( ^ω^)と大切な腕時計のようです
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:33:01.95 ID:FRm2Ep060
- チク、タク、タク
時計は動く、休まず動く。
チク、タク、タク、
彼は目で追う、針を追う。
チク、タク、タク
彼は働く、休まず動く。
チク、タク、タク
時が追うのは彼のこと。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:33:42.30 ID:FRm2Ep060
( ^ω^)と大切な腕時計のようです
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:34:38.31 ID:FRm2Ep060
- ( ,,゚Д゚)「おい、内藤。てめぇ、書類の整理終わったのかよ?」
(;^ω^)「す、すいません。あと少しで終わるので、待っていてください。」
( ,,゚Д゚)「ちっ、ホントにとろくせーやつだよ。先生に気に入られてなければ、他の部署に飛ばすとこだぜ。」
・・・ここは、雑誌「VIPクオリティ」の編集部
連載小説やファッション、様々な特集を記事にして扱い、幅広い層から支援を受けている
ただ、僕はそんな人気雑誌を扱って働いているとは思えない程どんくさい
今も、編集長に怒られている
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:35:29.66 ID:FRm2Ep060
そんな僕が、ここで働かざるを得ない理由が一つある
・・・それは『ツン先生』の存在である
( ,,゚Д゚)「おい、内藤。・・・ツン先生がお呼びだ。」
( ^ω^)「・・・!わかりました。今すぐ行ってきますお。」
( ,,゚Д゚)「くれぐれも、怒らせるような事はするなよ。
・・・ちっ、何でツン先生もお前なんかを気に入っているのか・・・。」
ギコ編集長は小声だが、わざと僕に聞こえるようにそう言った
このような人だから、僕はあまり好きになれない
むしろ、嫌いの部類に入る
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:36:19.31 ID:FRm2Ep060
ツン先生とはVIPクオリティの人気連載作家である
感動を、笑いを、情熱を、多くの感情を沸き立たせる文章を書く
彼女の小説を読む為にこの雑誌を購読する人も少なくない
そして、どういう訳だが、僕はツン先生に気に入られ、専属の担当として編集部に居る訳である
・・・しかし、真実は誰も知らない
ギコ編集長でさえも知らない事
僕はツン先生に気に入られてなんかいないと思っている
むしろ・・・
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:37:32.23 ID:FRm2Ep060
腕時計を逐一、確認しながら、僕はツン先生の自宅へ向かう
先生は時間に厳しく、1分、1秒でも早く着かなければならない
おかげで、僕には『時計を見る』という癖がついてしまった
だが、時計の針が進むのを見ると実感してしまう
・・・僕は先生の家に近づいているんだな、と
重い足取りをどうにか進め、ようやくツン先生の家に着いた
大きく深呼吸をして、心の準備をしてからインターフォンを押す
直後、聞こえる罵声
ξ#゚听)ξ「遅い!私が編集部に電話をしてから、32分24秒!!これは一体どういうこと!」
30分以内に着かないと先生は怒ってしまう
もっと急がなくてはならなかったか・・・
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:38:53.60 ID:FRm2Ep060
ツン先生の家に入ってから、さらに30分
僕はいまだに、先生のお小言を聞かされていた
ξ#゚听)ξ「大体ね!いつも言ってるのに何で遅くなるわけ!?あんた何様!?」
( ´ω`)「す、すいません。これでも急いだつもりで・・・。」
ξ#゚听)ξ「言い訳なんか聞きたくないの!あーもう、イライラするわねっ!!」
もっとも、会社からここまで普通に着たら40分は楽に掛かる
ξ゚听)ξ「まぁ、いいわ・・・。次からは絶対に遅れるんじゃないわよ!?」
( ´ω`)「は、はい、ありがとうございますだお・・・。」
この問答も一体、何回目のことやら
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:40:32.22 ID:FRm2Ep060
ξ゚听)ξ「それでね・・・、今日は小説の続きが出来たから。原稿を渡そうと思っていたの。」
( ^ω^)「本当ですかお!?いつもありがとうございm」
ξ゚听)ξ「でも、ね。」
ああ、今日もまた何かあるのか・・・。
ξ゚听)ξ「あなたが遅れてきたから、渡す気が無くなっちゃった。」
(;^ω^)「そ、それは・・・すいません。どうしたら渡してくれますかお?」
ξ゚听)ξ「・・・大人の謝り方ってやつがあるでしょ?」
・・・それは土下座をしろという意味
社会に出てから土下座をするというのが、どんなに屈辱であることか
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:41:48.53 ID:FRm2Ep060
しかし、僕はやらなくてはならない
これをしなくては僕の仕事が無くなってしまう・・・
僕は地面に跪き、彼女に頭を下げた
( ´ω`)「すいません・・・もう遅れませんので、原稿を渡してもらえないでしょうか?」
こうまでしても、彼女は認めない
ξ゚听)ξ「・・・頭が高いわよ。ん?」
そう言って彼女は僕の頭を踏みつけ、地面に何度も叩きつける
こんな姿を妻に見られたら・・・
ξ゚听)ξ「あんたにはこの程度がお似合いよ。私がいなけりゃ、どうせ仕事も無くなるんでしょ?」
当たっているだけに、余計に腹が立つ
・・・しかし、悔しくても耐えなければならないんだ
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:43:34.61 ID:FRm2Ep060
ξ゚听)ξ「まぁ、これぐらいで許してあげるわ。ほら、今日の原稿。」
( ^ω^)「・・・ありがとうございますだお!今後も宜しくお願いしますだお!」
そう言い残し僕は先生の家を出て行った。
本当は2度と来たくなど無い
しかし、会社のため、家族のため、僕は耐えなくてはならない
そうして、会社に戻った僕
僕は分かっている
どうせ、また怒られるんだろうな、と
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:45:00.91 ID:FRm2Ep060
( ,,゚Д゚)「遅かったじゃねぇかよ、内藤。あ!?」
(;^ω^)「す、すいませんだお。僕が遅刻してしまって、先生に説教を・・・。」
( ,,゚Д゚)「遅刻だぁ!?てめぇ!先生を怒らせるようなマネはするんじぇねぇって言っただろうが!」
編集長の拳が僕の腹に突き刺さる
( ω )「げほっ!がっ・・・、ず、ずいまぜん・・・。」
( ,,゚Д゚)「ちっ、もういい、お前は帰れ。お前がいたって邪魔なだけなんだよ。」
( ω )「わ、わかりました・・・。お疲れ様でしたお・・・。」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:46:47.12 ID:FRm2Ep060
マンションの12階、突き当たりにある部屋
それが、僕の家である
そこでは、先程までの事が嘘のような幸せが僕を待っている
(*゚ー゚)「お帰りなさい!あなた。今日は早かったわね。」
( ^ω^)「ただいまだお。しぃ。・・・ん、今日のご飯はカレーかお?」
(*゚ー゚)「もう、匂いで嗅ぎ付けないでよ。でも、あなたカレー好きでしょ?」
( ^ω^)「もちろんだお!」
(*゚ー゚)「じゃあ、すぐにご飯にしますからね・・・。ポッチと遊びながら待っててね?」
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:48:23.23 ID:FRm2Ep060
僕が持っている3つの幸せ
その一つが妻であるしぃである
10年程前、大学時代に一目ぼれ
何度も何度も諦めずに、アプローチを続け、ようやく付き合うことができた
結婚してからは、まだ2年しか経っていないが、僕達には10年の絆がある
その絆はとても強く、太く、頑丈で簡単には切れる筈はない・・・と僕は思っている
家事も文句一つこぼさずにこなしてくれている
彼女と居られる事は間違いなく僕にとっての『幸せ』である
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:49:34.39 ID:FRm2Ep060
ポッチ「わん!わん!わん!」
( ^ω^)「おっお!ポッチ、ただいまだお!」
リビングに入ると、小型のビーグルが尻尾を振りながら走り寄ってきた
僕の持つ幸せの二つ目がこのペットのポッチである
幼い頃から、将来は犬を飼おうと思っていた
ようやく叶えた長年の夢
ポッチと遊んでいると時間を忘れるくらい楽しい
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:50:35.12 ID:FRm2Ep060
しばらくの間、ポッチと戯れていると、しぃがお皿を持ってあらわれた。
(*゚ー゚)「ほら、あなた。カレーができましたよ〜。」
( ^ω^)「美味しそうだお〜、ね、ポッチ?」
ポッチ「ワン!」
(*゚ー゚)「はい、ポッチにはドッグフードね?」
( ^ω^)「味わって食べるお〜。」
ポッチは勢いよく、ドッグフードを食べる。
よほど、お腹がすいていたのか、美味しいのか。
思わず、笑顔がこぼれた。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:51:59.67 ID:FRm2Ep060
ふと、腕時計を見てしまった。
(*゚ー゚)「もう、仕事中じゃないんだから、腕時計くらい外したら?」
( ^ω^)「うーん、でも、これを付けていると安心するんだお。」
3つ目の幸せ。
それはこの腕時計である。
これは亡くなった父から譲り受けたもので、かなりの年代ものである。
しかし、未だに現役。
仕事中には僕を助けてくれる。
また、何も無いとき、この時計の動く音を聞くだけで心が洗われるように感じる。
曖昧な表現としてではなく、言葉通りの意味として僕の宝物である。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:53:40.44 ID:FRm2Ep060
・・・この家は僕の天国である
誰にも邪魔をされない、誰にも汚されない
外でどんな事があろうとも、ここでは落ち込むことなどない
ここで過ごす時間は至福の時
全ての苦労を忘れ、幸せな時間だけが過ぎる
この場所を守るため、ぼくは働く
この幸せを守るため、ぼくは働く
・・・この場所があるからぼくは生きる
ここは僕の全てである
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:04:05.43 ID:FRm2Ep060
その日は僕としぃの結婚記念日だった
仕事を早めに終わらして、帰路に着こうとする僕をギコ編集長が止める
( ,,゚Д゚)「内藤、・・・ツン先生の原稿はまだなのか?」
( ^ω^)「電話が無いと言うことはまだだと思いますお。」
( ,,゚Д゚)「おかしいな・・・。普段なら、これぐらいに書き終えているはずなのに・・・。
お前、ちょっと先生の家行って様子みてこいよ。」
(;^ω^)「で、でも、今日は僕の結婚記念日で・・・」
( ,,゚Д゚)「あ?お前の記念日だからなんなんだよ?仕事のほうが大事・・・そうだろ?」
そういって、ギコは硬く握った拳を僕にみせつける
僕が断ったら問答無用で殴るつもりなんだろう
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:05:49.05 ID:FRm2Ep060
- ( ´ω`)「わ、わかりましたお。いますぐ、行ってきますお。」
( ,,゚Д゚)「だよなぁ。原稿貰って来るまで家に帰れないぐらいの気持ちでいろよ。」
( ´ω`)「は、はい。頑張りますお。」
会社をでて、時間を確認する
時刻は既に7時・・・遅くなってしまうかもしれない
別に遅刻してはいけない訳ではないが僕は急いで先生の家へ向かった
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:07:26.64 ID:FRm2Ep060
先生の家のインターフォンを押し、話しかけた
ここまで少し走ったので息が荒くならないように注意する
( ^ω^)「す、すいません、VIPクオリティ編集部の内藤ホライゾンです。」
「ん・・・内藤?何よこんな時間に」
( ^ω^)「えーと、ギコ編集長が原稿は既に出来ているはずだから貰ってこいと言われて・・・。」
「・・・とりあえず、あがりなさい。」
僕は招かれるままに先生の家にあがらせてもらった
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:08:21.37 ID:FRm2Ep060
ξ゚听)ξ「・・・いらっしゃい。」
(;^ω^)「お、お邪魔しますだお。」
見るからに不機嫌そうな顔をしている
突然、押しかけたのだから当然か
ξ゚听)ξ「別にあんたに怒ってるわけじゃないわよ。原稿だって出来てるし。」
(;^ω^)「・・・お?」
そういって先生は僕に原稿をポイッと投げつけた
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:09:20.80 ID:FRm2Ep060
ξ゚听)ξ「・・・あんた、今日、結婚記念日じゃなかったの?」
(;^ω^)「知ってるんですかお!?」
ξ゚听)ξ「何年、一緒にやってきてると思ってるのよ。話だって何回かしたじゃない。」
(;^ω^)「確かにした記憶はありますお・・・。」
驚いた
話をした事は確かにあったが、先生が聞いてくれていたなんて
てっきり、聞き流しているものと思っていた
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:10:21.07 ID:FRm2Ep060
ξ゚听)ξ「そこまで、あからさまに驚かれるとむかつくわね・・・。」
(;^ω^)「す、すいませんだお。」
ξ゚听)ξ「別にいいわよ。そりゃ、ストレス解消にいろいろやってるけど、記念日までいじめようとは思わないわ。」
(;^ω^)「ストレス解消ですかお?」
ξ゚听)ξ「そうよ。・・・作家なんて仕事してるとね、人との関わりがあまり持てないのよ。」
ξ゚听)ξ「だから、一番繋がりがあるアンタの事は嫌いじゃないわ。むしろ、感謝してるぐらい。」
ξ゚ー゚)ξ「わがままな私に付き合ってくれていてありがとってね。」
先生はにっこり笑いながらそう言った。
初めて見た表情、僕は単純に綺麗だなと思った。
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