に、僕は毛の戦いの虜になっていたんだホマ」
( ^^ω)「辺りに毛を置いて監視していたみたいだったけど、毛の心がわかった僕には余裕で乗り越えられたホマ」
月に照らされた草が、静かに揺れる。
ブーンを救ったスネ毛もまた、静かに揺れる。
ゆらり、ゆらり。
( ^^ω)「そこにいた幼女が育毛剤を使ってきたけど、なんとか倒してそれを手に入れたホマ」
いつのまにか握られた育毛剤を、見せつけるかのように軽く振る。
中に入っていた液体が、小さな波をつくって、そして崩れた。
( ^ω^)「……お?」
静かに気付いた違和感。
微かに動く、マルタスニムの腕。
- 15: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:27:11.58 ID:PgYnTDDW0
- ( ^^ω)「最後に、君の友達と戦ったホマ」
先程の優しい風とは違い、突如流れる暴風。
流れる雲に、隠された月。
生み出された闇に、気付いた違和感は隠されてしまう。
( ^^ω)「頑張っていたけど、僕の前では無力だったホマ。育毛剤も使い切っていて、あいつは役に立たなかったホマ」
吹く風は止まることを知らず。
傘掛けた雲を、また流す。
照らし始めた月明かりに、見えたのはマルタスニムの手の上の、多量に轟く虫の群。
( ^^ω)「そう。こんな感じで話している間に戦いの準備を済まして勝ったんだホマ」
(;^ω^)「おぉ?」
思わず後退り。
今まで自分の使ってきた虫と同じ、否、それ以上に禍々しい虫が蠢いているのだ。
背筋に嫌な悪寒が走った。
- 16: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:27:36.70 ID:PgYnTDDW0
- (;'A`)「クソ……。やられた」
自分の時も話を聞いている最中に、虫を作られていた。
気付けば全てが無力化されていた。
逃げるために必死で、人形すらも置き忘れて。
テレポートに使ったチン毛。
残された毛を再度投げれば、後を追ってこれるだなんて考えてすらなかった。
(;'A`)「逃げなきゃ……良かったな……」
後悔しても、もう遅い。
既にマルタスニムはブーンと対峙して、勝利への第一歩を踏み出してしまっているのだから。
- 18: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:30:37.92 ID:PgYnTDDW0
- ( ^^ω)「そして最後に君を倒して、僕は賞金を手に入れるホマ!」
投げ掛けられた言葉と共に、降ってくる黒い雨。
毛で造られた虫達が、一斉に飛びかかってきたのだ。
(;^ω^)「うわっ、気持ち悪っ」
小さな呟きを残して、ブーンの姿は毛の虫で覆われる。
段々とブーンの抵抗が弱まっていく。
今までの戦いもこれと同じ勝ち方だった。
マルタスニムは自身の勝利を確信した。
(;^ω^)「ぷはっ。窒息するかと思ったお」
突然虫の群から顔を出す。
それによって開かれた視界。
そこには
( ^^ω)「賞金うめぇwwwww」
勝ち誇った顔のマルタスニムが映っていた。
- 19: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:32:36.11 ID:PgYnTDDW0
- (;^ω^)「ちょ、君の攻撃から抜け出せたのに何で笑ってるんだお」
不自然なタイミングで笑い始めるマルタスニムに対し、疑問を投げ掛ける。
それでも、マルタスニムは笑い続けるのみなのであった。
( ^^ω)「さて、君はどこの毛なのか見させてもらうホマwww」
言葉が耳に届くと同時に、ブーンは一つの違和感に気付く。
さっきまで大量に群がっていた虫が、一匹もいないのだ。
いや、いなくなったのではない。
(;^ω^)「あれれ〜? スネに虫が集中しているよ〜?」
一瞬では目の届かない場所に集まってきたのだ。
しかも自分の武器、スネ毛の元へと。
( ^^ω)「君はスネ毛だったホマか。別にどうでも良いホマ。さっさと食うホマ!」
マルタスニムが虫へと命令を下す。
と、同時に更に活発になる毛の虫達。
(;^ω^)「これはまずいかもわからんね」
- 21: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:34:41.13 ID:PgYnTDDW0
- 数分後、そこにはスネがツルツルになったブーンの姿が。
( ^ω^)「もう若干時期の過ぎたネタなんかやらないよ」
( ^^ω)「君に武器はない。これで僕の優勝決定ホマwwww」
ここで種明かし。実はこれ、マルタスニム以外全員仕掛け人。
Σ(;^^ω)「ホマッ!?」
( ^ω^)「スネ毛復活っすwwwサーセンwwww」
ブーンの肩に掛けられた鞄の口は開き、握られた手には一本の発毛剤。
残された発毛剤を使い切り、ブーンはスネ毛を元に戻したのであった。
(;^^ω)「そ、その手があったホマか……」
- 24: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:36:38.35 ID:PgYnTDDW0
- (;'A`)⌒*(;・∀・)*⌒「そ、その手があったか……」
モニターの前の二人も驚愕としていた。
どちらも、マルタスニムの虫に毛を食われ、パニックに陥った結果に負けた人間だ。
無力化というあまりの現実に、冷静さを失っていた。
_
( ゚∀゚)「普通に考えればわかるだろ」
ジョルジュの呟きが、耳に痛く響いた。
普通な状況ではなかったのだから。
(;'A`)「しかし、まだまずいぞ。ブーンは今ので発毛剤を使い切っちまった」
ドクオの目は、しっかりとモニターへ向けられている。
(;'A`)「もう一度毛を食われたら終わりだ。しかも敵の毛は……」
( ^^ω)『僕の毛は、モモ毛ホマ』
モニター内とモニター外の言葉が、繋がった。
- 25: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:38:05.41 ID:PgYnTDDW0
- ( ^ω^)「モモ毛……かお」
( ^^ω)「そうホマ。モモ毛は絡ませると虫を作ることができるんだホマ。そいつで君を倒そうとしたのに……」
顔に少しの悔しさを出して、言葉を紡ぐ。
その中の、一つの単語にブーンは反応を見せた。
( ^ω^)「虫……。スネ毛と同じ能力だお」
二人の意外な共通点。
使う毛は違っても、虫を使う点では同じである。
ブーンの言葉に、マルタスニムも反応を示した。
( ^^ω)「スネ毛も虫ホマか。これは対策をとっておいて正解だったホマね」
( ^ω^)「対策かお?」
( ^^ω)「モモ毛は強いホマ。相手の毛を食うし、手に近いからすぐ虫を作れる。だけど、一つ弱点があったんだホマ」
( ^^ω)「それは、モモ毛が髪の毛やチン毛とかに比べると比較的薄い点だったホマ」
本人の口から発せられる、モモ毛の弱点。
- 26: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:39:27.03 ID:PgYnTDDW0
- ( ^^ω)「だから僕は予め、勝ち取った発毛剤を全部使っておいたんだホマ」
月明かりに照らされて、静かに姿を見せるモモ毛。
よく見ると、確かにモモ毛にしてはだいぶ濃い気がする。
( ^^ω)「これでスネ毛の君との差はなくなったホマ。しかもモモの方が手に近いから虫を早く作れる」
( ^^ω)「つまり、結局は僕の有利なままなんだホマ」
そう言葉を残し、またしても虫を投げ付けてくるマルタスニム。
話している間にまた、虫を作っていたのであろうか。
ブーンの気付かぬ内に、大量の虫が犇めいていた。
(;^ω^)「おっ! 危ないお」
咄嗟にスネ毛を絡ませて、応戦する。
しかし相手はモモ毛だ。
流石に虫を作る速度が速い。
(;^ω^)「くっ!」
遂にスネ毛が追いつかなくなってきた。
少しずつ、だが確実にモモ毛の虫はスネに降り注いでくる。
生やしたばかりのスネ毛が薄くなっていくのが、はっきりと見て取れた。
- 27: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:41:28.92 ID:PgYnTDDW0
- (;^ω^)「やべぇwwwまたツルツルwwww」
モモ毛によって、再度スネ毛を食われてしまった。
それは暗に、ブーンの敗北を示していた。
( ^^ω)「やっぱ僕の勝ちだホマwwwそしてとどめに……」
若干薄くなったモモ毛、全てを絡ませる。
出来上がったのは拳大の黒い塊。
なにやら小さく動いている。
( ^^ω)「幼女から奪った育毛剤の出番ホマ」
塊に、容器に残っている液体全部を振り掛ける。
掛けられた塊は、今までの動きを止め、段々と大きく硬くなっていった。
(;^ω^)「これは……」
数秒後、塊の一部にヒビが入る。
そこから出てくる一つの姿。
羽を大きく広げ、空へと羽ばたき出す。
( ^^ω)「これは強そうだホマ」
羽にまとわりつく鱗粉を振りまきながら、毛から産まれた一つの命。
巨大な『蛾』が闇夜を舞い上がり、空から二人を見下ろしていた。
- 29: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:43:38.44 ID:PgYnTDDW0
- (;゚ω゚)「あわわわわわ……」
あまりの迫力に思わず尻餅をつく。
すると、小さく耳に届く、カツン、という硬質な音。
( ^^ω)「さぁ、モモ毛の蛾! 僕が親だホマ! 降りてきてこいつを倒すんだホマ!」
空に向かって発せられる命令。
宙で停止していた蛾が、ゆっくりと降下する。
闇夜に鱗粉の色付けをしながら。
( ^^ω)「これで僕の優勝が決定ホマ」
勝ちを確信して、安堵の声を漏らす。
この一瞬の間であった。
(;^ω^)「あ、危なかったお……」
――二人の形勢が逆転するのは。
- 30: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:46:15.21 ID:PgYnTDDW0
- (;^^ω)「え? な、何が起きたんだホマ?」
思わず呆然。
確か蛾が襲いに行ったはずだ。
なのに、ブーンは傷一つ負っていない。
( ^ω^)「デミタスの時の発毛剤をポケットに入れていたのを忘れていたお。
尻餅ついた時にポケットから転げ落ちてうめぇwwwww」
夜空に優雅に舞い上がる、巨大な蝶。
蛾が色付けた空間を、蝶の鱗粉が更に上塗りする。
( ^ω^)「発毛剤も育毛剤も、全部使った僕の本気だお!」
そして、蝶とは対照的に、地に朽ち果てる巨大な蛾。
(;^^ω)「蛾が……蛾がやられるだなんて……。って、ホマ?」
( ^ω^)「蝶に乗って空飛ぶの気持ち良いお! って、お?」
(;^^ω)(;^ω^)「「スネ毛人形落としとる――!」」
バックの口を開けたままにしておいたのがいけなかった。
蝶に乗って舞い上がる瞬間、ブーンの人形が落ちてしまっていたのである。
- 32: ◆qvQN8eIyTE :2007/09/06(木) 23:48:05.75 ID:PgYnTDDW0
- ( ^^ω)「うはwwwwチャンスwwwww」
(;^ω^)「うはwwwwヤバスwwwww」
同時に言葉を発し、同時に人形へと駆け寄る。
片方は真っ直ぐと、片方は真下へと。
( ^^ω)「この人形を取って」
(;^ω^)「人形を奪われないようにして」
( ^^ω)「最終的に」
(;^ω^)「勝ち残るのは」
( ^^ω)(;^ω^)『僕だ「ホマ」「お」!!!!』
二つの影が、月明かりの元で、激しく重なった。
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