( ^ω^)ブーンがネオファイターになるようです
- 69: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/08/22(水) 02:37:16.00 ID:GsQSrje40
『エピローグ』
第十二期ネオファイターによるネオファイト本戦が行われてから三ヶ月。
この世界に、春が訪れようとしていた。
(*゚ー゚)「よっと」
ずっと前から渡されていた合鍵でしぃはドアの鍵を外し、ドアノブを回しながら部屋の中に入る。
電気を付けながら部屋を横切り、いつもの特等席であるベットの上に座り込む。
そこにある、ピンク色のイルカのぬいぐるみを抱き寄せる。
ぎゅっとするとイルカは「きゅー」と鳴いた。
その鳴き声とこの抱き心地がしぃは好きだ。
気持ちいいし可愛い。それにここにいるときはこうしているのがいちばん落ち着く。
(*゚ー゚)「ふぅー」
やっと着慣れた学校の制服のスカーフを外し、ベットの上に寝転がる。
窓から射し込むぽかぽかの陽射しはとても心地良くて、このまま目を瞑ればすぐにでも眠れそうだった。
- 72: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/08/22(水) 02:39:05.02 ID:GsQSrje40
本当に寝ってしまおうかと思って目を閉じたそのとき、玄関から物音が聞こえた。
(*゚ー゚)「あっ!」
ゆっくりと起き上がり、近づいてくる足音の先に視線を送る。
どうやらこの部屋主がラーメン屋のバイトから帰って来たらしかった。
ベットに座り込んでいるしぃを見つけると、ブーンは緩やかに笑う。
( ^ω^)「また来てたのかお、しぃ」
うん、としぃは肯く。
( ^ω^)「んじゃまあ、いつのように卵焼きだおね」
また肯くと、ブーンは台所へと消えて行った。
台所から聞こえる音を耳に入れながら、しぃはもう一度イルカをぎゅっとする。
「きゅー」という鳴き声と共に、しぃは窓から外を見つめる。
雲一つない、澄み渡った青空だった。
- 73: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/08/22(水) 02:40:51.82 ID:GsQSrje40
三ヶ月前、自分は確かにあの空を駆け抜けたのだ。
真紅の竜の背に乗って、自由に飛び回っていたのだ。
あのときだけは、無限の世界へと続く鍵を手に入れていたのだろう。
ただ、少しだけ変わってしまったが、今も自分の手の中には鍵がある。
無限の世界への鍵ではないが、どこにでも行ける鍵であり、そして、この部屋に入るための大切な鍵だ。
そんな鍵を自分に託してくれたことが、しぃにとってはやっぱり誇らしくて嬉しい。
やがてブーンが卵焼きを持ってしぃのもとへとやって来る。
( ^ω^)「学校には慣れたかお?」
卵焼きを頬張りながら、
(*゚ー゚)「うん。友達もいっぱいできた」
( ^ω^)「そっか、よかったお」
- 74: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/08/22(水) 02:41:55.85 ID:GsQSrje40
そしてしぃの箸がベーコンを摘んだとき、心のどこかで何かが湧き上がる。
無意識の内に口はその言葉を紡ぐ。
(*゚ー゚)「…………荒巻、どうしてるのかな…………」
一瞬だけブーンの表情が曇ったが、それでも答えてくれた。
( ^ω^)「たぶん……寝てるんじゃないかお」
そうかもしれない、としぃは思う。
荒巻はよく眠っていた。お昼寝が大好きだったのだ。
きっとそうだ。荒巻は今、寝ているに違いない。
そしてその夢の中で、自分のことを想っていてくれればいいと思う。
しぃも時々荒巻の夢を見る。
それは何よりも温かくて、何よりも楽しい思い出だった。
しぃの大好きな夢だ。
( ^ω^)「……会いに行かないと、いい加減待ちくたびれてるかもしれないお」
ブーンのその言葉に、しぃは肯いて満面の笑みで笑う。
窓の外には、青空がどこまで続いている。
- 78: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/08/22(水) 02:43:17.19 ID:GsQSrje40
荒巻は言ったよね?
わたしに会えてよかったって。わたしもね、そう思ってるよ。
ありがとうって言うのはわたしだよ。
わたしの小さな世界を解き放ってくれた荒巻に、わたしもお礼が言いたい。
でもね、今はまだ言わない。いつかきっと、わたしが荒巻に会いに行くから。
そのときに荒巻に言うね。わたしの大好きな荒巻に、わたしの気持ちを伝えるの。
荒巻と会えなくてやっぱり寂しい。だけど、わたしには友達がいっぱいいてくれるからだいじょうぶだよ。
ブーンに、ドクオに、学校のみんな。
でも、忘れないで。わたしのいちばんの友達は、やっぱり荒巻だから。
いつかきっと、絶対に荒巻に会いに行くから。それまで待ってて。
- 79: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/08/22(水) 02:44:20.07 ID:GsQSrje40
わたしの心の中には、荒巻がいつもいるよ。
荒巻の心の中に、わたしはいる? その答えをいつかきっと、聞かせて。
わたしは、絶対に荒巻に会いに行くから。
だってわたしは、
……――荒巻のことが、
大好きだから――……
- 80: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/08/22(水) 02:45:02.13 ID:GsQSrje40
いつかその少女が必ず訪れるだろうその場所で、
真紅の竜が、大きな咆哮を上げる――。
fin
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