( ^ω^)ブーンがタッチタイプをマスターしたようです
- 72: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 16:28:45.22 ID:fGsxAZTh0
- 七話 コーヒーガムの美味しさは異常
(#;∀;)「糞がッ!!」
涙を流し、地に伏せ、荒々と両手を地面に叩きつける。
無様だと、誰が貶すことが出来るだろうか。
大人気ないと、誰が貶すことが出来るだろうか。
見っとも無いと、誰が貶すことが出来るだろうか。
必死に抗い、思いを込め、挑んだ闘いで弄ばれていたことに気付いた男に言葉などかけられるのだろうか。
慰めや、同情なんかされて気が落ち着くといえるのだろうか。
店内の惨状に、この醜態。
声をかけられる者は誰一人として、いなかった。
(#;∀;)「でぃ・・・・・・ジョルジュ・・・・・・」
妻を失い、友人を失った男の苦悩を、誰が理解できようか。
- 73: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 16:31:12.47 ID:fGsxAZTh0
そして
ξ )ξ「・・・・・・」
( ω )「・・・・・・」
('A`)「・・・・・・」
力がありながら、助けることの出来なかった二人に、誰が声をかけられようか。
己の不甲斐なさ、無力さを呪う二人に、どんな声をかけられようか。
ノハ )
父の力になるべく、振るった力が、父の足枷になった者に、何を伝えられるのだろうか。
場は黙したまま、時だけが過ぎていった。
- 75: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 16:33:16.89 ID:fGsxAZTh0
時は流れ、深夜に近づいた時、一人の男が過去を語り始めた。
( ∀ )「君たちは、知りたいか?僕の過去を。僕の背負わなくてはならない罪を」
誰も、応えるものはいない。
だが、男は答えを待たず、続ける。
( ∀ )「ヒートは知ってるだろうが、丁度一年前の話だ」
重い空気の中、話は始まった。
- 76: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 16:35:02.41 ID:fGsxAZTh0
―――――――――――――
( ・∀・)「やあ、いらっしゃい」
ログハウスに似た作りの店。その中では、お洒落な空間が広がっている。
店内を照らす光は、ランプ。しかし火は焚いておらず、電子ランプといったものだ。
そして木材で作り上げられた机に椅子。机の上にはご丁寧にテーブルクロスまで敷かれている。
そして、スナックや、バーなどによくある横長いロングテーブルがあり、
そのカウンターの向こう側で、黒の蝶ネクタイを締めた男、モララーが立っていた。
店内に足を踏み入れ、その空間を一瞥し、お客として現れた男はモララーに言う。
_
( ゚∀゚)「なかなかオサレな店作ったじゃねーかモララー」
片方だけ眉毛を生やしているという中々不思議な男だった。
( ・∀・)「だろう?でぃと一緒に考えたんだよ」
カウンターの向かい側の椅子に座る女性が、男に向き直る。
(#゚;;-゚)「うちの主人がどうしてもログハウスを立てたいっていうんでねぇ」
困ったような笑顔を浮かべながら、静かに微笑む。
- 77: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 16:38:02.04 ID:fGsxAZTh0
- _
( ゚∀゚)「相変わらず、変わった奴だなお前は」
( ・∀・)「ははは、言ってくれるなよジョルジュ。
それで、今日はどうしたんだい?何か寄贈でもしてくれるのかい?」
_
( ゚∀゚)「その傲慢さも相変わらずだな」
( ・∀・)「何、この性格だけは誰にも譲れんよ」
「はは」と笑ったジョルジュは、カウンターの向かい側、丁度でぃの横に腰をかける。
_
( ゚∀゚)「まあ、手ぶらってわけにはいかんだろうからな。ほらよ」
そういってカウンターに置いた風呂敷。なかなか大きな物が入っているようで所々、膨らんでいる。
( ・∀・)「なんだい?これは」
_
( ゚∀゚)「これはアレだ。壺だ」
( ・∀・)「壺とはまた粋な物を寄越してくれるね君は」
_
( ゚∀゚)「俺なりのポフォーマンスって奴だ」
(#゚;;-゚)「主人と友達だけあって、なかなかの変人やんなぁお兄さん」
半分呆れたような笑みを浮かべ、隣りに座るジョルジュに語る。
- 79: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 16:41:18.95 ID:fGsxAZTh0
- _
( ゚∀゚)「多少変わった男の方が、惹かれるもんでしょ?」
(#゚;;-゚)「ははっ、そやねぇ」
( ・∀・)「おいおい、人の妻を口説かないでくれよジョルジュ」
_
(;゚∀゚)「口説いてねーよ」
幸せな、本当に幸せで平和な会話。
僕はこの時、ある研究をしていた。もう勘付いているかもしれないけどね。
それを話したんだ。
_
( ゚∀゚)「んで、俺の方もなんとか昇格できたわけよ。やっと課長クラスだよ」
( ・∀・)「いいじゃないか。課長ってのは身分相応って奴だよ」
_
(;゚∀゚)「ひっでぇなあオイ」
ひとしきり笑いあい、モララーはカウンターの下に手を入れ、数枚の紙を取り出し、置く。
( ・∀・)「ジョルジュ。君はこれをどう思う?」
置かれた紙をジョルジュはぺらぺらと捲っていく。
- 80: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 16:43:54.27 ID:fGsxAZTh0
- _
(;゚∀゚)「・・・・・・なかなか興味深い内容だけどよ。これは・・・・・・」
( ・∀・)「理想論。これがあったら色々と実現できるだろう?現在の治療にしろ、何にしろ、いろいろと役立てる」
_
(;゚∀゚)「だがよお。こんなもんが悪用されたら・・・・・・」
( ・∀・)「それがされないように、僕なりの工夫点。これは殺人以外の強い思いを持った人間にしか扱えない。そういう仕組みにしてるのさ」
_
( ゚∀゚)「ホントに理想論だな。お前らしいが」
( ・∀・)「ああ。でも、いつか実現しようと思ってるさ」
_
( ゚∀゚)「お前はその純粋さが取り柄だな。変わってくれるなよ」
( ・∀・)「なんだいその純粋さを除いたら何も残らないと言った口調は」
_
( ゚∀゚)「お?違うか?」
( ・∀・)「全く・・・・・・」
軽く凹むモララーを見て、ジョルジュとでぃはくすりと笑う。
理想論。あくまで、ただの理想だった。
それは、最悪の形で、叶うことになる。
- 81: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 16:45:44.48 ID:fGsxAZTh0
- ある日、僕はこの資料を持って、パソコンを使い色々と情報を漁っていた。
大体、あれから半年くらい経った頃かな。理想論として作り上げてきた資料を完璧に組み上げる途中だったんだ。
その時だ。突然、訳のわからないサイトに飛んだ。
それなりの知識はあったから、その場を切り抜けはしたけど、個人情報が少し漏れたみたいでね。
僕の携帯に一通のメールが届いたんだよ。
今思えば、あんなものすぐに消しておけばよかった。ホント、好奇心ってのは害悪だよ。
( ・∀・)「なんだ・・・・・・このメール」
ブラクラを受け、その状況を切り抜けて安堵に浸っている時、一通のメールが届いた。
from:しょbn
本文:やあ、初めまして。日本という国の礼儀はこれでいいのかな?すまないね。言葉が不自由で。
今日君にメールを送ったのは他でもない君の研究。その理論。叶えてあげようと思ってね。
もし、叶えて欲しいなら返事が欲しい。
- 82: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 16:48:10.70 ID:fGsxAZTh0
( ・∀・)「僕の、研究だって?」
机の上に置いてある資料を一瞥する。
これの、ことなのか?
すぐに返事を書き、送信した。
返事は、メールではなく、言葉として直接返ってきた。
「それじゃ、君のところに向かうよ。
逃げずにその場で待ってるんだよ」
( ・∀・)「・・・・・・」
なんだというんだ。
そして、背後に気配を感じた。
(´・ω・`)「やあ、先程メールというものを送った者だよ」
(;・∀・)「おおあ!?」
年甲斐もなく声をあげ驚いてしまう自分が、酷く情けなかった。
- 83: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 16:50:39.48 ID:fGsxAZTh0
(´・ω・`)「君には二つの選択肢がある」
( ・∀・)「・・・・・・選択肢?」
何故だか分からないが、第六感がこの男に対して警報を鳴らしている。
しかし、募る好奇心は、じんわりと歯止めが利かなくなってきていた。
(´・ω・`)「そう。選択肢。
一つは、このまま虚像の理想論を作り上げていくか
二つは、この理想論を現実のものにするか」
(;・∀・)「・・・・・・」
何を言っているのだろうか、この男は。
この理想論を、現実にだって?
出来るわけがない。どう足掻いても今技術では到底作りようがないのだから。
(´・ω・`)「まあ、疑うだろうね。でも僕はこの理論を完全なものにすることが出来る」
( ・∀・)「・・・・・・どういうことなんだい」
(´・ω・`)「この指輪は、この世界にはない物質を利用することで作成できるのは君自身が理解してることだよね?」
( ・∀・)「・・・・・・そうだね」
- 84: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 16:55:10.67 ID:fGsxAZTh0
- (´・ω・`)「なら簡単な話だよ。僕はこれを作る理論を作ってたんだよ。
既にその鉱石が、ここには五個あるんだよ。
だから、あとは君の理論を試す。それだけ」
(;・∀・)「は――――――」
男の手には、石ころほどの大きさの鉱石が転がっていた。
それぞれ、色は緑、黒、桃、灰、紫。
全てが透明な水晶のようだった。そしてそれは
自分の求めていた鉱石の形状、色そのものだった。
(´・ω・`)「信じてくれたかな?ちなみにこの灰色だけはちょっと不完全でね。
もう一つ作ろうと思うんだけど、鉱石を作るにはちょっとした技術が必要なんだ。
君にはそれを手伝って貰いたい」
( ・∀・)「・・・・・・いいよ」
好奇心はとうとう、歯止めが利かなくなってきていた。
(´・ω・`)「あと、赤が必要だね。それじゃ、練成に移ってくるよ」
( ・∀・)「・・・・・・」
嫌な予感がしていた。だけど、その予感すらも無視し、好奇心が全てを動かしていた。
- 87: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 16:57:15.62 ID:fGsxAZTh0
そして、悲劇は訪れた。
(´・ω・`)「さて、それじゃ君はまず、大切な人にごめんなさいをしなくちゃいけない」
(;・∀・)「―――――は?」
(´・ω・`)「うふふ。直に分かることさ。
君にはいっぱい手伝ってもらったよ。この指輪の鉱石のためにね」
ドクン、ドクンと心音が高まっていく。
何だ。何か、何かとてつもない何かが、僕を包み込んでいた。
止めろ。それ以上言うな。言うな。言うな。言うな―――――
(´・ω・`)「ふふ、これが、君の思いから出来た鉱石から出来た指輪。
燃え滾るような赤と、黒く沈み濁った灰。
色のモチーフは、わかるかな?」
- 88: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 17:00:47.75 ID:fGsxAZTh0
僕の言葉を待たず、目の前の男は続ける。
(´・ω・`)「でぃ、ジョルジュ。彼等から搾り取った生き血から出来た鉱石。
そうだね。賢者の石って奴と似てるかもしれない。
それじゃ、君には手伝ってもらったお礼をしなきゃだね」
そういって僕の手の中へと渡される指輪。赤、そして灰色。
(´・ω・`)「ふふ、なかなかの出来だろう?彼等の死ぬ間際の表情は格別だったよ。
なかなか、快感だった。ん?どうしたんだい?そんなに肩を震わせて。
えぇと、日本語だと、慟哭かい?」
(# ∀ )「ふ、ざけるなあああああッ!!!」
(´・ω・`)「何をバカな。君が手伝うといったんだよ?だから僕は君の理論を完成させた。
君はこの指輪を使う人間は『強い思い』を持ってないといけないと言ってたね?
だから、それを使わせてもらった。この指輪を作るには『強い思い』を持った人間からしか作れない。つまり、そういうことだよ」
(# ∀ )「僕が、僕が作り出したのは理想、全ての人が、笑い、助け合い、嘆くことのない世界を作りあげるための象徴!
それが込められた意味を持つ、指輪!その理論だ!犠牲を払って、得た物に、価値があるのか!?」
男は「やれやれ」と肩をすくめ、僕を嘲笑う。そして、更に続ける。
(´・ω・`)「そうだね。それは理想論。だけど、これは理論。想いの意味を知ってるかい?
想いっていうのはね、思う心って意味なんだ。
つまりそれはこうしたいと願う考え。それは現実にはなり得ない空想の世界。
君は言ったね?僕が手伝って欲しいと言ったその時「いいよ」という了承の言葉を。
つまり、その瞬間から君は理想論から想の部分を消してしまった。違うかな?」
- 89: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 17:04:22.61 ID:fGsxAZTh0
( ∀ )「・・・・・・」
僕が、悪いのか。
僕が、軽はずみに「いいよ」なんて言ったからなのか。
(´・ω・`)「落ち着いたみたいだね。それじゃその指輪をはめてご覧」
まるで、奴隷のように、僕は彼の言葉どおりに動いた。
赤の指輪を、右手の薬指へ。灰の指輪を、左手の薬指に。
(´・ω・`)「へぇ、薬指にかい。なかなかロマンチックだね。
それはともかく、念じてご覧。全て、君は理解するよ」
理解するの意味はわからなかった。が、半放心状態の僕は、ただ言われるがまま、念じた。
そして、垣間見た地獄絵図。
でぃと、そしてジョルジュの、死ぬ間際の表情。感情。思い。右顧左眄首を傾け狂気する姿。
それらが全て、頭の中で映像として流れ込んできた。
悲痛な叫び、理念、相思。
全てが入り混じった映像が、鮮明に、全て、全て流れてくる。
胃に溜まっている消化途中物が、胃液と共に嘔吐物となり、喉から這い上がってくる。
そして、全てをぶちまけた。感情共に、全てが。
- 91: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 17:07:51.79 ID:fGsxAZTh0
(´・ω・`)「それが、答えだ。理念や理想を掲げた結果。
君が、君の心が生んだ罪。それを代償に生み出した君が言う象徴。
大事にするといい。その力を。その指輪を。ふふ・・・・・・」
そして、男は消えた。
しばらくして、消えたはずのジョルジュの名を聞いたよ。
僕は驚きを隠せず、会いにいった。だけど、そこにはいたのは、その男。
ことの元凶。全てを生み出した、害悪。
いなくなったジョルジュの穴埋めとして働いているらしい。僕はそれ以来警察を避けるようになった。
必然的に、ジョルジュの姿をしたアイツが、憎くて堪らなくて仕方がなかった。
そして、それをぶちまけた今日があった。
でも、何も出来なかった。僕は、何も出来なかった。
でぃにも、ジョルジュにも、何の報いも出来なかった。
せめてこの指輪の力でアイツを殺して、僕も死ぬつもりだった。
だけど、出来なかった。僕の力じゃ、アイツを殺せなかった。
ただ、遊ばれた。口の中で飴玉を転がすように、ただコロコロとね。
- 92: ◆fMqrvr1rTs :2007/08/03(金) 17:09:50.75 ID:fGsxAZTh0
- そしてそれからまた半年。指輪の事件を耳にした。
同時にジョルジュがその事件を調べているということも。
そこで更に知ったよ。指輪が散らばっているということをね。
――――――――――
( ・∀・)「・・・・・・以上だよ」
( ω )「・・・・・・」
ξ )ξ「・・・・・・」
('A`)「・・・・・・」
僕には、尚のこと、何もいえなかった。
いう資格なんて、なかった。
七話 おわり
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