( ^ω^)はヌクモリティを取り戻すようです
- 37:◆uAn5dIn1Sw:05/24(木) 20:57 G4xEc5DbO
完結とか言っちゃったけど投下するね。
川゚‐゚)の前日談のようです
私は他人が苦手だ。
他人もまた、私が苦手だ。
優しさと温かさを失ったこの街で、
苦手は嫌悪に変わり嫌悪は陰湿ないじめとなる。
川゚‐゚)「……………」
まただ。
げた箱にはあるはずの私のローファーが無い。それもわざわざ片方だけだ。
川゚‐゚)「困ったな……これでは帰れない」
こうして独り事を言うのは悪い癖だ。
こんなだから私は独りなのかもしれないな。
仕方なく放課後の校舎を探して回る私。
よそから見たら滑稽な姿なのだろう。嘲笑があちこちから聞こえてくる気がする。
川 ‐ )「被害妄想はよくないよな……」
日はどっぷりと沈み、教室からも灯りが消える。
もう……諦めよう。
靴なんかまた買えばいいんだ。
……いいんだ。
川 ‐ )「いいんだ……いいんだ……」
泣くな。素直クール。泣くのは弱い女のすることだ。
きっと明日はいい日になるさ。きっと……
- 39:◆uAn5dIn1Sw:05/24(木) 21:15 G4xEc5DbO
仕方なくグラウンドで体育の時に履くスニーカーを履いて帰ることになる。
爪先には大きく
2-3 素直 クール
のほかに
根暗 キモイ 死ね
もういやだ。見るたびに涙腺が熱くなる。
川つ‐ )「……帰ろう」
(*゚ー゚)「あれ?素直さんなんでスニーカーで帰ろうとしてるの?」
テニス部のしぃか。
川 ‐ )「ほうっておいてくれ」
(* ー )「なによ。理由ぐらい教えてくれてもいいじゃない」
川 ‐ )「ほうっておいてくれ!」
これ以上人と話をしたら私は泣いてしまう。
(* ー )「相変わらずだね。その態度。
そんなだから靴隠されるんじゃないの?
ねえ、素直さん」
- 40:◆uAn5dIn1Sw:05/24(木) 21:30 G4xEc5DbO
何故だ。何故知っている。
川 ‐ )「お前がしたのか?」
(*゚ー゚)「いきなり犯人扱い?酷いなあ」
とぼけるな。その見下した笑みはバレバレだ。
(*゚ー゚)「みんな〜酷いのよ〜素直さんが私を泥棒呼ばわりするの〜」
止めろ。止めろ!
止めてくれ!
テニス部の部員が集まってくる。いやだ。
このままじゃ……
ξ゚听)ξ「クーってそんな酷いことする人だったんだ…」
ツン。私の少ない話し相手なんだ。そんな奴の言うことなんか信じないでくれ!
川;゚‐゚)「ツン!違うんだ!本当はこいつが」
ξ )ξ「私の友達疑うなんて……
最低」
頬に走る痛み。九十度横にそれる視線。
ξ )ξ「もう私に話しかけないで」
川;゚‐(#)「あ、ああ」
私は……私はどうすればいいんだ……
--------------------------------------------------------------------------------
- 42:◆uAn5dIn1Sw:05/24(木) 21:49 G4xEc5DbO
失意の中、通行人に奇異な目や生暖かい眼差しで帰宅した私は、
川 ‐ )「ただいま」
誰もいない家へと意味のない慣用句を告げる。
父と母はいつも仕事で遅く、一週間に一度顔を合わせるかどうかだ。
川 ‐ )「今日もコンビニか」
机の上には一万円札が一枚。
コンビニで晩御飯を調達するには余る金額だ。
親は小遣いさえ出せばいいとでも思っているのか?
川 ‐ )「私はもっと……」
やめよう。弱音を吐いたら私は私じゃなくなる。
私服に着替えてコンビニへと向かう。
……?メールだ。
ツンからか。件名はない。
きっと気づいてくれたんだ!
- 43:◆uAn5dIn1Sw:05/24(木) 22:03 G4xEc5DbO
ガシャン
川 ‐ )「うわああああっ」
携帯電話をアスファルトに叩きつけ、一目散に離れる。
もうあんな画面見たくない。
ツンからのメールには
もう顔も見たくない 学校来ないで
メールのことが忘れたくて走る。ただただ走る。
誰も信じられない。
気がついたら私は人気のない公園のベンチに一人、
いや独りで腰掛けていた。
必死に走って何度も転び、私は擦り傷だらけだ。
痛いよ。痛いよ。誰か助けてよ……
- 44:◆uAn5dIn1Sw:05/24(木) 22:18 G4xEc5DbO
('A`)「………」
負けた。
俺の負けるハズない格ゲーで負けた。
('A`)「アクトドライブフィニッシュかよ……」
よその街から来た奴に乱入されて負けるとか情けねえ。
あの後俺はヤケになってジュース一気のみしたんだ。
そしたら案の定トイレに行きたくなって、
公園の公衆トイレにやってきたのDA☆
別に変なことはなかった。
俺の息子が夜の寒さに縮まっていただけだ。
('A`)「はあーすっきりした」
とっとと家帰って家庭盤で練習しよう。
川 ‐ )
やだな……俺みちゃったよ……
俺霊感強いからな…ベンチに座っている女の霊みちゃったよ。
('A`)「ついてねえな……」
俺のじーちゃんのじーちゃんは霊能力強かったらしいからな。
俺にだって追っ払うぐらいできるさ。
それっぽいポーズ取って気合い溜めて、
(#'A`)「せいやっ!」
- 47:◆uAn5dIn1Sw:05/24(木) 22:36 G4xEc5DbO
何故だ!何故効かない。
そうか、まだ力のチャージが足りなかったんだ!
(#'A`)「ぬん!はあああああああっ!」
北斗神拳の北斗豪掌破の構えだ!
これで吹き飛べ!
悪霊退散悪霊退散
川;゚‐゚)
あれ?まだ効かないの?
てかなんか困った顔してるよ?
(;'A`)「人間ですか?」
川;゚‐゚)「あ、ああ」
- 48:◆uAn5dIn1Sw:05/24(木) 22:52 G4xEc5DbO
なんだこの男は……
私を見るやいなや、いきなりなにかの技を放ってきた……
まあ、何も起きないが。
川;゚‐゚)「あの……何の用でしょうか……」
(;'A`)「い、いや!女の子が一人で夜の公園にいるのは危ないととと思ってさ!あははっ」
完全に挙動不審だ。
最近のナンパはこんなに電波なのか?
よく見てみたらこの男、私と同じ学校の制服じゃないか。
あの学校にまだ、こんなに愉快な奴がいたのか。
……まだ、捨てたもんじゃないのかもな……
- 49:◆uAn5dIn1Sw:05/24(木) 23:01 G4xEc5DbO
(;'A`)「じゃ、じゃあな!気をつけろよ」
ピュー
って感じに五十メートル走を七秒台で走る足で逃亡。
ちょーはずかしーっ!
だいたいあんな死人みたいな鬱な顔してんのが悪いんだよ!
……笑えば結構可愛いかもしれないのによ。
赤っ恥かいた俺は家に帰って、
親父に門限破ったから殴られた。
今日はさんざんだったんだっぜ!
- 50:◆uAn5dIn1Sw:05/24(木) 23:49 G4xEc5DbO
朝だ。
飯食って歯磨いて制服に着替えて髪型軽くセットして学校に行く。
はっきりいってルーチンワークだ。
('A`)「だりい」
最近この学校が嫌いになってきた。
そもそも俺は勉強が好きなわけじゃあない。
気の合う連中とグダグダしてんのが好きなんだ。
ちょっと前からか?急に学校の連中の態度が冷たくなった。
俺の周りだけじゃなくて学校全体がだ。
('A`)「……はあ」
この学校は温かみを失っちまったんだ。
エラい人の考えた言葉だが、
ヌクモリティが足りない。
これが一番しっくりくる。
('A`)「どうしたもんかな……」
- 51:◆uAn5dIn1Sw:05/25(金) 00:10 3X9BLgUKO
('A`)「………」
あれ?あれれ?
川゚‐゚)
なんでいんの?
おかしいよね。昨日の夜会った女の子に学校でまた会うとかさ。
幸いにまだこっちには気付いていないみたいだな。
観察してみるか。
川゚‐゚)「今日も来てしまったな……」
学校に来れば酷い目に合うのはわかっている。
それでも、昨日の夜の
('A`)
あいつに会えればと思うと、足は自然と動くんだ。
- 53:◆uAn5dIn1Sw:05/25(金) 20:55 3X9BLgUKO
('A`)「よお!しけた面してやがんなあ」
やめだやめ。
コッソリ観察なんざ男のすることじゃねえ。
川;゚‐゚)「いきなりなんだ!」
予想通りの反応だよ。
とりあえず謝っておこう。
('A`)「昨日はごめん。以上」
これ以上関わってもしょうがない。
フレンドリーに接して好感度を上げて終了。
どうせ名前も知らない他人なんだ。十分十分。
川;゚‐゚)「あの……」
('A`)「何か?」
なんだよ。
今俺眠いから後にしてくれよ。
川゚‐゚)「おもしろいな。お前」
は?
……これは予想外だ。
- 55:◆uAn5dIn1Sw:05/25(金) 21:15 3X9BLgUKO
(;'A`)「えっ?」
ねーよ。
何俺のことおもしろいとか言ってんの?
こいつどっかおかしいんじゃねーの?
川 ‐ )「……すまなかった。傷ついたなら謝るよ……」
(;'A`)「いやいやいやそんなことないそんなことない」
なんでそっちが落ち込むんだよ。
勝手に話しかけたのはこっちだぞ?
(*゚ー゚)「邪魔だよ!根暗。どいて」
いきなり割り込んできて川゚‐゚)を突き飛ばしやがった。
なんだこの女。
(#'A`)「なにしてんだよ」
(*゚ー゚)「そいつが邪魔だったからどかしただけなんだけど」
(#'A`)「言っていい言葉と悪い言葉があんだろ!」
根暗?どかした?
こいつ、人をなんだと思ってやがる!
(#'A`)「おい!てm」
川 ‐ )「やめてくれ」
校舎の裏へと走っていく女。
……俺の手を引いて。
- 56:◆uAn5dIn1Sw:05/25(金) 21:24 3X9BLgUKO
(;'A`)「お、おい!」
こいつ結構足速いな。
俺のブレザーの袖を引っ張っる女の白くて細い腕。
……やべえ…普通にどきどきしてきた。
川 ‐ )「余計なことしないでくれ!」
校舎裏の自転車置き場に響く叫び。
(;'A`)「悪かったよ!いきなりキレた俺が悪い」
川 ‐ )「嫌なんだよ……嫌……なんだ……」
その叫びは激しくて、
そしてひどく寂しげだった。
- 57:◆uAn5dIn1Sw:05/26(土) 00:31 4AKnDWeRO
最低だ。
私は最低だ。
名前も知らない彼は私のために怒ったのに。
私はそれを否定した。
人の善意さえ、私は否定した。
川 ‐ )「……もう……いいだろ?授業始まるぞ」
温かみのない人間に温かみを受け取る権利はないんだ。
私はずっと独りで生きるしかないんだ。
('A`)「よくない。俺は今授業より、
あんたと話がしたい
気分なんだ」
有り得ない。そんなこと有り得ない。
川 ‐ )「やめろ!お前まで私を騙すのか?」
- 58:◆uAn5dIn1Sw:05/26(土) 01:08 4AKnDWeRO
('A`)「騙されたと思って俺と話しようぜ?」
川 ‐ )「なんで……なんだそんなに優しくしてくるんだ」
('A`)「俺はあんたに優しくしたいからだよ」
優しくしたい?
私に優しくしたい?
川 ‐ )「本気なのか?人の善意を踏みにじるような奴なんだぞ?」
('A`)「えらくマジだ。それに、本当はあんた自分を隠しているだろ?」
そうだ。私はずっと自分に嘘をついて生きてきた。
泣きたい自分。
友達が欲しくてたまらない自分。
もっと親に甘えたい自分。
みんな心の中に押し込めてひた隠しにしている自分だ。
('∀`)「授業なんかサボってもいいじゃんか。行こうぜ?」
川 ‐ )「………」
コクリと無言でうなづいて答える。
……こいつの前なら、素直になってもいいのかな。
- 59:◆uAn5dIn1Sw:05/26(土) 01:28 4AKnDWeRO
('∀`)「そうと決まったら、こんなしけた学校飛び出そうぜ!」
川゚‐゚)「そうだな、電車賃はあるか?」
('A`)「金は要らねえよ。俺の相棒を使うからな」
相棒?
……そう言えば名前聞いてなかったな。
川゚‐゚)「お前、名前何て言うんだ?」
('A`)「クチエ ドクオ。 ドクオでいい」
自転車置き場から自分の自転車を取ってきたらしい。
それが相棒か。
('∀`)「これが俺の相棒、ライトニングサイクリングスだ」
どう見ても普通のママチャリです。
本当にありがとうございました。
川゚〜゚)「ぷっ!」
('A`)「笑うなよ。俺が頑張れば凄く速いんだぜ?」
川゚‐゚)「いや、ネーミングセンス抜群だと思ってな」
せめて轟天号とかにして欲しくな。
自慢のママチャリの荷台に座ってスクールエスケープだ。
今日はいい日になりそうだ。
- 62:◆uAn5dIn1Sw:05/26(土) 21:59 4AKnDWeRO
学校の校門がどんどん遠く小さくなっていく。
自転車に乗るのは久しぶりだ。
……後ろの荷台に乗るのは生まれて初めてだがな。
川;゚‐゚)「も、もうちょっと速度を落としてくれ!落っこちそうだ」
なにぶん初めてなんだ。
要領がわからない。
('A`)「残念だが今の俺は減速できない。」
川;゚‐゚)「頼むから!本気に落ちそうだ」
('A`)「いいか?男のロマンはな、ありきたりなチャリでどこまでスピードを出せるかだ」
川;゚‐゚)「いやそれ凄く危ないから!」
( A )「目指せ時速三百四十五`」
聞いてないのか!
- 63:◆uAn5dIn1Sw:05/26(土) 22:54 4AKnDWeRO
河川敷の土手の上を突っ走る二人乗りの暴走チャリ。
お構いなしかよ……
……そろそろずり落ちそうなんだが。
川;゚‐゚)「勘弁してくれ!轟天号じゃなきゃ無理だから!」
時速三百四十五`は轟天号でも不可能だが。
('A`)「ぶおん!ぶおんぶおんぶおんぶおん!」
駄目だこいつ……早くなんとかしないと……
(;'A`)「ぬおぁ!」
馬鹿っ!急にブレーキ踏むな!
川;゚ワ゚)「ギャアアア!」
思いっきり姿勢を崩した私は、
一番近くにあった掴みどころ、
ドクオのブレザーの襟を全体重かけて引っ張った。
(;'A`)「ぐえっ!」
ズデーン
……案の定自転車ごとずっこけた。
当然だよな。
- 64:◆uAn5dIn1Sw:05/26(土) 23:23 4AKnDWeRO
カラカラと音を立てて横倒しの自転車の車輪が回っている。
川;゚‐゚)「おい!大丈夫か?」
( A )「……………」
私は背中から落ちたがドクオは後頭部から落ちた。
真剣にやばいかも
川;゚‐゚)「もしもし?生きてますか?」
ドクオの両肩を掴んで前後に激しくゆする。
ガクガクガクガクガクガクガクガク
(#'A`)「鞭打ちになるからやめろ!」
川゚‐゚)「ああごめん。生きていたか」
('A`)「ひでえ」
川゚‐゚)「それより、なんで急ブレーキ踏んだんだ?心の準備ができなかったぞ」
('A`)「ああ、それね」
……?
土手の芝の上を何か探しているようだが?
- 65:◆uAn5dIn1Sw:05/27(日) 11:06 rYkZQaY1O
('A`)「いたいた」
そう言ったドクオの右手には……
川;゚ワ゚)「ギャアアアァァ」
('A`)「そんなにビビんなよ。カナヘビはヘビじゃないぜ?」
ドクオの右手の甲にはちっこいトカゲが乗っている。
全力で後ずさりする私。
川;゚‐゚)「トカゲもヘビも似たようなもんだ!早く逃がしてやれ!」
('A`)「サラサラしてて意外と手触りいいぞ?」
川;゚‐゚)「もういいから!」
残念そうにそっとトカゲを逃がすドクオ。
ふう。
川゚‐゚)「よくあのスピードで見つけられたな」
('A`)「おうよ。俺は厨房のころ菊丸ビームを打つべくテニスをしていたからな」
うるせえ。
- 68:◆uAn5dIn1Sw:05/27(日) 17:10 rYkZQaY1O
川゚‐゚)「つまり君はちっこいカナヘビくんを踏まないためにブレーキをかけたと」
('A`)「あのカナヘビ♀だった」
もうトカゲの話は止めにしたい……
川゚‐゚)「ドクオは優しいな……」
('A`)「やっぱ人間はさ、優しさを忘れちゃいけないと思うんだ」
川゚‐゚)「くさいぞ?そのセリフ」
('A`)「なのにさ、この街の連中はさ」
川゚‐゚)「なら、取り戻せばいいじゃないか」
('A`)「何言ってんだよ」
私は素直な気持ちを取り戻せた。
ドクオのおかげで。
川゚‐゚)「できるさ。現に私はこうして大事な気持ちを取り戻せた」
('A`)「優しさを取り戻す……か」
川゚‐゚)「私は学校が怪しいと思うんだ。ドクオはどう思う?」
('A`)「話が速いぞ。……確かに学校は怪しいが」
川゚‐゚)「決まりだな。さっそく今晩調べに行こう。
優しさを取り戻すために」
('∀`)「俺、もっといい言葉知ってるぜ?優しさ、温かさ、みんなひっくるめて
ヌクモリティ
って言うんだ」
川゚‐゚)「ヌクモリティか。いい響きだな」
ヌクモリティ……本当に、いい響きだ。
- 69:◆uAn5dIn1Sw:05/27(日) 17:34 rYkZQaY1O
ドクオと別れ、帰路につく私。
自転車で送ってくれるようだったが、
丁寧にお断りした。
……おしりいたいんだよ……
('A`)「んだよ……公園までなら送ってやったのに…」
いけね。愚痴が漏れちまった。
あいつ気が早いな。
今晩いきなりかよ……
日はオレンジに輝き街を染めあげている。
……まだ時間あるしゲーセンでも行くか。
('∀`)「にしてもあの驚いた顔、面白かったな。ギャアアアァァだってよ」
やっべ。また一人でぶつぶつ言ってる。
端から見たら変人だな。
……素直さんだっけ。後で下の名前も聞こう。
- 70:◆uAn5dIn1Sw:05/27(日) 20:38 rYkZQaY1O
('A`)「今日は負けないんだぜ?」
今日も筐体に張り付いている昨日の乱入野郎に宣戦布告してやった。
このゲーセンは地元じゃなかなかの隠れた名店だ。
ここの大会で優勝したプライドにかけても、
今日は勝ってやる。
筐体に腰掛け流れるような動作でインクレジット。
この動作の美しさなら誰にも負けねえ。
十八禁PCゲー原作の格ゲーがキャラクター選択画面する。
キャラクターは十秒以内に決める。
連コインはしない。
以上、俺ルール。
(#'A`)「いくんだっぜ!ヤンデレ家政婦二十四連コンボ!」
楽勝だな。
家政婦の箒に切れないもんはない。
( # ゚д゚ )「ちくしょう!」
ダンと筐体を叩いて出ていったピザ野郎。
筐体にあたるのは器が小さく見えるぜ?
リベンジも済んだし家帰るか。二日連続で門限に遅れるのは危険だからな。
煙草臭いゲーセンを抜け、日のどっぷり沈んだ街に俺は繰り出した。
- 73:格ゲーみんな好きだなw◆uAn5dIn1Sw:05/27(日) 21:45 rYkZQaY1O
川;゚‐゚)「むう……」
しまったな。
定期券を忘れたから電車に乗れない。
やはりドクオの自転車に乗せてもらうべきだった。
河川敷から私の家は遠いことを忘れていた。
日はすっかり沈み、道は暗い。
……中学生日記、間に合わないかな……
……駅三つ分は歩いたな。
疲れてきた。もともと体力あるほうじゃないし、
新品の履き慣れないローファーは靴擦れを起こして歩みは更に遅くなる。
川; ‐ )「疲れた……」
バスを使うことも考えたが、あいにく私は路線を知らない。
一度試しにバスに乗って知らない街に着いてしまい、
泣きながら交番で電話を借りたことがある私には、
バスは正直不安なんだ。
川;゚‐゚)「ちょうどいい、自販機だ」
夜の道路にその目立つカラーリングと眩しい蛍光灯で存在を示す自販機に私の足は向かっていった。
- 74:◆uAn5dIn1Sw:05/27(日) 22:10 rYkZQaY1O
自販機に硬貨を投入し、よくわからない新商品の、
『イカスミコーラ地中海風』
を購入する。
……一口で後悔した。
なにが地中海風だ。
イカスミの苦さとコーラの炭酸、血迷ったとしか思えないブレンドだ。
川 ‐ )「うっ……」
だが私は飲む。
中身の入ったジュースを捨てるほどお嬢様ではないつもりだ。
意を決して飲み干すべく、
口をつけ……
「キャアアアアアッ」
川;゚‐゚)「うわっ!」
ビシャッ!
突然の悲鳴にビビって手元が狂ってしまった。
……制服のブレザーからシャツまで、
前が濡れた……
シミになりそうだ……
さっきの悲鳴はなんだ?
好奇心に勝てずに悲鳴の上がった路地裏に目を向ける。
- 75:◆uAn5dIn1Sw:05/27(日) 23:43 rYkZQaY1O
( ゚д゚ )「……なあ、俺といいことしようぜ……」
(*;ー;)「嫌!助けて!変態!変態!」
……しぃか。
太った男に詰め寄られているようだな。
私は、
迷わない。
川#゚‐゚)「このっ!豚野郎!」
持っていたジュースの缶を思いっきり投げつけてやる。
やった!当たった!
( # ゚д゚ )「いてえ!てめえ!」
うわっ!こっちくるな!
近づいてくる男。
目は血走っていて怖い。
川;゚‐゚)「いやだ!くるな!」
今度は履いていたローファーを投げつける。
真っ直ぐに突っ込んでくる豚男の顔面に直撃だ。
( # ゚д゚ )「いい加減にしろよ!どいつもこいつも俺を!」
川 ‐(#)「がっ」
頬をグーでなぐられた。
頭がふらふらする……
- 77:◆uAn5dIn1Sw:05/28(月) 00:15 P5HQAOg8O
鼻から出血している。
鼻を押さえてうずくまる私に、奴は容赦なく蹴りを加える。
何度も、何度も。
川 -(#)「ぐふっ」
一発もろに腹に入った……
嘔吐しそうになるのを必死でこらえる……
( # ゚д゚ )「てめえ……
一発やらせろ!」
イヤだ。こんな腐臭のするデブが初めてになるなんて絶対にイヤだ!
( # ゚д゚ )「おら!早くしろ!」
ズボンを下ろし汚いものを見せつける変態野郎。
川;゚‐(#)「イヤだ!絶対にイヤだ!」
( # ゚д゚ )「うるせえんだよ!」
私の髪を鷲掴みにして私の頭を持ち上げる男。
やめろ!毎日どれだけ洗うのに時間かけてると思っているんだ!
川#゚‐(#)「離せ!」
近くあった私のカバンで奴の股間に一撃加える。
( д )「ギキャアアアアアッ」
やった!股間を押さえて悶絶しているうちに逃げてやる。
( ; ゚д゚ )「まちやがれ!」
走り出した私を股間を押さえながら追う男。
このまま大通りまで出れば……
川 ‐(#) 「がっ……」
しまった……私のカバンを投げつけられた……
立っていられない……やだよ……
もう少しなのに!
せめて動いてくれ……私の唇!
川 ‐(#)「誰か!助け…」
口を塞がれた……
もう駄目だ……
- 78:◆uAn5dIn1Sw:05/28(月) 00:25 P5HQAOg8O
気持ち悪い豚の体温。
制服を乱暴に剥がそうとするぶよぶよした手。
私の体は全てを拒絶する。
川;‐(#)「やだやだやだやだ嫌だあっ」
離せよ嫌だよ気持ち悪いんだよ最低だよ!
……誰か……
( )「うおらっ!」
( д )「ごほっ!」
誰だ……涙で視界がぼやけて見えない……
( )「リアルファイトは趣味じゃないけどな、俺は本気でするぞ!」
- 79:◆uAn5dIn1Sw:05/28(月) 00:49 P5HQAOg8O
この最低野郎。
久しぶりに俺はブチ切れたぞ!
(#'A`)「うおらっ!」
丸出しの小さくて汚いブツのついている股間を思いっきり蹴りつける。
このまま機能不全にしてやっからな!
( ;д; )「ひいっ!」
女殴るような奴にかける情けはねえ!
くたばれよピザ野郎!
( ;д; )「ひっひいいいい!」
( A )「がっ」
タックルかよ!
体重差で弾き飛ばされる俺。
走って逃げるデブ。
ちくしょう!
(#'A`)「ちくしょう!」
でも、今は奴を追うタイミングじゃない。
爪 ‐(#)
ボサボサになっちまった髪。
半分くらい脱がされてブラの紐見えてる肩。
おまけに全身痣だらけだ……
正直このままじゃまずい。
俺のブレザーを掛けて自転車の後ろに無理やり乗せる。
(;'A`)「お、おい!しっかり捕まってろよ!とばすからな!」
落っこちないでくれよ……
俺のチャリ、いまだけは我慢してくれ!
俺は家に向かって全力で五年物のボロチャリのペダルを踏みつけた。
- 80:◆uAn5dIn1Sw:05/28(月) 21:25 P5HQAOg8O
(;'A`)「はぁ……はぁ…」
もう息が上がってやがる。
情けないぞ俺の体力。
途中何度も素直さんが落っこちそうになったが、
なんとか俺の家までたどり着いた。
お疲れさまだ。ボロチャリ。
あれ? 鍵しまってる?
(;'A`)「カーチャン、俺だよ!開けてくれ!急いでるんだよ!」
背中には素直さんを背負っている。カーチャンは驚くだろうが関係ない。
ダンダンダンダンダン!
もしかしたらもしかして……
いない?
(;'A`)「鍵どこだよ……」
全身のポケットというポケットを探す俺。
ああちくしょうどこだよ!
チラリと素直さんのほうに目を向ける。
爪 ‐(#)
まだ気絶している……
……にしてもこいつものすごく軽い。
スレンダーを通り越してガリガリだ。
ちゃんと飯食っているのか?
仕方ないから縁側の戸を開けて家に入る。
鍵かかってなくてよかった。
(;'A`)「んだよこれ……」
居間の机の上には、
『父さんと朝まで楽しんできます。
ご飯は自分で作ってね☆』
と、カーチャンの字で書いた置き紙があった。
四捨五入して五十だぞ?どっちもよ……
- 82:◆uAn5dIn1Sw:05/28(月) 21:38 P5HQAOg8O
とりあえずだ。
とりあえず素直さんを居間のソファの上に寝かせる。
俺にだって湿布を貼ってやるくらいはできる。
川 ‐□)「………」
まだ目は覚めないみたいだな……
(;'A`)「まさか……」
まさか……まさかもう酷いいたずらされた後なのか?
ここは……
確認するしかねえ!
そーっとスカートに手を伸ばし、
パンツが大丈夫か確認……
(;'A`)「ハッ!俺は何してんだよ」
気絶している女の子のスカートめくるとか最低じゃん!
……大丈夫。汚れなき白だった。
- 83:◆uAn5dIn1Sw:05/28(月) 22:03 P5HQAOg8O
……最低だな……俺。
('A`)「マジで何してんだよ俺」
しかも俺の息子全力ビンビンなんだぜ?
しばらく勝手に鬱になってたら腹が減った。
まあ過ぎたことは過ぎたことだ。
飯作ろう。
……スー……スー……
なんだよ……
あいつ寝ちゃったぞ?
猫みたいにうずくまって眠る素直さん。
あまりにも無防備だ……
毛布を掛けて、体が冷えないようにしたらソッコーで目を離した。
(;'A`)「よし!飯作るぜ!」
これ以上あんなの見てたら俺の息子は耐えらんない。
- 86:◆uAn5dIn1Sw:05/28(月) 22:28 P5HQAOg8O
('A`)の三十分クッキングのようです
ある材料で飯を作るからな。
今日のお料理は
グチャグチャタマゴエッグサンドだ。
作り方はカンタンだ。
まず鍋に水を張り、コンロに火をつけて湯が沸騰するのを待つ。
湯が沸いたらカップラーメンの蓋を半分開けて湯を流しこむ。
三分待つ。
ついでに余りの湯でタマゴを茹でる。
茹でてるうちに三分経ったからカップラーメンを食う。次は豚骨にしよう。
食ってたら茹で上がったタマゴを取り出し、
冷やして殻を剥く。
一つ食う。うまい。
残りはグチャグチャに潰して切ってない食パンでそのまま挟む。
この作業中にチラリと素直さんの寝顔をチェックして萌えるのがとても重要だ。
はい出来上がり。
('A`)「みんなも試してみてね☆」
〜('A`)の三十分クッキングのようです〜
お し ま い
- 87:◆uAn5dIn1Sw:05/28(月) 23:19 P5HQAOg8O
('A`)「よっしゃ!完成」
豪快な男のお料理が完成した。
旨いのかって?
俺が旨いと思えば旨いんだぜ?
さてと、グースカ寝ていらっしゃるボロボロのお姫様を起こしてやるか。
('A`)「ほら、起きてくれよ。飯作ったぜ」
素直さんの頭を優しく撫でてみる。
サラサラの髪はまったく指に引っかからない。
あっ、普通に気持ちいい。
ついでに自分の頭も撫でてみる。
ワックスでセットした髪はガサガサしている。
(*'A`)「………」
なでなでなでなでなでなでなでなで
川 ‐□)「ん……パパ……」
(;'A`)「うおっ!」
びびったぞ!寝言かよ!
- 88:◆uAn5dIn1Sw:05/28(月) 23:32 P5HQAOg8O
川つ‐□)「……ん……」
('A`)「ようやくお目覚めですか」
……ここは誰の家だ?
……ドクオの家なのか?
私には暖かい毛布が掛かっている。
肩には大きなブレザー。
頬には湿布まで貼ってある。
川゚‐□)「みんなドクオがしてくれたのか?」
('A`)「おうよ。まだどっか痛いか?サンドイッチ作っておいたから食っていいぞ」
川゚‐□)「あ、ありがとう」
(;'A`)「いけね!お前の靴とカバンあそこに置いてきちまった」
そう言って飛び出したドクオ。
待ってくれすら言えなかった……
- 89:◆uAn5dIn1Sw:05/29(火) 00:06 U5O/s2krO
川゚‐□)「……いただきます」
テーブルの上にあったのは食パンに潰したタマゴを挟んだだけのシンプルな料理。
おおざっぱなところがドクオらしいな。
おかしいよな……
コンビニのサンドイッチのほうが手が込んでいておいしい筈なのにな。
川;‐□)「……おいしいよ……」
そのサンドイッチはすっごく暖かくて、
何よりもおいしいんだ……
- 91:◆uAn5dIn1Sw:05/29(火) 00:32 U5O/s2krO
('A`)「あったあった」
さっきの場所には
素直クールと裏に書かれた真新しいローファーと
所々傷んだカバンが落ちていた。
とっとと返してやろう。
('A`)「素直クールさんか」
下の名前クールさんなのか。
……結構いい名前かもな。
('A`)「ただいまだ」
返事は別に期待していないがな。
川゚‐□)「おかえりだ」
これは予想外だ。
('A`)「もう、大丈夫なのか?」
川゚‐□)「ああ。…サンドイッチのおかげでな」
あれそんなに美味かったか?
('A`)「家、帰るんだよな?送るよ」
川゚‐□)「頼むよ」
('A`)「よし!後ろ乗れよ。素直クールさん」
ゆっくりと俺の自転車の荷台に座る素直クール。
川゚‐□)「クー でいいよ。ドクオ」
そうか。
('∀`)「よっしゃ!時速三百`目指すからな!しっかり捕まってろよ。
……クー」
川゚ー□)「頼んだぞ。走り屋のドクオ」
前に腕を回して俺にしっかり捕まるクー。
背中に温かい感触を感じながら、
俺は夜道を駆け抜けた。
- 92:◆uAn5dIn1Sw:05/29(火) 21:19 U5O/s2krO
……新しい朝がきた。
残念ながら俺は寝不足なので、
希望の朝とは言い難い。
クーを家まで送った俺は疲れていたはずなのに全然眠れなかった。
……三回はし過ぎだったな。
一週間を目安に息子を休ませようかな?
多分続かないな。
('A`)「だりい」
しぶしぶ学校に向かう俺。
クーは来ないだろうな。俺としても、
クーには休んでいてほしい。
- 93:◆uAn5dIn1Sw:05/29(火) 21:28 U5O/s2krO
滞りなく授業は進み、俺はずっと寝ていた。
四限がいつの間にか終わっていた。
不思議だな。まだ朝みたいな気分だ。
今日は弁当がないんで食堂で昼飯になる。
とにかく列の少ないメニューに並び、
微妙な定食を買う。
(;'A`)「あちゃー」
席ほとんど埋まってるな。
カレーやラーメンは立ち食いする強者もいるが俺は定食だ。
どっか空いてないかな?
- 94:◆uAn5dIn1Sw:05/29(火) 21:33 U5O/s2krO
よかった。端のほうに空いている席がある。
('A`)「よっこらせっくす」
基本ネタだぜ。
ブフォッ
(;'A`)「だああっキタネエ!」
隣の奴がうどんの汁吹き出しやがった!
熱い!汚い!気持ち悪い!
- 95:◆uAn5dIn1Sw:05/29(火) 21:54 U5O/s2krO
ん?
(;'A`)「あっお前!」
川゚‐□)「やあドクオ」
よりによってお前かよ……
('A`)「お前ケガ大丈夫なのかよ……」
べリッ
川゚‐゚)つ□「こんなの気休めで貼っているだけだぞ?」
ペトッ
('□`)「俺の口に貼るな。飯が食えない」
腫れは引いてないな。もう少し貼っていたほうがいいぞ。
ピトッ
川;゚‐□)「目の近くに貼るとしみるじゃないか!」
('A`)「もう少し貼ってろ。無理すんな」
川゚‐□)「むう……」
早く食わないと飯が冷める。
お前もうどんが伸びるぞ。
- 98:◆uAn5dIn1Sw:05/29(火) 22:41 U5O/s2krO
ちゅるちゅるうどんをすするクー。
川;゚‐□)「なんでそんなに見つめるんだ。食べにくいぞ」
あれ?俺そんなに凝視してたか?
(;'A`)「ああ、悪い。うまそうだったから」
しばらく黙々と食べる俺達。
こいつが食っていると四百円のうどんも高級に見えるから困る。
うどんはもうちょっと下品にずるずるとだな……
川゚‐□)「なあ、ドクオ」
('A`)「なんだよ」
いつの間にか周りに人がいない。
なんか勘違いしてる?
俺達はそんな関係じゃねえ!
川゚‐□)「しぃにな……泣いて謝られたんだ。私はどうしたらいいと思う?」
- 99:◆uAn5dIn1Sw:05/30(水) 00:10 TGCmS5VjO
('A`)「……お前はどうしたいんだよ」
多分昨日の朝の奴だろう。
川 ‐□)「私は……
許したい」
こいつ……
本当は……
('A`)「お前がそう思うならそうすればいい。俺は止めねえよ」
川゚‐□)「怒ったりしないのか?」
('A`)「本人が泣いて謝るくらいなら別にいいだろ」
冷たくなんかない。
ただ人と接するのが苦手なだけだ。
('∀`)「そんなことよりよ、夜の校舎を調べるの、いつにする?」
川゚‐□)「そうだな……準備もあるし、一週間後でどうだ?」
('∀`)「そうするか!」
なら
少しずつ慣れればいい。
そうすりゃ、きっといつかは……
('∀`)「なあ、クー。笑ってみてくれよ」
川;゚‐□)「えっ!」
自然に笑えるようになれるさ。
川*゚ー゚)「……こうかな?」
川゚‐゚)の前日談のようです
おしまい
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