( ^ω^)と夏の日のようです

142: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:01:10.83 ID:/YDuLUAZ0
『( ^ω^)と夏の日のようです』   第五話



雲ひとつない晴れ空。
今日は一段と太陽がぎらついている。

( ^ω^)「今日も暑くなりそうだお!」

朝食を済ませた後、僕は部屋の窓を開けて空気の入れ替えをしていた。
爽やかな夏風が、僕の頬に吹きかかった。


僕は、今日はいつもと違うことをしてみようと考えた。
先日ドクオさんに言われた「自分を変えろ」という言葉を思い出す。

僕に足りなかったのは積極性だ。
受動的な僕は、見ず知らずの人ばかりの高校では友達ができずに浮いてしまった。
だけどこっちに来てからは、だいぶマシになってきたと思う。


今日は、もっと積極的になってみよう。そう決意して、僕は部屋を後にした。



143: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:03:52.63 ID:/YDuLUAZ0
( ^ω^)「ツン、ちょっといいかお?」

ツンの部屋の前にやってきて、扉をノックする。

ξ゚听)ξ「なによ」

( ^ω^)「今日は、一緒に散歩に行かないかお?」

ξ;゚听)ξ「……は?」

ツンは呆気に取られたような顔をした。

僕は女の子に対しては特に受け身だ。
今までは声をかけることすらままならなかった。
だから、今日はツンを誘ってみることにした。

――――――デートのお誘いってわけじゃないけど。



145: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:06:22.17 ID:/YDuLUAZ0
( ^ω^)「だめかお?」

ξ゚听)ξ「いや、ダメって言うか……大体、私が散歩なんかしても仕方ないじゃない」

( ^ω^)「ふふふ、実は昨日とっておきの場所を見つけたんだお!」

ξ゚听)ξ「とっておきの場所?」

( ^ω^)「知りたかったら一緒に来るお」


僕は焦らすように言ってみた。


ξ゚听)ξ「……いいわ、暇だし。付いていってあげる」

(*^ω^)「やっただお!それじゃ、今日の夜出発だお!」


ξ;゚听)ξ「……え、夜!?」



147: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:08:31.93 ID:/YDuLUAZ0
ツンとの約束を取り付けた僕は、上機嫌で一階に下りていった。

今日のお昼ご飯は冷やしうどん。
ネギとしょうがをつゆに入れ、割り箸をうどんへと伸ばす。

コシのある麺に歯を入れて、もちもちとした感触を楽しむ。
つるつるとしたのどごしがたまらない。あっという間に食べ終えてしまった。



148: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:11:02.58 ID:/YDuLUAZ0
(´・ω・`)「ブーン君、ちょっといいかい」

食後しばらくして、叔父さんに声をかけられた。

( ^ω^)「なんですかお?」

(´・ω・`)「実はね、手伝ってほしいことがあるんだ」


見ると、叔父さんの手元にはノートが数冊並べられていた。


(´・ω・`)「先月の出荷分の売上を計算してたんだ。悪いけど手を貸してくれないかな」

( ^ω^)「お安いご用ですお」

(´・ω・`)「すまないね。じゃあハウス栽培の分の計算を頼むよ」

( ^ω^)「任せてくださいお!」



149: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:14:06.72 ID:/YDuLUAZ0
渡されたノートにはキロ単位の果実の価格や、出荷量などが事細かく記されていた。
電卓を使って一つ一つ計算し、記帳していく。
単純作業だが中々に疲れる仕事だった。

(;^ω^)「終わらNEEEEEEEEEE!!!!」

(´・ω・`)「ははは、意外と面倒な仕事だろう?」

(;^ω^)「なめてましたお。簡単なことだと思ってましたお」

(´・ω・`)「確かに一見すると簡単そうに見えるかもね」

叔父さんは机の上のお茶を飲みながら言った。

(´・ω・`)「だけどね、やってみると大変なんだよ」

(;^ω^)「分かりますお……」


叔父さんの言葉が身にしみて分かる。
早くも根をあげている自分をよそに、叔父さんはてきぱきと作業を済ませていく。
自分の不甲斐なさに腹が立った。



151: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:16:17.01 ID:/YDuLUAZ0
( ^ω^)「僕も頑張るお……」

(´・ω・`)「ブーン君、この作業は単純で、地味で、つまらない仕事だ」

(´・ω・`)「だけどね、どんなに苦しくてもやらなくちゃいけないことなんだ」

(´・ω・`)「世の中に出たら、もっと多くの苦しいことがある」

(´・ω・`)「でも、諦めちゃだめだよ。さぁ、作業に戻ろうか」


叔父さんはそう言って、またノートに目を移した。


( ^ω^)「(よし……!)」

叔父さんに諭されて、僕は再び作業を始めた。
面倒でも、がんばろう。

そう心を入れ替えて、電卓をさっきまでより強く叩いた。



153: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:19:44.70 ID:/YDuLUAZ0
計算が終わるころにはもう夕食の時間になっていた。
あんなにぎらついていた太陽も、すっかりいなくなってしまった。

日が落ちて月が空を支配し始める頃、僕たちは出発した。

ξ゚听)ξ「ねぇブーン、一体どこに行くって言うのよ」

( ^ω^)「それは着いてからのお楽しみだお」

懐中電灯を片手に山道を歩いて行く。


(;^ω^)「それにしても蒸し暑いお」

ξ;゚听)ξ「ホントね……夏はこれがなければいいのに……」

日が落ちても暑さは変わらなかった。ツンがじっとりと汗ばんでいる。
ツンの芳しい汗の匂いが、風に乗って流れてくる。
僕は少しだけ、変な気持ちになってしまった。

ξ゚听)ξ「……ちょっと、なんか目つきがやらしいわよ」

(;^ω^)「あうあう」



156: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:23:07.24 ID:/YDuLUAZ0
家を出てから30分ほど経っただろうか。
僕たちはまだ長い道を歩き続けていた。
まだ辺りはそれほど暗くなっていない。
懐中電灯も、今は必要なかった。

ξ゚听)ξ「ねぇ、まだなの?」

( ^ω^)「もう少しだお。あと10分ほどで着くはずだお」

ξ゚听)ξ「もしかして、誰もいないところに連れ込んで襲うとか……」

(;^ω^)「そ、そんなことしないおっ!!」

ξ゚听)ξ「あははっ、冗談よ♪あんたにそんな勇気もないだろうしね」

(;^ω^)「お……」


僕たちは目的地へと急いだ。
もうすぐ月が高くまで上り、暗闇が訪れるだろう。
それまでに、着かなくては。



157: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:26:06.57 ID:/YDuLUAZ0
( ^ω^)「おっ!着いたお!」

ようやく、とっておきの場所に到着した。
そこは大きな溜め池。
何か特徴があるわけでもなく、よくある池といった感じだった。


( ^ω^)「ここがその場所だお。もう少し待つととっておきが見られるお!」

ξ゚听)ξ「……あのねぇ、ブーン。言いにくい事なんだけど……」

( ^ω^)「お?」



158: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:28:25.75 ID:/YDuLUAZ0
ξ゚听)ξ「あんたが見せたいものって、ホタルの事でしょ?」

ツンが僕の顔を見て、申し訳なさそうに口を開いた。


ξ゚听)ξ「だって……夜、水辺で見られるものなんて、ホタルぐらいじゃない」

ξ゚听)ξ「ホタルなら、あの川でも見られるし……ここではそんなに珍しくないの」


ξ゚听)ξ「せっかく連れてきてもらって悪いけど……」


( ^ω^)「違うお、ぜんぜん違うお」

ξ゚听)ξ「……えっ?」

( ^ω^)「ホタルみたいかもしれないけど、もっと素敵なものだお」



161: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:31:08.74 ID:/YDuLUAZ0
僕たちは岸辺に座り込んで、その時を待った。
ツンが不思議そうな顔でこちらを見てくる。


ξ゚听)ξ「ねぇ、ホタルみたいなものって……」

( ^ω^)「もうすぐ見られるお、もうすぐ……」


時計に目をやると、もう夜の8時になろうとしていた。

辺りはすっかり暗くなってきた。

もう少し――――――――。



163: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:33:52.96 ID:/YDuLUAZ0
ξ゚听)ξ「あ、星が出てきたわね……」

空を見上げていたツンが呟いた。


( ^ω^)「今だお!ツン、池を見てみるお!」

ξ゚听)ξ「?池なんか見ても……っ!?」


ツンが夜空から目を落とすと、そこにはまた夜空が広がっていた。
星がきらきらと、そしてゆらゆらと池の上で輝いている。

それはまるで、ホタルの光のようだった。


ξ゚听)ξ「……ブーン、これって……」

( ^ω^)「これが、僕が見せたかったものだお!」



165: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:36:11.51 ID:/YDuLUAZ0
池に映った星が、水面の揺らぎに合わせてゆらめく。

視線を上げると、そこは満点の夜空。

上を見ても下を見ても、星がきらめいている。


その光景は幻想的で、言葉に出来ないほど美しかった。



166: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:38:22.64 ID:/YDuLUAZ0
( ^ω^)「僕はこの池を見つけたとき、凄く光を反射する池だと思ったんだお」

( ^ω^)「それはまるで鏡を見ているかのようだったお」

( ^ω^)「だから、きっと星空も映してくれると思ったんだお!」


僕とツンは、一緒に目の前に広がる光景を眺めた。

ξ゚听)ξ「きれいね……」

( ^ω^)「気に入ってもらえて良かったお」

ξ゚听)ξ「本当に、きれい……」


周りが暗くなるにつれ、星はますます輝きを増していった。



168: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:41:06.76 ID:/YDuLUAZ0
ξ゚听)ξ「あっ!」

星のホタルが、すーっと水面を滑っていった。


ξ゚听)ξ「流れ星、だったのね……」

ツンが空を見上げてため息をついた。

( ^ω^)「何かお願いするんだったお」

ξ゚听)ξ「そうね、損しちゃったわ」


ξ゚听)ξ「でも、それ以上に得しちゃった。こんなにきれいな景色を見られるなんて」



170: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:43:15.98 ID:/YDuLUAZ0
ξ゚听)ξ「……ブーン、今日はありがとうね」

帰り道の途中で、ツンは突然そう言った。

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「また、一緒に見に行くわよ。これは命令だからね!」

(;^ω^)「おっおっ、分かったお」


今日ツンを誘って本当に良かった。
僕も少しは積極的になれたかな。
そう思いながら、懐中電灯で目の前の道を照らした。



172: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/08(日) 22:46:36.37 ID:/YDuLUAZ0
一つの星が夜空を駆けた。

ξ゚听)ξ「あっ、また流れ星!」

( ^ω^)「(おっ!願い事するお!)」


( ^ω^)「(自分を変えられますように……自分を変えられますように……自分(ry)」


ξ゚听)ξ「ねえ、何をお願いしたのよ」

( ^ω^)「……大したことじゃないお。それより、ツンは何をお願いしたのかお?」

ξ;゚听)ξ「え、それは……ひっ、秘密よっ!」

(;^ω^)「ちょwwwwwww走らないでほしいおwwwwwww」


二つの懐中電灯の光が辺りを照らす。
柔らかな月明かりが、そっと二人に降り注いだ。



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