('A`)がコンビニ店員になったようです
- 62: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 20:41:44.13 ID:k0FfrX7o0
――――――ξ゚听)ξ「7よ!」―――――――
俺達三人は、深夜のラウンジ通りを駆け抜けた。
道行く酔っぱらいの波をかき分け、その間を縫うようにして走った。
すると、後ろから怒鳴り声が聞こえてくる。
どう都合よく考えても、追っ手に決まっている。
俺達は、振り向かずに走り続ける。
しかし、俺の息が続かない。
畜生! タバコなんて吸うんじゃなかった!
- 63: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 20:43:52.63 ID:k0FfrX7o0
- しかし、隣を見れば、ツンの息も上がっているようだ。
女だから、仕方ない。
一方ブーンは、定期的に走っているだけあって、余裕の顔をしている。
どうする?
連中は、まだ追ってくる。
俺とツンは、これ以上走れそうにない。
しかし、これは俺とブーンが勝手に始めたこと。
俺達二人はともかく、ツンだけは無事に逃がさなければ・・・・・・。
どうする?
どうする!?
- 64: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 20:44:52.03 ID:k0FfrX7o0
- 必死に脳みそを回転させていると、
ラウンジ通りの右手に、ビルとビルとに囲まれた一本の細い小道を見つけた。
・・・この方法しかないか。
('A`;)「ブーン、ツン!
右の小道に入れ!!」
(;^ω^)「お、おk!」
;゚听)ξ「ハァハァ・・・わ、わかったわよ!」
俺の指示通り、ブーンとツンは、その小道に入る。
そのあとに、俺が続く。
- 65: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 20:45:36.58 ID:k0FfrX7o0
- やがて、ブーンとツンが小道の出口にさしかかったところで、
追っ手の連中も、この小道に入ってきた。
位置関係で言えば、
ブーンとツンが小道の出口、俺が真ん中、
そして、追っ手の連中が入り口といった感じだ。
当初に比べ、差が大分縮まっている
もう、この方法しかない。
俺は、小道の真ん中で立ち止まった。
- 67: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 20:46:23.20 ID:k0FfrX7o0
- (;^ω^)「ドクオ!
何やっているんだお! 早く走るお!!」
('A`)「悪い・・・・・・もう走れそうにねぇわ。
俺を置いて、早く行け。」
(;^ω^)「なにを馬鹿なことを・・・・。」
(#'A`)「いいから早く行け!!!!!」
俺は、ブーンに向かって叫ぶ。
本気で叫ぶなんて、何年ぶりだろう?
(;^ω^)「わ、わかったお!
ツンを何とかしたら、すぐに助けを呼んでくるお!!」
;゚听)ξ「ドクオー!!」
最後にツンが俺の名前を叫び、二人の姿は見えなくなった。
- 76: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 21:24:37.68 ID:k0FfrX7o0
- その時、俺の背後、小道の入り口から拍手の音が聞こえてきた。
振り返ると、3人のスーツを着た男がこちらに向かってくる。
ラウンジ通りの灯りによる逆光で、その顔は判別できないが、
体型から見て十中八九、さっきの三人組だろう。
逆光によりその表情が見えないこともさることながら、
改めて対峙すると、この三人の雰囲気は恐ろしい。
今更ながら、足がガクガクしてきた。
すると、真ん中の一番小柄な男、おそらく支配人、そいつが口を開いた。
( ゚∀゚)「仲間を逃がすため、ここに残るなんてな。
おまえ、男だねぇ。」
いや、実際問題、もうこれ以上走れないだけです。
でなければ、こんなことなんかせずに、ブーン達と一緒にひたすら逃げている。
- 77: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 21:26:43.09 ID:k0FfrX7o0
- ( ゚∀゚)「そんなお前に敬意を表して、チャンスでもあげよっかな〜。
そうだなぁ・・・・・・。
二人とも似たような体格だし、
モナーとタイマンして勝ったら、逃がしてやるよ。」
( ´∀`)「覚悟するモナ。
さっきの目つぶしの借りは、100倍にして返すモナ。」
・・・・・・いえ、ご返却は受け付けておりません。
俺がいくらそう考えたところで、何の意味もない。
選択権の無い俺は、
このビルに囲まれた小道で、モナーという男と対峙させられた。
- 78: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 21:27:49.34 ID:k0FfrX7o0
- 怖い。
ものすごく怖い。
今までは、ツンを何とか逃がすという使命感があった。
しかし、それが無くなった今、俺の支えとなるものは無い。
恐怖で、心が折れそうだ。
体が、まるで言うことを聞かない。
ここで土下座でもすれば、許してもらえるかもしれない。
靴をなめろと言われれば、喜んでなめてやる。
とにかく、何とかしてこの場から逃げ出したかった。
- 80 名前: 78 ◆pP.8LqKfPo [>>79訂正] 投稿日: 2006/09/08(金) 21:30:03.74 ID:k0FfrX7o0
- ( ´∀`)「覚悟するモナ!!」
そう言って、モナーはファイティングポーズを取った。
それと同時にモナーの腰が落ち、その肩に力が入る。
来る!
頭では、それがわかった。
しかし、俺の体は動かない。
恐怖で体が言うことを聞かない。
まるで、俺の体では無いかのようだ。
俺の顔面に衝撃が走る。
一瞬、目の前が真っ暗になった。
視力が元に戻った頃には、俺は地面にうつぶせに倒れていた。
- 81: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 21:31:20.36 ID:k0FfrX7o0
- ( ´∀`)「なんだ、もう終わりかモナ?」
( ゚∀゚)「さっき店で見せた根性はどこに行ったのかね〜?」
このまま気絶した振りをしていれば、見逃してもらえるかもしれない。
ブーンもツンも、かなり遠くまで行ったはずだ。
あとは、こいつらが俺を見逃しさえすれば、何とかなる。
- 82: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 21:32:14.29 ID:k0FfrX7o0
- ( ´∀`)「ほらほら〜。
お楽しみは、まだこれからモナ〜。」
そう言って、モナ野郎がうつぶせに倒れている俺の横腹を蹴り上げる。
何度も、何度も。
痛い。
痛すぎる・・・。
もう、嫌だ。
何で俺がこんな目に・・・。
頼む、もう見逃してくれよ・・・。
- 83: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 21:33:24.66 ID:k0FfrX7o0
- ( ゚∀゚)「ったく、期待はずれもいいとこだ。
モナー、こんな根性なしなんか放っておけ。
な〜に、あの女の住所なんざ、履歴書を見れば一発だ。
そこに、追い込みをかけるぞ。」
( ´∀`)「そう言うことだモナ。
お前の苦労も水の泡だモナ。」
そう言って、モナ野郎が最後に俺の腹を蹴り上げる。
意識が、飛びそうになる。
結局、俺はツンを助けられないのか。
やっぱり、俺なんか、何をやっても一緒なんだ。
部活を止めたときから、俺のふぬけ人生は決まっていたんだ。
- 84: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 21:37:38.30 ID:k0FfrX7o0
- その時だった。
不意に、今晩のシャキンさんとの会話が思い出された。
「一歩足を踏み出さなければいけないときが、男にはある。」
もしかして、それは今なのではないか?
ここで痛みと恐怖に震えたままでは、部活を止めたあの時と同じだ。
また、あの虚無感を、俺は味わうことになる。
そうなれば、俺は二度と立ち直れないかもしれない。
一生、自分を嫌いでい続けなければないかもしれない。
そんな思いをするのは、部活を止めたあの時だけで十分だ!
- 85: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 21:38:32.22 ID:k0FfrX7o0
- 俺は、痛みで悲鳴を上げる体にむち打って立ち上がる。
そして、高二の夏以来、三年ぶりのファイティングポーズを取る。
( ´∀`)「お、まだやる気かモナ?」
( ゚∀゚)「いいね〜。 そうこなくっちゃな〜。」
再び、俺の頭の中のスイッチが入る。
途端に、俺は冷静になり、周りの状況がよく見えるようになった。
モナ野郎は左手、左足を前に出した構え。
一方俺は、右手、右足を前に出した構え、すなわち逆体だ。
- 86: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 21:39:55.66 ID:k0FfrX7o0
- モナ野郎の腰が下がる。
前に出した左足で踏み込み、
右手で大きく振りかぶったパンチを繰り出してくる。
遅い。
ショボン先輩のアレに比べれば、止まって見える。
俺は、前に構えた右手を、
モナ野郎のアゴに向けて、ジャブの要領で当てにいく。
右での攻撃ならば、
はじめから右手が前に出ている俺の構えの方が早いはずだ。
(;´∀`)「あべし!」
ほらな。
- 88: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 21:41:18.03 ID:k0FfrX7o0
- 俺は、モナ野郎に当てた右拳を引き、
その反動を利用して、腰を回転させる。
その勢いに乗せて、体ごと左拳を突き出せば、
体重の乗った重いパンチになる。
それが、モナ野郎の胸に直撃した。
( ´∀`)「かは!!
い・・・息が・・・・・苦し・・・・モナ・・・。」
モナ野郎は、苦しそうに前屈みになった。
胸は、顔面より遙かに当てやすく、うまく当たれば呼吸を苦しくさせられる。
まあ、ショボン先輩の受け売りなんだけど。
間髪入れず、
前屈みになったモナ野郎の顔面を両手でつかみ、膝蹴りをかます。
これが、ショボン先輩にたたき込まれた俺の唯一の実践的な技だ。
もっとも、高校の空手の試合は寸止めだから、この技は反則になるけどな。
- 93: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/08(金) 21:44:57.95 ID:k0FfrX7o0
- そんな喜びに浸っていると、
突然、後頭部に強い衝撃が走った。
あまりの衝撃に、俺は地面にうつぶせに倒れ込む。
視界が、ゆがむ・・・。
周りの雑踏が、耳から遠ざかっていく・・・。
うつぶせのまま、何とか首だけ動かして、支配人の方を向く。
ゆがむ視界の中で、
そいつの右手に、割れたビール瓶が握られているのが見えた。
( ゚∀゚)「よくやったね〜。 これはご褒美だw」
支配人の甲高い声が、耳の奥にへばりつく。
遠ざかる意識の中で最後に聞いたのは、そんな声だった。
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