( ^ω^)と夏の日のようです
- 46: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:49:37.84 ID:/YDuLUAZ0
- 『( ^ω^)と夏の日のようです』 第三話
照りつける太陽が僕の体温を上げる。
(;^ω^)「暑いお……」
昼食のそうめんを食べ終えた後、僕は畳の上に横たわっていた。
ちりんちりん、と風鈴の涼しげな音色が聴こえてくる。
今日から八月。
新しい月は、新しい日々の到来を期待させる。
今日からは、どんな毎日が待っているのだろう―――――――。
- 48: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:51:59.58 ID:/YDuLUAZ0
- ('、`*川「あらあら、だらしのないこと」
寝転がっていると、叔母さんが麦茶を持ってきてくれた。
('、`*川「はい、冷たいお茶。これでも飲んでしゃんとしなさい」
(;^ω^)「ありがとうございますお……」
麦茶を受け取り、すぐさま口にする。
よく冷えた麦茶が熱っぽさを下げてくれた。
よし、これで今日も頑張れる。
- 49: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:54:16.80 ID:/YDuLUAZ0
- ( ^ω^)「お?」
居間を出ると、玄関で叔父さんが誰かと話しているのに気がついた。
(´・ω・`)「やあ、今日はどうだったんだい?」
('A`)「駄目だな……売り分しか漁れなかった」
見ると、玄関先には頭にタオルを巻いた無精髭の男がいた。
男らしくて、「格好いい」雰囲気の人だな、と思った。
- 51: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:56:32.56 ID:/YDuLUAZ0
- ('A`)「悪いが、こいつで勘弁してくんな」
(´・ω・`)「これは……ハマチかい」
('A`)「養殖組合から頂いてきた。養殖とはいえ上物だぜ」
(´・ω・`)「なるほど、確かにいいものだね」
('A`)「ま、ハマチ養殖はここの名物だからな」
男はそう言ってクーラーボックスを閉じた。
ぱちんと閉まる音が、妙に大きく響いた。
- 53: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 18:59:30.77 ID:/YDuLUAZ0
- (´・ω・`)「おや?ブーン君、いたのかい」
叔父さんが僕に気づいたようだ。
僕の方を振り返り、手招きした。
( ^ω^)「えっ……と……、この人は、誰ですかお?」
(´・ω・`)「ああ、彼は地元の漁師だよ」
('A`)「おっ、お前がショボンさんが言ってた奴か!確か……」
( ^ω^)「内藤ホライゾンですお!ブーンって呼んでほしいお!」
('A`)「おお、そうだったブーンだったな!俺はドクオってんだ。よろしくな」
( ^ω^)「よろしくですお、ドクオおじさん」
('A`)「おいおい、おじさんって歳でもないぜ?」
見た目は怖そうだったが、話してみるときさくでいい人だった。
何より僕を子ども扱いせず、同じ目線で話してくれる。
本当に「格好いい」と思った。
- 56: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:02:21.57 ID:/YDuLUAZ0
- ξ゚听)ξ「あら?ドクオさん来てたんだ」
階段からツンが下りてきた。
今日はすらっとしたパンツルック。
夏らしい、淡い色使いのキャミソールがよく似合っていた。
- 58: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:04:47.49 ID:/YDuLUAZ0
- ('A`)「おう、ツンちゃんじゃねぇか。久々だな」
ξ゚听)ξ「ちょっと前に会ったばかりじゃないですか」
('A`)「はっはっはっ!……ところでよ、いい加減男は出来たのかい?」
ξ;゚听)ξ「ちょっ、な、何言ってるんですかっ!」
ツンが顔を赤らめる。
ツンに彼氏――――――――そんなこと、考えたこともなかった。
('A`)「へへへ、その様子じゃまだのようだな。どうだい、ここは俺の――――――」
川 ゚ -゚)「『俺の』、何なんだ?」
(;'A`)「げぇっっ!?」
- 59: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:07:22.63 ID:/YDuLUAZ0
- 知らぬ間に、ドクオさんの後ろに一人の女性が立っていた。
吸い込まれそうなほど黒いロングヘアーが映える、きれいな女性だった。
川 ゚ -゚)「帰りが遅いと思ったら……そういうことだったのか」
(;'A`)「ちっ、違うんだクー!これはほんの冗談で……!」
川 ゚ -゚)「問答無用っ!」
(;'A`)「うぼあぁっっ!?」
クーと呼ばれた女性の強烈な裏拳が、ドクオさんの顔面にクリーンヒットする。
その場にうずくまったドクオさんはまだ弁解の言葉を述べていた。
「格好いい」、なんて思うんじゃなかったな――――――僕はしみじみとそう思った。
- 61: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:10:12.63 ID:/YDuLUAZ0
- ('A`)「―――――というわけで、誤解なんだ」
川 ゚ -゚)「むぅ、冗談なら冗談と最初に言えばいいものを……」
(;'A`)「いや、言ったじゃねぇか……」
二人は叔父さんの家に上がり、お茶を飲んでいた。
女性の名前はクーさんと言って、ドクオさんの奥さんらしい。
「海の男のドクオさんも、尻に敷かれているんだな」と思うと、少しおかしかった。
(´・ω・`)「まあまあ二人とも、今日はゆっくりしていってよ」
('、`*川「せっかくですし、いただいたお魚で晩ごはん御馳走しますよ」
川 ゚ -゚)「それは嬉しいな。ありがたく頂戴しよう」
叔父さん夫婦と、ドクオさん夫婦が仲良く談笑する。
僕とツンもその輪に加わらせてもらった。
ドクオさんの漁の話、クーさんの苦労話。
二人の話は尽きることなく、僕も飽きることはなかった。
- 62: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:12:48.34 ID:/YDuLUAZ0
- ('、`*川「さっ、そろそろごはんにしましょうか」
話し込んでいるうちに、すっかり日が暮れてしまっていた。
空高くで輝いていた太陽は、もう海へと沈んでいっていた。
川 ゚ -゚)「手伝おう、魚をさばくのには自信がある」
('、`*川「あらあら、それじゃお願いしましょうかね」
叔母さんとクーさんが台所へ向かった。
その瞬間を見計らって、ドクオさんはニヤけながらクーラーボックスを開けた。
- 63: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:14:40.58 ID:/YDuLUAZ0
- ('A`)「さっさっショボンさん、飲みましょうぜ」
(´・ω・`)「さすがだね。僕のビールの好みを熟知してる」
開けられたクーラーボックスの中には大量のビール瓶が入っていた。
キンキンに冷やされたビールを、ドクオさんは嬉しそうにグラスに注いだ。
(*'A`)「くっー!うめえっ!」
(*´・ω・`)「ああ、このために生きてるって気がするね!」
二人揃ってグラスを一気に飲み干した。
ほのかな苦みとアルコールの心地よさに恍惚の表情を浮かべている。
- 64: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:17:09.09 ID:/YDuLUAZ0
- ('A`)「ほれっ、お前らも飲め」
ドクオさんが僕とツンにもグラスを渡した。
(;^ω^)「ちょwwwww未成年だおwwwwwwww」
ξ゚听)ξ「まったく、大人ってサイテーね」
(´・ω・`)「ははは、まあビールは大人の味だからね」
そう言って叔父さんは二杯目を注いだ。
大人の味。
いつか僕にもわかる日が来るのだろうか。
僕が大人になるまでに、どんなことがあるんだろう。
嬉しそうにお酒を飲む二人を見て、僕はそう思った。
- 66: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:19:38.92 ID:/YDuLUAZ0
- ('、`*川「まったく、この男どもは」
叔母さんが大皿を持ってやってきた。
すっかり出来上がった叔父さんとドクオさんを見て、呆れ顔を作る。
川 ゚ -゚)「ほら、酔っ払いども。つまみだぞ」
後からクーさんが枝豆と唐揚げを持ってきた。
この展開を読んでいたのだろうか、ちゃんとおつまみを用意していた。
なんだかんだいって、ドクオさんのことをよく分かっているんだろう。
理解者って言葉の意味が、分かった気がした。
( ・∀・)「わー!今日はおじさんたちとご飯だー!」
(*゚ー゚)「おじさん、こんにちは」
ごはんの匂いを嗅ぎつけて、二階からしぃとモララーが下りてきた。
('A`)「おじさんじゃねぇっての」
川 ゚ -゚)「そうして顔を赤くしていては、何の説得力もないな」
( ^ω^)「早く食べるお!」
- 67: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:21:37.01 ID:/YDuLUAZ0
- いつもより大人数で「いただきます」を言った。
まずは大皿のハマチのお刺身からいただくことにする。
養殖物らしいが、脂っこくなく食べやすい。
醤油に浮いた脂の少なさがそれを物語っている。
この土地の名産品なだけはある。うまい。
- 71: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:24:16.51 ID:/YDuLUAZ0
- (*'A`)「ほれほれブーン、刺身だけじゃつまらんだろ?」
酔っ払ったドクオさんが無理やり僕にビールを勧めてきた。
(;^ω^)「いやいや、丁重にお断りしておきますお」
(*'A`)「遠慮すんな、ほれっ」
(;^ω^)「むぐぅっ!?」
口を開けたところに、無理矢理ビールを流し込まれる。
(;^ω^)「(うぇぇぇ……)」
――――――何と言ってよいのやら、変な感覚に襲われる。
(;^ω^)「全然おいしくないお!」
(*'A`)「はっはっはっ!まだ早かったな!」
ドクオさんが満足そうに自分のグラスを傾ける。
なぜこんなものが美味しいと感じるんだろう。僕は改めて疑問に思った。
- 72: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:26:43.63 ID:/YDuLUAZ0
- (;^ω^)「お〜……」
酔いが回ったのか、頭がくらくらする。
僕は馬鹿騒ぎする大人を残して、縁側に腰かけた。
あのあと、どうやらツンも飲まされたらしい。こちらは平気だったようだ。
……情けないな、僕は。
(;^ω^)「はー、夜風が気持ちいいお」
冷たい夜風が火照った体を冷ましてくれる。
まだふらふらするが、だいぶ意識ははっきりしてきた。
ふと空を見上げると、星がきらめいていた。
こんなに美しい夜空は、ここでしか見られないだろうな、と思った。
- 73: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:29:21.87 ID:/YDuLUAZ0
- ('A`)「よおブーン、大丈夫か?」
ドクオさんが水を持って隣に座った。
(;^ω^)「酷いですお……ふらふらしますお」
('A`)「あー、すまねぇな。ほら、水飲め水」
(;^ω^)「いただきますお……」
渡された水を一気に飲む。
冷たい水が渇いた喉をすーっと潤した。
- 74: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:31:58.79 ID:/YDuLUAZ0
- ( ^ω^)「少しだけ、すっきりしましたお」
('A`)「そいつはよかったぜ」
ドクオさんと一緒に夜風に当たる。
風に乗って海の香りがしたような気がした。
('A`)「お前よぉ、気分を変えたくてこっちに来たんだって」
( ^ω^)「そうですお」
('A`)「ふーん、そうかい―――――――」
少しの沈黙の後、ドクオさんが僕の目を見て言った。
('A`)「でもよ、ブーン。お前が本当に変えるべきなのは『自分』自身なんじゃねぇか?」
(;^ω^)「おっ!?」
突然のことに驚きを覚えた。
ドクオさんは続けた。
- 76: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:34:33.67 ID:/YDuLUAZ0
- ('A`)「いやよ、今日会ったばかりの俺が言うのもなんだが……」
('A`)「お前は、ただここでうだうだと暮らすだけでいいのか、ってことだ」
(;^ω^)「どういう、ことですかお?」
('A`)「……ショボンさんに聞いたぜ。お前、高校辞めたんだろ?」
('A`)「―――――――俺なんか高校行ってねぇんだよ、漁師を継ぐためにな」
遠くを見つめながらドクオさんが語りかけてくる。
('A`)「俺さ、本当は漁師なんかやりたくなかったんだよ」
('A`)「高校行って、立派な大学行って、都会に出たかったんだ」
(;^ω^)「…………」
- 78: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:37:05.18 ID:/YDuLUAZ0
- ('A`)「でもよ、無理だった」
('A`)「結局さ、俺は自分の未来を変えられなかったんだよ」
ドクオさんは、少しだけ声に力を込めて言った。
('A`)「だけどお前はよぉ、俺と違って、いくらでもチャンスがあるじゃねぇか!」
('A`)「そのチャンスをよ、無駄にするんじゃねぇ」
(;^ω^)「ドクオさん……」
言われてから気が付いた。
僕は、ここに来てから何も変わっていなかった。
ここでの生活で気分が晴れたとしても、家に帰ればまたこれまでの生活に戻るだけだ。
自分が変わらなければ、何も変わらない。
それに気が付けなかった。
両親は、きっとそれが本当の目的だっただろうに。
- 80: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:40:39.91 ID:/YDuLUAZ0
- 暗闇の中で、ぽつんと浮かんでいる月。
僕たちはそれをただ黙って眺めていた。
('A`)「さてと……ブーン。クーがうるさいだろうから、そろそろ俺は帰るわ」
そう言うとドクオさんは立ち上がり、居間に戻ろうとした。
( ^ω^)「ドクオさん……今日は、ありがとうございましたお」
('A`)「ああ、気にするな。それより、偉そうに喋ってすまなかったな」
最後まで、僕と同じ目線で話してくれる。
川 ゚ -゚)「ドクオ、そろそろ帰るぞ」
玄関にはクーさんがいた。
僕たちの話が終わるまで待ってくれていたようだ。
本当にいい奥さんだな、と思った。
- 83: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 19:42:56.10 ID:/YDuLUAZ0
- ('A`)「じゃあな、ブーン」
( ^ω^)「バイバイですお」
('A`)「お前が大人になったら、一杯やろうや」
( ^ω^)「お供しますお!」
帰っていくドクオさんとクーさんの後姿を見送った。
並んで歩く姿が見えなくなるまで、僕は見送り続けた。
僕はいつの間にかドクオさんに尊敬の念を抱いていた。
本当に、「格好いい」と思った。
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