( ^ω^)と夏の日のようです
- 25: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:14:34.49 ID:/YDuLUAZ0
- 『( ^ω^)と夏の日のようです』 第二話
窓からさんさんと朝日が差し込んでくる。
陽光に目覚めさせられた僕は、うろうろと階段を下りて行った。
('、`*川「あら、おはようブーン君」
( ^ω^)「おはようございますお」
('、`*川「朝ごはんは出来てるから、早く顔を洗ってらっしゃい」
( ^ω^)「了解ですおー……」
寝ぼけた自分を叩き起すために、冷水で思いっきり顔を洗う。
微熱が冷めていく感覚が気持ちよかった。
( ^ω^)「いただきますお!」
今日の朝ごはんは卵焼きとあさりの味噌汁、キャベツの浅漬け。
甘辛い卵焼きは絶妙の味付けだった。
味噌汁をすする。あさりの出汁が口に広がった。
ごはんがおいしい。今日もいい一日になりそうだ。
- 28: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:16:57.15 ID:/YDuLUAZ0
- 叔父さんの家に来てから3日経ち、ここでの生活にも慣れてきた。
大自然に囲まれた暮らしは居心地よく、爽快な気分にしてくれる。
( ・∀・)「ねえ兄ちゃん!今日も宿題手伝ってよ!」
(*゚ー゚)「私も教えてほしいことがあるんだ」
そして何より、この子たちとのふれあいが楽しくて仕方ない。
モララーもしぃも、すっかり僕に懐いてくれている。
('、`*川「こらこら、あんまり迷惑かけるんじゃないですよ」
( ^ω^)「かまいませんお。二人とも、ごはんの後で部屋に来るお」
( ・∀・)「やったー!」
こう見えても勉強は得意だ。
そのおかげで進学校に行けたのだけれど、今ではもう関係ない。
だから、自分にできることなら、何でも二人にしてあげたかった。
- 29: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:19:27.13 ID:/YDuLUAZ0
- ( ^ω^)「ここがこうなって……」
( ・∀・)「あっ、そっか!」
モララーの「夏休みの友」を一緒に考える。
分数の計算は誰もが通る最初の難所だ。
僕も分子分母を理解するのに時間がかかったものだ――――――。
それにしても、毎度思うがどこが夏休みの「友」なのだろうか……。
「強敵」と書いて「とも」と読む、昔の少年漫画を思い出した。
( ^ω^)「あとは自分でやるんだお」
( ・∀・)「うん、分かったよ!兄ちゃんありがとー!」
- 30: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:22:07.16 ID:/YDuLUAZ0
- モララーの先生を終えたら、今度はしぃの先生だ。
しぃは読書感想文の書き方に困っているようだ。
(*゚ー゚)「『走れメロス』で書こうと思ってるんだけど……」
( ^ω^)「おー、僕も昔課題作文で書いたことあるお」
感想文を書くコツは、疑問提起だ。
なぜ主人公はこんな行動をとったのか、こんな事を言ったのか。
その疑問を最初に投げかける。
あとは解決の手掛かりとなる文章を抽出し、答えを導いていく。
そして最後に自分なりの解釈を加え、文を締める。これが僕なりの定石だ。
( ^ω^)「この作品の場合、主人公の心情変化がポイントだお」
(*゚ー゚)「じゃあ、そこに注目して書いてみるね!」
- 33: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:24:41.74 ID:/YDuLUAZ0
- しぃにポイントを教えたところで一息つく。
この子たちは本当に素直でいい子だ。
こんなに純粋な子たちは、僕のいた街にはいないだろう。
( ・∀・)「兄ちゃんのおかげで、今年の宿題はすぐ終わりそうだよ!」
(*゚ー゚)「いつもは最後の日までかかってるのにね」
( ・∀・)「うるさいなー!」
(*゚ー゚)「ふふっ♪」
( ^ω^)「おっおっ」
こうして見ているだけで、元気をもらえるような気がした。
- 34: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:27:06.08 ID:/YDuLUAZ0
- 二人の宿題を見てあげたところで、僕は散歩に行くことにした。
(´・ω・`)「ブーン君、今日も散歩に行くのかい」
( ^ω^)「はいですお。それじゃ、いってきますお!」
(´・ω・`)「ちゃんと虫よけを塗っておくんだよ」
農作業に向かおうとしていた叔父さんに挨拶をして、僕は家を飛び出した。
今日行こうと思う場所は、川だ。
昨日、ツンに「山を下りたところにきれいな川があるわ」と教えてもらったのだ。
( ^ω^)「きれいな川なんて都会じゃ見られないお!」
僕が見たことがある川は、コンクリートで囲まれていて少しもきれいじゃなかった。
だから僕は「きれいな川」を見ることにわくわくしていた。
熱い日差しが僕を照らす。まるで僕の心を焦がすようだった。
- 35: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:29:51.66 ID:/YDuLUAZ0
- ( ^ω^)「あったお!」
山を下り、小道を抜け、ようやく川に辿り着いた。
( ^ω^)「……本当にきれいだお」
流れる水は澄み渡り、ゆるやかに流れていく。
川のせせらぎが心地よい。
苔石の辺りには小さな川魚がいた。
( ^ω^)「少しここで休むお」
冷たい川の水で手を洗い、川岸の石に腰掛けた。
青空の下、光を反射して輝く水面に足をつける。
ひんやりとして気持ちよかった。
( ^ω^)「(はぁ……落ち着くお……)」
遠くで蝉が鳴いている。
蝉の声に耳を傾け、川の流れを感じながら目を閉じる。
ここは桃源郷だろうか。
だとしたら、実に素朴な桃源郷だな、と僕は思った。
- 36: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:32:32.83 ID:/YDuLUAZ0
- 何分、何時間が経っただろうか。
僕はずっとこうして川辺で休んでいた。
もう時間を忘れかけたころ、後ろで僕を呼ぶ声がした。
ξ゚听)ξ「やっぱりここにいたのね」
(;^ω^)「おっ!?」
振り返るとそこにはツンがいた。
白いワンピース姿が眩しい。
ξ゚听)ξ「お昼の時間になっても帰らないから、探してたのよ」
(;^ω^)「お、それはごめんだお」
- 38: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:35:09.41 ID:/YDuLUAZ0
- ξ゚听)ξ「ほら、これ」
そう言ってツンは僕に弁当箱を渡した。
ξ゚听)ξ「お昼ごはん、一緒に食べるわよ」
ツンは僕の隣に座り、川の水に足をつけた。
ξ゚听)ξ「きゃっ、冷たーい♪」
( ^ω^)「ツン――――――」
ξ゚听)ξ「か、勘違いしないでよ!私も外で食べたかっただけなんだからっ!」
( ^ω^)「……ありがとうだお」
- 39: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:37:39.56 ID:/YDuLUAZ0
- 二人並んでおにぎりを食べた。
具は梅干し、たらこ、昆布、ちりめん山椒。
どこか懐かしい味がした。
こうしてツンと並んでいることも、どこか懐かしかった。
( ^ω^)「ツン、今日はありがとうだお」
ξ゚听)ξ「あー、いいわよ。あんたが迷子になってのたれ死なれたら困るからね」
(;^ω^)「ちょwwwwwwwwwww」
昼食後、しばらく二人で話をした。
楽しかった。こうして、ツンといることが。
僕らの喋り声以外の音は、かすかな蝉の声と、優しい川のせせらぎだけだった。
- 40: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:40:14.03 ID:/YDuLUAZ0
- ξ゚听)ξ「さっ、そろそろ帰るわよ」
( ^ω^)「お?もう帰るのかお?」
ξ゚听)ξ「……あんたねえ、もう夕方よ?」
(;^ω^)「おぉっ!?」
時計を見ると、いつの間にか5時を過ぎていた。
まだ明るかったから気付かなかったのかもしれない。
本当に時間を忘れてしまっていた。
- 42: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:42:45.42 ID:/YDuLUAZ0
- (;^ω^)「もう7時間近くもここにいたのかお……」
ξ゚听)ξ「全く、付き合わされる身にもなってよね!」
(;^ω^)「本当にごめんだお」
ξ゚听)ξ「ほら、行くわよ」
先に歩きだしたツンの後ろを、僕は小走りで追いかけていった。
- 43: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:44:42.11 ID:/YDuLUAZ0
- ( ^ω^)「でも、なんでもっと早く言わなかったんだお?」
ξ゚听)ξ「それはっ……もう!そんなのどうでもいいじゃない!」
(;^ω^)「あ、待ってほしいお!」
元来た道を帰っていく。
来た時と違うのは、一人じゃなくて横にツンがいること。
たわいもない話をしながら僕たちは歩いていった。
沈んでいく赤い夕日。
二人の長い影は、僕たちが歩くずっと先で交わった。
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