ξ゚听)ξとダレカはネガティヴなようです
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:08:46.55 ID:/7Yydd+X0
- おかしいことに、あの娘は
かなしいことに、他の男と会話していた
くるしいことに、その顔は光悦の顔であった
そして見たろう、僕の存在はまるで蚊帳の外
くるしい、分かり合えないことが、こんなにもくるしい
痛々しい、僕の胃液の臭いは鼻腔を刺激する
8マイル上空の踊る金平糖が影響させて僕は嘔吐した
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:10:21.87 ID:/7Yydd+X0
- ―――じゃ、時間になったので……
……あぁ、はい! お疲れ様でーす
「お疲れ様です、先に上がりまーす」
時間は22時5分。バックルームにあるコンピューターに
退勤時間、休憩時間を入力していく。
私がその作業をしている間に、
先ほどまで、ともに働いていたしぃは日報を手に取っていた。
ξ゚听)ξ「はい、打ち終わったよ」
(*゚ー゚)「ん。ありがとう」
空返事をしつつ、しぃはひたすら共有ノートに日報を書き込んでいた。
それだけではない。右手にケータイ。左手にペンという神業である。
この分では、私が日報を書けるのは
もう少し時間が経ってからであろう。
椅子に座ったまま、伸びをしてみる。
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:12:13.72 ID:/7Yydd+X0
- 伸びと同時に、無意識の内に長い溜息もついてしまう。
ξ゚听)ξ「今日も疲れたなぁ……」
今日は15時から22時までの7時間労働だった。
7時間程度で溜息をつくのか? とビジネスマンは一笑してしまうかもしれないが、
何せ今日の検品作業は、ぐうの音が出ないほどの肉体作業だったのだ。
花の女子大生という部分を、彼らに考慮してもらわねばならないだろう。
(*゚ー゚)「はい! 僕のは書けたよ!」
しぃが私に日報を書き連ねるノートを手渡すと、
コンピューターへ向かい、退勤時間等々を軽やかに打ち込みだす。
ノートへ目を移す。ありがたいことに、しぃは所感欄以外を既に埋めていてくれた。
私が日報を書いている途中、
しぃは私に話しかけてきた。
(*゚ー゚)「ね! ね! 昨日の合コン、どうだった!?」
俗っぽい質問かと思いきや、しぃに限ってはそうでもない。
しぃは私の保護者というか、高校の頃から今の大学も、更にこのバイトにおいても
ひたすら男に対しては過保護だった。
しかし不思議なことに、その過保護をうっとうしいと思ったことは一度もない。
私は恋愛自体、あまり経験したことがなく少し怯えている部分があるからだろう。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:15:11.15 ID:/7Yydd+X0
- ξ゚听)ξ「う〜ん……どうだろう」
大学の1年先輩のペニサスさんに、はんば強制的に誘われたあの合コンは、
一次会の時点でカラオケというラフな形式の割には
男陣は誰も彼も一流企業に勤めている人ばかり、という不思議なものだった。
その男の中の1人、ガイドライン商事に勤めているという内藤と名乗る男に
何度もアタックされたのが印象的だった。てくらいの感想だ。
ξ゚听)ξ「1人、何か凄く好意を持たれてたくらいかなぁ……」
(*゚ー゚)「え〜!? どんな人、どんな人!?」
やたらはしゃいで食いついてくるけど、心配の色が目に浮かんでいた。
ξ゚听)ξ「どんな人って……ガイドライン商事の人なんだって」
(*゚ー゚)「あのガイタの?! へ〜。それ以外のことも教えてよ!」
ξ゚听)ξ「それ以外のこと?」
(*゚ー゚)「例えば、その男の人の特徴とかさぁ!」
何でそんなことを聞くんだ、と思うが
確かにあの男の人には気になっている部分があった。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:21:00.41 ID:/7Yydd+X0
- どこかで、見たことがある―― ……いや、会っているのだ。
しかし、それを思い出せない。 そのもどかしさが、どうしようもなかった。
ξ゚听)ξ「何かね。 どっかで会ったことのあるような人なのよ」
(*゚ー゚)「どっかで? その人は教えてくれなかったの?」
ξ゚听)ξ「うん……。あっちも、私のこと知ってる感じだったけど」
(*゚ー゚)「ふーん……もしかしてさ、このコンビニの常連、とかじゃないの?」
え?
そう思った瞬間、全てが氷解した。
そうだ、このコンビニにたまに足を運ぶ、あのサラリーマン風の!!
ああ、そうだ、そうだ、 やっと思い出した!
ξ゚听)ξ「そうそう! 思い出した、このコンビニに来てるの!」
(*゚ー゚)「え!? 本当に?」
ξ゚听)ξ「うんうん! 間違いないわ、あの語尾が特徴的なサラリーマン風の!」
(*゚ー゚)「あ〜……週一くらいで見かけるね、あの人ね」
ξ゚听)ξ「そうなの! あぁ〜よかった、やっとスッキリした〜!!」
ならあの男の人――内藤さんも、教えてくれればいいのに。
しぃと一緒にバイト先のコンビニを後にしながら、私はそう考えた。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:27:48.29 ID:/7Yydd+X0
- 家に帰って、部屋で寛ぎながら、少しあの内藤さんのことを考えてみる。
しぃの言う通り、確かにあの男の人は あのコンビニの常連さんだ。
つまり、これからも接触するのかもしれない。
ξ゚听)ξ「どうしようかなぁ……」
正直言って、あまり好きになれないタイプだった。
一見快活そうに見えるが、あの男の人は奥底に何か、暗いものを閉じ込めている。
そんな雰囲気を漂わせていたのだ。
ξ゚听)ξ「ほんっとどうしよう………」
幸い名刺を貰っただけで、携帯の電話番号は交換してない。
まぁ……何とかなるもんかなぁ。
ξ゚听)ξ「……っあ、そうだ」
ゴミをまとめなきゃ。
明日は休みだし、出来れば遅寝をしたい。
今のうちにまとめて出しておこう。
今は、もう10時か。。。早いなぁ。
1人暮らしをしていると、どうも時間の感覚が分からなくなる。
ξ゚听)ξ「よいしょっと……」
まとめたゴミを持ち、私はマンション外の収集場所へ向かう。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:30:17.43 ID:/7Yydd+X0
ξ゚听)ξ「えいっ」
遠心力をかけて、私はゴミ袋を収集場所へ叩き付ける……いや、放り投げた。
ちょっとマズいことをしたかな、と思ったが、幸いなことに袋が破れてるということはなかった。
ホっとしながらも、私は少し缶コーヒーが飲みたくなったので、
少し歩いた先にある、自動販売機へと向かった。
ξ゚听)ξ「……プハァー。やっぱ無糖が一番美味しいな」
もう闇夜だと言うのに、一人言を発しながら私は飲み歩く。
その後、無性に恥ずかしくなってしまった。
ふぅ。と溜息をつくと白い靄が上空に浮かぶ。
そろそろ冬なんだなぁ。
私はマンションのエントランスに差し掛かった。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:33:53.27 ID:/7Yydd+X0
- ξ゚听)ξ「……ん?」
私は暗証キーを押してエントランスの扉を開けた瞬間、
奇妙な音を聞いた。
カサ、カサという擦れるような音と、何かを探るようなごそごそという音だ。
そしてその音というのは、あのゴミ収集場所が発信源のようだった。
何だろう、と考えているうちに、開けた扉が再び閉じてしまった。
それでも、奇妙な音が鳴り止む気配はない。まだ聞こえている。
ξ゚听)ξ「……よし」
小声で自分自身に確認すると、私は忍び足で収集場所へ向かった。
収集場所はエントランスの玄関の左を曲がれば直ぐに、見える。
私の心臓は勝手にドキドキという音を増させている。
私は角に立ち、首を少しだけ覗かせて収集場所を見た。
ξ゚听)ξ「 !! 」
うずくまって背を向けて、ゴミ袋から何かを探している何者かの姿が見えた。
小柄なような気がするが、何せこの暗闇では男女の区別すら付かないほどだ。
恐ろしいもの見たさで、私はその人物を眺め続けていた。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:37:17.52 ID:/7Yydd+X0
- その人間はゴミ袋を漁っては、選別しつつゴミを自分の横に置いていた。
置かれているゴミは紙類、それも請求書らしきモノが多く
他には割り箸などが目立つ。
ξ゚听)ξ「(何してるんだろう……?)」
と、更に注意深く観察していると、あることに気付く。
今日私がまとめたゴミと 内容がそっくりだった。
ξ;゚听)ξ「 ……! 」
思わず息を呑み、体の隅々が震えだす。。。
あの不審者は、私のゴミを漁っている………?
体が動かない。どれだけ時間が経っても動かないのでは、と心配するほどに。
そのうち、しばらくすると 駆け出したような音が聞こえる。
たったったった……その音が聞こえなくなると、ようやく体の動きが自由になった。
私は恐る恐る、収集場所に行き、自分の出したゴミ袋を見る。
袋の縛り方が、変わっていた。
周りにカスが散乱していた。
明らかに小さくなっていた。。。。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:40:02.39 ID:/7Yydd+X0
- 次の日。せっかくの休日だというのに、
私は一歩も外に出ることはなかった。
自分のゴミ袋が漁られていた。
警察は取り合ってくれるだろうか? ……多分、取り合ってくれやしない。
そんなことを悶々と考えながら、私は夜まで時間を潰した。
そして夜の報道番組を見た時、私はふいにその内容に気を取られた。
「ニュー速区ストーカー殺人事件」
ξ゚听)ξ「ストーカー………?」
どこかで聞いたような、 単語。 何処だったかな、いや、誰かから聞いたんだ。
しばらくテレビを眺めていると、犯罪心理学の大学教授が
ストーカー……付きまとい、 について解説を始めていた。
"歪んだ形の権力の誇示、情報把握による心理的優越感を目的とし
被害者の生活に影響を与え、自分の存在をそこで認識して快感を得ようとする"
ξ゚听)ξ「ふぅん……」
今の自分には関係のなさそう―――
そう思いたいのに、どうにも、本能が忘れるな、と警告してるかのようだった。
明日は朝6時からバイトだってのに……この番組が終わるまでは、眠れそうにない。
ストーカー……もっと前に、身近な人間から聞いたはず。
……そうだ、ジョルジュだ!! 弟のジョルジュが、確か教えてくれたんだ。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:43:39.67 ID:/7Yydd+X0
- ジョルジュは、最近ストーカーの事件が急激に表面化している、と教えてくれた。
ストーカー。あのゴミ荒らしも、これなのだろうか。
自分は、ストーカーの被害に会っているとでも?
報道番組の舞台は、教授の説明を終え
再びスタジオに戻り、議論を繰り返していた。
( ,'3 )「いや、ですからね! 国は早く規正法なり作るべきなんですよ!」
( ^Д^)「しかし、いくら最近増加したからといって、現在の刑法でも
対応出来る部分はありますよ! むしろ、精神疾患の一面を見られる以上……」
ξ゚听)ξ「………」
私は何の気もなく、その論争を眺めていた。
( ,'3 )「いや、背徳症候群には責任能力は認められていますよ!」
( ^Д^)「それは今回の件に限っての話でしょう!?
ストーカー事件の大半を占めているのは妄想型分裂病という証拠があるんですよ!」
議論は段々と、エスカレートしていった。
そしてそのうち、1人の温厚そうな老人の言葉が、どうにも気になった。
/ ,' 3「私の敬愛する哲学者、ジャン・ポール・サルトルの言葉の中に、こんなのがあります。
"地獄とは、他者のことだ" 、と ………――.....……
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:45:30.59 ID:/7Yydd+X0
- 台無しな休日を過ごし終え、私は朝勤のため、バイト先へ向かった。
ξ゚听)ξ「……おはようございます」
(´・ω・`)「あ、おはよう。……どうしたのツンさん? なんか気分悪そうだけど……」
深夜勤をもうじき終える、オーナーのショボンさんが気遣ってくれた。
ξ゚听)ξ「あ、いえいえ。久しぶりの朝勤だから……」
(´・ω・`)「あぁ! 朝6時に出社だもんね。そりゃ大変だなぁ」
オーナーがそう言ってカラカラと笑っていると、
同じくアルバイトのドクオ君が私に話しかけてきた。
('A`)「あの、ツンさん一昨日はありがとうございました!」
一昨日、私は本来19時から22時までの3時間労働だったのだけど、
ドクオ君がどうしてもバイトに出れなくなったため、彼の15時から19時まで引き受けてしまい
結果、7時間労働となってしまったのだった。
ξ゚听)ξ「いやいや〜。ちょっと借りが出来たかなって喜んでるとこだから」
('A`)「か、借りですか……ははは」
(´・ω・`)「そりゃあ怖い。ドクオ君も大変だなぁ。わっはっは!」
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:48:38.50 ID:/7Yydd+X0
- ('A`)「でも、ちゃんと返しますよ……はは……」
・・・・・・・
ξ゚听)ξ「いらっしゃいませー」
重いまぶたを無理やり開けながら、私は接客を続けていた。
朝のお客さんは、夜勤に比べると、態度が優しい人が多い。
そこは朝勤の好きな部分だった。
从'ー'从「あ、ツンちゃん。肉まん2個、補充して貰える?」
ξ゚听)ξ「あ、はーい」
パートの渡辺さんも、凄く優しい。
そろそろ10時に差し掛かる。
私の眠気も治まり客のラッシュもなくなった頃だった。
すると
ガァー。自動扉が開く。お客さんが来た。
ξ゚听)ξ「いらっしゃいませー、おはようございまーす」
( ^ω^)「やぁツンちゃん。おはよう」
合コンで会った、ガイドライン商事に勤めているという内藤ホライゾン。
その人が来た。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:51:16.36 ID:/7Yydd+X0
- ξ;゚听)ξ「あ、こんにちわ………内藤さん」
自分の顔が強張るのが感じ取れる。
正直言って、あまり好きではないからだ。
合コンのときの、あのねっとりとした粘着質なアタックを思い出し、体も固まる。
( ^ω^)「この前言ってなかったけど、実は前々から君のことは知ってたんだお」
私の居るレジ台へ、ナメクジを連想させる速度で近づいてくる。
( ^ω^)「でも、君自身に思い出して貰おうって思ってたんだお」
ξ;゚听)ξ「あ、はは……。私も、ええと 思い出しましたよ」
( ^ω^)「それはよかったですお! いや、僕は合コンに行って
君を見かけたとき、"あぁ。神は居るものだな"と思ったんだお!」
そう言えば、あの合コンのとき「運命」だの「神」だの、言っていた気がする。
ξ;゚听)ξ「そ、そうですか」
( ^ω^)「うん。 そうなんだお」
そういって内藤はニヤリと頬を上げ、私を見つめる。
その瞳は私を舐め回すかのように蠢いた。
( ^ω^)「本当に。そうなんだお」
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:53:00.50 ID:/7Yydd+X0
- ξ;゚听)ξ「………」
この圧倒的に陰湿な空気は、
コンビニ内の数少ないお客さんにも伝わっていたようで
皆、この内藤と私をおどおどと見つめていた。
渡辺さんも、心配そうにオロオロしている。
やがて、内藤はその視線に気付いたのか、
店内のその送り主達に一瞥すると、私に振り向き
「じゃあ。またね」 と囁いた。
ξ;゚听)ξ「あ、はい……」
( ^ω^)「アルバイトがんばってね」
最後に私の肩に手を乗せた後に、何も買わずに帰っていった。
肩に置かれた、あの内藤のさするような感覚が今も疼いていた。
そして、私は思い始める。
「あの男が、ゴミ荒らしの犯人では?」 と………。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:55:16.23 ID:/7Yydd+X0
- 11時前になり、私のシフトは終わりを迎えようとしていた。
代わりに11時から仕事のしぃが、バイト先にやってきた。
(*゚ー゚)「おはようございま〜す」
从'ー'从 ξ゚听)ξ「おはようございまーす」
(*゚ー゚)「……ん? ツン?」
ξ゚听)ξ「え? どうかした……?」
(*゚ー゚)「凄い汗……。大丈夫?」
「へ?」
どうか、したのか。 ど
・・・・・
ここから先の記憶は、よく覚えていない。
どうやってあのしぃを納得させただとか、
どうしてそんな状態で運転が出来ただとか。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:57:27.54 ID:/7Yydd+X0
- 今の時刻はもう18時。
バイト先から帰ってきて、有無を言わさずどさりとベッドに倒れこみ、
気付けばその時間だった。
昨日に続き、恐ろしく時間を無駄にしてしまった。
明日は確か、必修の授業があるな……。大学に行く気力は今、湧いていない。
あ〜もう! 何か……」
一人言なのに、言い切ることすら出来なかった。
胸にあるこのどうしようもない、わだかまりをどうすれば除去出来るのだろう?
そう考えているうちに、携帯電話がメールを受信した。
ξ゚听)ξ「誰だ……?」
最近、本当に一人言が激しいな……と思いながらも受信BOXを開ける。
送り主はしぃで、夕飯を一緒に食べない? という内容だった。
了解の返事を送り、私はシャワーへと向かった。
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 21:59:02.92 ID:/7Yydd+X0
- (*゚ー゚)「今日はタクシーだから、じゃんじゃん飲んじゃってね♪」
しぃは歌うように語れば、更に私のグラスへ赤ワインを注ぐ。
イタリアンのディナーも、後はデザートを残すのみとなり
私たちはお互いにアルコールを煽い合っていた。
2人で囲んでいる円形テーブルの中央のキャンドルが少し揺らめく。
冬の到来を予感させる今日の風は少し強く、寒い。
開放型のテラスでフルコースを頼んだのは、失敗だったかもしれなかった。
ξ゚听)ξ「そういうアナタも、相当酔っ払ってるでしょぅ?」
(*゚ー゚)「えへへへ〜。僕よりツンのが酔ってるよぅ〜。語尾が変だもん♪」
そう言って2人で笑い合う。
やっぱり、私の一番の親友はこのしぃだ。
高校の頃から、私は助けて貰っている。感謝が尽きない。
私は心の中で決めた。しぃに、あの内藤という男について話すことを。
ξ゚听)ξ「ねぇ……。少し、相談をしてもいいかな」
今までおどけていたようなしぃの目の色が変わる。
一瞬で酔いが冷めたように、真剣な表情へ代わる。
(*゚ー゚)「どうかしたの?」
私はしぃに、あの内藤という男に漂う異常性について、話した。。。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:01:04.97 ID:/7Yydd+X0
- (*゚ー゚)「……あの男の人が、ね……」
ウェイターが「お待たせしました」と
デザートのティラミス、ホットコーヒーを配る。
しぃは、コーヒーにミルクを垂らしながら、口を動かし続けた。
(*゚ー゚)「確かに、少し変わってるな……とは思ってたよ」
ξ゚听)ξ「へぇ〜。よく見てるわね、しぃって」
(*゚ー゚)「えぇ!? 普通、ちょっと常連の人なら気付かない?」
少し驚いた表情を見せた。 自分が物覚えの悪い人間と言われたようで、
少しだけムっとしてしまう。 確かにそこまで良くはないんだけど。。。
ξ゚听)ξ「それで……どうおかしかったの?」
(*゚ー゚)「いつも君のことを見てたよ」
ξ゚听)ξ「 ぇ?」
しゃっくりのような声が喉から湧き出てしまった。
(*゚ー゚)「君の居ないときは……何も買わずに出てったことも、多々あるしね」
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:26:38.99 ID:/7Yydd+X0
- ξ;゚听)ξ「そ、それって……いつ頃から?」
私が入ったのは3ヶ月前。熱のうねる、夏の頃からだ。
(*゚ー゚)「詳しくは覚えてないけど……8月頃からじゃないかなぁ……?」
8月。 入って1ヶ月も入っていない時だ。
そんなときから……。 自分の不注意が嫌になった。
ごくり、と息を呑む。
しかしそんな真似をしても、内から沸き起こる震えは止まらなかった。
ξ;゚听)ξ「ねぇ、しぃ」
(*゚ー゚)「ん?」
私は、最近頭から離れない、例の単語を言おうとした。
ξ;゚听)ξ「あの内藤って、やっぱr(*゚ー゚)「ストーカーだと思うよ……」
やっぱり そう、だよね。
いよいよ、わなわなと震えている体は確信じみて力を強めていく。
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:29:56.98 ID:/7Yydd+X0
- ξ;゚听)ξ「け、警察に言うべきかなぁ……?」
(*゚ー゚)「警察……? ぅ〜ん。警察かぁ……」
しぃが意外にも、押し黙ってしまう。
(*゚ー゚)「今の時点じゃあ 厳しいね……。基本、事後処理だし……」
ξ゚听)ξ「そう……」
やはり、頼れる場所ではないのか。。。
それならば、どうすればいいのだろうか。
(*゚ー゚)「ストーカーについては、僕はよく知らないんだ。
でも、……僕はツンと一緒に、内藤と戦うつもりだよ」
……ありがたい、
本当に、暖かく、力強い言葉だった。
ξ゚听)ξ「ありがとう……しぃ」
(*゚ー゚)「ふふ。困ったときはお互い様だよ。ほら、コーヒー冷めちゃってるよ?」
ξ゚听)ξ「あ、本当だ……ははは……」
コーヒーを飲み干した後、私たちは会計を済ませた。
タクシーに乗り、まずは私の住むマンションへ辿り着く。
しぃと別れた後、私は多少千鳥足になりながらも、自室へ目指した。
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:32:06.76 ID:/7Yydd+X0
- ξ゚听)ξ「え……?」
玄関の前に"違和感"があった。
それを手に取る。
ピンク色のリボンが幾重にも巻かれ、締めに超著結びをしていた。
それはワインのボトルだった。
私がしぃと一緒に飲んだ、赤ワインより一つ上のランクの。
何となく、気味が悪い。 私は傍の壁にそれを立てかけた。
ξ゚听)ξ「何なのこれは……?」
( )「羨ましくって」
返事を求めなかった私の言葉に、返す人間が居た。
反射運動のように、右手を見る。
非常用階段の影から、内藤が姿を現した。
( ^ω^)「僕も君とお酒を飲みたいお。イタリアンを食べたいんだお」
ξ;゚听)ξ「……そんな、どうして……」
どうして知ってるの?
……尾けていたんだ? そして、
( ^ω^)「僕も君とチーズフォンデュを食べたいんだお?」
ずっと、見ていたんだ。。。
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:34:53.80 ID:/7Yydd+X0
- ξ;゚听)ξ「いや……」
震える手で、私は鞄から鍵を取り出す。
息も荒々しくなり、酔いはあっという間に冷める。
( ^ω^)「君と僕とで、お酒をきこし召し合いたいんだぉお!!」
突然大声を出し、私の体は情けなくビクっと身をすくませてしまう。
男の瞳は、今日の……あの時のように、いやらしく光る。
どうしよう、殺されるかもしれない……。
私は急いで鍵を取り出し、鍵穴に差し込もうとする。。
……くそっ手が震えていて中々上手くいかない。
( ^ω^)「ところで今度、お茶でも飲まないかお? お?」
無視をして、ひたすら鍵に全神経を注ぐ。
( ^ω^)「……もしかして、ツンちゃん。僕が怖いのかお?」
――……やった、差込みに成功した!
私は鍵を急いで180度回し、扉のロックを開ける。
汗ばんだ手でドアノブに触れる。
( ^ω^)「怖いのかお? 僕が怖いのかお? お?」
- 43 名前: >>40 はい 投稿日: 2007/07/09(月) 22:37:13.27 ID:/7Yydd+X0
- その言葉と態度、顔は非常に光悦としていた。
"被害者の生活に影響を与え、自分の存在をそこで認識して快感を得ようとする”
テレビの大学教授のあの言葉が、頭に浮かぶ。
( ^ω^)「おっおっお……怖がらなくても、いいんだお。
運命を、僕は君に感じているんだお」
「運命を、僕は君に感じている」
合コンのとき、私は散々そのセリフを言われたのを思い出した。
あの合コンで私と偶然会った。
それに、この内藤は異常なまでに運命を感じ、今までの思いを爆発させたのだ。
私は玄関の扉を押し開き、自分の身をその中へ素早く預ける。
その姿を見た内藤はにんまりと笑い、いつの間にか手にしている
あの赤ワインのボトルを掲げ、玄関に近づいてくる。
ξ;゚听)ξ「いやぁ!! 来ないでェ!!!」
( ^ω^)「来るか来ないかは、僕が決めることだお」
"歪んだ形の権力の誇示"
扉を急いで閉める。
しかし、ふちに手を掛けた内藤の力で、完全に閉め切ることが出来ない。
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:40:25.57 ID:/7Yydd+X0
- ξ;゚听)ξ「ひぃ……」
必死に扉を押し、閉めようとするも、やはり内藤の手のせいで閉まらない。
暗闇の中、目に映る内藤のウネウネと蠢く指を見るだけで、私は吐きそうになる。
( ^ω^)「ツンちゃん。今は僕のことを嫌っているのかもしれないお」
内藤が語りかける。 お願い、帰って……。。。
( ^ω^)「でも、僕はツンちゃんに好きになってもらうんだお」
一瞬、内藤の力が弱まる。
( ^ω^)「このワインを、ツンちゃんと一緒にξ#゚听)ξ「帰ってェェエエエ!!!」
火事場の馬鹿力だろうか。
おそらくワインを私に見せようとして、一瞬内藤の力が弱まったので
私は完全に閉め出すことが出来た。素早くチェーンを掛ける。
閉め切ったとき、ガシャァンとガラスの割れる音がした。
そして、鼻につくこのアルコールの匂い。
ピチャ、ピチャと水が滴るような音が外で聞こえる。
あのワインが、閉めたときにその衝撃で割れたのだろう。
内藤の、嗚咽するようなあの「おっおっお……」という口癖も聞こえる。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:43:42.75 ID:/7Yydd+X0
- ( )「あ〜あ……オーダーメイドの、30万もするこの黒スーツが……」
安心したせいで、腰が抜けてしまった。
早く奥に行きたいのに……。 体の自由が、キカナイ。
( )「でも、僕は頑張るんだお」
ノックの音が響く。
コツ、コツ、コツ、コツ……。
( )「僕は君と結ばれる。それにひたすら走るんだお」
ξ;;)ξ「ひっく……ひっく……」
( )「じゃあ、また明日」
その言葉を機に、内藤はどうやら帰ったようだった。
だとしても、私は動くことが出来なかった。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:44:53.40 ID:/7Yydd+X0
今日は、君と沢山の会話が出来てとても嬉しいよ
本当に、本当に……でも、もっと話たかったんだ
まあ、いいか でも君は本当に可愛らしい
でも、狂ってくれ 僕を刺し殺すまでに
だって、狂い泣きする君は身震いする程、 可愛らしくてさ
人生は妥協の繰り返しで成り 立っているらしいんだけど、
僕は君に関して だけは、 妥協しないよ
僕と君はどうにも、誰も彼もが祝福しないらしいんだけど、
僕の君に対する愛だけは、誰にも止められないよ
恥を知れ、僕はまたも妥協してしまったんだ
人生はそう長くないのに、何度も何度も ネガティヴ
気がつけば、僕は右手首にカミソリで十字をつけていた
美しい十字跡と、あぶく血
やっぱり僕はネガティヴ
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:47:33.77 ID:/7Yydd+X0
- 酷く憂鬱だ。
いや、憂鬱にならない方がおかしいだろう。
ストーカーに狙われて、幸せで居られる方が……
そして、大学の授業の存在も……。
この科目は必修なのに……
教授の言葉をノートにひたすら書き込んでいるが、
自分が何を書いているのかが分からない。
理解できないまま、授業は終わってしまった。
私は、教室を出て廊下を歩く教授に話しかける。
授業のことではない。
ξ゚听)ξ「あのッ教授!!」
( ФωФ)「ぬ? ……デレンさんか。何だね?」
ξ゚听)ξ「ここの大学には……やっぱり心理学科はありませんよね?」
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:49:55.95 ID:/7Yydd+X0
- 杉浦教授は苦笑する。
( ФωФ)「君は……この大学に何年居ると思ってるのだね? うちにはないぞ」
ξ゚听)ξ「ですよね……すいません」
しかし、これはほとんど建前のような質問だった。本命は、これから。
( ФωФ)「では、宜しいかね?」
ξ゚听)ξ「あ、ちょっと待ってください教授!!」
( ФωФ)「まだ、何か?」
ξ゚听)ξ「では、心理学の研究が盛んな大学はどこでしょう?」
杉浦教授は、ふぅむと言った感じのポーズを取り、考え出す。
( ФωФ)「……む、……まぁ……ラウンジ大学のバルケン教授が最近、
バウムテストの有用性の再確認、新たな用途を発見したとかで話題になったが……」
ξ゚听)ξ「ラウンジ大学、ですか」
弟である、ジョルジュの通う大学だ。 更に弟は、心理学を専攻していた。
( ФωФ)「まあ、この工科大学には、そう長けておる先生はおらんだろう。
餅は餅屋。 ラウンジ大学の人に聞いてみなさい」
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:51:23.70 ID:/7Yydd+X0
- 日も暮れている。
大学を出て、構内駐車場に停めてある車の中。
私はジョルジュに夜、そっちへ向かうというメールを送る。
ξ゚听)ξ「……ふぅ」
ケータイを閉じた後は、ギアを発進させる。
何処へ向かうかは、決めてない。
そうだ、そういえばまだシフト表の確認をしていない。
バイト先のコンビニへ向かおう。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:54:34.63 ID:/7Yydd+X0
- ξ゚听)ξ「こんにちわー」
コンビニの中に入る。
今の時間、働いていたのはオーナーのショボンさんと、ドクオ君だった。
(´・ω・`)「あ、おはようございまーす」
('A`)「ツンさん。どうも……」
ξ゚听)ξ「ちょっとシフト確認にバック入りますねー」
(´・ω・`)「どうぞどうぞ」
('A`)「お願いしまーす」
ξ゚听)ξ「では、入りまーす」
お決まりの台詞を言い、私はバックルームに中に行く。
ξ゚听)ξ「っげー。再来週8時間のシフトあるし……」
呻きながらも、手帳にシフト予定を書き込んでいく。
今出ている、1ヶ月後までの全てのを書き終えると、
帰りにカフェラッテでも買おうかな、と私はさっさと戻ろうとした。
が、見てしまった。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:56:35.04 ID:/7Yydd+X0
- 大抵、どこのコンビニもそうだろうが、
バックルームへ続く扉には、マジックミラーが取り付けられている。
その向きは当然、バックルームから店内を見渡せるように設置されている。
戻ろうとして、そのマジックミラーを、見てしまった。
そこに写りこむは内藤の姿。
全く遠慮を見せず、ずかずかとバックルームへ向かおうとする姿。
その姿を見て、何事かと内藤に近づくオーナー。
私は思わず後ずさりをし、スナックを保管してある棚に思い切りぶつかる。
そして、バックルームのドアへ手を掛ける内藤の姿。
それは開き、対面し合う私と内藤。
そして慌てて駆け寄る店長、何事かと目を見開いているドクオ君。
( ^ω^)「ツンちゃん……」
目の前の私を発見し、喜ぶ内藤の姿。
悪寒が、走る。
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 22:59:45.44 ID:/7Yydd+X0
- (;´・ω・`)「すみません、お客様! ここは従業員以外立ち入り禁止で……」
しかし、オーナーのその言葉に反応するでもなく、
何故か内藤は私に、左手首を見せ付ける。
そこには煌びやかなオメガのオートマティック時計がはめてあった。
( ^ω^)「もしよければ、これをあげようと……」
内藤は、バックルームの中へ入ってくる。
とうとうオーナーは、内藤の体を掴み、抵抗する。
(;´・ω・`)「お客さん! お客さん!!」
(#^ω^)「触んなお!!」
無理やり振り解き、内藤は激昂する。
( ^ω^)「ツンちゃん。……この時計は気に入らないのかお?」
ξ;;)ξ「こ、来ないで……!」
( ^ω^)「せっかくのオメガなのに、気に入らないのかお……?」
内藤は、目を落とすと、持っていた紙袋に手を入れ、
ガサゴソと音を立てて、何かを取り出そうとしていた。
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:02:00.02 ID:/7Yydd+X0
- (;´・ω・`)「すみません、お客様! ここは従業員以外立ち入り禁止で……」
しかし、オーナーのその言葉に反応するでもなく、
何故か内藤は私に、左手首を見せ付ける。
そこには煌びやかなオメガのオートマティック時計がはめてあった。
( ^ω^)「もしよければ、これをあげようと……」
内藤は、バックルームの中へ入ってくる。
とうとうオーナーは、内藤の体を掴み、抵抗する。
(;´・ω・`)「お客さん! お客さん!!」
(#^ω^)「触んなお!!」
無理やり振り解き、内藤は激昂する。
( ^ω^)「ツンちゃん。……この時計は気に入らないのかお?」
ξ;;)ξ「こ、来ないで……!」
( ^ω^)「せっかくのオメガなのに、気に入らないのかお……?」
内藤は、目を落とすと、持っていた紙袋に手を入れ、
ガサゴソと音を立てて、何かを取り出そうとしていた。
- 59 名前: 連投しちまった 投稿日: 2007/07/09(月) 23:03:48.44 ID:/7Yydd+X0
- (;´・ω・`)「お客さん! いい加減にしてくださいッ!
警察を呼びますよ!?」
( ^ω^)「これを、買ってきたんだお」
そして紙袋から取り出したのは、
プレゼント用に包装された、長方形の、何かだった。
( ^ω^)「バービー人形だお!」
…………。
私の目の前に、"決定的な狂気"が存在している。
もう、逆らいようがないほどの。
(;´・ω・`)「ドクオ君っ!!」
オーナーが突然叫ぶ。
すると、店内に警報ベルが鳴り響きだす。
このベルは店内だけに留まらず、周囲100mには聞こえるであろう大きさの。
(;^ω^)「……!」
流石に、この内藤もそれを無視し切れないようだった。
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:06:48.85 ID:/7Yydd+X0
- 店内のお客さんも、その異常性を感じ、
急いでコンビニから出て、逃げ出す。
この近くには派出所が存在する。
5分もしないうちには、お巡りがここへ来るだろう。
(;^ω^)「ツンちゃん……僕は、やばいんだお」
警報ベルに掻き消されそうなほど、か細い声で内藤は呟いた。
( ^ω^)「二日連続で無断欠勤してしまったんだお……」
ξ;;)ξ「……え」
( ^ω^)「それでも、これからも……僕は君のために休み続けるんだお」
まるで姫を守る騎士なんだ、とでも言いたげに内藤の顔は笑う。
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:09:13.92 ID:/7Yydd+X0
- (;´・ω・`)「例の白ボタンをッ! ドクオ君!!」
レジ下に取り付けられてある、通称「白ボタン」の警備会社への連絡手段を
押すようにドクオ君へオーナーは指示を出す。
('A`)「はい!!」
見た目には分からないが、警備会社へ通報をする。
( ^ω^)「じゃあツンちゃん。バービー人形はここに置いておくお!」
内藤は人形の入った箱を、地面に置き
オーナーと強引に荒々しく肩をぶつけながら、店の外へ出て行った。
駐車場に停めてあった白い大型ワゴンに乗り込み、車を発進させる。
(;´・ω・`)「ツンさん……大丈夫かい……?」
オーナーが声を掛けてくれた。
でも、私の心は冷め切ってしまっていた。。。
( ><)「どうかしたんですか!?」
程なくして、警官がやって来る。
少し経てば、警備会社の人間も現れるだろう。
(;´・ω・`)「あ、どうもです。 ドクオ君、ベルを止めてくれ」
うるさく鳴り響いていたベルがピタリと止んだ
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:12:10.66 ID:/7Yydd+X0
- (;´・ω・`)「不審者が現れたんです……」
オーナーが警官に今起こった状況を説明した。
私は内藤が置いた例の"贈り物"を手に持ちながら、警官が
クリップボードに挟んだ紙に書き込みを行っている。
あれが"実況見分"って奴なのかな? と私は呑気に考えていた。
('A`)「ツンさん……大丈夫でしたか?」
ξ゚听)ξ「あ……うん、大丈夫よ……」
(;´・ω・`)「ツンさん……あの男の、身分とか分かるかい?」
ξ゚听)ξ「あ……はい。え〜と……」
('A`)「あの男、ここによく来てますよね」
(´・ω・`)「うん。だが公共料金とか、身分の分かる物を
何一つこのコンビニで支払っていないんだよ……」
ξ゚听)ξ「ガイドライン商事の……内藤という男です」
( ><)「住所は分かりますか?!」
('A`)「この近辺に住んでいるハズです」
代わりにドクオ君が答えてくれた。
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:15:13.94 ID:/7Yydd+X0
- オーナーが、私に話しかける。
(´・ω・`)「大丈夫かい? ……何か、合ったのかい?」
ξ゚听)ξ「……。オーナーさんは……ストーカーって知ってますか?」
(´・ω・`)「……最近、テレビを賑わせている、あの……?」
ξ゚听)ξ「はい。……あの男は、私を尾け狙って……」
(´・ω・`)「そ、そうなのか。………ふぅむ……」
何か、考え事をしているようだった。
随分長い時間掛かったが、一つの結論を出した。
(´・ω・`)「よし分かった。 今後、あの男をこのコンビニに立ち入れさせないよ」
ξ゚听)ξ「えぇ!? 本当ですか?」
(´・ω・`)「渡辺さんからもね、あの男の話も聞いたんだ。
それに、今日の出来事だけじゃ、警察はそう動いてくれないしさ」
私は深々とお辞儀をする。ありがたい。。。
ξ゚听)ξ「ありがとうございます!」
(´・ω・`)「いいっていいって。このコンビニに出来ることと言ったら、それくらいだしね」
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:17:18.00 ID:/7Yydd+X0
- ・・・・・
( ゚∀゚)「え!? ストーカー?」
アパートを訪ねるなり、私の開口一番がそれでは
流石にズボラな弟のジョルジュも、驚くだろう。
( ゚∀゚)「……なぁ。まさか、姉ちゃん。被害に会ってるのかい……?」
ξ゚听)ξ「ええ。……その通りよ……。アンタの助けが要るの」
居間の中。出された温いお茶を飲みながら、私は答えた。
ジョルジュの知識が、必要だ。
ξ゚听)ξ「何か資料とか……欲しいんだけど」
(;゚∀゚)「ん、あ、ああぅん。……ちょっと待って」
ジョルジュは近くに無造作に置かれていた透明の書籍鞄を開けて、
中から青いグリップでまとめてある、A4サイズのレポート用群を取り出した。
(;゚∀゚)「犯罪心理学は分野外だから、あまり詳しくはないんだけど……」
ξ゚听)ξ「いいのよ」
( ゚∀゚)「ええっと……これとこれか」
ジョルジュは束の用紙から数枚選別して、引き抜いた。
- 68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:19:27.26 ID:/7Yydd+X0
- ( ゚∀゚)「定義は飛ばすな。まぁ、要約すると
ストーカーというのは、まぁ……ありとあらゆる手段を使って
邪魔な物を排除して、被害者の完全支配を目指すような奴、らしい」
ジョルジュが所々つっかえながらも、用紙の内容を読み上げる。
ξ゚听)ξ「何だかよく分からないけど、最悪の人種ってことね」
( ゚∀゚)「はは、そういうこと。更に言えば事実を認識する能力の欠如、
抑制欠如を含んでいることが多いんだってさ」
ξ゚听)ξ「……ふーん。それって、サイコパスって奴?」
昔の洋画だったかに出てきた、その単語を織り交ぜてみる。
( ゚∀゚)「あー……そんな感じなのかなぁ。
含んでいる部分も、あるらしいね」
ジョルジュはそこで区切り、フゥと息を吐く。
改めてジョルジュをよく見ると、その目は怯えていた。
( ゚∀゚)「姉ちゃん……その、ストーカーはどんな奴なんだい?」
ξ゚听)ξ「ええっとね……正式に会ったのはついこの前なのよ」
私はあの男がしでかした行いを、ジョルジュに逃さず伝えた。
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:26:16.78 ID:/7Yydd+X0
- ( ゚∀゚)「……うん。それは、ストーカーだね」
私の話を聞き終えると、ジョルジュはゆっくりと頷いた。
( ゚∀゚)「特にゴミを持ち去るってのは決定的だね。
情報を得る、そのゴミを所有して擬似的所有感を満たす。。。
ゴミ袋毎持ち去るのは、間違いなくソレだよ」
"情報把握による心理的優越感を目的"
私は頷き返す。
ゴミ袋を漁るような真似があの時点で出来たというのは
もう、相当前から住所は知られていたのでは……
え? あれ……。ちょっと、待てよ……
だったら何故、ゴミ袋そのまま持ち去らないんだろうか?
……まあ、異常者の行動に一々難癖をつけては身が持たない。
ξ゚听)ξ「それで……どうすればいいのかな?」
私は本題、一番聞きたかった内容を話す。
( ゚∀゚)「……今の時点では、厳しいかな……」
しかし、ジョルジュの回答は満足の行くものではなかった。
( ゚∀゚)「ストーカーについての認識は、まだまだ甘いんだ。
でも、最近は急激にその犯罪が表面化している。
それに、殺人に発展した例も、少なくないんだ」
ξ;゚听)ξ「さ、殺人!?」
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:29:23.85 ID:/7Yydd+X0
- 殺人。
あまりにも現実味のないこの言葉が
私の目の前に、どかりと居座っている……。
内藤と対峙したとき、思い浮かんだ「コロサレル」という言葉が、段々と重くなる。
ジョルジュと会話をして、得られた安心感が一気に吸い上げられていった。
( ゚∀゚)「んっと……まずは、……そうだね。証拠を集めることだよ」
ξ;゚听)ξ「し、証拠……?」
( ゚∀゚)「うん。その男がこれからもストーキング行為を続けるつもりなら、
必ず物的証拠が現れるハズだよ」
ξ゚听)ξ「物的証拠って言ったら……」
私は思い出した、そして机の上に
内藤が置いてきたバービー人形の箱を置く。
( ゚∀゚)「これは……?」
ξ゚听)ξ「ストーカーからの置き土産」
そして私は勢いよく、包装をビリビリと破く。
ん? よく見ると、箱と包装の間から便箋が挟まっている。 それを手に取る。
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:31:14.67 ID:/7Yydd+X0
- ξ゚听)ξ「これは……」
私はその便箋からそうっと中の手紙を、取り出した。
これは、内藤の字だろうか。
意外と綺麗な字だが、その文には酷く違和感と居心地の悪さを感じさせる。。
一文毎に右肩上がり、左肩上がりと、ゴチャゴチャになっているからだろう。
"気付いているのかもしれないが、
僕は、君のことを愛しているんだ。
いつまでも君のことを守るつもりで居るつもりだ。
君が、僕を愛してくれるのを僕は待つよ。
君のためならば、僕は命を投げ出したっていいんだ。
前に言ったように、僕は君とお酒だって飲みたいんだ。
もう、僕は会社に居られないだろう。
でも、君が僕を愛してくれるのならば、僕は構わないんだ。
君のために、僕はいつまでも待つよ。
僕は君を守る "
事情を全く知らない他人がこの手紙を見ても、
何処か薄ら寒いものを感じ取れるはずだ。
(;゚∀゚)「キモいな、こりゃぁ……」
- 78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:45:39.05 ID:/7Yydd+X0
- ξ゚听)ξ「何か、分かる?」
心理学を学んでいるこの男なら、手掛かりをつかめるかもしれない。
(;゚∀゚)「さっぱり。……いや、でも……ちょっと待って」
ジョルジュはしきりに手紙を読み返す。
何度も何度も目を文の上に走らせる。
気が付けばその額には、尋常じゃない量の脂汗が溜まっていた。
(;゚∀゚)「この男……爆発性を、秘めているかもしれないぞ……」
ξ゚听)ξ「爆発性?」
(;゚∀゚)「二面性を持ち歩いている可能性が強いんだ……」
ξ;゚听)ξ「………そう、なの」
危険。
とても危険な男だ。
何かをしでかす……殺人?
"地獄とは、他者のことだ"
この言葉を今、私の記憶は蘇らせる。
でも、……私にはまだ、天使のような他者、味方がついている!
私は……まだ、大丈夫。
- 79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:47:31.40 ID:/7Yydd+X0
- マンションに着き、玄関の前に立つ。
便箋が差し込んであった。
私は感情なく、それを読む。
"あそこは男の部屋なのか?
僕が君を守っている、とても愛しているというのに
君は他の男と一緒になっているのか? "
私はその腐った手紙を、破り捨てたい衝動に駆られながらも、
その手紙を鞄の中へ入れて
玄関を開けた。。。。――――
- 80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:50:21.99 ID:/7Yydd+X0
- 車からは、小型の発信機が発見された。
あのコンビニでの騒動の際、警官の人が偶然見つけたのだった。
もう、一切の妥協は許されないだろう。
今日のバイトの際、オーナーのショボンさんは
オフだというのに、「ツンさんが心配だ」と、コンビニに来てくれた。
働いているのは、私とドクオ君と、オーナー。異例の3人体制だった。
といってもオーナーは基本発注と検品の手助けが主な仕事だったのだけど。
(´・ω・`)「……じゃ、仮点検始めちゃって」
もう勤務時間が過ぎる。
レジの中のお金の確認をしながら、私はドクオ君と話をした。
ξ゚听)ξ「なんか、いっつも働いてるね」
('A`)「え? あ、あはは……週5勤務ですから」
ξ゚听)ξ「へぇ〜。大変ね」
('A`)「あ、ありがとうございます……ツンさんも、大変ですね」
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:55:33.02 ID:/7Yydd+X0
- ξ゚听)ξ「……へ、へへへ……」
自分は変な笑い方だなぁ、と心の中で少し愕然とする。
('A`)「あの男から……何かされても……その、ええと……」
ξ゚听)ξ「ん?」
('A`)「あの……あー…僕も、オーナーみたいにツンさんを、……守りますんで」
突然。 こう言われては、自分でもどうしてらいいのか分からなくなる。
ξ////)ξ「……ぁあ! あの! ありがとね、うん……」
('A`)「あ、あはは……明日も、僕同じ時間帯じゃないすか……それに僕……」
(´・ω・`)「あ、しぃさんおはようございまーす」
引継ぎのしぃが来たようだ。
しかし、さっさとバックルームに入ったのか、姿を確認出来なかった。
ξ゚听)ξ「あ……じゃあ、そろそろ上がりますね」
(´・ω・`)('A`)「お疲れさまでーす」
- 86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/09(月) 23:58:32.68 ID:/7Yydd+X0
- バックルームに入る。
そこにはコンピューターに出勤時間を打ち込むしぃの姿があった。
ξ゚听)ξ「あ、しぃおはよーう」
(*゚ー゚)「……おはよう」
不思議と、しぃは不機嫌だった。
何かあったのだろうか?
(*゚ー゚)「あ、そんじゃーね」
そう言って私の体をすり抜けると、さっさと店内へ戻ってしまった。
本当に、どうしたんだろうか。
私は退勤時間の打ち込み、日報を終え帰宅しようとする。
明日もバイトがある。
オーナーさんが、明日も来てくれると言っていた。本当に嬉しい。
バイト、頑張らなくっちゃな。
駐車場に内藤のものと全く同じ、白のワゴンが停めてあった。
そして、私の姿を見た途端、発進して消えてしまう。
……今更、こんなことでは驚かない。
だが自分の車を見てしまうと、私は流石に怯えてしまった。
- 89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:01:00.93 ID:Pv4NqOkX0
- 私の車は、まるでゴルフクラブか何かで
滅茶苦茶に叩きのめされたかのように、ベコベコに痛めつけられていた。
急いで駆け寄る。
……ゾっとするほど、車体はめった打ちにされている。
怨念以外の何物も感じ取ることが出来ないほどに。
そして、ドアには手紙が差し込まれていた。
"もう、遊びは終わりだ。
僕は君を本気で愛している。守っているのに
僕に対してこんな仕打ちをする。
もう、遊びは終わったんだ。 君は分からな過ぎだ "
そして、手紙の裏には写真が糊付けされたあった。
ありえない量の銃器を持ち、装備し、そして満面の笑みを浮かべている内藤が写っていた。
私は警察へ、被害届を出した。脅迫罪の被害届を。
- 92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:03:22.91 ID:Pv4NqOkX0
- 警察署に届けを出し終えたら、私は脇目も振らず自分の家へ向かう。
部屋に閉じこもる。
ここのところ、こればっかりな気がする。
しかし、今日私はとうとう警察へ、届けを出した。
重要な、解決への一歩を踏み出したのだ。
担当の、ギコと名乗る貫禄のある刑事の話によれば、
「夜のうちには、令状見せたります」 ということらしい。
ということは、今頃にはもう内藤は連行されているのだろうか……。
そう思いにふけていると、家の電話が鳴った。
ξ゚听)ξ「はい」
( )「あ、どうも。一課のギコですわ」
あのとき、被害届の際、対応をしてくれた刑事だ。
ξ゚听)ξ「あ、こんばんわ」
(,,゚Д゚)「あー……。実はですね、内藤の野郎……家におらんのですよ」
ギコ刑事は単刀直入に私へ伝えた。
ξ;゚听)ξ「えッ!?」
- 98 名前: >>97 ちょw 投稿日: 2007/07/10(火) 00:09:28.85 ID:Pv4NqOkX0
- ξ;゚听)ξ「ど、どこか外出しているんじゃないんですか?」
(,,゚Д゚)「はい。そう思って張り込んでるんですが……一向にも」
心臓が狂騒的に踊り狂う。
(,,゚Д゚)「近所の住民にも聞き込みしましたがね………
随分と荷物を抱えて出掛けていったとか」
ξ;゚听)ξ「………」
相槌を打つのを忘れてしまう。
(,,゚Д゚)「それと、内藤の身辺も調査しました………。
仕事は非常に優秀ですが、ここ最近は無断欠勤ばかり。
会社側はもう解雇の姿勢を見せています。
更に、周囲の人間にも奴について聞きました。
危ない人間、関わりたくない人間、て結果でしたね」
ξ;゚听)ξ「そう……ですか」
(,,゚Д゚)「奴が何処へ向かったのか……現在全力で捜査しています」
- 100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:12:06.14 ID:Pv4NqOkX0
- ξ;゚听)ξ「それは、本当に……何といったら……」
(,,゚Д゚)「ええ。少し、身の回りを気ィつけといてくださいよ。
一応、今から貴女の見張りを2,3つける予定ですから」
ξ;゚听)ξ「あ、ありがとうございます……」
すると玄関の方……おそらく郵便受けから、カタン、と音がした。
本来なら電話を切ってから、その物を取るべきなのだろうが、
状況が状況では、今取らざるを得ないだろう。
ξ;゚听)ξ「すいません。何か郵便受けに来たようなので……」
(,,゚Д゚)「お願いします。内藤の奴かもしれません」
電話を保留にした後、そろそろと私は玄関へ向かった。
郵便受けには、またも便箋が入っていた。
しかし、前の便箋とは、どうにも雰囲気が違う。
少し艶やかな色をしていた。
- 104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:14:04.77 ID:Pv4NqOkX0
- 私はそれを、無造作に開いて中身の手紙を取り出す。
もう、一々怖がることはなくなった。
"恥を知れ、この売女が!
お前は、またも僕を怒らせたんだ。
僕はもう、本気で君に襲い掛かるぞ!
お前は、もう君とは呼ばないかもしれない。
僕は今、お前との距離は 遠いかもしれない。
でも見た目ほど、遠くは無い。君も僕も、引力のように引き寄せあうから。
それをお前は、そこまで気にしないかもしれない。
でも僕は、もう本気なんだ。君の幸せを、願う余裕は ない。
くるしい 分かり合えないことが こんなにもくるしい
ああ、僕のセロトニンが不足している。
興奮が鎮められないよ。安定剤をまた飲まねば……お前のせいだぞッ!!!!"
随分と乱雑に、文を把握せずとも怒りが分かるように、殴り書きしてあった。
そして、不自然にインクがすれている。
何故か、内藤のあの文の例のクセ。左肩上がりと右肩上がりの混合もない。
おかしい。いよいよ、何かがおかしい。
- 108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:18:50.46 ID:Pv4NqOkX0
- 私は保留ボタンを解除し、ギコ刑事との会話を再び続行する。
(,,゚Д゚)「どうでした、奴からのでした?」
ξ;゚听)ξ「どうでしょう……よく分かりません」
(,,゚Д゚)「分からない?」
ギコ刑事は訝しげだ。
(,,゚Д゚)「分からないとは、どういう風に……?」
ξ;゚听)ξ「文自体も、あの手紙と内容が重複してますし……
書き方だって、おかしいんです」
(,,゚Д゚)「……その文の特徴について、言って頂けますか?」
ξ;゚听)ξ「はい……」
私は手紙に再び目を向ける。
ξ;゚听)ξ「内藤特有の、字の向きの混合がなくなっていて、
字が変に擦れているんです」
(,,゚Д゚)「擦れている?」
- 110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:20:39.94 ID:Pv4NqOkX0
- ξ;゚听)ξ「はい……。ペンのインクが……。その、右へと擦れてるんです」
(,,゚Д゚)「……それはひょっとして、ほとんどの字がですか?」
ξ;゚听)ξ「そうですけど……」
(,,゚Д゚)「左利きか……おいデミタス! 内藤の利き腕は!?」
ギコ刑事は、電話の向こうで部下らしき人に尋ねていた。
内藤は……どっち利きだったっけ?
……思い出せ……よく、思い出せ……。腕時計?
そうだ、内藤は、腕時計を見せ付けていた。
どっちにはめていたか……。
"内藤は私に左手首を見せ付ける。
そこには煌びやかなオメガのオートマティック時計がはめてあった。"
……。
………!
…………あぁッ!!
内藤は、右利きだ。それは、今までの手紙が擦れてなかったことからも、間違いない!!
- 113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:24:27.96 ID:Pv4NqOkX0
- ……てことは、 ということは……
ハハハハハ、フッフふ……
ξ゚听)ξ「ふははははははっはははあはははははは!!」
(,,゚Д゚)「 ! デレンさん、どうしました!?」
ということは、アハハハ。
そういうことなんだ……あはははははは。
なんだ、そうなんだ、そういうことなんだ
ストーカーは、2人居る。
- 114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:27:04.57 ID:Pv4NqOkX0
- 私は、何事かと騒いでいるギコ刑事との電話をはんば無理矢理切り、
ベッドに入り込み
泣きじゃくった。
誰が敵なのか、分からない。
そして、狂った内藤が何をしでかすのかも、分からない。
バイトは、とりあえず休職しよう。明日、オーナーに伝えよう。
- 117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:29:53.73 ID:Pv4NqOkX0
- ジリリリリッ
ジリリリリリリッリリリリリ
電話が鳴る。
寝ぼけ眼で出ようとして、ふと時計を見る。
夜中の、午前3時。
変わった電話だ。とりあえず、出る。
ξ )ξ「……はい」
( )「…………」
何も応えない。
これは……無言電話という奴か。
内藤か? もう1人か?
すると、すぐに電話は切れた。ツー ツー ツー
また、かかりはじめた。
ジリリリリリッ
ジリリリリリリッリリリリリ
私はまたも、それに出る。
そしてまたも、すぐに切れる。 ツー ツー ツー ツー
- 119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:31:52.60 ID:Pv4NqOkX0
- ジリリリリリリッ
イタズラ電話とか、そんなの気にしない。
私は律儀に電話を出る。
ξ )ξ「……はい、もしもし」
( )「…………」
尋ねる。
ξ )ξ「内藤なの?」
( )「死ね」
ボイスチェンジャーのような加工された声で、
私は罵倒され、またも電話を切られた。
もう、電話に出るのはやめよう。
明け方までこの電話は続くので、私は電源コードを引き抜いた。
- 122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:34:54.78 ID:Pv4NqOkX0
- 今日は、12時からのシフトだ。
昼のラッシュのときに交代をさせるので、
引継ぎをやる身としては、あまり好きな時間帯ではない。
11時50分。私はコンビニに到着した。
やはり、今日は客が多い。
広めのはずの駐車場の大部分が埋まっていてしまい、
少し車を停めるのに苦労をした。
車は、修理に出している間レンタカーを使用している。
ξ゚听)ξ「おはようございまーす……」
('A`) 从'ー'从「おはようございまーす」
('A`)「あ、そうだ。オーナーさんなら、もうバックルームに居ますよ」
ξ゚听)ξ「ありがとうございます」
皆の、好意がとにかく胸に染みる。
本当に、いくら感謝してもし切れるものではない。
でも、バカな私は……
もう1人のストーカーの存在に、気を取られていて……
何処に居るか、何処に居るか……と考えて、
それだけで……そればっかで…… 好意にすら、私は疑いの篩いにかけていた。
- 125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:37:02.26 ID:Pv4NqOkX0
- (´・ω・`)「ツンさん、おはようございます」
既に制服に着替えていたオーナーが、冷蔵庫からおでんのセットを取り出し、挨拶した。
こんなに優しいオーナーにすら、私は疑いの眼差しをしてしまう。
そんな自分が嫌で嫌で、自暴自棄になりそうになる。
(´・ω・`)「ツンさん……。内藤のことからは、私達が全力で守るから! 安心してね。
次に来たときはね、威力業務妨害で訴えるぞ! て言うつもりだから」
オーナーは私に笑いかけた。
屈託の無い、本当に心の底からの、笑顔だった……。
ξ;;)ξ「はい……ありがとうございます……」
馬鹿なことを考えていた自分に、腹が立って
どうしようもなくなって、私はいつの間にか涙を流していた。
(;´・ω・`)「ツ、ツン君……。……今から時間だけど、
少し、ここで休んでいきなさい。 好きなとき、来てくれればいいから」
ξ;;)ξ「え……でも……」
(´・ω・`)「いいっていいって。仕事は基本、2人体制だろう? 大丈夫さ」
- 129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:38:44.34 ID:Pv4NqOkX0
- そう言うと、オーナーはおでんセットのカートを引いて
店内へと向かった。
私は涙を拭いながら、店内の監視カメラの映像を見る。
報告をドクオ君、オーナー、渡辺さんの3人で行っている姿を眺めた。
そのうち、渡辺さんが仕事を上がり、バックルームへと向かっていく。
从'ー'从「入りまーす」
ξ゚听)ξ「あ、お疲れさまでーす」
从'ー'从「大丈夫なの? ツンちゃん」
コンピューターを弄りながら、私を気遣ってくれる。
ξ゚听)ξ「本音を言えば……辛いです」
从'ー'从「そう……」
ξ゚听)ξ「でも……みんな、私を助けてくれて……それが凄く、嬉しいです」
- 132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:41:12.88 ID:Pv4NqOkX0
- 从'ー'从「私も……」
ξ゚听)ξ「……」
从'ー'从「微力ながら、あなたを助けたいわ」
ξ゚听)ξ「わ、渡辺さん……」
止まっていたはずの涙が、また溢れ出しそうになる。
从'ー'从「あー、あー。泣かない泣かない。また店内に出れなくなっちゃうよ? ふふ」
涙を踏ん張って止めながら、私は渡辺さんに笑いかける。
ξ゚听)ξ「そ、そうですね……あははは。時給が減っちゃう」
私はちょっと気晴らしげに、監視カメラの映像を再度見る。
4つある、カメラのうち1つだけ おかしいものが写っていた。
おかしいんじゃない。
あってはならないものが、写りこんでいたのだ。
駐車場を主に映し出すCカメラは
内藤の、白い大型ワゴンの停車する場面を鮮明に捉えていた。
- 135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:43:04.94 ID:Pv4NqOkX0
―――― 逆再生 ―――――
- 139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:44:33.27 ID:Pv4NqOkX0
- 10時30分。
僕は、身支度を整える。
きちんと、風呂に入り 体に付着する忌まわしき汚れを丹念に洗い流す。
普段はつけないような、香水も僕は「特別日だ」と呟き、
少しばかり あしらってみる。
いつもは、つけないので、勝手がよく 分からない。
この部屋の住民に聞こうにも
頭がない状態では口を動かせまい。 仕方ない。
香水は諦めるしかない。
この住民が誰か、僕は知りたくもない。反吐が出る。
あのツンを我が物にした男の顔など見たくない。
だから、吹っ飛ばした。
- 143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:46:25.28 ID:Pv4NqOkX0
- 11時10分。愛車に乗り込む。
後部座席に行儀よく座る、愛しの友たちに視線を向ける。
やはり、誰も彼も、 自らの存在をアピールするかのように
人殺しの発するような妖気、ぎらつきを魅せ付ける。
……少し、待ってくれ。
もう、少し。
最後の交渉が上手くいかないのなら。
僕を踏みにじった、ツン。
彼女に、僕のことを脳に永遠に刻みつけなくてはならない。
邪魔するものを、どうするか、と か。
制裁を加える。 誰かをどうするか、だなんて個人の、 僕の権利。
- 144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:47:53.03 ID:Pv4NqOkX0
- 12時15分。
いい時間だ。
前、乗り込んだときに見たんだ。
彼女のシフトの、時間を。
ようし。
僕は、後部座席の拳銃達に「少し待ってね」と、心の中で宥めながら
コンビニの、店内へ入り込む。
む。 おかしい、彼女が居ないぞ………。
- 145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:49:21.88 ID:Pv4NqOkX0
- ――――………..................―― ………
从'ー'从「あ……!」
ξ゚听)ξ「駄目…… 」
無意識のうちに、本能が呟く。
内藤が、入り口の自動ドアから入店する。
その姿は、Bカメラから見て取れる。
出入り口近くのレジへ内藤は近づいていく。
今は12時台のレジピークだというのに、
そのレジを操作しているオーナーの元へ寄る……。
この映像は、音声も録音しているのだが
普段はOFFにしており、しかもそれの解除方法は
私にも渡辺さんも知らないことだった。
会計をしているオーナーに、
それを無視するかのように話しかける内藤。
2人が、何を話しているのか……何となく、予想はつく。
…..................―― ………
- 148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:51:40.31 ID:Pv4NqOkX0
- ・・・ ・・・・
なぜだ。 ふざけるな!
( ^ω^)「何故お前が居るんだお」
レジで接客をしているこの店のオーナー。
反吐が出るような態度のこいつから、情報を引き出す。
( ^ω^)「ツンとあそこの男が、今のシフトのはずだお」
(´・ω・`)「……はい、では1500円お預かりします」
僕の言葉を無視して会計を進める。
接客を受けている当の客は困惑した表情だ。 失せろ。
( ^ω^)「ツンは中に居るのかお? 何でお前が働いてるんだお?」
(´・ω・`)「……こちら、48円のお返しになります。
ありがとうございました、またお越しくださいませー」
野次馬どもはざわついてる。
( ^ω^)「ツンはバックルームに居るのかお?」
(´・ω・`)「お客さま……いいえ、内藤様。 お引取り願います」
あ……?
- 152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:53:52.88 ID:Pv4NqOkX0
- (´・ω・`)「他のお客様がご迷惑しています。 これ以上ここに居るのでしたら、
威力業務妨害として、訴えるつもりですが……?」
( ^ω^)「………」
(´・ω・`)「申し訳ございません。このコンビニへ、今後立ち入らないでください。
………大変お待たせしました、……こちらのお弁当は温めますか? ……」
そう。
あ、そう。
俺は向かう。愛車へ。友、戦友となろう者の元へ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 156: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:56:48.11 ID:Pv4NqOkX0
- ・・・・ ・・・・・・・・・
从'ー'从「ほらツンちゃん! 内藤帰ってるわ! よかったね!」
渡辺さんは私に笑いかけてくれた。
でも、私は内藤がそのまま帰るとは、到底考えられないことだった。
内藤は再びCカメラに写り、自分の車に乗り込もうとしている。
おかしいことに、その顔や仕草からは、 "喜び"が感じ取れた。
从'ー'从「オーナーさんが、ガツン! って言ってくれたんだよ、もう大丈夫よ」
ξ゚听)ξ「……そう ですかね………」
それでもCカメラ映像に、ひたすら釘付けになっている私を
不審に思ったのか、「え?」と渡辺さんは同じように覗き込む。。。
从'ー'从「……な……! き、、、、きゃぁぁぁぁぁぁあぁあぁああ!!!!」
絶叫、私は出来なかった。 喉まで私と共に驚き、すくみ上がっていたのだから。
ショットガンを手にした内藤が、再び店内へと足を戻している。
- 159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 00:59:38.35 ID:Pv4NqOkX0
- ――――― ―――――
僕も君と同じく、そのショットガンを映像越しに眺めている。
今の僕の気持ちは、何だろうか。
まるで説明できない事柄を無理矢理説明させられているかのような
そして削られない石を研ごうと無駄な努力を行っているかのような
いや、考えすぎた
つまり、説明出来ないヨロコビ。 だとしても、僕はネガティヴ
――――― ―――――
- 162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:02:26.68 ID:Pv4NqOkX0
- ・・・・ ・・・・・・・・・・・
ξ;゚听)ξ「な……なんで、こんなことに……」
わたしのせい?
Cカメラに写る内藤は、買い物を終え、駐車場に向かおうとする
ただのお客さんにさえ、ショットガンの火を噴かせ 命を奪っていく
。
そのまま、先ほどと変わらぬ要領で店内に侵入していく内藤。
渡辺さんは、あの最終手段に出た内藤の姿を見て気絶してしまった。
正常な心を保てる人間こそ、どうかしてる。。。。
わたしも。
まるで、爆発が起きたかのような音が店内から響き渡り
ここ、バックルームにまで聞こえる。
慌てて監視カメラ映像、Bを見る。
ξ;゚听)ξ「オ……オーナーさんッ!!???」
オーナーが居たはずのあの場所には、
血まみれのレジ台と、ここのコンビニの制服を着ている 頭の見えない人間が倒れていた。
- 167: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:05:44.10 ID:Pv4NqOkX0
- ξ;;)ξ「オーナーさんッ!!!!」
私はバックルームから店内へ、戻ろうとした。
店内の音を支配する、お客さんの絶叫、金切り声が私の心を掻き毟る。。。
店内へ続く扉の、マジックミラーには
老若男女問わず、泣きじゃくる姿も、
腰を抜かし放心状態の姿も、まさに阿鼻叫喚のお客さんの姿が写る。
そして、どうしてかこの扉へ駆けるドクオ君の姿。
私はその姿に果てしない勇気を貰い、思わず扉を押そうとする。
しかし、私が扉に触れ、僅かな隙間が開いた瞬間、
ドクオ君の口が、「開けるな」と声を出さずに動く。
私は慌てて手を引っ込める。
そして、ドクオ君が扉の直ぐ傍に着き、
扉に付いているマジックミラーに、小声で語りかける。
('A`)「僕がデイリーコーナーで奴を足止めするから、
その間に酒類、雑誌コーナーを通って、そのまま店内から出てくれ」
ξ;;)ξ「ドクオ君……!」
どれだけ私が泣いても、彼からは見えない。。。
どれだけ感謝したい、と願っても 彼へは届かない。。
- 174: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:07:47.82 ID:Pv4NqOkX0
- ドクオ君が、不思議なことに マジックミラー越しで私と目を合わせる。
彼には、分かりえないこと。
('A`)「好きでした! ずっと前から……」
ξ;;)ξ「え……?」
('A`)「それに、借りを返せる……」
それだけ呟くと、再び駆けた道を戻る。
彼を目で追うと、足を引きずるように動く、内藤の姿も見えた。
あの温厚そうな表情は消えうせ、
ショットガンを手にぶつぶつと口を動かしていた。
( ゚ω゚)「…………」
私はあの内藤へ、怒りの視線をありったけ送る。
当然、届かない。
ドクオ君が内藤の姿、目掛けて走っている。
内藤がショットガンの銃口を彼へと向ける。
ξ;;)ξ「だめえええええ!!!」
しかしドクオ君は身を屈め、飛び掛った。
内藤の腰を確実に捉え、2人して豪快な音を立てて倒れる。
- 177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:09:07.33 ID:Pv4NqOkX0
- 2人は倒れたまま、もがき合っていた。
ドクオ君の言うとおり、早く私は別ルートから店外へ逃げるべきだ。
タイミングを見計らう。
うまくいけば、内藤に気付かれずに出て行くことも可能だ。
ξ;;)ξ「……でも」
でも、渡辺さんを置いていくのことは……出来ない。
そう考えた瞬間、後頭部に鈍い感触が走った。
体の内部で頭蓋骨が何かと衝突したかのような音が、響き渡っている。
何がなんだか分からないまま、
私は地面に崩れ去った…………。
- 185: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:13:58.94 ID:Pv4NqOkX0
- ・・・ ・・・・・・
ツンさんには、多分伝わったと思う。
そう思うしかない。 あの扉が開きかけた現象に全てを僕は賭けた。
( ゚ω゚)「離せお!! 離せェェェエエッ!!!!」
内藤が暴れるのを俺は必死で抑えこむ。
この……キチガイが、 オーナーさんを殺したんだ!
柔道は高校の授業でしかやったことはないが、
自分に不思議と才能のようなものがあったのか、
少しばかりの技なら、何年も経った今でも使えた。
俺の双手刈りで相当背中を痛めたのか、
内藤の呻き声が激しい。ショットガンも落とし、滑っていった。
この憎らしい男を、殴りつけてやりたい。
苦労しつつ、マウントポジションを取るのに成功する。
- 189: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:16:57.87 ID:Pv4NqOkX0
- (#'A`)「この野郎がァ!!」
拳を握り締め、あらん限りの腕を伸ばす。
この男がしでかした行いが、走馬灯のように頭に流れ込む。
ツンさんに尾きまとい、恐怖を与え、
今日、ショットガンで、罪なきオーナーとお客さんを殺したんだ!!
許せるはずがない!
(#'A`)「死ね!!」
逆手でナイフを突き立てるような要領で、俺は拳を振り下ろした。
(;'A`)「 !? 」
だが背中に突如、意味の判らない衝撃を食らう。
その痛みに思わず痺れてしまい、俺は内藤に殴りつけることが出来なかった。
- 198: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:21:59.17 ID:Pv4NqOkX0
- (;'A`)「な、なんだ……?」
後ろを振り向こうとした瞬間。
ガチャリ、と拳銃を動かす音が、
正面……まさしく内藤のそばから聞こえた。
そして見れば、内藤は357マグナムを俺へ
冷静に狙いを定めていた。
(;'A`)「お、おぃ……」
( ゚ω゚)「邪魔だお」
その弾は正確に俺目掛け ぶっ放された。
うあああああああああああああああぁぁああ!!!!
叫ばないと、気絶するほどの激痛。
喉に、喉に弾丸が食い込み、 貫通した。。。
ツンさんは……ちゃんと逃げ延びたんだろうか………
俺には、もう分からない。
- 207: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:26:13.31 ID:Pv4NqOkX0
- ・・・・・・
あ、あの男は……狂っている。。。
ここの店のオーナーさんを躊躇なく、ショットガンで撃ち殺し、
騒ぎ逃げようと入り口の自動ドアへ進む客も、
2発、3発、 4発。
鼓膜も、涙腺もぼろぼろになりそうだ………。
入り口は血で塗りたくられ、
外の光景など見えやしない。
ただ、窓の方からは騒ぎが起き始め、パトカーも駆けつけている。
た、助か
( ゚ω゚)「逃げるなお!!」
金切り声のように、喉が擦れたように叫ぶ。
( ・∀・)「……は、はひ……」
小さく、誰にも聞こえないであろう声で私は呟き
地面に伏せた。
ただ、昼飯をここで買いに来ただけなのに……!
何で私が、何で私が!!!
- 211: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:28:14.44 ID:Pv4NqOkX0
……そして、どれほどの時間が経ったのだろうか。
またも、銃が咆哮を挙げる音が聞こえたが、
ショットガンとは別の拳銃のように、思えた。
ちらり、と見ると
悪魔は壊れたぜんまい人形のように、ふらつき
( ゚ω゚)「もうお前ら、全員死んじまえ!」
とうとう男は無抵抗の人間すら、牙を向けた。
冷静に容赦なく、泣いている子供に狙いを定める。
( ;∀;)「ひい……!」
「やめてくれ!」と叫んだとき、銃弾が私の左胸目掛けて放たれた。
- 218: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:30:42.44 ID:Pv4NqOkX0
- ・・・・・・
どれほどの時間が経ったのだろうか……
ξ゚听)ξ「ん、ぅうん………」
私は後頭部をさすりながら、よろよろと、起き上がった。
何があったのか……突然、後ろから殴られたかのようだった。誰だろうか。
私は、もしや……と思い、渡辺さんの方を向く。
ξ゚听)ξ「……彼女じゃない」
渡辺さんはまだ倒れていた。
……私は、ここを彼女を起こそうと決めた。
「私を助ける」と言ってくれた人を、見捨てることなんて絶対出来ない。
渡辺さんの頬を少し叩いて、「渡辺さん!」と問いかけるも、
完全に彼女は気絶したままで、起きはしなかった。
ξ゚听)ξ「……どうしよう」
何かないか、私はキョロキョロと周りを見渡したとき、
監視カメラの映像がとんでもないものを写しているのを発見した。
- 224: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:33:51.58 ID:Pv4NqOkX0
- ξ゚听)ξ「……け、警察……」
駐車場を写すCカメラは、その場所にパトカーが何台も停まっていて
更に刑事が何人か、パトカーから出入りしているのも確認出来た。。
ξ゚听)ξ「……! ギコ刑事!!」
ギコ刑事が内藤の車の内部を物色していた。少しばかりの安堵感が現れる。
どうやらこの店のシャッターが降ろされているようで、
彼らには中の様子が分からないらしい。
だが……他の、店内を写すカメラは、地獄を鮮明に流し続けていた。
ξ゚听)ξ「……… そんな……」
とにかく、血と死体、流れ弾により崩れ落ち、乱雑とされている商品。
どれもこれも、凄惨な現実だった。。。
このコンビニ内で、生きているのは私と内藤、渡辺さんだけなのではないだろうか。
……私が、止めなければ。
雪崩のように襲い掛かる吐き気と恐怖を必死に抑えながら、
私はバックルームのマジックルームを覗き込む。
- 226: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:36:23.72 ID:Pv4NqOkX0
- ξ゚听)ξ「……ど、ドクオ君!!」
血を流し、その体はうつ伏せに倒れていた。
私は無我夢中で扉を押し、彼の元へ走りこんだ。
ξ゚听)ξ「ドクオ君!! ドクオ!!!」
必死にゆり動かす。
だが……彼は2発の銃弾を体に打ち込まれていて、既にこと切れていた。。。
ξ;;)ξ「そ、そんな……!」
血生臭いこの店内で。
私は……襲撃者に気を配るのを、
忘れていた。
- 234: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:38:52.64 ID:Pv4NqOkX0
- ドクオの体を抱きしめていたその時。
鼓膜が破れるかのような音が鳴り響いたかと思いきや、
肩にどうしようもない痛みと、血のどくどくと流れる、生々しい感触がする。
ξ;;)ξ「あ……ぁあが……!」
痛い、痛すぎる。
この痛み……銃弾は肉を切り裂き、骨に食い込んでいる。。。
私の意識は朦朧とし、何も考えられなくなっていく。
「これで僕のことを、いつまでも愛してくれるだろうか………」
意識が途切れる直前、そんな言葉を
耳にした。。。
- 241 名前: >>236 キニスルナ 投稿日: 2007/07/10(火) 01:42:22.70 ID:Pv4NqOkX0
- あの地獄。
犯罪史に残るかのような、大事件から……
……数週間後。
「……酷い事件でしたね」
「ああ……死亡者25名。生存者は僅か、2名。 挙句犯人が自殺を図るとは……な……」
「……ノストラダムスはこの事件のことを、予言してたんですかねぇ?……はは」
「滅多なことを言うな! デミタス!!」
っち……馬鹿な部下を持っちまったぜ。
俺はそんなことを考えながら、扉をノックする。
(,,゚Д゚)「失礼します」
中からの了承も得ず、俺はノブを回し部屋の中へ入る。
まず看護婦に、患者の状況を尋ねる。
(,,゚Д゚)「……具合は……どうですか?」
川 ゚ -゚)「いえ……証言を口に出来るどころか……まともにも……」
(,,゚Д゚)「……そうですか」
- 248: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:45:20.37 ID:Pv4NqOkX0
- 俺は看護婦の傍、ベッドのリクライニングで半身を起こしている
ツン・デレンさん、その人を見る。
(,,゚Д゚)「……本当に、気の毒なこって……」
内藤の、ストーキング行為からの最悪の発展。
これを止めることが出来なかったのは、
俺達警察の……失態と言っても過言ではないだろう。
あの事件も……強行突破の判断がもっと早ければ………!
(´・_ゝ・`)「もう1人の証言を全面的に信じるべきですね……」
部下のデミタスが、感傷に浸っている俺を邪魔するかのように話しかける。
(,,゚Д゚)「……そうだな」
(´・_ゝ・`)「しかしあの人は、強いですよね……あんなことがあったってのに……」
(,,゚Д゚)「内藤の野郎に腕を撃たれたってのに……本当にな」
川 ゚ -゚)「その人はもしかして……この部屋によく来る……?」
- 251: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:47:24.95 ID:Pv4NqOkX0
- (,,゚Д゚)「ええ。そうです。 現在左腕を包帯で巻いとる……」
川 ゚ -゚)「やはりそうですか……。デレンさんは……その人には、心を開いているんです」
(´・_ゝ・`)「えぇ!? じ、じゃぁ……デレンさんの証言も聞けるじゃないですか!?」
(,,゚Д゚)「アホかおめぇは!! いくらその娘に心開いていても、そりゃ無理ってもんがあるだろ!!」
俺は拳骨を部下に一発食らわせる。
どうもコイツの無神経な言動には、腹が立ってしょうがない。
川 ゚ -゚)「そうですね……仮に出来たとしても、何年も後……あ、しぃさん」
ん。どうやら……もう1人の生き残りの、しぃさんが来たようだ。
この娘の証言が、この事件の凄惨さを世間に知り得させた。
ストーカーという存在の狂気も……。
これがキッカケで、ストーカーに対する規正法も出来れば良いのだが……。
俺はデミタスの頭を無理矢理下げさせながら、挨拶をする。
(,,゚Д゚)「どうもこんにちわ」
- 259: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:50:53.84 ID:Pv4NqOkX0
- (,,゚Д゚)「どうもこんにちわ」
(*゚ー゚)「こんにちわー皆さん!」
僕は明るく、刑事と看護婦へ挨拶をする。
(*゚ー゚)「クーさん、ツンの状態はどうですか?」
川 ゚ -゚)「いつも通りよ……」
ん? 愛しい人の呻き声が、ベッドの方から聞こえる。
僕はベッドへ駆け寄り、その者の手を握る。
ξ゚听)ξ「しぃ……!」
(*゚ー゚)「ツン!! 大丈夫!?」
ξ゚听)ξ「大……丈……夫……」
何やら後ろで、3人が話し込んでいた。
が、僕にとってはどうでもいい。
「たまたま買い物に来た矢先、内藤に撃たれたが奇跡的に生き延びた」
こんな証言を真に受けるような奴らの話なんて。
(*゚ー゚)「ツンは……僕の永遠の恋人なんだからね!」
ξ゚听)ξ「えぇ……そうよ……」
- 262: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/10(火) 01:52:34.81 ID:Pv4NqOkX0
- ツン……永遠となる、恋人よ。
僕はとうとう、君を手に入れた。
口数が少なくなってしまったのは玉に瑕、て思っていたけど
黙っている君も、狂うほどに可愛らしいよ。
ドクオ……なんていう、愚かな愚図に
尻尾を振った、消しようも無い罪は、
優しい僕が、許し 全てを許した。
"地獄とは、他者のことだ"
人生設計に楽しみを得るのは、
おそらく生まれて初めてのことだろう。
ツンという最愛の人を手に入れたんだ。
ネガティヴになるはずがない。
ところで、僕はポジティブなんだって。
――――――――――End
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