( ^ω^)ブーンがタッチタイプをマスターしたようです

3: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:09:31.00 ID:eM7tUZsT0



暗い……暗い闇の中……。

果たして、今僕はどこにいるのだろうか。
ここは、僕の望んだ世界か? はは。それじゃあまりにも僕が暗すぎるじゃないか。
だってここは、真っ暗闇。黒で統一された世界だぞ?
いつから僕はこんなに根暗に? はは、笑えないな。


「あんた……。いずれ来ると思っとったけど、やっぱ来たんやね」



4: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:10:42.68 ID:eM7tUZsT0

暗闇の中、背後からふと聞こえた声。
その声の主を確かめようと振り返った時、暗闇は消え、小さなスポットライトのような光に照らされた女性が一人。

僕は、この人を知っている。誰よりも、この人を知っている。
この人の名は・・・・・・

( ・∀・)「でぃ、なのか?」

(#゚;;-゚)「そうよ。あんたの望んだ場所へようこそ」

名はでぃ。
そして僕にとってかけがえのない存在。最愛の妻だ。



5: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:11:43.82 ID:eM7tUZsT0







十話 気持ちが後ろに向いている時は何をやっても上手くいかない






6: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:13:02.08 ID:eM7tUZsT0


( ^ω^)「おま、いい加減にしろお」

('A`)「三十連続目的地wwwwwww」

(#^ω^)ビキビキ

今僕がいるのは我が家。僕とドクオで二人っきりだ。男と二人……。深くは考えないのが賢明だ。こんな夜更けに……もうやめよう。

ドクオが僕を励ましに来てくれてから、ずっとゲームをやっていた。
すごろくの超特大版のようなゲームである。通称、桃鉄。

しかしながら、全くもってゴールに辿り着けない。理不尽なくらいに辿り着けないのだ。
それでも頑張るアタシ(笑)



7: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:14:35.05 ID:eM7tUZsT0

('A`)「そんな気持ちでやってたらいつまでたっても運は味方しねーぜ!」

( ^ω^)「馬鹿にすんなお、今僕の手中にあるカード。このカードを次に使えば一瞬だお!」

(;'A`)「ま、まさか銀河鉄道カードか!?」

( ^ω^)「これが僕の力だお!」

('A`)「はい剛速球カード」

『パリン! 銀河鉄道カードが割れた! 銀河鉄道カードが割れた! ゴールドカードが割れた!』

( ゚ω゚)「GYAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

('A`)v「急行カードでも使ってろ」

(#^ω^)「お前だけはゆるせねぇお!!」



8: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:15:17.15 ID:eM7tUZsT0

プルル プルル プルル
ドクオの携帯電話が突然鳴り出した。こんな時間で、かつドクオにかけてくる人なんていない。
唯一僕くらいはいるけれども、その僕は今ここにいる。

( ^ω^)「ドクオ、電話だお」

('A`)「ん? ああ。んだよこんな時間に・・・・・・はいもしもし」

『私だ。ヒートだ。今暇か? いや、暇じゃなくてもいい。今すぐ駅前の公園まで来い』

('A`)「はあ? んだよいきなり」

『緊急事態だ。ショボンが関係してることかもしれない』



10: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:16:30.13 ID:eM7tUZsT0

('A`)「・・・・・・わかった。今から行く」

『あの一緒にいるピザも呼んでくれ。数は多いほうがいい』

('A`)「ブーンか? ああ。わかった。隣にいるから一緒に行くわ」

『わかった。じゃ、頼んだぞおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

(;'A`)「うるせえ! って、もう切ってやがる・・・・・・」

( ^ω^)「・・・・・・なにかあったのかお?」

('A`)「ん、ああ。緊急事態だそうだ。駅前の公園まで行くぞ」

( ^ω^)「・・・・・・わかったお」

何か、起こるかもしれない。そう思うと僕の心臓がドクンと高鳴った。
奮起したわけじゃない。これは多分、怖いんだ。



11: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:17:16.21 ID:eM7tUZsT0

また戦うかもしれない。そう考えれば考えるほど心は冷たい鎖か何かに縛られる感覚になる。

('A`)「大丈夫か? なんなら俺だけで・・・・・・」

( ^ω^)「行くお。ここで止まったら、もう前には進めないお」

('A`)「そうか。じゃ、行くぞ」

( ^ω^)「お」

自分の指にはまっている緑色の指輪を一瞥し、僕は玄関へ、ドクオは『窓』へ。

・・・・・・ん? 何か常識的に考えておかしくないか?



12: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:17:51.38 ID:eM7tUZsT0

(;^ω^)「ちょ、窓っておま!」

('A`)「ん? 何が?」

(;^ω^)「なんで窓から出るんだお!? 死ぬお」

('A`)「バーカ。いいから靴履いて来い」

(;^ω^)「・・・・・・意味がわからんお」

そんなことをぼやきながらもそそくさと玄関に行き靴を履き外に出る僕。
で、ドクオは・・・・・・

「何ぼーっと突っ立ってんだよ。ほれ、はやく行くぞ」

(;^ω^)「お?」

ドクオの声が聞こえた。辺りを見渡すが、どこにもドクオの姿はない。
一体どこへ、どこへ行ったんだ?



13: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:18:48.08 ID:eM7tUZsT0

「上だ、上」

(;^ω^)「は?」

('A`)「ほれ、はよいくぞ」

(;゚ω゚)「と、飛んでるううううううう!?」

('A`)「馬鹿。指輪を使え指輪を」

(;^ω^)「え?」

指輪って言われても。泳ぐのはネットサーフィンをイメージして打ち込めばよかったけど
イメージはともかく、空を飛ぶイメージと文字なんてあるのか?

('A`)「んだよ、はやくしろよ」

(;^ω^)「言われてもわかんないお。そんな文字なんてあるのかお?」



14: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:19:34.73 ID:eM7tUZsT0

('A`)「I can fly」

(;^ω^)「なんというご都合主義―――――!!」

僕の叫びはご近所さん一帯に響き渡り、田村さんの家では、ようやく眠りについた赤子が起きてまた寝かすのに一時間かかったそうだ。
そしてそれについて怒鳴られたという。しかしこれはまた別の御話。なんてね。

こんなことを考えながら、あんなことを叫んでおきながら『 I can fly 』って打つ僕はいい加減駄目なのだろうか。いや、駄目なんだろうなきっと。

( ^ω^)「おお、飛べたお」

空を自由に駆けるツバメをイメージして、ツバメになりきる妄想を脳内で描く。
それと同時に文字を打ち、エンターキーで確定すると体が宙を舞った。
自由に空を飛んでいる。今僕は、鳥になっている。気分的なものだけどね。



15: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:20:08.15 ID:eM7tUZsT0

('A`)「いいから行くぞ」

( ^ω^)「お、公園だったかお」

('A`)「そうだ。んじゃお先に失礼!」

(;^ω^)「お、早いお・・・・・・でも、僕だって負けないお!」

⊂二二二( `ω´)二⊃「ブーンだおおおおおお!!」

(;'A`)「うおっ! なつかしっ!」

そんな感じで僕らは公園へと向かい空を駆け出した。






16: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:20:41.00 ID:eM7tUZsT0


          【駅前の公園】


ノパ听)「・・・・・・」

从 ゚∀从「・・・・・・」

炎髪の少女に、金髪の少女。
互いに黙りあい、睨み合う。

キーボードを片手にしている場所も、姿もまるで同じである。

そして、二人同時に駆ける。



17: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:21:20.78 ID:eM7tUZsT0


ノハ#゚听)「るあああああああああああああああっ!!」

从#゚∀从「ああああああああああああああああっ!!」

共に至近距離からの発砲。

炎髪の少女は金髪の少女の辺り一面を取り囲むようにして射出し、
金髪の少女は炎髪の少女の身体を貫くように連続して正面に射出す。

しかし互いに放たれた弾丸は、体に触れる前で何かに弾かれ地面へと落ち消滅する。

ノパ听)「何故だあああ!!」

从 ゚∀从「ああ!? 何がだよ!?」

地を滑走しながら月光を受け、細身の長剣を振るう炎髪の少女。
それを右手で持った短刀で弾き、余った左手でボディブローを狙う金髪の少女。

しかしボディブローは決まらず、後方へと距離を取られ避けられる。



18: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:22:05.15 ID:eM7tUZsT0

ノパ听)「何故お前は戦うんだ!! 戦う理由があるのか!?」

从 ゚∀从「てめえには、関係ねえっ!」

再び詰められた距離。詰められた距離の中で短刀を小振りし、牽制する。
無論、見えない壁のようなもので防がれるのだが。

ノパ听)「人を傷つける武器でしかない指輪を何故求めるんだ!!」

从 ゚∀从「はっ、そのセリフ。親父さんが聞いたら泣くぜっ!?」

再び振るわれた短刀を下から上へとアッパー気味に振り上げる細身の長剣。
地を抉り、地面を削りながら空を舞う。

同時に、短剣も大きく弧を描いて飛ぶ短剣。空を舞い、やがて重力の法則に従い落ち、地面へ突き刺さる。

短剣が弾き飛んだことを確認し、
炎髪の少女は、すかさず体全体の重力を乗せてタックルを行う。



19: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:22:48.99 ID:eM7tUZsT0

从;゚∀从「うおっと・・・・・・!?」

ノハ#゚听)「おおおおおおおおおお!!!」

タックルをまともに食らい、ゆらゆらと揺れる金髪の少女の頭を跳びつきながらに、がっしりと鷲掴みした炎髪の少女。
そのまま地面へと自分の体重を乗せ、金髪の少女の頭を思いっきり叩きつける。

从; ∀从「ぐうっ―――――!?」

冷たい地面に仰向けに転ぶ金髪の少女。頭を思いっきり叩きつけられ脳が揺れ立てないことを自覚すると、両手を放り投げ長い髪を揺らす。
月光で反射する金髪がきらりと煌くと同時に、炎髪の少女が細身の長剣を相対していた少女の首根っこへ突き出す。

ノパ听)「答えろ。あんたが指輪を欲しがる理由を!」

从 ゚∀从「けっ・・・・・・」

ノパ听)「早く言えっ! 自分の状況がわかってるのか!?」



20: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:23:29.12 ID:eM7tUZsT0

炎髪の少女の言葉を聞き、口元を尖らせながら「へっ」っと笑う。
何に対してなのか。何故、この状況下で笑えるのか。不思議に思い、辺りを一瞥するが何もない。
何の余裕か分からない。それに対して問おうとした瞬間、金髪の少女は口を開く。

从 ゚∀从「甘い、お前は甘い。それで追い詰めたと思えば―――――」

吹き飛ぶ体。地に叩きつけられ、そのまま大きく跳ね、宙を舞う。
何が――――? と視線を下ろすとそこにはしょんぼりと眉を垂れ下げた男が、黒いマントを羽織り、いかにも不審者のような格好で立っていた。
全身から汗が噴出す。何に対してなのか。しかし疑問はすぐに解けた。

これは、恐怖だ。絶対的な力の差を戦わずとも感じられる異常なまでの殺気。
目には見えないが、全身で感じ取れるだけの絶望的な力の差。それに対しての、恐怖。



22: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:24:43.26 ID:eM7tUZsT0

ノハ;゚听)「ひっ・・・・・・」

思わず、体が強張る。殺される。不味い。このままじゃ、殺される。殺される――――!!
そういった感情が少女の中で入り乱れ、一種の錯乱状態を引き起こし、着地に失敗する。
地面へと落下した時、鈍く、重い痛みを感じながら地を転げる。
痛い。素直に思ってしまった。

しかしそれが駄目だった。それが、大きく隙を生んでしまった。

从 ゚∀从「形勢逆転、だな」

(´・ω・`)「何が形勢逆転だ。僕が来なけりゃ君は死んでたじゃないか」

从 ゚∀从「分かってねーな。こんな甘ちゃんにやられるわけねーだろ」

(´・ω・`)「まあ、あれの娘だからねぇ」

从 ゚∀从「ちげーねぇなっ! はははは!」



23: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:25:32.48 ID:eM7tUZsT0

ノハ#゚听)「っ!!」

全くの赤の他人に自分の父親を馬鹿にされ、貶され、侮辱され、黙っている子供がいるだろうか。
少なからずいたとしても、普通は黙っていない。眉を吊り下げた男の一言にはそれだけの意味が詰まっていた。

恐怖で竦んでいた足が動く。恐怖で震えていた身体が動く。
今は恐怖よりも、怒りが先行していた。

ノハ#゚听)「父さんをっ! 馬鹿にするなあああああああああああああ!!」

从;゚∀从「まだ動けたのかっ!」

倒れた体を起こしながら地を駆ける。体にはまだ痛みが残っている。
だがそれでも、踏みとどまるわけにはいかない。この怒りを、この怒りの根源である男が目の前にいる以上、目的となる男がいる以上、

諦めるわけにはいかなかった。

たとえ力量差が圧倒的であったとしても。たとえ、負け戦であったとしても。



24: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:26:09.45 ID:eM7tUZsT0

ノハ#゚听)「るああああああああああああああああああ!!!!」

叫び、振るう。
再び地を抉り、弧状を描き振り上げる細身の長剣。

目標は只一つ。
この戦いの大本。つまり―――――しょぼくれた眉の男。

(´・ω・`)「来るかい!? ぶつけてみるかい!? その弱小な力を、試してごらん!」

炎髪の少女は引き下がれない。たとえ、負けるとわかっていようとも


今はただ



渾身の力を振るうだけ―――――!!



26: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:27:43.30 ID:eM7tUZsT0


ノハ#゚听)「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

地を裂く咆哮。耳を劈く雄叫び。
そして、直撃す剣。

(;´・ω・`)「ぐうっ!!?」

押している――――!! その確かな結果が少女に振り切るだけの力を与える。
攻撃は、見えない壁で防がれている。しかしそれでも押している。

もう一踏ん張り。あと少しでこの壁を叩き壊せる。そんな予感がした。
叩き壊すために、今有る力を以って腰を入れ、体重を乗せ、全力で振るう。

ノハ#゚听)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

パリン、と音を立て何かが割れ辺りに透明色の破片が飛び散った。
そして剣が振り切られ、男の胴を切り裂く。



28: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:28:33.64 ID:eM7tUZsT0

从;゚∀从「しょ、ショボンさんっ!」

(;´・ω・`)「ば、馬鹿な! どこにそんな力が!」

ノハ#゚听)「貴様等が・・・・・・貴様等が侮辱した父の力だっ!!」

はあ、はあ、と息を荒げ、両肩を大きく上下に震わせながらに叫ぶ。
押し切った。やり遂げた。

そう確信した。


いや、そのはずだった。


しかし



29: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:29:06.01 ID:eM7tUZsT0


(´・ω・`)「まあ、全部」

ノハ;゚听)「がっ!?」

突如、眼前まで距離を縮め、炎髪の少女の首根っこを掴み晒し上げる。
ぎりり、と首が絞まり、枯れた声が漏れる。
足元を見れば、胴を切ったのにも関わらず血が全く滴っていない。しかし手ごたえはあった。なら、何故? どうして? 疑問がただただ脳内を埋め尽くしていく。

(´・ω・`)「演技なんだけどね」

ノハ;゚听)「んぐっ! んぐうう!!」

肉が引き裂かれるのではないかと言わんばかりに首を締める力が更に大きくなる。
終わった。そう確信できるほどに絶望的な状況。

持てる力を全て使い、全力を以って挑み、敗れたのだ。



30: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:30:53.99 ID:eM7tUZsT0

最早、胸中に希望などという感情は欠片も存在していなかった。
遠のく意識と激しい痛みの中、全身の力を抜き、意識を闇の中へと手放そうとしたその時。


「きったねえ手で触れんじゃねえよ変態野朗があああああああ!!!」


絶望という名の闇の中
一筋の希望の光が、降りてきた。

しかしそれでも、少女に力は残されておらず、意識は闇の中へと消えていった。
脳内で響く男の叫び声を残しながら。







32: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:33:02.22 ID:eM7tUZsT0




( ・∀・)「でぃ……何故、こんなところに」

(#゚;;-゚)「あんたが望んだからでしょうにね。ウチは呼ばれたから来ただけのこと」

闇で閉ざされた世界にはいつの間にか光で溢れていた。
一室の部屋に、ぼくらはいた。そこは、モノクロで彩られた世界で、現実味はあまりにもないものだった。

( ・∀・)「君は、僕が……」

(#゚;;-゚)「はあ。……あんたは何を気にしとんのよ。ま、無理もないか。ウチを呼ぶくらいなんやから」

( ・∀・)「その、呼ぶってのはどういうことなんだ? それにここは……」

(#゚;;-゚)「ここは、あんたの夢の中。現実のあんたはのんきに寝てる。呼ぶってのは言葉どおり、ウチを呼んだこと。そりゃもう、恥ずかしいくらいにね」



33: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:34:05.65 ID:eM7tUZsT0

ああ、そうか。ここは僕の夢の中か。なら確かに合点が行く。
時たま自分の意識が在る中で夢の中を自由に動き回れるときがある。
明晰夢だったか。そんな名前の奴だ。

( ・∀・)「そうか……。夢の中なら納得だ。でぃを呼んでたってことも」

(#゚;;-゚)「……今のあんたの顔、凄く情けないからあんまり見たかないんだけどね」

そんなに酷い顔なのだろうか。
確かに、僕は寝る前にでぃのことを考え、でぃのことを思っていたかもしれない。
でも、何が悪いのだろうか。最愛の妻を失ったのだ。これくらいの感情は湯水の如く湧き出てくるものだ。

(#゚;;-゚)「今のあんたは、うちの知っとるあんたじゃない。そんな失ったものを気にして落ち込んだ表情を浮かべるのはあんたじゃない」

夢の中だってのに、厳しいなでぃは。



36: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:34:39.75 ID:eM7tUZsT0

( ・∀・)「いいよもう。もういいんだよ。もうおきなくてもいい。でぃが、いるならそれでいい」

(#゚;;-゚)「情けない。ほんまに、情けないわ。そんな言葉聞きとーなかったわ」

( ・∀・)「罵倒されても、構わない。でぃだから。だからずっと……」

(#゚;;-゚)「こんの……アホンダラ!!」

(;・∀・)「っ!」

ドゴォオ、といった重たい音が響く。パシン、とか、パチンとかいう乾いた音ではなく、そんな可愛らしい音ではなく
もっと重たい音だ。ああそうだ。これがでぃだ。怒った時は女っぽく平手打ちなんかじゃなくて、本気で拳を握り殴ってくるのがでぃだ。



37: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:35:23.80 ID:eM7tUZsT0

(#゚;;-゚)「あんたを待ってる子がおるんよ!? あんたの目的はなんやったんや!?」

僕の、目的……

(#゚;;-゚)「ジョルジュ君はどないしたんよ! 娘は、どうなったんよ!」

ジョルジュ……ヒート……


(#゚;;-゚)「あんたのその指輪を持つ意味をゆうてみい!!」


僕が、指輪を持つ意味……


ああ、そうか。
でぃが僕に伝えたかったこと、でぃが夢に現れたこと。

なるほど。そういうことか。



39: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:36:32.31 ID:eM7tUZsT0

( ・∀・)「守るため……。大事なモノを守るためだ」

でも、それでも。

(#゚;;-゚)「わかっとんなら、なんでウチを呼んだ!」

( ・∀・)「……辛いからだ。寂しいからだ。僕は、そんなに強くない。本当はもっと弱くて、すぐに心なんて崩壊してしまう」

(#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「でぃ、君を、君を失ったあの日。僕はもう誰も奪わせないと誓った。でも、もう……疲れたんだ……」

しばらくの沈黙。
お互いに黙り込み、険悪な雰囲気が漂っている。



40: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:37:09.16 ID:eM7tUZsT0

(#゚;;-゚)「……あんたが辛いのもわかる。でも、あんたは今立たなきゃならんの」

どうして。そう言いたかったが、でぃの表情が酷く悲しげに見え、言葉を飲み込んだ。
とてもそんなことを言える軽々しく言える雰囲気じゃない。

(#゚;;-゚)「失う痛みが分かるあんたが、取り残される痛みを分かるあんたが、ここで諦めたらアカンのよ……」

(#゚;;-゚)「娘に……ヒートに同じ痛みを味わわせんといて」

でぃが何を言いたいか。でぃが何を伝えたいのか。分かってしまった。

(#゚;;-゚)「ウチは、いつもあんたの傍におる。せやから今こうやって夢の中で会える。
     今はまだ、こっちに来る時やない。あんたは、今娘を助けてやらんと駄目やろ?」


(#゚;;-゚)「それが、父親が背負う義務やない」



41: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:38:03.60 ID:eM7tUZsT0

( ・∀・)「……それを言うのは、卑怯じゃないか」

(#゚;;-゚)「卑怯でええ。卑怯でええから、いっといで」

そんなことを言われて、引き下がれるわけがないじゃないか。
娘を出されて、引き下がれるわけが、ないじゃないか。

(#゚;;-゚)「ヒートは、駅前の公園におる。指輪を使う奴等と戦こうとる」

( ・∀・)「……時間は、ないんだね」

(#゚;;-゚)「ウジウジせんと、はよ行きいな」

( ・∀・)「……ほんとに、手厳しいね君は」

(#゚;;-゚)「知っとることやろそんなことは。さ、いってきな」

( ・∀・)「……ああ。いってきます」

(#゚;;-゚)「いってらっしゃい。あんた」



42: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:39:43.21 ID:eM7tUZsT0
守るものがある以上、僕はこの指輪を使わなくてはならない。
大事な人が待っている以上、僕は行かなくちゃならない。
本当はまだ、ここにいたい。ここで、でぃと一緒にいたい。

でも、今は

娘を守らなくては、ならない――――!!


( ・∀・)「逃げずに、戦うのは難しい。……それでも、逃げていたら何もかも終わってしまう。
      なら、僕は戦うさ。大切な人を守るためだけに」

(#゚;;-゚)「カッコつけちゃって」

( ・∀・)「それでこそ、僕じゃないか」

(#゚;;-゚)「ふふ、そうやね」


直後、強い光に全身が飲み込まれた。



43: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:40:48.14 ID:eM7tUZsT0





('A`)「ドクオさま、ただいま参上ってな!」

空を駆け、飛び続けていた速度のまましょぼくれた眉の男の顔面へと蹴りをお見舞いする。
その力により吹っ飛んだ男の手から落ちる炎髪の少女を両手でキャッチ。

(´・ω・`)「まるで正義のヒーローだね」

しかし、吹き飛んだにも関わらず、男にはまるで無傷。かすり傷ひとつついてはいなかった。
だが、そんなことを考えて動揺などする場合ではない。



45: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:41:34.27 ID:eM7tUZsT0

しかし、吹き飛んだにも関わらず、男にはまるで無傷。かすり傷ひとつついてはいなかった。
だが、そんなことを考えて動揺などする場合ではない。

('A`)「けっ。すかしてんじゃねーよ」

(´・ω・`)「君じゃ僕の相手は務まらない。せめて君三人分ぐらいじゃないとね」

('A`)「試してみるといい。相対している相手を軽く見るのは戦いにおいてやっちゃいけねーことだぜ」

(´・ω・`)「いっちょ前に言うじゃない」

('A`)「オタクを舐めんなよ。エロゲ知識だ」



46: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:42:06.52 ID:eM7tUZsT0

じりじりとした空気が、公園を包み込んでいた。
もし、一般人がこの空間に居た場合はどういう感情になっていただろうか。
恐怖で逃げ出すのだろうか。それとも、珍しい物でも見る目で近づいてくるだろうか。

しかし、幸いにも一般人は一人していなかった。


( ・∀・)「さーて。それじゃちゃっちゃとやるかな」

(;'A`)「ちょ、モララーさんいつの間に」

( ・∀・)「神出鬼没が僕のアイデンティティだよ。それに今はそんなことを行ってる場合じゃない」



48: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:43:30.88 ID:eM7tUZsT0


(´・ω・`)「くくく……2対2とはまた、なかなか熱いじゃないか」

('A`)「2対2? なーに勘違いしてやがんだよ」

(´・ω・`)「は?」

「……………ーーーーううううううううううううううううううううううん!!!」

(;´・ω・`)「何だ!?」



⊂二二二( `ω´)二⊃「ブーンだおおおおおお!!」



49: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:44:34.68 ID:eM7tUZsT0

( ^ω^)「内藤ホライゾン、ここに参上!」

('A`)「おっせーっよ。ピザ」

( ^ω^)「うるさいおガリチビ」

('A`)「だーらっしゃい。いいから今は」

( ・∀・)「ボスを倒してクリアと行こうじゃないか」

('A`)「そういうこった」

( ^ω^)「この際なんでモララーさんがいることには触れないでおくお!」

( ・∀・)「さあ、ショータイムと洒落こもうじゃないか」



51: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:47:17.88 ID:eM7tUZsT0


(´・ω・`)「くく、面白い……。雑魚が束になってかかってきても他愛もないことさ」

( ・∀・)「そのしょぼくれた眉毛全部引き千切って髪に困ってる老人に分けてやるよ」

(´・ω・`)「なかなか面白いジョークだ」

( ・∀・)「だろう? なかなか面白いだろう」

互いに口元をゆがめ、にやりと小さく笑う。
笑いながらに、ジリジリと睨み合い、キーボードを具現化させる。

そして地を駆ける。



52: ◆fMqrvr1rTs :2008/02/20(水) 23:48:20.35 ID:eM7tUZsT0




(´゚ω゚`)「じゃあ、その力を見せてもらおうかなあああああああああああああ」

(;^ω^)「来るお!」



三人の集まっている場所を幾千もの針が取り囲むようにして現れた。
それは、まるで針の檻のような雰囲気を持っていた。



十話 おわり



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