('A`)ドクオは淫靡に溺れてしまったようです

18: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:15:43.32 ID:lYP/PE5p0

――PM5:00
太陽は何時の間にか沈みかけ、窓からうっすらと覗く空は薄い茜色に広がっていた。

この位の時間になると自然に目が醒める。
ここ一年ほど、まともに日光を見ていない。
俺には真夏の太陽は眩しすぎる。
むしろ、この夜型の生活に愛着を持ち始めていた。

('A`)「う゛い゛〜〜」

腐りかけのペットボトルの水を飲み干すと、
俺は布団に寝転がり一服しながら、携帯を開いた。
昼の間に来ていたメールと現在の時間を確認するための習慣だ。

だが、画面に視線をやった瞬間、俺は絶句した。

『       Eメール 106件      』

('A`;)「……まさか」

俺の手は震えた。
このメールの主には心当たりがあった。
考えられる事態はただ一つ。
差出人は……やはりコイツか。

俺はゆっくりと『Re:』とだけ書かれたメールを開いた。



20: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:17:26.91 ID:lYP/PE5p0
『From:miyuki-loves-dokkun@XXXX.ne.jp
 Title:Re:
 あいたいあいたいあいたいあいたいあいたいあいたいあいたい
 あいたいあいたいあいたいあいたいあいたいあいたいあいたい
 あいたいあいたいあいたいあいたいあいたいあいたいあいたい
 あいたいあいたいあいたいあいたいあいたいあいたいあいたい』

('A`;)「……」

冗談じゃない。
三流ホラー映画顔負けの内容だ。
まさか、彼女はあれからずっとメールを俺に送っていたのだろうか。
背筋に寒いものが疾る。

その後、確認の為に遡ってメールに目を通したが散々なものであった。

最初の方は、顔文字を使って
『どぉしちゃったのドッくん? 返事ちょうだ〜い(;_;)』
といった感じのものであったのだが、時間が経つごとにみゆきは狂っていった。
もはやスパムメール以外の何物でもない。

('A`;)「うん……デリートだな」

俺はメニューを開き、選択削除のボタンを押した。
改めて思い知ったが便利な機能だ。
そのまま上から順に、彼女のメールを削除する。
だが、それでも百件以上のメールを消すのは疲れるものだ。



23: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:19:12.02 ID:lYP/PE5p0
――と、

('A`;)「……?」

俺はすんでのところで指を止めた。
恐らく百五件目のメールを選択したところだろう。
勢い余ってボタンを押しそうになったが、なんとか踏みとどまった。
なぜならば、次のメールの差出人はみゆきではなかったのだから。

『    From:lover-of-nightmare@XXXXX.ne.jp
     Title:はじめまして                  』

('A`;)「いったい、誰だ?」

見たことのないアドレスだ。
一瞬、何者なのかが理解できなかった。
だが直ぐに俺はピンと来た。
そうだ、昨日出した唯一のあのメールだ。

そう考えるや否や、俺はメールの削除を中断しメールボックスへと飛んだ。
業者ではないかという疑いはあったが、やはり気になっていたのだ。
そして、メールを再び遡り問題の差出人からのメッセージを探し当て、
恐る恐る、ボタンを押した。



25: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:21:00.11 ID:lYP/PE5p0
『はじめまして、ドクオさん。私はMと申します。
 他の方々からも沢山のメールを頂いたのですが、
 文面、年齢等から判断して、貴方を選ばせて頂きました』

('A`;)「……ゴクッ」

差出人はやはり、掲示板にあの書き込みをしていた人物だった。
不自然に落ち着いた文面だ。
冒頭は簡単な挨拶から入り、次にドクオに返事を送った経緯が簡潔に書かれている。
さらに、メールにはまだ続きがあった。

『では、本題に入らせて頂きます。
 質問に答えるとするならば、私の彼女をお貸しする。
 そのままの意味です。勿論私抜きでデートに連れ出して下さっても、
 何でしたら、お好きなように彼女を抱いて下さっても構いません。
 
 但し、条件が一つだけあります。                       』

('A`;)「……何これ?」

理解できなかった。

彼女ということは、当然付き合っていてそれなりの関係があるのだろう。
それくらいは二十二年間彼女ナシ童貞の俺でも解る。
だが、そんな己の恋人を見知らぬ男に貸し出すとは正気の沙汰ではない。
このメールの主は何がしたいのだろうか。

とは言っても、まだ続きがある。
全部読んでみないことには、完全に意図がつかめない。
俺は疑問を無理やり押し込んで、更にその先を読むことにした。



26: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:23:09.91 ID:lYP/PE5p0
『メールを送っておいて失礼ではあるんですが、
 さすがに見知らぬ方を彼女に預けるのは、私にとっても彼女にとっても不安です。
 そこで、一度三人で会ってみたいと思うのですが、いかがでしょうか?
 もし、互いの事を気に入ることになるなら私は快く彼女を貸し出したいと思うのですが……』

('A`;)「おいおい……」

なおさら混乱してきた。
三人で会って決めるということか?
そもそも、恋人は簡単に貸し借りできるようなモノではない。
だが、このメールの主はドクオを気に入ったら彼女を貸し出すと言っているのだ。

幾つかの可能性が俺の頭の中を過った。

一つは、このメールが釣りであることだ。
ホイホイ呼び出されてノコノコ待ち合わせ場所に現れた人間をヲチするなんてことは、
2ちゃんなんかでは日常茶飯事だ。
出会い系の毒男など、奴等ちゃねらーの格好の餌だ。

……いや、しかし釣りにしては遠回しすぎる。
釣りならば最初から女を装うはずだ。
というか、その方が釣れるだろう。

もう一つは美人局である可能性だ。
要するに、何らかの形で俺に脅しを掛けて金を搾り取る。
自慢ではないが、俺は喧嘩に自信なんてない。
ヤの付く怖そうな人間がひとたび現れたなら、俺は簡単に財布を差し出すだろう。



28: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:24:57.43 ID:lYP/PE5p0
……これも何か引っかかる。

そもそも、フリーターまっしぐらの三流大学の学生を脅したところで大した金は出てこない。
実家も決して裕福とは言えないし、スロットで増えた借金のせいで俺の資産はマイナスだ。
だが彼は俺を敢えて、選んだ。
それに脅すのであれば、もっと裕福な金持ちのオッサンを選ぶはずだ。

('A`;)「う〜む」

いくら邪推したところで、思考は順々巡りだった。
この後の文は、俺の意見をもう少し聞きたい旨が書いてあるだけだ。
それ以上は何も書いていなかった。
とりあえずもう少し情報が欲しい。

俺はとりあえず相手の意図を引き出すため、返信することにした。

『お返事ありがとうございます。
 三人で会いたいとのことですが、やはりこういった場での交流なので不安はあります。
 もう少しやり取りをしてからの方が良いのではないでしょうか?              』

('A`;)「こんなもんか」

無難な返事だ。
だが、自分が警戒していることを暗に伝えている。
これでいい。
引っかからないという気概を相手に知らせることで、その反応を見たかったのだ。



32: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:26:43.35 ID:lYP/PE5p0
ブーッブーッブーッ

('A`;)「!?」

しかし、返事は思ったよりも直ぐに返ってきた。
一息ついて、煙草に火を付けようとした瞬間であった。
すぐさま灰皿に煙草を押し付けると、俺は携帯を拾い上げ、開いた。

('A`;)「ちょっ、マジっすか……」

『確かにそうですね。ドクオさんの言うことはもっともだと思います。
 では、こうしましょう。
 安心してもらいたい、という程ではありませんが、彼女の写真を添付しました。
 お好みに合いますかどうかは解りませんが、是非ご覧になってみてください。
 また、リクエストがありましたら随時、受け付けます。                』

ディスプレイから飛び込んで来たのは、二つの添付ファイルだった。
形式は画像、写メールだ。
俺は急いで一つ目のファイルをダウンロードする。
その中に映っていたのは一人の女性だった。

('A`*)「……いい」

『从'ー'从』

はっきりと印象を言えば、可愛い。
薄めの茶髪に控え目な化粧の清純そうな女性だ。
まさに好みのタイプだった。

……だが、待てよ。



33: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:28:29.09 ID:lYP/PE5p0
('A`)「写メだけでは信用できんな」

俺はふと、思いとどまった。
それなりの画像など、ネットでいくらでも拾える。
というか、俺もやったことがある。
その考えが、逆に俺を冷静にさせたのだ。

('A`)「ん? そういえばもう一枚あったっけな? ついでに見てみるか」

写メールは二枚。
どうせこれも拾い物だろう。
浅く考えながら俺は二枚目の画像をダウンロードする。

しかし、俺は次の瞬間、驚きの声を上げる事になる。

('A`;)「――ッ!!」

開いた口が塞がらなかった。
二枚目も彼女だった。
間違いない。
顔も一致している。

ただ、その姿が常軌を逸していたのだ。

('A`;)「……うへぇ」



34: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:30:28.33 ID:lYP/PE5p0
彼女は裸、だった。
しかも、ベッドの上で全身を縄で縛り上げられている。
所謂、亀甲縛りというやつか。
乳房がくっきりと寄せ上げられる程に、強く縛られているようであった。

さらに俺の視線を奪ったのが、その陰部だ。
両足首をベッドの柱から伸びる手錠で押さえつけられ、彼女自身の全てが露になっていた。
それだけではない。
その陰部には黒いバイブレーターが挿されているのだ。

('A`;)「……」

身体が凍りついた。
清純そうに見えた彼女のもう一つの姿に、だ。
女は見た目で判断できない、ということはテレビや雑誌の情報からなんとなく解っていたが、
それでも少々ショックであった。

だが、必死に俺は考えを切り替えようとした。

これは釣りだ、釣りに決まっている。
多分あれだ。
AVかエロ本から拾ってきた画像なんだ。
よし……だったら確かめてやろうじゃないか。

そして、俺は再び携帯を握り締めると、文章を打ち始めた。



35: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:32:13.71 ID:lYP/PE5p0
『写真ありがとうございました。とても可愛らしい彼女さんですね。
 ……早速で申し訳ないのですが、もう一枚写真を頂けませんか?
 ボールペンを右手に握っているポーズで。
 変なお願いですが、宜しくお願いいたします。              』

('∀`;)「へっ、これでどうだ。見てろ……直ぐにボロが出るはずだ」

そして、一気に書き上げると直ぐに送信した。

簡単な理屈だ。
ポーズさえ指定してしまえば、写真が偽者か本物かがはっきりする。
少なくとも拾った画像ならばペンを持ったポーズをしているものなど、あるはずがない。
これで面の皮が剥がせる。

勝ち誇ったような表情で俺は携帯を弄びながら寝転がった。
暫く携帯を眺めていたが、直ぐには返事が戻ってこなかった。
やはり、釣りだったか。
何時の間にか俺の心は勝利の余韻で満たされていた。

しかし、世の中には変わった人間がいるものだ。
釣りにしても自分の彼女を貸し出すなど、そうそう言える筈も無い。
余程の馬鹿か、頭のネジが外れているのだろう。
まあ、俺の物差しで相手を測るのがそもそも間違いなのかもしれない。

('A`)「ああ、眠みぃ……」

視界がまどろみ、瞼は重くなる。
沢山寝たはずなのに、まだまだ眠い。
これも不摂生の極みか。
俺は再び眠りの中に足を踏み入れた――



39: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:34:17.04 ID:lYP/PE5p0
ブーッブーッブーッ

Σ('A`;)「うおッ!?」

と、俺の本日二度目の睡眠は携帯のバイブレーションの音で遮られた。
不意の振動に俺は身体を震わせ、飛び起きた。
再び向けられた視線は、携帯。
メールの着信を知らせる赤いランプが点滅している。

('A`;)「……嘘だろ?」

俺は戸惑いを隠せなかった。
みゆきのアドレスは二度目の眠りに落ちる前に拒否した筈だ。
他に俺にメールをしてくる奴などいない。
だとすれば、可能性は一つ。

('A`;)「返ってきやがった……」

メールの差出人は、『lover-of-nightmare@XXXXX.ne.jp』
先程の『M』とか名乗る男からだ。
題名は『遅れて申し訳ございません』
そして、一つの添付ファイル。

俺は、本文を先に開いた。
相手がどう返してきたか知りたかったからだ。
いや、大体予想がつく。
だが、どうしても信じられなかった。



40: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:36:03.95 ID:lYP/PE5p0
『お待たせしました。
 中々彼女のポーズが決まらなかったので時間が掛かってしまいました。
 ドクオさんが喜んでくれれば幸いです。

 ところで、我々とお会いになって頂けますでしょうか?
 彼女の方も楽しみにしています。
 もし、興味がありましたら詳しい日取りを決めたいと思いますので宜しくお願いいたします。 』

('A`;)「……」

もはや言葉すら出ない。

俺は無言で本文画面を消し、添付ファイルをダウンロードする。
まさか、そんなはずはない。
釣りでFAだったはず。
まさか……まさか――

('A`;)「何……だと?」

俺の視線は釘付けになっていた。

そこに映っていたのは紛れも無い彼女の姿。
しかも、右手にボールペンを持って、だ。
だが、目に付いたのはそれではなかった。
もっと、下のほうだ。



42: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:37:51.36 ID:lYP/PE5p0
('A`;)「イカれてる……」

彼女は洋服を纏ってベッドに横たわっていた。

キャミソールにノースリーブを重ねたような白の上着に、黒のフリル付きのスカート。
街で良く見かける格好である。
しかし尋常ではなかった。
むしろ、先程の裸の写真よりも淫靡であった。

彼女は股を開いていた。
スカートの下には何も履いていない。
黒い逆三角形の陰毛とその奥の陰部が丸見えだ。
そして、その中には黒い物体が突き刺さっていた。

バイブではない。
輪ゴムで束ねられた蓋付きのボールペンだ。
一ダースはあるだろうか。
蓋の部分だけを残して全てを飲み込んでいた。

('A`;)「シャレになんねェぞ、これは……」

ただただ呆れ果てていた。
そこに映る彼女もそうだが、何よりも自分の彼女をあられのない写真を、
赤の他人に躊躇いも無く送るなんてマトモではない。
この男は何を考えているのだろう?

だが……



44: ◆KUIMWbIYTk :2007/06/24(日) 02:39:55.58 ID:lYP/PE5p0
('A`*)「……」

俺の股間は見事に反応していた。
携帯のその奥にあるリアル。
決して、AVやエロ本みたいな作り物なんかじゃあない。
紛れも無く、今までの中で一番近いところで行われている情事だ。

それに、俺は彼女に惹かれ始めていた。
先程も感じたとおり、彼女の外見は清純そのものだ。
それが男の欲望によって、好きなように汚されているのだ。
彼女の表情に幼さは残るが、何処か艶やかさも感じられるのは、そのせいなのかもしれない。

('A`;)「――ッ!? ……いかんいかん」

だが、俺は必死に落ち着こうとした。

この写真が本物である可能性は高い。
だが、それだけで相手を信用できるわけではない。
未だ彼等が何者であるかを知らないのだ。
誘われるがままに提案にのれば何をされるか保障できない。

('A`;)「う〜む」

俺は携帯を握り締めながら唸った。
さて、どうしたものか。
厄介ごとに巻き込まれるのは御免だ。
とはいえ、全く気にならないと言えば、嘘になる。

結局、俺は一晩中悩ましげな夜を過ごす事になった。



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