( ^ω^)と夏の日のようです
- 40: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 22:39:18.31 ID:uJ7PyqMC0
- 『( ^ω^)と夏の日のようです』 第七話
今日の太陽はまた一段とご機嫌だ。
朝のニュースによると、この夏一番の暑さらしい。
地面から立ち上る熱気を感じながら、僕たちは川を目指して歩いていた。
(;゚ー゚)「今日は暑いねー」
(;^ω^)「全くだお」
ξ;゚听)ξ「あ゛ー、もうだめ……」
あまりの灼熱に、三人そろって顔を歪める。
( ・∀・)「姉ちゃんたち情けないなー!」
ただ一人、モララーだけはうきうきとした顔をしていた。
この子はいつだって元気だ。この元気を分けてもらいたいな、と思った。
- 41: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 22:41:44.78 ID:uJ7PyqMC0
- 僕たち4人は、暑さにやられて部屋でへばっているのも良くないだろうと考えた。
そこで「川に泳ぎに行こう!」というモララーの提案を受けて、川に行くことに決めた。
川に着くまでに、僕はシャワーで濡れたように汗をかいていた。
肌にぺたりと張り付くシャツが気持ち悪い。
(;^ω^)「ようやく到着だお」
この美しい川にやってくるのはもう4回目だ。
ツンに教えてもらって以来、ここは僕にとって特別な避暑地になった。
川の清流はどこまでも透き通った音色を奏でている。
僕たちは川沿いを歩き、下流を目指した。
- 44: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 22:44:12.85 ID:uJ7PyqMC0
- 何匹もの蝉の声が響き渡る。
石の足場は不安定で、照り返しがきつかった。
( ・∀・)「兄ちゃんは25m泳げる?」
( ^ω^)「もちろんだお。100mぐらいまでなら泳げるお」
( ・∀・)「うわー凄いなぁ! 僕なんか50mも泳げないのに」
(*゚ー゚)「息継ぎが下手だもんね」
( ・∀・)「うん……」
( ^ω^)「努力すればきっと出来るようになるお! 神様は見てくれているお!」
僕は励ましの言葉をかけた。
いつも元気をもらっている分、少しでもモララーを元気づけたかった。
ξ゚听)ξ「……へぇ、たまにはいい事言うじゃない」
( ^ω^)「おっおっおっ」
- 47: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 22:46:55.85 ID:uJ7PyqMC0
- ξ゚听)ξ「この辺りなんかいいんじゃない?」
歩いていくうちに、流れの緩やかな場所に辿り着いた。
川幅も水深もちょうどよく、ここなら泳ぐのにうってつけだろう。
( ・∀・)「よーし。じゃあ、さっそく泳ごうよ!」
言うが早いか、モララーが服を脱ぎ捨てて川に飛び込む。
弾けた水が僕にかかり、その冷たさが気持ち良かった。
(*゚ー゚)「ちゃんと準備運動しないとダメでしょ!」
( ・∀・)「だって我慢できなかったんだもん! すぐ泳げるよう水着も穿いてきたし!」
水の中からモララーが大声を出す。
その顔は、いつにもまして晴れやかな笑顔だった。
- 49: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 22:49:21.56 ID:uJ7PyqMC0
- (*゚ー゚)「じゃあ、私たちも着替えようか」
ξ゚听)ξ「そうね……いい加減暑いし」
気持ち良さそうに泳ぐモララーを見て、女子組は木々の間に入っていった。
ξ゚听)ξ「そこの茂みで着替えてくるから」
ξ゚听)ξ「――――――覗いたら、殺す、わよ」
(;^ω^)「め、滅相もございませんおっ」
ツンに凄まれ、覗く気もないのにうろたえてしまう。
ただ一人残された僕は、そそくさと木の影で着替えを済ませた。
- 52: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 22:52:08.73 ID:uJ7PyqMC0
- ( ^ω^)「おー! 気持ちいいお!」
十分に準備運動を行って、僕は川に飛び込んだ。
深さは腰のあたりまであったが、川底が驚くほどくっきりと見えた。
ひんやりとした水に頭をつけると、体全身に溜まった熱がさっと逃げて行った。
(*゚ー゚)「二人ともお待たせー♪」
( ^ω^)「おっ?」
しぃの声を聞いて、僕は振り返った。
(*^ω^)「(おおっ! スク水おにゃのこktkr!!)」
そこにいたのは、スクール水着姿のしぃ。
今じゃ滅多に見られなくなった旧型のスク水を着た少女に目を奪われる。
ああ、これが「ときめき」ってやつか。僕は心の中で神様に感謝した。
(;゚ー゚)「お、お兄ちゃんなんか変……」
- 53: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 22:54:21.73 ID:uJ7PyqMC0
- ξ゚听)ξ「――――変っていうか、変態じゃないの?」
真っ白なビキニにパレオを巻いたツンが呆れた様子で僕を見ている。
素朴な情景には不似合いなほど、洒落た格好だった。
( ・∀・)「あれ? なんでツン姉ちゃん、今日は学校の水着じゃないの?」
ξ;゚听)ξ「なっ!? こっ、この馬鹿、馬鹿!!」
(;・∀・)「痛いっ! 痛いって!」
(;^ω^)「…………」
- 55: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 22:56:13.90 ID:uJ7PyqMC0
- 水上にぷかぷか浮かんでいると、しぃが川底を見つめているのに気がついた。
( ^ω^)「しぃ、何やってるんだお」
(*゚ー゚)「あっ、お兄ちゃん。あのね、あそこにお魚さんがいるの」
しぃの視線の先を見てみると、確かに川魚が数匹石影で休んでいた。
( ^ω^)「よし、捕まえてくるお!」
(*゚ー゚)「えー大丈夫かなぁ」
( ^ω^)「任せるお!」
水の中に入り、魚が逃げないように近づいていく。
距離を詰めたら、そこから一気に―――――。
(;^ω^)「おぉっ!?」
―――――手を伸ばそうとしたら、苔石に足を取られて転んでしまった。
頭から水に突っ込んで、一瞬何が起こったのかと思った。
(*゚ー゚)「あははー♪ お兄ちゃんおかしぃー♪」
情けない僕の姿を見て、しぃは無邪気に笑った。
- 57: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 22:59:37.49 ID:uJ7PyqMC0
- 精根尽きた僕は水から上がり、しばらく休むことにした。
肌に付いた水滴は、あっという間に乾いていった。
( ・∀・)「兄ちゃん、兄ちゃん」
川辺で休む僕の所に、モララーが平たい小石を持って近寄ってきた。
( ・∀・)「水切りで勝負しようよ!」
( ^ω^)「いいお。ただし、勝ったらお弁当のウィンナーいただくお!」
( ・∀・)「望むところだ!」
モララーの挑戦を受けて僕は川辺の石を拾う。
なるべく平たく、そして程よい大きさのものをじっくり吟味した。
選んだ石は日に焼けていて、握る手に熱を感じた。
- 58: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 23:01:36.02 ID:uJ7PyqMC0
- ( ・∀・)「よーし、いくぞー!」
先にモララーが川に向けて石を投げた。
放たれた石は水面を滑るように跳ねていく。
石は飛沫を散らし、勢いがなくなったところで、静かに沈んだ。
( ・∀・)「うーん、16回かぁ」
モララーが残念そうに呟く。
( ^ω^)「今度は僕の番だお!」
僕は右手に石を構え、左足を前へ踏み出す。
低い弾道で飛ばすことを意識して、肘を引き手首のスナップを利かせる。
往年の名投手山田○志のイメージを持って、僕は石を力強く投じた。
- 59: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 23:03:51.65 ID:uJ7PyqMC0
- 1……2……3…4…5、6、7、8。
僕の投げた石は真っすぐに進んでいく。
9、10、11…12…13……。
13回を過ぎたところで勢いが弱まってきた。
( ^ω^)「あと少し、がんばるお!」
14……15……。
石はそこで沈んだ。
最後に上がった水しぶきは、ろうそくの炎のように、ぽんと跳ねてすぐに消えた。
(;^ω^)「負けたお……なんという僅差…… 」
( ・∀・)「やたっ! ウィンナー、ウィンナー♪」
僕に勝利したモララーがはしゃぐ。
負けたことは悔しかったが、不思議といやな気はしなかった。
- 60: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 23:06:15.81 ID:uJ7PyqMC0
- 12時を過ぎたころ、僕たちは川辺に腰掛けてお弁当を食べた。
今日の主食はサンドイッチ。
ハムやレタス、瑞々しいトマトが一度に味わえる。
(*゚ー゚)「今日はね、私たちもお弁当作り手伝ったんだよ!」
( ^ω^)「おっ、そうなのかお?」
(*゚ー゚)「うん。お姉ちゃんは不器用だから包丁握らせてもらえなかったけど……」
ξ;゚听)ξ「だーっ! よしなさいっ!」
談笑しながら、4人でランチボックスを囲む。
外でみんなと食べるごはんは、いつもよりも美味しく感じた。
もちろん、モララーにウィンナーをあげるのも忘れなかった。
- 62: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 23:09:02.34 ID:uJ7PyqMC0
- 昼食を済ませ、少しの間泳いでから帰ることにした。
しぃとモララーがじゃれあっているのを、僕とツンは川岸で見ていた。
( ^ω^)「いやー楽しかったお」
ξ゚听)ξ「そうね、でもちょっと日焼けしちゃった」
少しだけ赤くなった肌を見て、ツンは呟いた。
( ^ω^)「でも意外だったお。ツンが不器用だったなんて……」
ξ#゚听)ξ「がーっ、うるさいわねっ! 生まれつきなのよ!」
(;^ω^)「怒ることはないでしょうお」
- 64: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/14(土) 23:13:23.76 ID:uJ7PyqMC0
- ξ゚听)ξ「……でもね、いつかはちゃんと出来るようになりたいの」
ツンが、ぽつりと漏らす。
ξ゚听)ξ「女の子なんだし、料理ぐらい出来ないとね……」
( ^ω^)「ツンならきっと上手くなれるお!」
ξ*゚听)ξ「そっ、そうかな」
( ^ω^)「神様は、見てくれているお」
ツンと二人、空を見上げる。
太陽はてっぺんで輝き続けている。
あんなに聴こえた蝉の声も、今の僕たちの耳には届かなかった。
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