V         (のようです)

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 18:59:28.91 ID:XbRaDYE30

次の日

大学の講義を終えると 誰と話すでもなく 例のアパートへ向かいます
まあ バイト先というか 派遣先というか

一応 雇い主であるところの紳士に 電話をしてみたのですが
電源が入っていない という 機械的なメッセージ


( ^ω^)「……まあ、一週間後には確実に連絡がつくお」


アパートへ向かう前 コンビニの機械で 口座をチェックしました


(  ゚ω゚)「お……!!」


まさに破格
万単位で増えているその数字に 驚くことしばし

この一週間 一日ごとにバイト代を振り込んでくれるという
その言葉に偽りはなかったようです



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 19:03:21.52 ID:XbRaDYE30

( ^ω^)「……しかし、どうやって僕が、
        箱を見に行くことを確かめるお?」


雇い主 もしくは他の誰かが
どこかで見張っている可能性もあります

一応 アパートに着いた途端 辺りを注意深く眺め回しましたが
当然のように 人気はない

空は晴れているのに この路地はどこか 暗い雰囲気がします


( ^ω^)「痴漢とか出そうな雰囲気だお」


不気味さはもちろんだし あと 元来の責任感ってやつ
そいつが後押しするせいでしょうか

誰も見ていない とは思うものの
バイトをサボろうという気には 到底なれませんでした



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 19:06:21.71 ID:XbRaDYE30

階段を登りきると ドアに合鍵を差しこみます

かちり


( ^ω^)「ふう……」


予想以上に 音が大きく感じられたのは
ひとえに ぼくの不安げな心からでしょう

うっすら光を透過するカーテンと
それに覆われた ベランダへ続く 大き目の窓

居間の真ん中 通せん坊するかのように
昨日と同じく でんと居座る大きな木箱が ぼくを出迎えてくれました


( ^ω^)「……相変わらずでけーお」


ぱちり

どうにもカーテンを開ける気が起きず 電灯のスイッチをつけます

明るくなった室内
木箱から発せられる威圧感が 少しだけおさまった気がしました



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 19:09:15.92 ID:XbRaDYE30

( ^ω^)「よかった、電気は通ってるみたいだお。
        まあ、台所やトイレからは生活感があったし、当然誰か……」


住んでいるのでしょうか
そんな疑問を口に出そうとして 飲み込みます

居間に限っては テーブルもタンスも ベッドもありません
布団はあるかもしれませんが 木箱が邪魔で敷きづらそうです

何が目的で こんな箱を 住空間の中心に据えているのか


( ^ω^)「不便だお……」


そしてそれは 来訪者であるぼくにとっても同じ

あーテレビもネェ ラジオもネェ 車もそれほど走ってネェ
朝起きて べこ連れて
いや 牛はさすがに居ない


(;^ω^)「……おらこんな部屋いやだ」


ともかく こんなところに長居は無用です



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 19:12:18.54 ID:XbRaDYE30

それでも お金をもらっている以上 すぐに退散するのも気がひけます
バッグを降ろすと その横にあぐらをかきました

何もないとは知りつつも 口を開けて木箱を見上げます


( ^ω^)「はー……」


用途不詳 目的不明 全てにおいて UNKNOWN
宗教的なアイテムか何かかも知れません


( ^ω^)「見張るって言うけど、誰かが盗みにくるのかお?」


そんなに大事なものなのでしょうか


( ^ω^)「……まあ、世の中色々な人がいて、それぞれの事情があるお」


できれば その事情には触れたくないなあ



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 19:15:04.26 ID:XbRaDYE30

何をするでもなく ぼーっと眺めているうちに
いつしか うとうとしている自分に気付きました


( ´ω`)「おっお……お?」


上を向いたまま 睡魔に襲われたため
首を後ろにもたげ 思わず倒れ込みそうになります

しかし
こんなお化けボックスに見下げられつつ 眠りにつく傲慢さは
さすがのぼくにもありません

ちっ ちっ ちっ

左腕から伝わる 秒針の音だけが
虚無の空間に 現実の流れを刻んでいます


( ^ω^)「……帰るお」


お気に入りのそれで 時間を確認し
壁に手を当てながら 立ち上がりました

電気を消すと 昨日より一層 暗い室内
不気味に鎮座する部屋の主を なるべく見ないように ドアを閉めました



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