( ^ω^)と夏の日のようです
- 95: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:05:03.67 ID:isTVpX110
- 『( ^ω^)と夏の日のようです』 第九話
夏。
青い空、青い海、そよぐ風。
僕は今、軽トラの荷台の上で揺られていた。
(;^ω^)「おぉっ!?」
山の道は悪路だ。
がたん、と大きな震動が来るたびに僕は心臓が止まりそうになる。
ξ#゚听)ξ「あ゛ー、いちいちうるさいっ!」
(*゚ー゚)「お兄ちゃんびっくりしすぎだよー」
(;^ω^)「……ごめんだお」
- 96: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:06:43.13 ID:isTVpX110
- そもそも、こういうことになったのは昨日の叔父さんの言葉が原因だった。
(´・ω・`)「明日、丘の上でバーベキューをしよう」
(;^ω^)「おぉっ、突然ですお」
(´・ω・`)「大丈夫、用意はすべて出来てるから」
先日隣町まで買い物に行ったのは、材料を買いに行くためだったらしい。
もちろん、僕は手放しで賛成した。
バーベキューなんか、やったことない。
期待に胸躍らせて、今日という日を待った。
- 98: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:09:08.00 ID:isTVpX110
- そして今日の午後4時。僕たちは出発の時を迎えた。
(´・ω・`)「よし、それじゃ行こうか」
(;^ω^)「あの、車はどこですかお」
(´・ω・`)「何を言ってるんだ、そこにあるじゃないか」
(;^ω^)「でもこれ……軽トラックですお」
(´・ω・`)「そうだよ。ほらほら、早く荷台に乗って!」
用意されたのはファミリーワゴンではなく、農業用の軽トラだった。
叔父さん曰く、「荷物を運ぶのにはこっちの方がいい」とのこと。
荷台に材料や道具を積み込み、僕たち子どもは荷台に乗りこんだ。
( ・∀・)「アトラクションみたいで楽しいよ!」
(;^ω^)「そういうものかお……」
- 99: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:11:41.36 ID:isTVpX110
- ――――――そんなわけで、僕は今荷台の上にいる。
目に映るものすべてが飛んでいく。
夏の風を切りながら、軽トラは進んでいった。
( ^ω^)「おー、海が見えるお」
車の揺れに慣れてきた僕は、遠くを眺めていた。
海は決して視界から消えていかない。
少しだけほっとする自分がそこにいた。
ξ゚听)ξ「それにしても、バーベキューなんて久しぶりね」
( ^ω^)「おっ? 前はいつやったのかお?」
ξ゚听)ξ「えーと、確か私が小学生のころかな……」
( ・∀・)「僕、あんまり覚えてないや」
……僕は考えた。
叔父さんは、僕のためにバーベキューをしようと計画したんじゃないかと。
( ^ω^)「(だとしたら、後でお礼を言わなくちゃいけないお)」
心の中で呟きながら、変わらずにそこに在り続ける海を眺めていた。
- 100: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:14:03.82 ID:isTVpX110
- (´・ω・`)「さあ、到着だ」
叔父さんが軽トラのエンジンを止める。
小高い丘の上に着き、僕たちは荷物を下ろした。
海から吹いてくる風は心地よく、緑に囲まれた景色は爽快だった。
('、`*川「さっ、準備に取り掛かりましょう」
そう言って叔母さんは僕たち一人一人に指示を出した。
叔父さんとモララーは器具とライトの設置。
叔母さんとしぃは材料の切り分け。
そして、僕とツンは飯盒炊爨を任された。
どうやらツンは、また包丁を握らせてもらえなかったことが不満らしい。
- 102: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:16:54.21 ID:isTVpX110
- (;^ω^)「ちょっ、僕やったことないおwwwwwww」
初めて見る飯盒。
僕は使い方も分からず、ただ弄っているだけだった。
ξ#゚听)ξ「あ゛ーいらいらするっ! 貸しなさいっ!」
(;^ω^)「おっおっ」
僕から飯盒を奪い取ったツンは、てきぱきとそこに研いだ米と水を入れていく。
ξ゚听)ξ「ほらっ、あんたは吊るすための木の枝でも拾ってきなさい!」
(;^ω^)「了解ですお」
言われるままに林の中に入っていき木の枝を探す。
ざわざわと木の葉の揺れる音が鳴る中、僕は何本かの枝を拾い、ツンの元へ急いだ。
- 103: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:19:14.53 ID:isTVpX110
- ( ^ω^)「ふぅ……、ツン、拾ってきたお」
ξ゚听)ξ「ご苦労さま。それじゃ、地面にY字型の枝を刺して」
( ^ω^)「おっおっ、分かったお」
Y字型の木の枝を地面に突き立て、飯盒を吊るした鉄棒をセットする。
そこに余った棒を組み上げ、燃やした紙を放り込み火をつける。
立ち上る火が飯盒の底を焦がし、辺りは煙に包まれた。
( ^ω^)「これ、いつになったら炊きあがりなんだお?」
ξ゚听)ξ「蓋がね、ぐらぐらしなくなったら出来上がりよ」
ツンが水蒸気でぐらつく蓋を木の枝で抑えながら答える。
( ^ω^)「ツンは凄いお。僕の知らないことをたくさん知ってるお」
ξ*゚听)ξ「そっ、そんな褒められても嬉しくないんだからねっ!」
( ^ω^)「いやいや、凄いお。普通の料理はからっきしなのに……」
ξ#゚听)ξ「…………!」
(;^ω^)「ごめんお! 痛いお! だからその棒で叩くのはやめるおっ!」
- 105: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:21:58.89 ID:isTVpX110
- 他のみんなの準備は終わり、後はお米が炊けるのを待つだけだった。
( ^ω^)「長いお……」
ξ゚听)ξ「んー、もうちょっとね……」
僕たちは数十分の間、飯盒を見守っていた。
だいぶ蓋のぐらつきは納まり、溢れる泡も少なくなってきた。
僕とツンは炊きあがりをひたすら待った。
辺りは夕暮れに染まってきている。
- 107: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:24:06.41 ID:isTVpX110
- ( ^ω^)「(そう言えば、ツンと一緒に何か作業をするのは初めてだお……)」
ξ゚听)ξ「あっ、もうそろそろいいんじゃない?」
( ^ω^)「おっ?」
ツンはそう言って飯盒を下ろし、ひっくり返してお米を蒸らした。
底はススで汚れている。
ξ゚听)ξ「うまく炊けてるかしらね……」
( ^ω^)「きっとおいしく炊けてるお!」
蓋を開けると、炊きあがりの匂いと共に湯気が上った。
少しお焦げが出来ていたが、一粒一粒がつややかに光っていた。
- 108: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:26:23.03 ID:isTVpX110
- (´・ω・`)「よし、それじゃ始めようか」
叔父さんは掛け声とともに炭に火を点けた。
黒は赤に変わり、白い灰がこぼれる。
( ・∀・)「よーし!焼くぞー!」
タレに漬けた肉を網の上に乗せる。
脂が滴り落ち、炭に当たって辺りに香ばしい匂いが漂った。
(´・ω・`)「ほら、肉だけじゃなく野菜も焼くんだ」
('、`*川「イカや海老もあるわよ」
(*゚ー゚)「うわぁ、食べきれるかなぁ」
( ^ω^)「僕も焼くお!」
割り箸を右手に、紙皿を左手に構え、バーベキューの準備は万端。
僕は空腹を堪え切れなかった。
- 110: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:29:02.76 ID:isTVpX110
- 肉、魚介、野菜を次々に網に乗せていく。
炭からは煙が立ち上り、空めがけて昇っていった。
牛肉は中まで火が通るようにじっくり焼いていく。
口に入れると、香ばしさと肉汁で口の中が満たされた。
鶏肉はピリ辛に味付けされ、ジューシーな皮が特にうまい。
魚介類もどんどん焼いた。
新鮮なイカ、ホタテ、海老。
火を通すことで甘味が増し、噛めば噛むほど旨みが広がっていく。
もちろん野菜も忘れちゃいけない。
とうもろこしはほんのり甘く、ピーマンはほろ苦い。
脂のきつい肉の箸休めに食べると、一際美味しい。
そして、ご飯。
肉を乗せ、タレが染みたお米は絶品。
自分が炊いたご飯は、より一層おいしく感じた。
- 113: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:31:50.74 ID:isTVpX110
- ―――――夢中で食べ続けていると、いつの間にか夜になっていた。
叔父さんはライトを点け、なおもバーベキューは続いている。
満腹になってきた僕は一旦席を外し、少し離れた所で星を眺めていた。
都会の夜景なんかより、ずっと素敵な星空。
('、`*川「ブーン君、星に興味があるの?」
( ^ω^)「いや……そういうわけじゃないですお」
後ろから叔母さんが話しかけてきた。
( ^ω^)「ただ、きれいだなって思って見てたんですお」
('、`*川「ふふ、確かにきれいな星空ね」
僕と叔母さんは星に見とれていた。
星座なんて全く分からないけど、そんなことはどうでもいい。
ただ、星が輝いているから。
それだけで惹きつけられる理由としては十分だった。
- 114: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:34:36.29 ID:isTVpX110
- ( ^ω^)「――――叔母さん、相談がありますお」
('、`*川「あらあら、突然何かしら」
( ^ω^)「僕は……自分を変えたいんですお」
僕は、思い切って叔母さんに悩みを打ち明けてみた。
外で気分が昂ぶっていたからだろうか、よく分からないけど、そんな気持ちになった。
( ^ω^)「自分なりに、変わろうとはしていますお」
( ^ω^)「――――でも、変われたかどうかなんて、自分では分かりませんお」
('、`*川「……そうね」
叔母さんはまだ星を見つめている。
('、`*川「ブーン君、あの星が見える?」
(;^ω^)「おっ?」
予想外の答え。
叔母さんは一つの星を指差し、話を続けた。
- 115: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:36:57.27 ID:isTVpX110
- ('、`*川「あの星って、今も光り続けていると思う?」
( ^ω^)「……分かりませんお」
('、`*川「あら、どうして?」
( ^ω^)「星は、凄く遠くにありますお」
('、`*川「そうね」
( ^ω^)「だから、今見えている光は、何万年も昔の光ですお。だから……」
('、`*川「今も存在しているかどうかは分からない、ってこと?」
( ^ω^)「……その通りですお」
後ろから、モララーとしぃの笑い声が聞こえてくる。
叔母さんはまだ空を見ていた。
- 117: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:41:01.49 ID:isTVpX110
- ('、`*川「ブーン君の言う通り、星が今どうしているか、どうなったかなんて分からないわ」
('、`*川「私たちに分かるのは、今そこに光があるという事実だけ」
( ^ω^)「どういう意味ですかお?」
('、`*川「……人もね、星と同じなのよ」
('、`*川「人の心がどうなったかなんて、目で見ても分からない」
('、`*川「分かるものは、目に映るものだけ」
('、`*川「あなたが変わったかどうかなんて、目に見えなくちゃ分からないわ」
( ^ω^)「…………」
('、`*川「いい? ブーン君」
叔母さんは、星から僕へゆっくりと視線を移した。
('、`*川「あなたの『変わりたい!』って気持ち、ちゃんと見せることよ」
- 118: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:43:20.51 ID:isTVpX110
- 僕は以前、ツンを連れて出掛けたことを思い出した。
あの時、僕は自分を変えようと思ってツンを誘った。
あの時の気持ちは、ツンに伝わったのだろうか――――。
('、`*川「ブーン君、今度はあの星を見てみて」
( ^ω^)「おっ?」
叔母さんが、今度は違う星を指差した。
('、`*川「あの星はね、『デネブ』っていうの」
( ^ω^)「おー、すごく明るい星ですお」
('、`*川「でもね、余りに明るすぎて、いつかはブラックホールになるって言われているの」
(;^ω^)「そうなんですかお」
さらっとした夜風が僕の隣を通り過ぎて行く。
('、`*川「だから、あの星はね」
('、`*川「自分が消えちゃう前に、精一杯、精一杯輝き続けるの」
- 120: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:45:47.20 ID:isTVpX110
- ( ・∀・)「兄ちゃん、花火やろうよー!」
( ^ω^)「おっおっ、花火も久しぶりだお」
バーベキューを堪能した後、僕たちは花火をすることにした。
色彩豊かな閃光が暗闇を明るくする。
( ^ω^)「叔父さん、今日はありがとうですお」
(´・ω・`)「いやあ、楽しんでもらえて何よりだよ」
(;^ω^)「……やっぱり、僕のためにしてくれたんですかお?」
(´・ω・`)「どうしてだい?」
( ^ω^)「だって、バーベキューをやるのは久しぶりって聞きましたお」
(´・ω・`)「まあ、多少はそんな意味もあるかもね」
- 122: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:48:09.09 ID:isTVpX110
- 僕の持った花火は、まだ青々とした火を吹きあげている。
(;^ω^)「……だとしたら、わざわざすみませんお」
(´・ω・`)「謝る必要はないよ。これはね、僕のためでもあるんだ」
( ^ω^)「お?」
(´・ω・`)「確かに、これは君の思い出作りとしての意味もある」
(´・ω・`)「だけど君の思い出は、君と過ごした僕たちの思い出でもあるからね」
花火はそこで、燃え尽きるように消えた。
辺りを青く照らした火は、もう過去の記憶になってしまった。
- 124: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 00:50:44.46 ID:isTVpX110
- ξ゚听)ξ「やっぱり、締めは線香花火よねー♪」
( ^ω^)「おっおっおっ」
僕たちは最後に線香花火に火を点けた。
ぱちぱちと燃える火が、ぼんやりと深い闇を照らした。
(*゚ー゚)「ねぇ、誰が一番長く持てるか競争しようよ」
( ^ω^)「それは名案だお」
( ・∀・)「僕が勝つんだもんねー!」
ξ゚听)ξ「負けないんだからっ!」
- 127: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/15(日) 01:05:14.31 ID:isTVpX110
- 僕たちはそれぞれ、自分の花火に集中する。
最初にモララーの灯が、次いでしぃの灯がぽとりと落ちた。
後は、僕とツンの一騎打ち。
(;^ω^)「むむ、なかなかしぶといお」
ξ;゚听)ξ「あんたにだけは……って、あぁっ!?」
(;^ω^)「おぉっ!?」
二つの線香花火の灯は、ほぼ同時に地に着いた。
辺りは暗くなり、そこには月明かりだけ。
残された僕とツンは、少し照れながら、二人顔を見合わせた。
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