( ^ω^)はヌクモリティを取り戻すようです

188:かぶると分かりながら野球する◆uAn5dIn1Sw:06/08(金) 22:07 EvJfweZXO


( ^ω^)は大きく振りかぶるようです



夏休みももう終盤、
海にはクラゲさんこんにちはなころになった。

……メールだ。

また肝試しは勘弁だ。
ジョルジュ達と野球をしよう……か。

まあ、怖いことはなさそうだし、
行ってみるか。



次の日、河川敷の芝生に集まった僕は複雑な気分になった。

( ゚∀゚)「点呼しようぜ!一!」

('A`)「二」

( ^ω^)「三」

川゚‐゚)「四」

川д川「五」

足りねえよ。
野球って確か九人でするスポーツだったよな。
やっぱSOS団みたいにはいかないんだな……

(; ^ω^)「五人で野球は無理だお」

( ゚∀゚)「気にすんな。一人が四人分ぐらい動けばいいじゃん」

川゚‐゚)「私は野球のルールが良くわからないのだが」

川д川「あっ……私も」

( ゚∀゚)「しかたねえな……野郎どもだけで頑張るか。一人が六人分で二つチーム作れるぜ!」


本 気 か



189:◆uAn5dIn1Sw:06/08(金) 22:27 EvJfweZXO


川゚‐゚)「わードクオ君がんばってー」

('∀`)「おうよ!任しとけ!」

何故あの棒読み口調にやる気が出せるんだ……

( ゚∀゚)「第一球!ジョルジュスローストレート投げました」

ぱすっ

('A`)「ナイスボール」

まだポジションも決めてないでしょうが。

せっかくだ。
打ち返してやるか!

( ゚ω゚)「どんとこい!予告ホームラン!」

(; ゚∀゚)「へっ。東中の名繋ぎ投手だった俺を舐めんなよ」

ぱすっ

川゚‐゚)「ボール」

いつの間にか審判しているクー。
ルールわからないんじゃなかったのか?

( ゚∀゚)「おいおい審判さん、今のはストライクゾーンド真ん中でしょう」

出た!野球名物審判に抗議!

川゚‐゚)「いや、私のストライクゾーンド真ん中はドクオだけだから」

やっぱりわかってない。

( ゚∀゚)「まあいいや。次は監督呼んで乱闘だからな」

やめなさい。



191:◆uAn5dIn1Sw:06/08(金) 23:09 EvJfweZXO


( ゚∀゚)「ところでさ、あそこでずっとカメラ構えてる人誰?」




(=゚ω゚)ノ|◎|


川゚‐゚)「ちょっとピッチャー交代してくれ」

川゚‐゚)ノ===〇「えい」

(〇ω゚)ノ「ふぼっ」

( ゚∀゚)「女子にしちゃあ いい球投げるじゃん」

( ^ω^)「何事もなかったかのように再開するお」

きっと盗撮だろう。

('A`)(内角浅めストレートだおっぱい狂)

( ゚∀゚)(オーケー。お前の股関にストレートだな)


謎のサインでやり取りする二人。
大丈夫。きっと打てる。

( ゚ω゚)「カモンピッチャー!」



192:◆uAn5dIn1Sw:06/09(土) 00:04 SoY64NTNO


( ゚∀゚)「くぅらえい!自称超豪速球!」

速い。
あの右手にはいかないパワーが秘められているのか。

でも、

( ゚ω゚)「主人公補正ホームラン!」

金属バットと白球がぶつかり快い音とともにすっ飛んだ。



金属バットが。

(;^ω^)「いけね。しっかり握ってなかったお」

( ゚∀゚)「やるじゃん」

川д川(野球ってこんなスポーツだったっけ?)



川゚‐゚)「九回裏終了、ゲームセット」

( ゚∀゚)「へへへ、やるじゃんか」

色々飛ばしてゲームセットだ。
久しぶりにいい汗かいたな。

('A`)「そろそろ帰ろうぜ」

日は橙色に輝き、カラスも寝床へバイバイな時間だ。

( ゚∀゚)「おい……今は最高のシチュエーションだぜ……」

ジョルジュが耳打ちしてきた。
何のシチュエーションだ……
薄々わかってはいるけど……

クーも貞子ちゃんに耳打ちしている。
やっぱりか。

('∀`)「貞子ちゃんさ、俺達の素晴らしい野球見てキャッチボールしたくなったってさ。ブーン、相手してやれよ」

川-川 「ブーン君……いいかな?」

( ^ω^)「もちろんだお」



193:◆uAn5dIn1Sw:06/09(土) 19:40 SoY64NTNO


川д川「えいっ!」

貞子ちゃんの投げたボールは緩い放物線を描いて僕の元へ。

( ^ω^)「そ〜れ!」

貞子ちゃんにも取れるように加減してサブマリン投方。

川д川「あっ……」

ぽてっ

(;^ω^)「ごめん。力が強かったお」

やっぱり無理だったか……

ボールは思わぬ方向に転がり茂みの中に。

川;д川「わっ…私取りに行くから待ってて」

(;^ω^)「貞子ちゃんの服が汚れちゃうから僕が取りに行くお」

貞子ちゃんの服装はあまり丈夫そうじゃない。
茂みに入って引っ掛けたりしたら大変だ。


( ^ω^)ノ〇「あったお」

案外すぐに見つかった。

河川敷の土手に座る貞子ちゃんの横に腰掛ける。

………夕陽がきれいだ。夜の蒼と夕陽の橙が同時に存在する空は美しい。


……最高にロマンチックだ。

今しかない。



195:◆uAn5dIn1Sw:06/10(日) 00:17 9aR3rRcaO


( ^ω^)「貞子ちゃん。僕はこれから真剣な話をするお」

川-川「……うん」

貞子ちゃんと目と目で見つめ合う。

( ^ω^)「正直に答えてほしいお」

川-川「うん」

向こうも覚悟は出来ているのかな?

( ω )「僕はさ( @∀@)「見つけましたよ!彼女が目的の子でございまする!」

……は?

爪@‐@)「うむ。ご苦労だった。間違いなくその子だ」

(@A@)「ちょっと……ご同行していただきます」

川;д川「え……何?」

そう言って貞子ちゃんの腕を掴む怪しい三人組。

( ゚ω゚)「離すお!だいたいお前らなんなんだお!」

爪@‐@)「キミには彼女の価値がわかるまい」

価値……?

( @∀@)「この子からは不思議なオーラが出ていると我らが首領がおっしゃるのだ!」

新手の宗教か?

(#゚ω゚)「ふざけんなお!」

(@A@)「えらく真面目なのだがな」

( ゚ω゚)「何が価値だお!何がオーラだお!貞子ちゃんは僕の…」

爪@ー@)「ほう……じゃあ、彼女はキミにとっての何なんだ?」

貞子ちゃんは……
僕の……



196:突然だが過去話◆uAn5dIn1Sw:06/10(日) 00:38 9aR3rRcaO


……いつ頃からだろうか。

僕が彼女に惹かれたのは。



初めて見た時は、ただ髪が長くてきれいだな……
くらいだった。


去年、まだ高一だった頃のことだ。


( ^ω^)のとあるレイニーデイのようです


(;^ω^)「傘持ってきてなかったお」

(´・ω・`)「相変わらず不注意だね。天気予報は見ておくべきだよ」

空は暗い雲に覆われ、
その下には大粒の雨が降り注いでいる。

下校時間になって突然降りだすとはな……

(´・ω・`)「なんなら僕の傘に一緒に入るかい?」

( ^ω^)「やめとくお。その折り畳み傘じゃ一人しか入れないお」

こんな話をしていたところでアスファルトを打つ雨が止むはずもない。

僕はただ、校舎の玄関に立ち尽すのみだった。



197:◆uAn5dIn1Sw:06/10(日) 00:49 9aR3rRcaO


(´・ω・`)「じゃあね。ブーン」

ショボンは先に帰宅を始め、
玄関の軒下には僕一人。

早く止まないかな……

川-川


もう一人いたみたいだ。
確か同じクラスの川上さん。
話をしたこともないし、そんなに目立つ子でもない。

どちらから話かけることもなく、時間だけが過ぎていった。



198:◆uAn5dIn1Sw:06/10(日) 13:49 9aR3rRcaO


( ^ω^)「………」

話したことのない人が同じ軒の下にいてもどうしようもない。

川-川「………」

僕の耳に響くのは雨の打ちつける多重音だけ。

川-川「……ぐす」

でもなかった。
彼女は風邪をひいているのだろうか。

ならば早く帰ったほうがいい。
しかしこの雨に濡れたら風邪は悪化しそうだ。

……なんか持ってないかな…

川д川「……くしゅん」

女の子らしい小さなくしゃみ。
早く帰ろうよ。悪くするよ。

( ^ω^)「大丈夫?」

川-川「……あ、うん…」

ばつが悪そうに目を逸らす川上さん。
やっぱ余計なことしたな……

さっきよりも深い沈黙が流れる。
居心地悪いな……

少し濡れるのは仕方ないかもしれない。
教科書の入った鞄をかばいながら僕は走り出した。



199:◆uAn5dIn1Sw:06/10(日) 14:12 9aR3rRcaO


(; ゚ω゚)「ひょおおお」

降りしきる雨の中走る。走る。

駅までは大して遠くはないが僕のブレザーやらズボンやらはびしょ濡れだ。
貼り付くズボンの不快感は最悪だな……
前髪から垂れる雫を辛うじて無事なハンカチでふき取ると静かにホームに立った。

電車が来るまで少し考えごとでもしていよう。

川上さんか。
静かでおとなしい女の子だ。長い黒髪はよく手入れされていて魅力的。
体は細くて肌は白い。
あまり健康的じゃないな。
僕としてはもう少し健康的なほうが好みだが、それは僕の趣味だ。押し付けてはいけない。
大体川上さんはただのクラスメート。
それ以上でもそれ以下でもない。


……おかしいな。
なんで僕はただのクラスメートのことをこんなにも気にしているんだろう。
ただのクラスメート……だよな。



201:河川敷に戻ります◆uAn5dIn1Sw:06/10(日) 21:16 9aR3rRcaO


爪@‐@)「どうした?答えないなら、関係はないと捉えるぞ?」

女の声で回想から帰ってこれた。

そうだ。あの時から、僕が彼女を意識した時から、

僕は川上 貞子が好きなんだ。

( ゚ω゚)「貞子ちゃんは僕の!」

川д川「……!」

( ゚ω゚)「僕の大好きな女の子なんだお!」

言えた。夜の校舎の勢い任せな告白とは違う、
心からの告白。

爪@ー@)「……そうか。ならば我々は引っ込むとしよう」

(@A@)「な、何故ですか」

( @∀@)「いいから引くぞ。もう用はない」

細い男は未練があるようだったが、
仲間の二人が離れていくのに従って離れていく。

……貞子ちゃんは?

川///川

顔を真っ赤にして体育座りしている。

川///川「ねえ……ブーン君……もう一回……」

さすがに恥ずかしいよ…

(* ^ω^)「僕は貞子ちゃんが大好きだお」

川///川「も、もう一回…」

(* ^ω^)「大好きだお」



お互いに顔を真っ赤にして日の沈んだ土手の上を歩く僕達。

……手を、つないでみようかな…

昼間に野球で白球を握り、大きく振りかぶった手は、
貞子ちゃんの細い手に優しく触れた。



( ^ω^)は大きく振りかぶるようです

おしまい



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