( ^ω^)ブーンは出会い、何かを見つけたようです

3: プロローグ :2007/06/25(月) 21:04:27.21 ID:55iB6RO00

前略
お久しぶりです。お元気ですか。
僕は無事大学に入学する事ができました。

貴方と過ごした1ヶ月間は僕にとって宝物です。
貴方からは沢山大切な事を教えてもらいました。
今でも目を閉じれば思い出します。あの梅雨の季節を。
・・・
・・


( ^ω^)「ふぅ、手紙を書くのって、なかなか疲れるお」

僕はペンを机の上に置き、大きく伸びをする。
それから、立ち上がり、電気スタンドの明かりを落とすと、ベッドの上にごろんと横になった。
――あの人と出会ってから、3年経つのか。
僕はクスリと笑って、思い出す。
梅雨の季節に出会った、浮世離れしていた女性の事を。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 21:06:29.48 ID:55iB6RO00

* * *

にちゃんねる国、VIP市。
沢山のビルが、隙間なく立てられ、町を灰色に染める。
人々がその間を、働き蟻のように秩序よく流れていく。
その街の片隅にある、寂れたビルの屋上に僕は立っていた。
僕は、今にも雨が降りそうな梅雨空を見上げ、ぼそりと呟く。

( ´ω`)「何をやっても駄目だお……死ぬお」

錆びたフェンスをゆっくりと乗り越え、あとは一歩踏み出すだけの所まで来た。
これで楽になれる。そう思うと、『死ぬ』事に対する恐怖が少しだけ和らいだ。
ガクガクと震える足を無理やり抑え付け、僕は一歩踏み出そうとした、その時。

「そこの御仁、何をしている?」

不意に後ろから声をかけられ、僕は驚きながら振り返った。
そこには長い黒髪を風になびかせ、背筋をしゃんと伸ばして立つ、着物姿の女性がいた。
整った顔には怪訝そうな表情が浮かんでいる。



5: プロローグ :2007/06/25(月) 21:09:22.75 ID:55iB6RO00

川 ゚ -゚)「まさかそこから飛び降りるつもりじゃあるまいな?」

( ´ω`)「だったらどうだって言うんだお……」

その言葉を発した瞬間。
フェンスがぐらぐらぐらっと思い切り揺れた。
女性が般若のごとき形相を浮かべ、こちらに駆け寄ったからだ。

川#゚ -゚)「ふざけるな!命を粗末にするでない、この戯けが!」

フェンスを揺さぶりながら、女性は怒りを露にする。
僕は最初、その剣幕に圧倒された。
しかし、だんだんと形容しがたい感情が沸々とこみ上げてきた。
それが溜まりに溜まり、臨界点を突破した瞬間、僕は女性に負けじと怒鳴っていた。

(#^ω^)「あんたに僕の何が分かるって言うんだお! 何も知らない奴が横からgdgd言うなお!」

川#゚ -゚)「命を粗末に扱う奴の事など、分かりたくもないわ!
      死んだら、もう取り返しがつかんのだぞ?」

(#^ω^)「こんな腐った世の中でいい事があるわけないお!」

川#゚ -゚)「腐ってるのはお前の性根だろうが!他のせいにするなど言語道断だ」

僕らは延々と大声で罵りあい続けた。
やがてどちらも疲れ果て、フェンス越しに背中合わせで座った。
しばらくの間、沈黙があたりを包む。
ただ、今まで経験したそれとは違い、不思議と居心地がよかった。



6: プロローグ :2007/06/25(月) 21:11:59.24 ID:55iB6RO00

敵意や蔑み、嘲りなどと言った、負の感情が一切混じっていない静かな時間。
それは今まで一度も経験した事のないものだった。

小学校高学年から高校に入った今も、僕はイジメに遭い続けている。
靴を隠された。鞄を隠された。教科書がトイレで水につけられていた。
机が外に捨てられていた。みんなが見てみぬふりをする。

色々と思い出して鬱になりかけたその時。

川 ゚ -゚)「時に少年、名は何と申す? 私の名は沙緒 空(すなお くう)だ」

( ^ω^)「僕は内藤歩雲(ないとう ぶうん)だお」

川 ゚ -゚)「了解した。して、ここはどこだ?」

( ^ω^)「○×商事だお」

川 ゚ -゚)「違う違う、この町は一体何というのだ?」

僕は一瞬、何故この人はこの町の名を知らないのだろうと思った。
しかし、そういう風変わりな旅人もいるのだろうと思いなおす事にし、この町の名前を素直に教えた。
だが、次の問いで本格的にクーの脳内を疑う事しか出来なくなった。

川 ゚ -゚)「今はいつだ? VIP60年ではない事は確かだが……」



7: プロローグ :2007/06/25(月) 21:14:28.15 ID:55iB6RO00

これには僕も流石に驚く事しか出来なかった。
第一、VIP60年は今からちょうど200年前である。
どう反応すればいいか悩んでいると、クーはどうやらそれを察したらしい。
一度思案するような表情を浮かべた後、困ったように微笑んだ。

川 ゚ -゚)「実は私はVIP60年の別府の住人なんだ。
     信じてもらえるなどとは到底思っておらんよ」

クーの言うとおり、そんなに簡単に信じられるような話ではない。
しかし、滅多に目にする事のない着物姿に、今はもう使われない古風な口調。
クーが別の時代から来た事を暗に物語っている。
それに、クーの真っ直ぐな瞳。僕はその瞳を見て、決めた。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 21:16:43.66 ID:55iB6RO00

( ^ω^)「信じる、ことにするお」

川 ゚ -゚)「それはまことか?」

暗かったクーの表情が一転。パッと明るくなる。

( ^ω^)「本当だお!とりあえず、帰れるまで僕の家にいるといいお」

川 ゚ー゚)「かたじけない……ブーンは私の命の恩人だ」

(*^ω^)「そ、そんな、大げさだお!」

こうして僕らの不思議な1ヶ月が始まった。



川 ゚ -゚)「ところで、この灰色の箱はなんだ? 化け物か?」

……なんだか先が思いやられる。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 21:17:48.82 ID:55iB6RO00
以上、プロローグでした
こんな感じで進んでいきます
お題がきたらすぐ取り掛かりますが、遅筆なのでご勘弁を



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