普通の人がエロゲーっぽい世界の主人公になったようです

408: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 21:00:28.96 ID:ufRg5Jdv0
(番外編そのに  『休日』)




朝日まぶしい、今日は土曜日。
今日、休みもちの人は、色々な時間を謳歌していることだろう。
家でごろごろする人もいれば、趣味に時間を費やす人だっているかもしれない。


だのに。
俺は、駅前の噴水広場で、ひとりたたずんでいた。



409: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 21:03:36.20 ID:ufRg5Jdv0
今日は、接着剤、金髪、円谷と遊ぶ日なのである。……『遊ぶ』ことが出来るのかどうかは分からないけれど。


そもそも、俺はあいつらと遊びたくなかった。
だのに、金曜日、いきなり接着剤と金髪と円谷に遊びに誘われた。

本当は断りたかった。家に置いてあったズゴックとアッガイとザクレロのプラモデル、まだ作ってなかったし。
なのに、俺が断るような挙措を見せると、金髪と円谷が睨んでくる。
それこそ、テメェこそ親の敵だ! みたいな目線で。

俺は、恐怖に屈した。
そうして、その結果が、この待ち合わせというわけだ。

もうやだ。選択肢のない人生なんてやってられない。
そういう人生って、今を生きるのに精一杯になればいい、というけれど。
あんな話を聞かない連中に囲まれて、どうしろと? 生きる以前に死ぬわ。主に精神が。



412: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 21:17:31.81 ID:ufRg5Jdv0
俺が噴水広場で待つこと数分。まだ、誰もこない。
約束の時刻は10時で、現在は9時50分。
まあ、来ないのも仕方ない時間かもしれないけれど。約束のちょっと前には着いている、というのは基本だよね?

と、まあそんなことがあって。


結局、全員集合した際は、10時20分ぐらいになっていた。
後先考えろボケ。約束の時間前に到着ぐらい基本だろうが。そう言いたかったけど言えない俺、マジ臆病者。

俺は、あくまで無様でない服装で来たけれども、円谷とか金髪の服はやばかった。
だって、フリルとか結構あるんだもの。高校生にもなってフリルひらひらだぜ? 恥ずかしくないのか?
俺は恥ずかしかった。
接着剤は俺にやたら絡んできた。うざい。アロンアルファを顔面に塗りたくってやろうか? 本当、こいつはしつこい。

「えへへっ。ちょっと今日は、気合いれちゃった」

円谷がそんなことを言うが、俺はもう、死にたくなった。
何が悲しくて、こんなフリルパンクロッカー円谷と町中を歩かねばならないのだろうか。
公開羞恥プレイだ。もし、この場にハサミがあるのなら、円谷の服よりも円谷の首を切り落としたかった。

もう、待ち合わせた時点で俺のライフはゼロだった。
もう虫野郎に負けてもいいから、帰らせてください。いや、切に。



415: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 21:23:47.25 ID:ufRg5Jdv0
まず、俺らは映画を見ることにした。
内容は、まあよくあるアクションものである。俺も丁度見たかったやつだ。
ただ、こいつらと見るだけで、作品の魅力が数割減殺されることは疑いようもなかった。

どんよりとした俺の様子に気付かず、三人は映画館に笑顔のままで足を進める。
あのさ、だからさ。
もう少し、人の様子とか挙動とかを観察してくれ。どうしてこいつらは一方通行なんだ? そろそろ泣きたくなってきた。



419: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 21:33:25.17 ID:ufRg5Jdv0
映画館で映画を見た。
それだけ言うならば、大したことないかもしれないけれど。
俺は色々と大変だった。

それは、映画がクライマックスシーンに入った時だ。

金髪が俺の手を握ってきた際、俺は思わず、はたき落としてしまった。
結果、お返しとして、ポップコーンを顔面にブチ当てられた上、

「なにすんのよ! 空気読みなさいよ!」

なんて上映中に叫ばれてしまった。

もう金髪うざい。マジ自重してくれ。つーか、テメェが空気読め。
こんな基地外の仲間と思われるのに、羞恥を通り越して屈辱を通り越して、悟りすらひらきそうだった。


作品上映中に叫ぶとか、どういう教育を受けたらそんなことが出来る?
金髪、やっぱり牛乳飲め。あとレバーも食え。お前にはカルシウムとパントテン酸が足りない。
ついでに、ビタミンDも取っておけ。ほうれん草や鮭の切り身食っとけ。俺の精神安定のために。マジ頼む。



421: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 21:43:28.01 ID:ufRg5Jdv0
映画が終わった時点で、俺はもうグロッキーだった。
が、時間もお昼時。腹も減ってくる。

とりあえず無難な線で、駅前噴水広場近くのファミリーレストランへと行くことになった。
意外にも、金髪と円谷は反抗しなかった。
女性なら、もうちょっとムードとかを大事にする店を希求すると思ったのだが。

どうやら、俺も勉強が足りないらしい。
人生プランの勉強領域を広げようと思った。


ほどなくして、俺と基地外三人は、そのファミリーレストランに着いた。
店内が広い、メニューは大抵が安価。とにかく、リーズナブルであることに定評がある店だ。

俺もこの店は好きだったので、自然と心が躍る。
でも、あいつらの姿をみると、心が沈む、気力が萎える……。

幸せって、なんだろう? とみにそう思う。
多分、それは、この基地外三人と行動しないことが大前提だと思う。



424: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 21:54:49.35 ID:ufRg5Jdv0
それはともかくとして。
俺たちは、店の真ん中辺りへと陣取った。
店員さんに、そう誘導されたからである。この時点で俺は嫌な予感を感じていた。

まあ、腹が減ったので、メニューを見ることとする。
精神的な負担が凄かったせいか、俺はいつの間にか、人間ふたり分くらいの量の食い物を頼んでいた。

接着剤に「今日は健啖家だな」と言われて、マジで死にたくなった。
褒め言葉なのかもしれないが、接着剤に人格指摘されるのって、他の何にも増して恥辱だった。



俺らは各々の食事をむさぼった。
俺だけ、品目が多いのがちょっと恥ずかしかったが、飢えた腹を満たすためには仕方がないと割り切った。



433: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 22:30:30.48 ID:ufRg5Jdv0
で、食事をしている最中。
いきなり、円谷が言葉を紡ぎ出した。

「そういえばさー、みんな、好きな人いるー?」

またその内容か。
接着剤ばかりではなく、円谷までもがそんなことを言う。
俺は無視したかったので、煮込みハンバーグを口の中に入れた。
いや、食べていれば返答出来ないだろうから。


「どうなのー?」


なのにこの円谷、俺の方を見て、わき腹つつきながらしゃべりやがる。
つーか、もの食べたまましゃべんな。すげぇうざいんだが。

親に教えてもらえなかったのか? 食べ物をたべながら話してはいけません、と。
それでも話すのならば、口の前に手をあててからしゃべれ、と。
相手に口の中のものが飛ばないように、おもんばかるのが基本だろうが。

だのに、この円谷、口に食べ物入っているのにしゃべりまくり。スペシウム光線くらって死ね。
そう思ったけれど、接着剤と金髪の目線が怖くて言えなかった俺、マジでチキン。口の中に入れているのはビーフだけれど。
でも、どの肉つかっているのか分からないから、特定不可能。



435: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 22:36:25.72 ID:ufRg5Jdv0

「……そういうの、あまり考えたことがない」


俺が正直に答えれば、その他の基地外は「なんだその無難な返答は」みたいな顔をした。
正直、すっげぇうざかった。

確かにこっちの返答はつまらないものかもしれないけれど、それを表面に出すのって、変だろ?
そういうこと思っても、表情に出さないのが普通だろ? 出しちゃったら詫び入れるもんだろ?
もう嫌だ。こいつら、遠慮とかそういう言葉を知らないっぽい。
頼むから、少しぐらいは謙虚な姿勢というものを学習してくれ……。



438: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 22:47:15.91 ID:ufRg5Jdv0
そんなこんながあって、食事も進み、腹もくちくなった頃。
いきなり接着剤が、変なことを語りやがった。

「そういやさ、こいつ、この前のミスコンで三位だったんだぜ」

接着剤は、金髪を指さしながらそう言う。金髪、頬を赤くしている。
まあ、妥当な線かもしれない。金髪の性格はどこまでもクレイジーだが、容姿だけならば一級品だから。

しかし、ミスコン…もとい、ミスコンテストなんていうことをやるうちの学校に、一抹の不安感。
ぶっちゃけ、薄着になった女の、乳房やら臀部やらを観察するためだけのもよおしものだろうに。
これ偏見じゃなくて、実際、その場に行こうとした奴に聞いたことだけれど。

網膜に映る美醜を追い求めるのは、若者の特権だよね。
皆、50年も経過すれば、目も落ちくぼんで腹も出る、しわしわのババァになるのに。
まあ、そういう刹那的な美しさを求めたい、という気持ちもあるんだろうけれど。
実際、そこの辺りはよく分からない。



442: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 22:57:54.17 ID:ufRg5Jdv0
まあ、金髪が三位なのは良いことではなかろうか。
誰だって、どんなもよおしものだって、上位に食い込んだら嬉しいし。

「ふぅん、そうか。……うん、すごいな」

俺がぽつりとそう言ってみれば、いきなり金髪は頬を真っ赤に染める。
なんだ? いきなりヘモグロビンの容量増加か? などと思う暇もあらばこそ。

「べ、別にそう言われても嬉しくないんだからねッ! アンタなんかに言われたって、別になんとも思わないんだから、馬鹿ッ!」

金髪は堰を切ったかのようにそうしゃべって、ぷいとそっぽを向いた。
俺は、そんな金髪の姿を見て。

もうあきれて良いのか怒って良いのかどうか、俺はマジで分からなくなった。


いや、だいたいさ。俺みたいな人間に言われても嬉しくないとか言うのは分かるんよ。
誰だって、変な奴に褒められても嬉しくない、そう思うの当たり前だからさ。

ただ、そういう、人に言ったらいやだと思われるようなことをがんがん言うのはどういうことさ?
そういうの、小学生までで終わりじゃない? 実際、嫌に思っても、口に出さないのが普通じゃないのか?
なんつーか、ゆとり教育とかそういう言葉つかいたくないけれど、金髪はどっかおかしいところがある。

つーか、こいつすぐキレすぎだろ。カルシウムだけじゃなくてストレプトマイシンとってろ。



446: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 23:04:23.29 ID:ufRg5Jdv0
げんなりしながら食事を終えた俺は、それから三人にひきずられるようにして、ゲームセンターに足を運んだ。
この場合、運ばされた、というのか? まあ、ゲームセンターなんてあまり寄らないし、たまには良いとする。

目的地に足を運べば、超絶的大音量の電子音たちがお出迎え。
とりあえず、俺は接着剤と一緒に、ガンダムの対戦ゲームで戦った。


まあ、当然というべきだろうか。
普段、ほとんどゲームセンターに通わない俺が、百戦錬磨の接着剤に敵うべくもない。
あっという間に、俺の操る運命は、自由の翼にぶっ壊された。まあ、当然であろう。

「よっしゃああぁぁぁぁ! やったやった、勝ったああぁぁぁぁ!」

…接着剤うぜぇ。
奴がかちどきの声を上げた際、モニターに鉄骨ブチ込んで、対面ごしに奴の顔面をぶっ飛ばしたかった。
そんなことすると弁償費用かかるから無理だけれど。



450: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 23:12:26.49 ID:ufRg5Jdv0
とにかく、ゲームセンターは久しぶりだったので、時間を忘れて熱中した。

しばし楽しんでいると、なんか、金髪と円谷が、男何人かに言い寄られていた。
やっぱ外見ってのは気になる要因なんだろうか。いわゆる軟派、というやつか。ああ、化石語。

と、ここでひとつ、思いついたのだが。
金髪と円谷に彼氏が出来れば、俺への負担は激減するのではなかろうか?
なんてことだ、これ、結構いいアイディアじゃねぇか。


……でも、あの電波具合を考えると、つきあって三日ともたない気がする。


などということを俺が考えていれば、金髪と円谷と男たちの間に割って入るのは、接着剤。

そうやって助けに入るのは、アメリカンコミックのヒーローみたいで格好良いんだろうが。
ぶっちゃけ、俺にはとてもとてもまね出来なかった。

いや、だってさ。金髪と円谷に言い寄っている男たちは、世辞に言っても素行良さそうな外見じゃないけれどさ。
もしも金髪たちの知り合いとかだった場合、どうすんのさ? ピエロじゃすまねぇぞ、接着剤。



452: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 23:21:10.81 ID:ufRg5Jdv0
なんかそんなこと考えると、もうどうでも良くなってきた。
興が冷めた、というんだろうか。ネトゲしている時に現実の問題を持ち込まれるような。

接着剤はなんか喧嘩してる。
一対四だから、当然劣勢である。でも俺にはどうでもいい。
というより、三人ともそこで消えてくれた方が一番いいんだけれど。

あのさ、なんですぐ暴力ふるうんだろう? 暴力ふるって何か起きるのか?
もうわかんない。わけわかめだよ。暴力怖いよ暴力。
俺は喧嘩弱いし、暴力とか基本的に苦手だから、あの中に入っても役立たずだと思う。



しばらくすると、ゲームセンターの店員さんらしき人が来て、場を収めてくれた。
「警察呼びますよ!?」は最強の言葉だと思う。国家権力の走狗、ばんざーい。



455: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 23:24:56.36 ID:ufRg5Jdv0
それから何かよく分からないけれど、俺は金髪と円谷と接着剤になじられた。
「意気地なし」だの「臆病者」だの。

俺は平和主義者だから日和見に徹しただけなのに、何故に人格否定されなきゃならんのだろうか?
だいたい、金髪や円谷が言い寄られたのはそっちの勝手だし、接着剤が喧嘩したのも勝手だ。
だからさ、自分が助けられること前提に話をすんなっつーの。

友達だから助け合うべきだよ、なんていう、美しき信念なんて通用しない世の中なの。
もしも誰かがブライアン・ホークに絡まれていたら、どうせお前ら逃げ出すんだろうに。
誰だってそーする、俺もそーする。

結局、人間って、恣意的なんだっつーの。あんまり他人を信用しちゃいかんよ、マジで。

一方的に被害者ぶっているこいつらを見ると、人生の理不尽さを感じずにはいられなかった。
いいじゃん。人間、やられる時はやられるし、死ぬ時は死ぬんだから。
助けられて当然とか思うな。むしろ、助けられてなんて幸運だ、ぐらい思え。


それから、喧嘩別れみたいな感じで、三人とはお別れをした。
さんざんなじられた俺はグロッキー状態。
普通の人になじられても普通にこたえるけれど、あいつらになじられると、駄目人間コンテストで優勝したような屈辱感がある。



459: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 23:29:32.28 ID:ufRg5Jdv0
しかし、ここで俺は発想を変えてみた。

……そうだよ。
あいつらに嫌われれば、もう、俺はあいつらと関わらなくてもいいんじゃないか?

それはつまり、平和な日常が約束されるんだ。

そう考えると、空は暗くなりかけているのに、俺の心は火がついたように明るくなった。
さあ、家に帰ってズゴックのプラモデルを作ろう。

俺は、スキップしながら家へと戻った。


……後日。
なんか三人が「言い過ぎた」とか言って謝ってきた。

頼むから、俺のこと嫌ってください。

もう憂鬱だ、マジで死にたくなってきた。首吊りするんなら、オムツは必需品だ。
死にたい。でも、死ぬの怖いから死ねない。

とりあえずトイレ行ってウンコした。
ウンコが落ちた衝撃で、水が跳ねてケツに当たった。


……もうやだ。


(もう書けない。ゆえにおわり)



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