( ^ω^)と大切な腕時計のようです

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:11:59.83 ID:FRm2Ep060


ξ゚听)ξ「さて、もうすぐ8時になるわよ。急いで帰りなさい。」

( ^ω^)「わかりましたお!ありがとうございましただお!」

ξ゚听)ξ「あ!ちょっと、待ちなさい。アンタ、プレゼントとか買ったの?」

(;^ω^)「あ、そういえば、忘れてたお・・・。」

ξ゚听)ξ「どうせ、あんたの事だから、そんなとこだと思ったわ。」

ξ゚听)ξ「駅前に『バーボンハウス』ってお店があるから、行ってみなさい。面白いものがあるかもよ。」

こんなに先生とまともな会話をするのは久しぶりだった

なので、僕は疑問をぶつけてみる

( ^ω^)「・・・どうして、今日はそんなに優しくしてくれるんだお?」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:13:16.53 ID:FRm2Ep060

ξ゚听)ξ「アンタに対する罪滅ぼしと、今までの感謝を込めてってとこかしらね。」

それと、と彼女は続けて言う。

ξ゚听)ξ「いい?記念日っていうのは女の子にとって、とてもとても大事なものなの。
・・・その為に急ぐアンタの様子をみたらなんだか心をうたれてね。」

ξ゚听)ξ「わかったら、さっさと行きなさい。女の子を泣かしたりしたら、承知しないわよ?」


いつものツン先生からはとてもじゃないけど、想像出来ないような優しさがそこにはあった

別の立場で出会っていたら僕は彼女に心を奪われていたんだろうな、と思う



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:14:23.44 ID:FRm2Ep060


( ^ω^)「先生。」

ξ゚听)ξ「何よ?」

( ^ω^)「これからも宜しくお願いしますだお。」

ξ゚听)ξ「こちらこそ。『私の専属担当者』さん?」



今日を境に僕の先生に対する苦手意識はなくなるだろうな

先生も若くして人気作家になり、かなりのプレッシャーがあったので僕をストレスの捌け口にしていたのだろう


今日は、先生を理解することを止めてしまった僕に訪れたチャンスだったんだな、と思った



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:15:54.79 ID:FRm2Ep060

小走りで駅前の『バーボンハウス』へ向かった

店内へ入り僕は思う。・・・ここはバーじゃないのか?


(´・ω・`)「いらっしゃい。雑貨店バーボンハウスへようこそ。」


お店の店員さんらしき人がそう言った。名札を見ると、ショボンと書かれている。


改めて店内を見てみると値札の付けられた小物が色々と置いてあるのに気付いた。

確かに、ここは雑貨店らしい。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:17:30.81 ID:FRm2Ep060

(´・ω・`)「どのような物をお探しですか?」

( ^ω^)「あ、結婚記念日のプレゼントを探しにきたんですお。」

(´・ω・`)「そうですか、それではこちらの方の物が宜しいかと。」

ショボンさんに連れられ店の奥の方へ行くと、ガラスケースがあった

中では指輪やネックレス、イヤリングなどが光り輝いている

( ^ω^)「ん〜どれも、綺麗な物ばかりで悩むお。」

(´・ω・`)「じっくりと考えてお選びください。きっと、お気に召すものがあると思います。」



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:18:52.97 ID:FRm2Ep060

しばらく眺めていると、ある指輪が目に止まった

金色のリング、黄緑色に輝く宝石


目立っていたわけではないが、僕の目にはそれが一番美しく、光り輝いているように感じた

( ^ω^)「この指輪は?」

(´・ω・`)「・・・その指輪を選ぶとは、驚きです。」

( ^ω^)「どういうことだお?」

(´・ω・`)「その指輪に付いている宝石はペリドットと言って、宝石言葉は『夫婦の幸福』なんですよ。」

不覚ながら、僕はその言葉に運命を感じてしまった



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:20:15.81 ID:FRm2Ep060


( ^ω^)「じゃあ、これを買うことにしますお。」

(´・ω・`)「ありがとうございます。お会計は2万と5千円になります。」


支払いを済ませようと、サイフの中を見てみると・・・足りなかった。

ああ、初めからプレゼントの事を忘れていなければ・・・


( ´ω`)「・・・すいません、お金が足りないので買えないみたいですお。」

(´・ω・`)「いくら足りないんですか?」

( ´ω`)「丁度、5千円ですお。」

(´・ω・`)「なら、後の5千円分は私からの記念日祝いです。どうぞお受け取りください」

ショボンさんは、そう言って指輪の入った箱を手渡してきた



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:21:22.18 ID:FRm2Ep060

(;^ω^)「え、いや、そんなのは悪いですお。」

(´・ω・`)「・・・あなたは内藤ホライゾンさんですよね。」

(;^ω^)「ど、どうして僕の名前を知ってるんだお?」

(´・ω・`)「ツン先生が、よくこのお店であなたの話をするので、そうじゃないかなと。」

(;^ω^)「ツン先生がですかお?」

(´・ω・`)「はい。いつも迷惑をかけているから、もしここに貴方が来るようならサービスしてやれ、と言われております。」

(´・ω・`)「ツン先生はお得意様なんですよ。ここの商品もほとんどがツン先生に買ってもらっています。」

(´・ω・`)「ですから、ツン先生の為、そして私の貴方への祝いの気持ち、二つでこの指輪の値切りというのはどうでしょう。」



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:22:42.36 ID:FRm2Ep060

( ^ω^)「本当にいいんですかお?」

(´・ω・`)「はい。貴方の目は信用するに値しますよ。」


淡々とした口調

でも、この人の心の優しさも本物だ


( ^ω^)「・・・ありがとうですお。きっとまた、このお店に来ますお。」

(´・ω・`)「ええ、お礼とするなら、それが一番ありがたいです。・・・またのご来店をお待ちしております。」



ツン先生に、ショボンさん

一日に二人の人から暖かい気持ちをもらった僕は確かに『幸せ』を感じていた。



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:24:20.35 ID:FRm2Ep060

一度、会社に戻ってみたがギコ編集長はいなかった

仕方ないので編集長のデスクに原稿を置いていき、家に帰ることにした


時計を見ると、時刻は9時過ぎ
少し遅くなってしまったが、きっと、しぃは待っていてくれるだろう。


せっかく手に入ったプレゼント
どうせなら、驚かして喜ばしてやろうと思ったので、玄関の扉を静かに開けて中に入る


すると玄関には見知らぬ靴

聞こえる談笑

僕は耳をすます・・・



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:25:35.95 ID:FRm2Ep060

「おい、しぃ、これ上手いな。」

「でしょ?自身作なんだから。」

「ははは、それにしても、結婚記念日にこんな事してていいのかよ?」

「ギコ君が言ったんじゃない。『内藤は仕事で遅くなるだろうから、家に行ってもいいだろ?』って」

「そうだっけか?お前が寂しいって言ったんじゃなかったっけ?」

「もー、違うよー。でも、寂しかったのはホントかな。」

「しぃは寂しがりやだからなぁ。」

「だって、ギコ君とはなかなか会えないし・・・。」

「何でお前みたいなやつが、内藤なんかと結婚したんだよ。納得いかねぇな。」

「だって、しつこかったんだもん。あの時は彼氏もいなかったし、いいかなと思って、そのまま・・・。」



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:26:54.66 ID:FRm2Ep060

「まぁ、いいや。どうせ、内藤も深夜まで帰ってこないと思うから、それまで『浮気』を楽しむとしよーぜ。」

「・・・ギコ君はいつ帰っちゃうの?」

「あー、12時だな。さすがに、それ以降はやべぇ。」

「じゃあ、それまでは可愛がってね?」

「あぁ、もちろんだ、しぃ・・・。」

「ワン!ワン!ワン!」

「あー?なんだよこの犬。うざってぇな!」

「ちょっと、ポッチのこと蹴ったりしちゃダメだよ。一応、ダンナのお気に入りなんだから。」

「・・・俺はお前がお気に入りだぜ」

「やだ、も〜」



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:27:43.69 ID:FRm2Ep060

僕はガクリと膝を落とす


・・・。

・・・。

・・・。

あははははははは。

あははははははは。

あはははははははははははははは。

何だこれ?



してVIPがお送りします。 投稿日: 2007/06/23(土) 22:28:14.00 ID:AN//8SzYO
ブーン!!見ちゃだめだ!!!!
75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:28:32.97 ID:FRm2Ep060

ここは僕の家

ここは僕の天国

ここは僕の全て

壊されてしまった

汚されてしまった



僕の全てがなくなってしまった



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:29:20.73 ID:FRm2Ep060

うなだれていた僕は立ち上がり、静かにリビングのドアを開ける。

瞬間、固まる二人


( ^ω^)「ギコ編集長いらっしゃいだお。」

(;,,゚Д゚)「な、内藤、これはだな・・・」

( ^ω^)「安心してくださいお。ツン先生の原稿は机の上に置いてありますお。」

(*;゚ー゚)「あなた、あのねこれは・・・。」

( ^ω^)「大丈夫。うん、ちょっと待ってて欲しいお」


僕が向かうのは台所

そこで僕が手に入れるものは包丁



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:30:05.89 ID:FRm2Ep060

( ^ω^)「あはははははは、ギコ編集長。いままで、お仕事、お疲れ様でしたお。」

(;,,゚Д゚)「え、一体どういうこ・・・」

ギコが何かを言い終える前にお腹に包丁を突き刺す

その包丁を埋め込むかのように奥へ、奥へ

呻きながら倒れるギコ

恐らく助からないだろう

それ程の手ごたえがあった


(*;ー;)「い、いやぁ、ギコ君っっ!!」

しぃが死にかけのギコに駆け寄った



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:31:05.62 ID:FRm2Ep060

( ^ω^)「どうしたんだお、しぃ?これで僕達の家は守られたんだお!」

(*;ー;)「な、何言ってるのよ!・・・この『人殺し』!!」


人殺し

その言葉を聞いた瞬間、僕は理解する

こいつも『敵』なのだと


(* − )「え、ぐ・・・が・・・」

僕はしぃの首を思いっきり握り締める

息を止めるのではない

その首を握り潰すぐらいの勢いで



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:32:22.13 ID:FRm2Ep060
ポッチ「ワン!ワン!ワン!」

まるで、しぃを守ろうとするかのようにポッチが僕を吼える

・・・お前もか

( ゚ω゚)「お前もなのかおおおおおぉぉぉ!!!!!」



しぃの息の根が止まったと感じ、次にポッチを殴りつける

多少の反抗はみせるが所詮は小型犬

僕が疲労を感じるほど殴りつけた時点で既に、ピクリとも動かなくなっていた



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:33:05.11 ID:FRm2Ep060

3つの肉塊の前に立ち尽くす僕

これで、全てが終わってしまったんだ・・・。



かすかにきこえた音。

それは最後の幸せの腕時計

チク、タク、タク

心を洗ってくれる筈の音も今は効果をなさない

チク、タク、タク

その音はただ、時を刻む音にすぎない



93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:34:21.43 ID:FRm2Ep060

( ^ω^)「・・・残されたのは君と僕だけだお」

時計に語りかけるかのように僕は言う


( ^ω^)「今日はとっても良い事があったんだお」

( ^ω^)「あのツン先生が僕に優しかったんだお!本当にびっくりしたお!」

( ^ω^)「そのあと、ショボンさんに会って、プレゼントを買って・・・。」

( ^ω^)「家に帰って、しぃにプレゼントして、本当に幸せな一日だったと思う筈だったんだお・・・。」


・・・でも


( ;ω;)「そうなる筈だったのに・・・。幸せであった筈なのに・・・。」

( ;ω;)「なんで、こうなってしまったんだおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」



97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:36:07.67 ID:FRm2Ep060
終わった世界で僕は泣き続ける

あふれ出る涙と、なくならない後悔の念

時計は黙ってそれを聞いている


たった一つ残った宝物


その時計も、もはや何の意味もなくて・・・

僕に時間なんて概念なんて、もう必要ないんだよ

・・・僕は動きたくないんだよ

ごめんね。僕は疲れたんだよ



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:36:56.04 ID:FRm2Ep060

( ;ω;)「それじゃあ、さよならだお。『僕の大切な腕時計』」

付いてしまった血を拭き、机の上に置く

最後に聞こえた時計の針の音は僕に別れの言葉を言っているように感じた



ベランダにでて

柵の上に立ち

そして、僕はそこから飛び降りた



103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:38:09.04 ID:FRm2Ep060

チク、タク、タク

追って追われて鬼ごっこ。

チク、タク、タク

時と彼との鬼ごっこ。

チク、タク、タク

でもね、終わり。もう、終わり

チク、タク、タク

止まってしまった彼の時。



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